<PCクエストノベル(1人)>


未知の扉は地下に眠る 〜ルクエンドの地下水脈〜

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【冒険者一覧】
【 0524 / ルリ・ツヴァイ / ゴーレム乗り 】

【助力探求者】
【 ルディア・カナーズ / ウェイトレス 】
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◆ プロローグ
 聖獣界ソーン。
 異世界からの冒険者や物資が集まり、雑多な文化技術が入り混じる国。
 ソーンの中心都市である聖都エルザードには、異世界からの来訪者が現れる前から存在していたと言われる多くの遺跡が残っている。
 遺跡はソーンの謎を探る重要な手掛かりとされ、人々はこぞって冒険者を募り創世の謎を探求しようと躍起になっていた。
 ソーンの創世を探るきっかけを持ち帰れば、その者に多大な報酬が与えられる。冒険者達は一攫千金を狙い、仲間と連れ立って遺跡探索に出て行った。
 それが、この世界にひしめく冒険者たちの『ゴールデン・ドリーム』なのである。


 太陽が頭の真上で輝く時間。
 まだ幼さを残した容貌の少女が一人、<白山羊亭>の隅でため息をつきながら食事をとっていた。
 少女の名はルリ・ツヴァイ。歳は十四。身長は年相応で、白く華奢な体に赤い瞳が印象的だ。長い銀の髪は二つにまとめられており、息を吐くたびに背中で揺れる。
 食事が喉も通らないといった様子の少女に、周囲の客は恋わずらいでもしているのかといぶかった。どうしたものやらと皆が囁きあっていると、一人の人物が少女に声をかけた。

ルディア:「ルリちゃん、どうかしたの?」

 ルリは驚いて顔を上げた。視線の先にいたのは見知った少女――ルディア・カナーズだった。ここ<白山羊亭>の看板娘として働く快活なウェイトレスだ。四歳違いだが比較的歳が近いこともあり、ルリは彼女を姉のように慕っている。
 何か悩み事でもあるのかと問いかけるルディアに、ルリは少し考えてから口を開いた。

ルリ:「懐が寂しくなってきたので遺跡探索に行こうと思ったんですけど、一人では心許ないのでどうしようかと……」

 傭兵を雇うとなると金がいる。かといって近所の知り合いをおいそれと遺跡に連れ出すわけにはいかない。遺跡にはどんな危険が待っているかわからないのだ。
 ルリの話を聞くと、ルディアはにっこり笑みを浮かべた。いぶかるルリに、ルディアは悪戯っぽくウィンクしてみせる。

ルディア:「ちょうど休みをもらったところだったの。役には立たないかもしれないけど、ルリちゃんの探索についていってもいい?」
ルリ:「役に立たないなんてとんでもない! ルディアさんにご一緒して頂けるなら、ボクも心強いです」

 そう言うと、ルリは地図を取り出してテーブルの上に広げた。

ルリ:「ルクエンドの地下水脈に<異界の門>があるらしいんですけど、本当かどうかわからないんだそうです。なので、それを確かめに行こうと思って」
ルディア:「了解! じゃあ張りきってお弁当を作らなくちゃ♪」

 こうして、二人の少女はルクエンドの地下水脈へと向かうことになった。



◆ Scene1:洞窟 〜闇と冷気と湿気と苔と〜
 ルクエンドの地下水脈は周囲を河に囲まれた森ばかりの島だ。地下に長く渦巻く水脈があることから、その名で呼ばれている。
 入り口は無数にあり、出口は不明なものが多い。行き止まりや海へと出るもの、地底湖へ出る通路などが存在するが、中には異界への通路もあるとされている。しかし、それが真実かどうか確かめた者は未だに誰もいない。
 ひとまず、ルリとルディアはエルザードに一番近い入り口から探索を始めることにした。

ルリ:「ルディアさん、足下に気をつけて下さいね」

 ルリは持っていたランプで足下を照らしながらルディアをうながした。
 洞窟の空気はひんやりと冷たいが、同時に重苦しい湿気にも満ちている。わずかな光でも成長するらしい。辺り一面を覆うように苔が生えていた。気をゆるめたら足をすべらせてしまいそうだ。

ルディア:「門がある場所はわかってるの?」
ルリ:「いいえ。洞窟の地図を探したんですけど、ここの内部は道が入り組んでいるらしくて、ちゃんとした地図は見つからなかったんです」
ルディア:「なるほど、なかなか厄介ね……。でもそれって、帰り道はどうするの?」
ルリ:「大丈夫ですよ。ボクのゴーレムに辿った道順を覚えさせますから、帰りは迷わずに戻れます」

 ルリは足下にいたミニサイズのゴーレムを抱き上げた。ゴーレム乗りの能力は望んで身につけたものではなかったが、こういった冒険の場では役に立つので重宝している。

ルディア:「じゃあ、とりあえず奥に行きましょうか」
ルリ:「そうですね。まずは先に進みましょう」

 ルリは延々と苔に覆われた道を照らし、足を踏み出した。



◆ Scene2:昼食 〜水の災難〜
 当たり前のことだが、洞窟内では太陽は見えない。これといって時間を計るものを持っていなかった二人は、お腹がすいたところで昼食をとることにした。
 昼食はルディアが作ってきた特製弁当だ。弁当箱の中には色鮮やかな食事が綺麗に詰められている。気の利いたことにデザートの果実や水筒まで用意されていた。

ルリ:「うわぁ。これ全部ルディアさんが準備したんですか?」

 ルリも自分で料理を作るが、なかなかいろどりや盛りつけ方まで気を配ることはできない。

ルディア:「早起きして作ってきたの。遠慮しないでルリちゃんもいっぱい食べてね♪」

 洞窟に入ってから歩き通しだったこともあり、ルリもルディアも休憩がてら昼食を楽しんだ。ランプに照らされた空間で食べる食事は、いつもとは違った味わいがある。
 ルリが水を飲もうとコップに手を伸ばした時だ。持っていた果物が転げ落ちた。二人が座っていた場所はなだらかな坂になっていたので、果物はころころと転がっていく。

ルリ:「わわわ、待って〜!」

 慌ててルリが追いかける。気まぐれに転がる果物を拾い上げようとした時だ。
 足をすくわれたような感覚がした。

ルリ:「へ……?!」

 ざっばーん
 苔に足をすべらせたのだ。ルリは盛大な音を立てて水たまりに落ちていた。
 洞窟内には、湿気による水滴が長い年月をかけて作った水たまりがある。ルリが昼食をとっていた場所からここまではランプの光が届かなかったので、水があることに気がつかなかった。
 水音を聞きつけてルディアがランプを持ってやって来る。

ルディア:「ルリちゃん大丈夫……っわ?!」

 どっぱーん
 ルディアも足をすべらせたようだ。明かりが消えてないところを見ると、ランプは無事らしい。
 しかし水たまりとはいえ、座って腰まで浸かるほどの水量がある。二人ともずぶ濡れだ。

ルディア:「う〜わ〜。風邪ひいちゃうよ〜」
ルリ:「ぼ、ボクも寒いです……」

 二人はガタガタ震えながら煮炊き用のたきぎを組み、暖をとった。
 ようやく服が乾く頃、二人は荷物をまとめると気を取り直して先を急いだ。



◆ Scene3:脱出 〜異界の門〜
 二人は足をすべらせないように慎重に道を選びながら、<異界の門>を目指していた。昼食をとってから大分歩いている。このまま何も見つからなかったら諦めて帰ろうか、と二人は相談し始めていた。
 しかし、その心配は杞憂だったようだ。少しして天井の高い広間のような場所へとたどり着いた。ランプの明かりもこの空間全体に行き届かない。四方は壁に囲まれ、そこから先に道はなかった。
 広間の中央には円を描くように円錐形の岩が並んでいる。岩は大人の身長とと同じくらいの高さがあった。自然にできたにしてはあまりにも整然としすぎている。人工的に作られたものだとしても、一体誰が作ったというのか。

ルリ:「これが、<異界の門>……なんでしょうか?」
ルディア:「門と言うよりは、召還のための魔法陣みたいね」

 てっきり扉のようなものがあるのだとばかり思っていた二人は、目の前に広がる光景をしばし眺めるしかなかった。
 ともあれ、何か情報を持って帰らなければ金にならない。
 ルリは並ぶ岩に近づき、辺りを調査した。ルディアも一緒になって辺りを調べたが、これといって目につくようなものは何もない。

ルリ:「仕方ないですね。とりあえずこういった岩が並んでいたということだけでも、報告しましょう」
ルディア:「これが<異界の門>と決まったわけでもないしね」

 そう言って二人がもと来た道を戻ろうとした時だ。

ルディア:「ルリちゃん! 後ろ!」
ルリ:「……!」

 ルディアの鋭い声に、ルリは背後を振り返った。
 二人の持っているランプに気付いたのだろう。二体のモンスターが岩陰から姿を現していた。今までモンスターに遭遇しなかったこともあり、すっかりその存在を失念していた。
 うかつだった。人の手の届かない闇には、何が潜んでいても不思議ではない。

ルリ:「ミラーイメージ!!」

 ルリは幻覚系の攻撃回避呪文を唱えた。
 呪文を唱えると同時に、ルリの全身にうっすらと文様が浮かび上がる。ルリの体には魔術効果を高めるイレズミが施されているのだ。
 モンスターの振り上げた腕は、ルリの先制呪文によって二人には届かない!

ルリ:「ゴーレム、お願い……ボクに力を貸して!」

 ルリの声に応えるように、モンスターの前に巨大なゴーレムが姿を現した。
 そのすきに、ルリはルディアの手を取って飛翔呪文を唱えている。
 二人はゴーレムにその場を任せ、一目散に出口へと向かった。



◆ エピローグ
 地下水脈から戻った二人は<白山羊亭>に居た。
 あの岩場が本当に<異界の門>なのかはわからないが、それらしいものがあることはわかった。
 「岩場があった」という情報に対しての報酬はわずかなものだったが、ルリにとっては十分な金額を与えられた。これで当面の生活は安泰だ。

ルディア:「あーあ。これじゃあ結局は何もわからないのといっしょだわ」
ルリ:「でも、ボクは凄く楽しかったですよ。ルディアさんと一緒に冒険できて」

 ルリの笑顔にルディアも微笑む。

ルディア:「じゃあ今度は冒険じゃなくて、一緒に料理でも作ってみる?」

 ルディアの提案に、ルリは元気よくうなづいた。

ルリ:「はい。是非お願いします!」