<聖獣界ソーン・白山羊亭冒険記>


 雪の神を祭ろう

------<オープニング>--------------------------------------

 エルザードで毎年行なわれる雪の神の祭り。
 今日はその日だった。
 街並みを見ると、程々に積もった雪が良い具合に雪祭りの雰囲気を出している。
 「『魔道暖気石』いかがですかー…」
 寒空の下、見習い魔道士の少年ニールが、この日の為に作っておいた魔法の石(懐に入れると温かい)を売り歩いている。
 こうした祭りは、貧乏な魔道士協会の見習い少年が小遣い稼ぎをするのに絶好の機会だった。
 また一方では、盗賊協会に所属する元悪徳商人も商売している。
 「よう、うちの罠付き宝箱貨ってかないか?
  安くしとくぜ。」
 彼は罠や呪いがかかっている怪しい宝箱を、祭りに誘われてきた冒険者相手に売っているのだ。
 「たまにはのんびり、芸術化気分にでもひたろうかな。」
 雪の塊を風の魔法で削り、雪像を組みたてているのは魔道士のウルだった。
 終日のイベントとして行なわれる雪像製作大会に、彼は魔道士協会を代表して参加しているのである。
 主催者が用意した雪の塊を削り、1番素晴らしい雪の像を作った者が勝ちというイベントだ。
 午後からは盗賊協会のルーザの呼びかけにより、一部有志の集まりで雪合戦大会も開かれると言う。
 こちらは参加者の様子を見て、ルールもその時に決めるとの事である。
 ともかく、こうして雪の祭りは今年も始まるのだった。

 (依頼内容)
・ そんな感じで雪の神の祭りが行なわれます。参加者募集中です。
・ 大きなイベントとしては、雪像製作大会と雪合戦大会が行なわれます。そちらの参加者も募集中です。

(本編)

1.日和佐幸也と冬、雪の神の祭り。

 夏祭りでペットボトルロケットをやった時は、結構暑かったんだけどなー。
 コピー人形を追いかけ回した翌日の朝。自宅で眠っていた日和佐幸也は、寒さで目を覚ます。
 ここも冬になるとちゃんと寒くなるんだなと、幸也は思った。
 窓の外を見れば、それなりに雪が積もっている。
 雪の高さは膝の高さまではない。
 10cm〜20cm程である。
 気候的には日本に近い世界なのかもしれないな、ここは。
 夏の暑さと冬の寒さから、幸也はそんな風に思った。
 日本は地球でも1番ほど四季が鮮やかな所だった。
 ソーン全体がそうなのかは知らないけれど、少なくともエルザード周辺には四季、春夏秋冬がある事はわかった。
 ともかく、今日は雪の神の祭りが行われる日である。
 まあ、行くさ。
 地元は東京だったから、本格的なドカ雪はあまり見た事が無いし、興味もある。
 雪像作り大会がイベントとして行われるそうだし、それに参加してみるかな。
 地球に居たころも、札幌の雪祭りには憧れていた幸也である。
 体を動かす事になるし、多少薄着で行くかなと、準備を始める。
 でも、
 「幸也!
  暇だから雪合戦やろう!」
 などと言いながら、問答無用で雪玉を投げてくるヒュムノスの魔法剣士の娘も、広い世の中には居るかもしれない。
 念のため着替えも持っていくか…
 幾つか準備をしながら、幸也は雪の神の祭りが行われる会場へ向かうのだった。
 
 2.雪の神の祭り・午前の部
 
 エルザードの中心部にある広場で、雪の神の祭りは行われる。
 「魔道暖気石、いかがですかー。」
 黒ローブを纏った少年が、赤く光る石を売り歩いていた。
 懐に入れると、体が芯から多少暖まるという、魔法のアイテムである。
 無いよりはよっぽど良いかもしれないと、レアル・ウィルスタットは思った。
 雪像作りで一日中雪をいじるわけだから、魔法の暖房器具の一つ位はほしい所だ。
 「二ール君、その石の効果はどれ位続きますか?」
 レアルは二ールに、魔道暖気石の持続時間を尋ねる。
 「あ、レアルさんおひさしぶりです。
  えーとー、明日の夜までは確実に暖かいです。
  それから魔法が切れて、段々と温度が下がっていきます。」
 二ールはぺこりと頭を下げながら答える。
 「なるほど。では、暖気石を一つ下さいな。」
 レアルは懐から財布を取り出す。
 「ところで二ール君、君の師匠のウルは、私の事を何か言ってませんでしたか?」
 ウルがコピー人形騒ぎの事を何か言っていないかどうか、多少気になるレアルだった。
 「え?
  特には何も…」
 二ールは不思議そうにレアルの顔を見つめる。
 「いえ、ならば良いのです。」
 さすがにウルは、余計な事は言わないようだった。
 やはり問題の人達は…
 噂話を根も葉も増やして広めるのが得意そうな女性達のことをレアルは思う。
 ともかく、彼は二ールに別れを告げると雪像制作の会場へと向かうのだった。
 二ールは他の客を探して、再び会場を歩き回る。
 その頃、会場の入り口に医学生がやってきた。
 夏のペットボトルロケットの祭りも、ここでやってたっけかな。
 夏祭りを思い出しながら、日和佐幸也は広場に足を踏み入れる。
 雪像制作に行ってみるか。
 それで、後で時間があったら、フェイと祭りを見て回ろう。どうせ誘いに来るだろうし…
 多分、フェイは雪合戦でもやりに行くんだろうなーと思いながら歩く幸也だった。 
 盗賊教会の出し物の近くを通ると、夏祭りの時と同様、多くの人が集まっていた。
 そんな中に、幸也の見知った顔がある。 
 「よう、兄ちゃん。宝箱買ってかねぇか?」
 『箱売り』と呼ばれる男だった。
 「あんた、祭りのたびにやってるな…」
 相変わらずだなー、と声をかける。
 昔、各種悪徳商法に手を染めていた彼は、最近では改心したふりをして盗賊協会に入り、おもちゃの罠付き宝箱を作っては、祭りなどの時にさりげなく売っているようである。
 「ぶっちゃけ、一番の稼ぎ時だからなぁ。
  馬鹿なガキが、面白がって買ってくんだよ。」
 『箱売り』が、にやにやしながら言った。
 まあ、それはそうかもしれないが。
 なんだかなぁと、幸也は辺りを見渡す。
 すぐ側では、『雪や氷の上で滑らず音を立てず歩ける靴』などの実演販売なんかをやっているのが、さすがに盗賊協会らしかった。
 「あ、幸也、ここに居たんだ!
  幸也も雪合戦しにきたの?」
 そろそろ雪像作りの会場に行こうかという幸也に声をかけたのは、大剣を手に持ったヒュムノスの娘だった。
 「だから、なんで剣を抜いてるんだ、お前は。」
 言ったのは『箱売り』だった。
 「あー、ごめん。
  あんた見ると、どうしても体が勝手に動いちゃって。」
 フェイルーン・フラスカティは剣を鞘にしまう。
 「絶対、わざとだろう…
  ていうか、雪合戦はやらないぞ。雪像作りで忙しいから。」
 幸也は相方に言う。
 「まあまあ、そう言わずに。」
 「やらんと言ったら、やらん。
  俺は雪像を作るんだ。」
 フェイが幸也の肩をぽんぽんと叩くが、幸也の意思は固いようだった。
 「そっかー…
  それじゃあ、後で暇だったら遊ぼうよ。」
 寂しそうにフェイは言う。
 「そうだな、夜にでも祭りを見て回ろうぜ。」
 そろそろ雪像作りに行って来るから、後でな。と幸也は言った。
 「私もルーザちゃんの所に行こうかな。
  また、後でね!!」
 フェイは言うと、そのまま祭りへと消えていく。
 「おーい、たまには買っていけよー!」
 『箱売り』の声を背に、フェイは行ってしまった。
 「おい、話が違うぜ。『馬鹿なガキ』が箱を買わずに行っちまったぞ?」
 にやにやと言う幸也に、
 「うはは、確かにあんたの言うとおりだ!」
 『箱売り』は笑うしかなかった。
 そうして幸也も『箱売り』と別れ、二ールから魔道暖気石を買いつつ雪像作りの会場へと行ってみると、雪像制作はもうすぐ始まる所だった。
 「おや、幸也君も参加するんですね。」
 彼の姿を見かけたレアルが声をかける。
 「お、レアル君か。
  今日は自分の裸像でも作るのかい?」
 冷やかすように幸也は言う。
 「違います。」
 間髪入れず答えるレアルの表情が怖いと、幸也は思った。
 「エリストリアをモチーフにして作るつもりです。」
 エリストリア?
 ああ、そういえば、レアルはリドルカーナ商会の中に好きな人がいるとか言ってたっけかな。確か彼女の名前がエリストリアだ。と、幸也は思い出した。
 しかし、好きな相手の雪像を作るとは、いかにもレアルらしいなーと幸也は思う。 
 「そう言う幸也君は、フェイさんの雪像でも作るんですか?」
 レアルは幸也に尋ねる。
 「あいつの雪像なんか作ってもなー…
  まあ、俺は自分の聖獣、グリフォンの雪像を作るよ。」
 俺はあんまり芸術的センスも無いしなと、幸也は言った。
 「聖獣ですか。」
 まあ、無難だなーとレアルは思った。
 などと話すうちに、雪像制作は開始される。
 三メートル四方の雪のブロックが支給されるので、それを削って夕方までに雪像を作ればオッケーというルールだった。
 魔法を使おうが聖獣を使おうが、他人の雪像を攻撃さえしなければ何でもアリだという。
 まあ、やってみるさと、幸也とレアルは雪像を作り始めるのだった。
 そうして、午前中の時間は過ぎていく。
 
 3.雪の神の祭り・午後の部

 午後の最大のイベントは雪合戦である。
 「ねー、ルーザちゃん!」
 フェイは雪合戦の企画者、ルーザの所に来ていた。
 「何よ?」
 ルーザは不機嫌そうに答える。
 「誰も来ないね。」
 そろそろ時間だというのに、誰も参加者は来ていなかった。
 「言われなくてもわかってるわよ。」
 誰も人が来ないので、ルーザはとことん不機嫌そうだった。
 「せめてウル君位、来てくれても良いのにねー…」
 フェイが言うが、それは触れてはいけない事だったらしい。
 ルーザの目が怖い。
 「わ、私、人を誘いに行ってくるね!」
 逃げるように参加者を勧誘しに行くフェイだった。
 ルーザの名はエルザード中に響いている。
 負けそうになると雪玉の中に石を入れるという噂(デマ?)も立っていた。
 なので、エルザードの一般市民は、怖がって全くよりつかなかったのだ。
 とりあえず、ウルくんでも連れてくれば機嫌も少しは良くなるかなーと、フェイは思う。
 そのウルは、幸也やレアル達と同じく雪像作りをしていた。
 「魔道士協会の仕事が忙しくてね、午後からの参加になったよ。」
 などと言いながら、マイペースに風の魔法で雪を削っている。
 「その調子だと、午後からでも十分間に合いそうですね。」
 得意の聖獣を使って雪を削っているのはレアルだった。
 彼のヴィジョン、『密林の猛虎グラフィアス』も雪像作りをした事は無いのだろうが、よくがんばっているようだった。
 「ていうかあんたら、二本の腕を使ってこそ芸術ってもんだろうが。」
 特に芸が無いので、地道に両手を使って雪を削っているのは、芸術的センスの無い医学生だった。
 ほとんどの参加者が聖獣やら魔法を使って雪像作りをしている中、地道な作業をしているのは幸也位だった。
 うちの聖獣、雪像作りなんて出来るわけないしなー…
 まあ、夕方までには何とかするさと幸也は思う。
 その頃、雪合戦の参加者を探すフェイは、会場で二ールを見つけた。
 「お、二ール君!
  雪合戦やろ、雪合戦!」
 フェイは二ールの腕を掴む。
 「え、で、でも僕、アルバイト中なんで…」
 魔道暖気石を売ってる最中なんですと、二ールは言う。
 む、そーなのか。とフェイは少し悩んだが、やがて言った。
 「なら、雪合戦しながら参加者の人にでも売りなよ!
  雪玉が当たったりして体が冷たくなったら、そういうの欲しがる人も多いと思うよ!」
 あ、それもそうだな。と、二ールは思った。
 「それじゃあ、ルーザちゃんの所に行っててね。逃げちゃだめだよ!」
 でも、参加者が居るかは謎だけどねー。という事はニールに伝えずにフェイは走り去った。
 後は、ウル君かな。幸也は来ないって言ってたからしょうがないとして、レアル君は誘ったら来るかな?
 雪像作りの会場へと走るフェイだった。
 「こうなったら、俺も聖獣を呼ぶか。」
 雪像作りの会場では、覚悟を決めた幸也が自分のグリフォンを呼んでいた。
 「お、幸也君も聖獣を使いますか。」
 お手並み拝見しようかと、レアルが幸也のほうを見る。
 「…いや、煮詰まり気味だから、ちょっとモデルにしようかと思って…」
 「なるほど…」
 そういえば、彼はグリフォンを作ると言っていた。
 こうしてマイペースに雪像制作を続ける彼らの所に、フェイがやってきた。
 「幸也!
  雪合戦やろ!」
 「やらん。」
 そんな事してたら、雪像が作り終わらない。
 「そっか。じゃあ、レアルくん!
  雪合戦やろ!」
 やっぱり幸也は誘ってもだめかと思いつつ、フェイはレアルを誘った。
 「いえ、私も…あ、いや。」
 断ろうとしたレアルだったが、思い直した。
 多少雪合戦をしても、夕方までには雪像を作れそうである。
 フェイやルーザの機嫌を取る意味で、参加しても良いかなと思った。
 「あんまり長時間は困りますが、少しくらいなら構いませんよ。」
 レアルが雪合戦なんかやるとは、ちょっと不思議だなと幸也は思った。
 「ありがとう、レアルくん。じゃ、後はウルくんね。」
 そう言うと、フェイはウルの方へ行く。
 「雪合戦、人の集まりが悪いのかい?」
 ウルがフェイに言う。
 「なんでわかったの?」
 フェイが聞き返す。
 「人が集まってたら、わざわざこんな所までフェイが呼び込みに来ないよ。」
 ウルが言う。
 「そりゃ、そーだよね。
  でさ、人の集まりが悪いもんだからルーザちゃんが機嫌悪いの。」
 まあ、それなら仕方ないかとウルは言った。
 せっかくだし、みんなで雪合戦しようと言うフェイの提案も、悪くは無いと思った。
 「ルーザちゃんプライド高いからさ、私が無理矢理ウルくんやみんなを誘った事にしといた方が良いかな?」
 「そうだね。人の集まり悪いから来てやったなんて言ったら、『帰れ』とか言い出すと思うよ。あいつは…」
 こうして、フェイはレアルとウルを連れて、ルーザの所に帰る。
 「がんばれよー」
 俺は雪像をひたすら作るからと、幸也は手を振った。
 ルーザの所にはニールと『箱売り』の二人も来ていた。
 「身内しか集まらなかったわね。」
 言いながらも、ルーザは嬉しそうだった。
 「あの、僕の魔道暖気石をすでに買ってくれた人ばっかり集まってるんですけど…」
 複雑な表情でフェイの方を眺めるのはニールだった。
 フェイは目をそらす。
 「身内しか居ないし、ルールとか無しで適当にやればいいわね?」
 ルーザの言葉に、皆、異存は無かった。
 「それじゃあ、始めましょうか。」
 と、レアルが言うまでも無く、フェイがレアルに向かって雪玉を投げつけた。
 それから、小一時間、雪合戦は続くのだった。
 ルール無しと言ったものの、ウルが強力な風の結界を張って雪玉を防いだり、それに腹を立てたルーザが雪に石を詰めて投げようとしたりしたのは全員一致で禁止になった。
 「アホか、お前ら。二度と付き合わないぞ…」
 結局、一番雪玉をぶつけられた『箱売り』は、ぶつけられた雪が解けたせいで顔がびしょびしょだった。
 「まあ、楽しかったね。みんなおつかれさま。」
 対照的に一番きれいな体をしているのはルーザだった。
 「フェイさん、私に何か恨みでも?」
 憮然とした表情でフェイに言うのは、彼女に集中的に狙われたレアルである。
 彼は『箱売り』の次に濡れていた。
 「気のせいだよ、気のせい。
  あー、ほら、スキンシップ。友好の証ってやつだよ。」
 反撃で相当雪玉を投げられたフェイは、レアル程では無いが濡れていた。
 「風邪引くと良くないから、少し乾かそうか。
  みんな集まって。」
 風の魔法で軽く乾かすと言ったのは、ウルである。
 他の5人はウルの側に寄る。
 「砂の大地を流れる乾いた風よ…」
 ウルの魔法が発動する。
 乾いた暖かい風が5人の周りにしばらく吹き荒れる。
 「さすがに、完全には乾かないけどね。」
 ウルは言ったが、それでも充分に濡れた体を乾かすことは出来た。
 「それじゃあ、雪像作りが終わったら、また遊びましょうか。」
 そう言ってウルに笑うルーザの機嫌は、悪くないようだった。
 雪合戦は解散となり、レアルとウルはルーザと別れて、雪像作りの会場へと戻る。フェイも幸也の雪像でも見ようかと、会場へ向かう。
 「これ、なんて魔物なの?」
 フェイが幸也の雪像を眺めて尋ねる。
 見たことも無い、恐ろしい魔物だ。幸也は何を作っているのだろう?
 幸也は言葉に詰まる。
 確かに、正常な神経をしてる者にはグリフォンには見えないだろう。
 「グ…グリスデンの谷に住む、ドンブロフスクの大虫だ。」
 フェイから目を逸らし、幸也は言った。
 へー、そういうのが居るんだ。とフェイは感心する。
 そんなフェイと幸也にかまう暇も無く、レアルの雪像制作は大詰めだった。
 制限時間の夕方までは、あとわずかである。
 グラフィアスを下げて、細かい部分の仕上げを自分の手で行うレアル。
 「な、なんかレアル君、やけに気合入ってない?」
 「エリストリアさんっていう、恋人の雪像作ってるらしい。
  そりゃ、気合も入るだろうな。」
 「そっか、変な物作ったら悪いしね…」
 フェイと幸也は、今までに見た事の無いような真剣さを見せるレアルの様子をひそひそと眺める。
 基本的に真面目なレアルだったが、今日はさらに一段階違っていた。
 邪魔はしないようにしようと思う、フェイと幸也だった。
 やがて、制限時間がやってきた。
 元々、シビアに得点を競うイベントでは無かったので、それぞれの作品には何らかの賞が贈られた。
 幸也には、
 『グリフォンには見えないで賞』
 レアルには、
 『魂だったら一番で賞』
 ウルには、
 『魔法だけで最初から最後まで作ったで賞』
 などが贈られ、それぞれの賞の名前が付いたプレートが、雪像の前に置かれた。
 主催者の天界人によると、雪像はこれから三日間、広場に飾られるとの事である。
 こうして、雪像制作は終わった。
 「それじゃあ皆さん、また。
  フェイさん、今日は雪玉をたくさんありがとうございました。」
 予定外の雪合戦にも参加させられて、今日は疲れた。と、レアルは言って、帰っていった。
 そろそろ、辺りも薄暗い。
 雪像作りのイベントが終わった夕暮れである。
 大きなイベントは全て終わり、祭りは静かな夜祭へと移行しつつあった。
 ウルもルーザと遊ぶからと、去っていく。
 幸也とフェイが、祭りに残った。
 「行こうぜ。
 一日中、待たせて悪かったな。」
 幸也はフェイに言った。
 「うんうん。
  いいから、早く行こうよ!」
 フェイは答える。
 一通り夜祭を見て回って、周りに明かりがきれいに灯ったら、もう一度雪像の所まで戻って来ようよと、フェイは言った。
 「夜、薄暗い明かりの中で静かに光る雪像ってのも、悪く無いよな。」
 幸也はうなずくと、フェイの手を引いて歩く。
 寒いし、手をつないで歩いても変じゃないよね。
 フェイは幸也の手を握る。
 そういえば、一つ気になる事があった。
 「グリスなんとかの魔物だっけ?
  幸也の雪像。
  どんな魔物なのか、教えてよ。」
 どんなものなのか、フェイはずっと気になっていた。
 『グリフォンには見えないで賞』という、幸也の雪像の前に置かれたプレートの意味も謎だった。
 「いや…それはな…」
 どうしたものかと、幸也は悩む。
 あんまり見栄は張るもんじゃないなと、思った。
 ともかく、2人は夜祭へと歩き始める…

 (完)

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス】
【5007/レアル・ウィルスタット/男/19才/ヴィジョンコーラー】
【0402/日和佐幸也/男/20才/医学生】
【0401/フェイルーン・フラスカティ/女/15才/魔法戦士】

 (PC名は参加順です。)


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■         ライター通信          ■
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 毎度ありがとうございます、MTSです。
 今回は祭り全体の雰囲気を客観的に楽しんで欲しかったので、
 最初と最後以外は全員同じ文章にして、イベントを追ってみました。
 特に、幸也とフェイは最後も同じです…
 また、今回の幸也は、とにかく雪像を作るのかなーと思ったので、
 そう言う風に書いてみました。
 楽しんでいただけたら、嬉しいです…
 ともかく、おつかれさまでした。