<PCクエストノベル(2人)>


ちょっとした冒険 〜一角獣の窟〜

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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】

【0401 / フェイルーン・フラスカティ(フェイ) / 魔法戦士】
【0402 / 日和佐 幸也(幸也) / 医学生】
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●序章
 聖獣界ソーン。
 様々な世界から、様々な異訪者や色々なものが集まる国。そして、雑多な知識や技術、文化が入り混じり共存する国。
 聖都エルザードには、かつてソーンに他世界からの者達が訪れる前から存在していたと言われる、たくさんの遺跡が残っていた。
 その遺跡は、ソーンの創世の謎を探る重要な手掛かりとして目され、こぞって冒険者を募りソーンの創世を探求しようと躍起になっていた。
 ソーンの創世を探るきっかけを持ち帰れば、その者に多大な報酬が贈られる。冒険者達は一攫千金を狙い、遺跡へと仲間と連れ立って探索に出て行った。
 それがこの世界でのいう冒険者たちの『ゴールデン・ドリーム』である。

 聖都エルザード。
 聖獣界ソーンにおいて、最も特異な都にして世界の中心。36の聖獣によって守護されている地域の中の一つ、ユニコーン地域の中に、エルザードはあった。
 その聖都から南西に道を通り、アクアーネ村、そしてクレモナーラ村を抜けて暫くしたところに、一つの洞窟がある。そう、『一角獣の窟』が。
 一角獣の窟は、ユニコーンの化神がいるとも、いないとも噂される、深い自然の洞窟である。その奥はエルフ族の集落と繋がっていると、真しなやかに噂されているが、正しいのかどうか。
 その洞窟の前に、二人の冒険者の姿があった。
 フェイルーン・フラスカティは、ヒュムノスの少女。剣も魔法も操る事ができる魔法戦士だ。‥‥と言えば聞こえはいいが、実は魔法使いになるのを挫折して戦士に転向した結果なだけだ。
 両親とも高名な魔法使いで、自分もそうなる事を期待されていたが‥‥飽きただけだ。

フェイ:「斬ってよけたらいいから、ラクなの。こっちの方が」
幸也:「おいおい」

 日和佐 幸也は、多くの異邦者達と同じく紛れ込んだ地球人だ。元の世界では、とある私大の医学部3回生だった。
 だが、この世界ではそういうものが通用するわけでもなく、医者見習いと名乗っている。

幸也:「間違ってはないだろ?」
フェイ:「そうなの?」

 そんな彼らが、この一角獣の窟を訪れた目的は、暇潰し。

フェイ:「だって、暇なんだもん。危険があるかもしれないけど、平気よ」
幸也:「ま、怪我したら俺が治療してやるよ」
フェイ:「やったぁ!」
幸也:「それをあてにしてたんだろ? いざ、という時には治癒の魔法を頼むな」
フェイ:「(バレてたか)‥‥はーい」

 そして、彼らは洞窟の中へと歩み進んだ。
 この中で待ち構えるものは一体何だろう。その奥に宝はあるのだろうか。暇潰しなのだが、これから始まる二人だけの冒険に、少しだけ胸が踊った。


●一章 暗闇の中で
 洞窟の中は薄暗く、奥へ行けば行くほど、入り口から差し射る光が弱くなる。

幸也:「じゃぁ、カンテラに火をいれるよ」
フェイ:「お願いね」
幸也:「‥‥別に何も変わった事はないな」
フェイ:「そりゃぁ、ただの自然窟だもの。それに、まだ入り口の近くよ。もっと奥に行けば、モンスターは出るかもしれないけど」
幸也:「その時は頼りにするよ」
フェイ:「もうっ。幸也も戦ってよね」
幸也:「はいはい」

 笑いながら二人が更に奥へ歩み進む。自然にできた洞窟の為、道は歩き辛い。時折天井が低くなって腰を屈めたり、岩陰に隠された道を見つけ何気なく入ってみたりする。
 行き止まりが多く、イライラする事もあったが、それはそれで楽しいものであった。
 薄暗い狭い空間に二人だけ。
 その事にふと気づくと、フェイは意識してしまう。

幸也:「どうしたんだ、フェイ?」
フェイ:「うぅん、何でもない」
幸也:「けど、顔が赤いな。‥‥寒いのかい?」

 確かに、洞窟内は夏だというのに、少し肌寒かった。それで熱でも出したのかと、幸也は心配する。
 自分の上着をフェイに羽織らせる、幸也。

フェイ:「ありがとう、幸也」
幸也:「どういたしまして。どうする? もう出てみようか?」
フェイ:「えー。まだ何も見つけてないんだよ。もう少し奥に行ってみようよ」

 自分は何ともないんだから、と、フェイは更に奥に行きたい、と言う。
 その元気な様子に安心して、幸也は頷いた。


●二章 戦いの音
 カンテラの灯りが、無人の洞窟を照らす。
 その灯りに揺れる岩陰で、モンスターか、と二人は警戒するも、何もいない事に気づき安心する。
 そうやって半刻ばかり過ぎた時、奥から聞こえる足音らしき音に気づいた。

フェイ:「あれ‥‥足音‥‥かな?」
幸也:「どうだろう。もしかすると、さっきみたいに水が滴る音かもしれない」

 ここまで来ると水気が強くなり、先程から身体を包む湿気を二人は感じていた。水の気配‥‥多分、一角獣の窟の奥にあるとされる地下湖が近いのだろう。
 その地下湖は、ユニコーンが現れると言われているが、その姿を確認した者はいない。

幸也:「ともかく、念の為、隠れて待ち伏せしよう」
フェイ:「そうね。今度こそモンスターかもしれないし」

 二人が岩陰に隠れて直ぐ、一体の小柄な影が二人の前に姿を現した。
 人間と似たような身体つきをしているが、その高さは子供よりやや高い程度か。だが、まるで剃り上げたかのような頭に、ごつごつした顔つき。窪んだ瞳に、鋭い牙。腰まわりの最低限の衣服しか身に着けておらず、手には棍棒。

フェイ:「あれは‥‥ゴブリンね!」
幸也:「このままやり過ごせるか。‥‥ん? アイツ、立ち止まったな。もしかして、俺達に気づいたか?」
フェイ:「そうみたいね。あ、鼻をひくつかせてる‥‥匂い、私達の匂いに気づいたのね。でも、まだどこに隠れているかわかってないみたい」
幸也:「そうみたいだな。あっ、フェイ!」
フェイ:「こうなったら、先手必勝よ!」

 隠れてた岩陰から飛び出すと、フェイはゴブリン目がけて剣を振り上げた。

フェイ:「えぇぃっ!」
ゴブリン:「ぐぎゃっ!」
フェイ:「やっぱり一撃では倒れてくれないか。今度こそっ」
幸也:「フェイっ、危ない!」

 フェイは二撃目を与えようとするが、それよりもゴブリンの反撃の方が早かった。
 顔目がけて振り上げられた棍棒を、危ないところで回避する。
 空振りで体勢を崩したところに、続けて飛び出した幸也が、その腕を蹴り上げた。

幸也:「どうだ!」
ゴブリン:「ぎゃっぎゃっ」
フェイ:「やった! ゴブリンが武器を落としたよ。これでボコボコにできるね!」
幸也:「まだ、油断は禁物だぜ」
フェイ:「てぇぇぃっ!」
幸也:「まだ、浅い! ‥‥くっ」
フェイ:「大丈夫っ!? 幸也!」
幸也:「大丈夫、掠り傷だ。とぉっ」
ゴブリン:「ぎゃっ!」
フェイ:「早く倒れてよね! あんっ、もぅっ」
ゴブリン:「げっげっ」
幸也:「危なくなったら引け!」
フェイ:「もぅ、許さないんだから!」
ゴブリン:「ぐぎゃぁぁぁっ!」

 傷つけられ怒ったフェイの渾身の一撃がゴブリンを斬り飛ばした。その一撃で倒れる、ゴブリン。
 戦いが終わり、一息つく間、幸也がフェイの傷を見る。

幸也:「‥‥これなら薬草の湿布を貼り付けるだけで良さそうだな。それに、この傷はあとに残らないから安心できるな」
フェイ:「ありがとう。でも、幸也の方が‥‥」
幸也:「大丈夫さ‥‥つっ!」
フェイ:「もぅ、無理しないの! ちょっと待ってね」

 命の水――傷を癒す魔法を使い、フェイは幸也の腕の傷口に手を当てる。微かな光が傷口に触れると、次第に出血が止まった。
 完全に傷は塞がらなかったが、ひとまずはこれで安心だ。

幸也:「ありがとう」
フェイ:「へへっ、どういたしまして♪」
幸也:「さて、行こうか」
フェイ:「え? もう行くの?」
幸也:「いつまでもゴブリンの死体と一緒にいたくないだろ? それに、この死体の血を嗅ぎつけ、他のモンスターが寄ってくる可能性がある」
フェイ:「そうね、行きましょう!」


●終章 湖の奥で見たものは
 ゴブリンが現れたところから少し奥に進むと、一気に目の前が開けた。
 暗闇の中、広大な湖が二人の前に現れた。水にカンテラの灯りが反射する。他にもぼうっとした青白い微かな光が湖を照らす。

フェイ:「うわぁ‥‥」
幸也:「綺麗な光景だね‥‥」

 幻想的な景色に、二人は暫し見とれる。
 これなら、ユニコーンが現れてもおかしくはない。
 そっと、フェイは幸也の肩にもたれかかった。

幸也:「どうしたんだ?」
フェイ:「うん、ちょっと‥‥。ねぇ、もう少しこのままでいさせて」
幸也:「あぁ」

 幸也はフェイの肩を抱き寄せ、近くの岩に座って湖を眺める。
 優しい光が、二人を包む。
 どのくらい時が経ったのだろうか。我を取り戻すと、フェイは顔を赤らめて幸也から飛び離れる。

フェィ:「あ‥‥。ごめんね」
幸也:「いや、別に構わないさ。さぁ、そろそろ戻ろうか。お腹も空いてきたし」
フェイ:「そうだね。あーあ、お宝がなかったのが残念だなー」
幸也:「そんな事ないさ。今、ここにある」
フェイ:「え? どこどこ」

 慌てて辺りを探し回るフェイの様子に、クスッ、と笑う幸也。

幸也:「ここ、さ。この光景は宝石箱に入らないほどの大きな宝だ」
フェイ:「うん、そうだね♪」
幸也:「そして、こうして二人が過ごした時間も」
フェイ:「‥‥うん」

 今度は照れて顔を上げないで、フェイは頷いた。
 二人してその場を離れようとした時、フェイは湖の向こうに、何か動くものが見えたような気がした。

フェイ:「あれは‥‥何だろ?」
幸也:「遠すぎてよく見えないな」
フェイ:「‥‥! ユニコーン!」

 微かに見えた程度だったが、白い毛並みに角がある馬。紛れもなくユニコーンだったように思えた。

幸也:「そうなのかぃ? あ、もう見えなくなったな」
フェイ:「多分‥‥そうだと思う」
幸也:「見間違いかも知れないけど‥‥。ともかく、帰ろう」
フェイ:「エルザードに戻ったら美味しいもの食べようね。私、いい店見つけたんだ♪」
幸也:「お、それは期待していいのかな?」
フェイ:「もちろん!」