<PCクエストノベル(1人)>
殺仕合 〜封印の塔〜
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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】
【0556 / ブロウド・ジョリーロジャー(ブロウド) / ボトムバトラー】
【助力探求者】
【ヴァルス・ダラディオン(ヴァルス) / 剣闘士】
【その他登場人物】
【ケルノイエス・エーヴォ / 封印の塔の塔守】
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●序章
聖獣界ソーン。
様々な世界から、様々な異訪者や色々なものが集まる国。そして、雑多な知識や技術、文化が入り混じり共存する国。
聖都エルザードには、かつてソーンに他世界からの者達が訪れる前から存在していたと言われる、たくさんの遺跡が残っていた。
その遺跡は、ソーンの創世の謎を探る重要な手掛かりとして目され、こぞって冒険者を募りソーンの創世を探求しようと躍起になっていた。
ソーンの創世を探るきっかけを持ち帰れば、その者に多大な報酬が贈られる。冒険者達は一攫千金を狙い、遺跡へと仲間と連れ立って探索に出て行った。
それがこの世界でのいう冒険者たちの『ゴールデン・ドリーム』である。
聖都エルザード。
聖獣界ソーンにおいて、最も特異な都にして世界の中心。36の聖獣によって守護されている地域の中の一つ、ユニコーン地域の中に、エルザードはあった。
そのエルザードからやや南東に延びる道を下り、途中平原の中を進むと、そこに封印の塔と呼ばれる塔があった。
その名が示す通り、所謂、『呪いのアイテム』を封印する為に立てられた塔。
呪いがかかったアイテムは、例え破壊しても自己修復してしまうものが多い。その為、アイテムに宿った邪悪な力を物質化――モンスター化させ、弱らせてから封印を施す。
呪いのアイテムをこの塔に封じ込めるには、そのモンスター化した呪いを倒さなければならない。封印する時は戦いのエキスパートを必要とする。
ブロウド:「呪いが強ければ強い程、モンスターの強さも比例する、か。楽しみじゃねぇか」
左目に眼帯をした、筋骨逞しい体躯の青年が呟いた。
ブロウドはソーンで生き残る為に、マスタースレイブという人を模った機械から降りた。そして、今は生身の肉体を武器とする修行を志している。
マスタースレイブは、この技術者のいない世界で壊れたら修復できない。替えがきかない。
武器だって、銃弾が切れればただの鉄の塊だ。
――元の世界に戻った時の復讐の刃をここで失う訳にはいかない。
自分は帝国軍海兵隊MS機甲部隊にいた。その時に、陰謀と悪意在る作戦で己が属していた小隊が全滅した。
その時に超能力に目覚め、その力で生き延びる事ができた。
しかし、自分達には反逆罪の汚名を被せられていた。
そう、汚名を被せた者達への復讐を果たさない今、この世界で力尽きる訳にはいかない。
亡き友との約束も果たしていないのだから‥‥。
ヴァルス:「まぁ、たまたま私が呪いのアイテムをもっていて幸いだったな」
旅を共にしているのは、ヴァルス・ダラディオン――エルザード最強の剣士と名高い男だ。
ブロウドが闘技場に通っている間に顔なじみになり、親しくしている。ヴァルスに相手をしてもらって、剣の扱いは大分ましになった。
更に剣の腕を磨きたい。それには実戦が一番手っ取り早かった。
だが、闘技場は今は閉鎖されてしまっている。
命をかけた、純粋な闘いの場を求めて冒険者がよく訪れてる酒場で飲んでいる時、面白い話を聞いた。
封印の塔。
その話を耳にして、その塔へ向かおうと決めた。
怪物を倒せないのでは本末転倒なので、ヴァルスに万が一の加勢をして貰う為に声をかけると、快く承諾してくれた。丁度強い呪いのアイテムを持っていて、処分に困っていたところだったらしい。
それに、まともに力を振るう機会がなくて、鈍っていたようだ。
ブロウド:「やっと到着できたな」
ヴァルス:「あぁ、草原に入ってから見えていたのが、辿り着くまでに時間がかかったな」
ブロウドは塔の唯一の出入り口である扉に手をかけると、ゆっくりと押し開いた。
●本章
中に入ると、一人の青年が燭台を手に出迎えてくれた。
彼は、目を引く美貌の青年で、塔守のケルノイエス・エーヴォと名乗った。
ケルノ:「ケルノ、と気軽に呼んでください」
ブロウド:「あぁ、そうさせてもらう。ケルノイエスなんて名前、長くて舌を噛みそうだぜ」
ブロウドの乱暴な物言いに、ケルノは微笑んで「そうですね」と答えた。
見た目は若いが、かなりの高齢だという。
ケルノ:「私はこの塔から出る事ができませんが、それと引き換えに一切老化する事がないのですよ」
ブロウド:「ふぅん、いいじゃねぇか。若いままでいられるなんてよ」
ヴァルス:「こ、こらっ」
ブロウドの害意はないが、塔守の勘に触るようなぶっきらぼうな言葉に、ヴァルスが慌てる。だが、当のケルノは微笑むだけであった。
ケルノ:「ただ、外の世界を知る事ができないのは残念ですね」
瞳にやや影がかかったように見えたが、口調は優しいままであった。その様子にブロウドは気づいたのか、謝る。
ブロウド:「すまなかったな‥‥あんたの苦しみをわかってなくてよ」
ケルノ:「いえいえ、別に気にしてませんよ。それよりも、外の世界――あなた達の世界について教えてもらえませんか?」
まずは休むようにと、客間に案内され、茶を勧められる。
席につくと、ブロウドは自分がいた世界の事について語った。
ヴァルスにも話した事がなかった、元の世界の事を。そして、自分自身の事を。楽しかった事、辛かった事、そして、自分が生き延びる為に力を得ようとする理由を。
ケルノ:「それはさぞ、辛かった事でしょうね」
ヴァルス:「‥‥そうだったのか」
ブロウド:「まぁ、俺の事はもういい。そろそろ用意してもらえないか?」
話が一段落すると、ブロウドはケルノに向かって、持ち込んだ呪いのアイテムを示す。
ケルノ:「じゃぁ、封印の準備を進めますね。二階に封印の間がありますから、そこへと行きましょう」
ブロウド:「ちゃんと充分に戦える場所はあるんだな?」
ケルノ:「えぇ。この塔は結構頑丈な造りになってますから、少々暴れても平気ですよ」
少々、と言うのはどこまでさすのだろうか。どちらにせよ、そんなに気にするものではない。破壊される程強い力を持っているならば、もっと歓迎できるのに。
そのような不穏な思いを口に出さず、ブロウドは封印の間へと向かった。
ヴァルスから手渡されたアイテムを手にして、ケルノが感心して呟く。
ケルノ:「‥‥ほぅ。こんなに強い呪いだと、強力なモンスターがでてきますが、大丈夫ですか?」
ブロウド:「構わない。それなら尚更いい事だ」
頷くと、ケルノはアイテムを地面に置き、聞いた事ない言語で朗々と呪文を唱える。
次第にアイテムが霞がかったように見え、そして巨大な姿を皆の前に現した。
ブロウド:「さて、そろそろ仕合が始まるようだ。俺と『呪い』の殺仕合がな」
ブロウドは剣の柄をギュッ、と握り締めた。後ろにはヴァルス。危険だと判断してくれた時には手助けしてくれる。心強い事だ。
靄が完全に取り払われると、モンスターは――ドラゴンは目前のブロウドに迷いもせず襲いかかった。
ドラゴン:「ガーッ!」
ブロウド:「ちっ」
ドラゴンは木の幹よりも太い腕をブロウドに向け、薙ぎ払う。まともに受け止めると弾き飛ばされかねないので、軽くバックステップして回避する。
ブロウド:「今度はこっちからいくぜぇっ!」
ドラゴン:「グォォォォッ!」
大剣を水平に構え、一気に勢いをつけて突進する、ブロウド。
チャージ。
勢いをつけた突撃は、狙い違わずドラゴンの腕に突き刺さった。
ヴァルス:「ブロウド、上だ!」
後方からのヴァルスの叫びに、ブロウドが見上げるとドラゴンがその顎を大きく開いていた。
嫌な予感がして飛び退ると、炎が先程までいた場所に撒き散らされた。
ドラゴンのファイアーブレスだ。
ブロウド:「こういうものまで使えるとは‥‥」
舌なめずりをし、再度ドラゴンに向かって走り出す、ブロウド。
剣の閃きがその巨大な体躯を幾度となく駆け巡ると、血の飛沫が霧雨のように飛び散った。
ドラゴンが吠え、暴れ回るが、その大きく振り払われる攻撃を素早い身のこなしで避ける。
ブロウド:「はっ! こんなもんかっ!?」
鈍重そうなドラゴンの動きを容易く目で追い、先じて剣を薙ぎ払う。期待外れだったかもしれない。これなら、苦戦を強いられずに勝てそうだ。
だが、その油断した瞬間を狙って、ドラゴンが翼を広げた。
ブロウド:「何っ!?」
ヴァルス:「ブロウドーっ!」
中空からその巨体を使った重い一撃は、小石のようにブロウドの身体を地面に弾き転がした。体勢を整わぬ間に、ドラゴンは追撃すべく襲いかかるが、その前にヴァルスが剣を構えて立ちはだかった。
ヴァルス:「一気に仕留めるぞ!」
ブロウド:「おぅっ」
ヴァルスがドラゴンの注意をひいている間にブロウドは起き上がる。
二振りの刃が鋭く斬光を煌かせた瞬間、長く、深い傷がドラゴンの身体に刻み込まれた。
ドラゴン:「ギャァァーッ!」
最後の一吠えだったか。
大きく叫びを上げると、ドラゴンは力なく床に倒れた。
ケルノ:「さて、終わったようですね」
ケルノが一言二言、何か呟くと、ドラゴンの身体が淡い光に包まれる。そして光が一度大きく膨れ上がったあと、急速に収束された。
その場に残ったのは、元のアイテムの姿――ドラゴンの紋様が刻まれた短剣が転がっていた。
●終章
ケルノ:「また、訪ねられる事を楽しみに待っていますね」
塔の守人は微笑んで二人を見送ってくれた。
呪われた短剣を塔に封じ込め、ブロウドとヴァルスは帰路につく。そう、聖都に戻るのだ。
ブロウド:「あいてて‥‥」
ヴァルス:「まぁ、そんなに大した傷を負わなくてよかったな」
ドラゴンから受けた傷は、ブロウドが『命の水』を使って癒した。全てを癒しきる事はできなかったが、今は軽い打撲傷程度だ。痣が少々残るが、二、三日中には消えるだろう。
ブロウド:「もっと‥‥もっと力をつけなければいけねぇな‥‥」
哀しげな眼差しが見据える先は、遥か遠く、辿り着くまで茨の道を進まなければならなかった。
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