<PCクエストノベル(4人)>


迫り来る恐怖

------------------------------------------------------------
【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】

【1076 / スパイク・ブルースカイズ / 便利屋】
【1112 / フィーリ・メンフィス / 魔導剣士】
【1170 / アンジェリカ / 旅人】
【1193 / アムドゥシアス / 旅人】

------------------------------------------------------------
☆旅立ち〜強王の迷宮へ〜

 聖都エルザードから少し離れた山の上に立つ迷宮、『強王の迷宮』。
 昔々、強王と呼ばれたドワーフ・ガルフレッドによって岩場の地下に作られた迷宮である。
 しかし、作った主のガルフレッドは、その地下に封じ込められていたヴァンパイアによって、忠実なる僕のヴァンパイアとなってしまう。
 ガルフレッド自身は、冒険者の手によって倒された。しかし依然として彼を僕としたヴァンパイアの姿はいまだ見付かっていない。
 各種ギルドが協力して、強王の迷宮、地下四階以降の探索を進めている最近……しかし迷宮を探索に行った者達が、酷い怪我を負って帰って来る。
 帰ってくる者達は言う。激しい傷を負いながら、彼らは興奮しながら。
「灰色の、灰色の丸い物体が、俺たちを襲ってきたんだ!! 俺達、全く打つ手もなかったんだよ! あれはなんなんだってんだ!」
 他にも黒色の物体、白色の物体が襲ってきたという話が出ている。
 少し浮かび上がったところから跳ねたり、転がってきたり、と。
 そして、それらの物体を、人は口々にこういう名前で呼ぶようになる。
 灰色の恐怖・黒い恐怖・白い恐怖。
 ギルドが褒章を用意しても、強王の迷宮へと入ろうとする冒険者は次第に少なくなっていった。
 誰だって、命を奪われたくないものだから。

スパイク:「こういう話を待ってたんだよ。 絶対無理だって? 何を言ってるのさ、俺、こういうのが好みなんだよ。絶対に無理なんて言う事は、この世にありはしないのさ! それに、こういうダンジョンこそ、お宝が眠っているんじゃないかな?」
 今回の冒険の立案者、スパイク・ブルースカイズがそう話す。スパイクの隣に、彼の友人以上恋人未満な関係なアンジェリカが心配そうに見つめていた。
 しかしそんな視線には気づかず、スパイクの顔はきらきらと輝いている。そんな嬉しそうなスパイクの顔を見れば、止める事なんて出来る訳もなかった。
アンジェリカ:「また危ない話に手を出して……もう、私も着いて行くね? 少しくらいなら、魔法が使えるから、きっと貴方の力になれると思うし」
 アンジェリカが微笑んだ。
 そして二人は酒場で一緒に、強王の迷宮へと向かう仲間を探す事にした。すると、二人の冒険者がその話に名乗り出る。
 一人は、肩に真っ白い子供のドラゴンを乗せた黒い服の青年、幻翼人のフィーリ・メンフィス。
フィーリ:「ふぅ〜ん……強王の迷宮で財宝探し? 面白そうだし、俺も一緒に行かせて貰っていいかな? もちろんジークも一緒にだけどさ」
ジーク:「(ばさばさ)きぃ〜?」
 一応子竜のジークは人間の言葉を話せるのだが、初対面という事でジークは賢く鳴いて見せる。フィーリの頭上をくるくると回りながら、しかし。
アンジェリカ:「きゃ〜、かわいい〜♪(むぎゅっ)」
 アンジェリカはジークのかわいさの虜になり、ジークを捕まえてぎゅーっと抱きしめる。ジークはばたばたと羽をばたつかせる。
 もちろんフィーリとスパイクの二人が、慌てて止めに入ったのは言うまでもないが。
 そしてもう一人は、スパイクと同じ便利屋のような仕事をしている悪魔・アムドゥシアス。もちろん悪魔というのは隠して生きてはいるが。
アムドゥシアス:「財宝探しか。 そうだな、遺跡の中にある書物というのも興味があるし、俺も一緒に行かせて貰うとしよう」
 と、読んでいた本を閉じて立ち上がる。その顔は20代後半程の美形。でも彼自身には美形という自覚が無く、何人もの女性を泣かせてきた……とかないとか。
スパイク:「よし……それじゃ向かうとしようぜ、強王の迷宮へ!」
 こうしてスパイク達四人は、山の上に立つ強王の迷宮へと向かっていった。

☆強王の迷宮〜入り口〜

 強王の迷宮前へと到着する冒険者たち。時刻はそろそろ夕方といった所。星空がその手に届きそうな、そんな山の上に迷宮はある。
 人数は四人……と二匹。子竜のジークと、もう一匹はアムドゥシアスの飼っている犬……実際は黒狼が一緒である。ちなみにその黒狼の名前はティオーレ。アムドゥシアスが人間研究の為、と飼っている犬らしい。
 こんな四人と二匹がいては、ゴボルトやゴブリン等の、いわゆる雑魚敵が出てこないのも無理はなかった。
 ともかく、四人と二匹は迷宮前に立っていた。ぽっかりと口をあけた迷宮の前に。
 誰もが迷宮の中から漂う変な力を感じていた。体の奥底から震え上がるような感覚を。特にその力を強く感じていたのは、魔法を使うアンジェリカであった。
アンジェリカ:「何だか……中から強い力を感じるの。 心の奥底から震えが来る様な、そんな感じが……」
 手を自分の胸の前で握る。胸の動悸が治まらなかった。
 アンジェリカの頭を撫でながらスパイクは。
スパイク:「強い力、俺も感じるぜ……こりゃ面白くなりそうだ」
 スパイクには元から危険愛好癖があったのかもしれない。とそんなスパイクと微笑みながらフィーリとジークは。
フィーリ:「ま、別にいいんじゃないの? いろいろな恐怖の噂がこの迷宮にはあるけど、こっちにはジークもティオーレもいるんだし、負けるはずないさ」
ジーク:「きぃぃ〜♪(ばさばさ)」
 ジークは、どうやらこのメンバーの中ではまだ人語を話さないことに決めたらしい。
 そんな中、その震えが来るような力を内心喜んでいたのはアムドゥシアス。心の中で呟いた。
アムドゥシアス:(ふん……これが冒険者達の言っていた恐怖の力というものか。人間というものはこのような力で恐怖を感じるのだな)
スパイク:「どうした? アムドゥシアス」
 スパイクには、彼が呟いているのを悩んでいるように見えたらしい。アムドゥシアスは微笑んで顔を上げる。
アムドゥシアス:「ん? いや、なんでもない……さて、ここに突っ立っていても、時間はただ過ぎ去るだけだ。中へ入るとしようか」
スパイク:「ああ、そうだな。 それじゃ立てた作戦通り、俺とティオーレ(黒狼)が前衛、アンジェリカを間に挟んでアムドゥシアスとフィーリが後衛、ということでいいか?」
フィーリ:「了解、ジークは俺と一緒の所だな?」
スパイク:「ああ、宜しく頼むぜ、ジーク?」
ジーク:「きぃ〜♪(ばさばさ)」
 ジークがフィーリの肩でこくこくと頷き、翼をはためかせる。
 そして四人と二匹は迷宮へと入っていった。

☆強王の迷宮〜序・黒色の恐怖へ〜

 迷宮の地下一階から三階までは明かりが灯っていて、特に気にする必要はないものの、地下四階以降は灯りもなく、スパイクの持ってきた松明を灯して進んでいく冒険者達。
 明かりに灯された迷宮の内部は、異質の部屋ではなく普通によくあるダンジョンの内部とほぼ同じであった。
 更にどんどんと地下へと潜っていく。一番前を進むスパイクが周囲を見渡す。
スパイク:「何にもありゃしないぜ……本当にこの迷宮に、あいつらが言っていた恐怖っていうのはあるのか?」
フィーリ:「まぁ、こんな浅い階層で出てくるわけないし、どんどんと進んで行こうぜ」
 フィーリが後押しをして更に深い階層へと降りて行く……すると。
アムドゥシアス:「止まれ!」
 アムドゥシアスが声を荒げる。恐怖の力を感じたのだ。
スパイク:「アムドゥシアス、どうした?」
アムドゥシアス:「……恐怖が、すぐ近くにいる。 ……皆、注意するんだ」
アンジェリカ:「わ、わかりましたっ」
 四人と二匹が周囲を警戒する。
 次第に自分たちの近くへと迫り来る……転がってくる音。
スパイク:「来るぞっ!!」
 スパイクの声と共に、壁を突き破って転がってくる物体。
 その色は……黒。
フィーリ:「黒い恐怖か!」
 黒い恐怖−−1メートル大の何も変哲もない黒い球体。地面より50cm程度浮き上がったところから冒険者たちに向けて転がり始める。まるでボーリングの球のように。
 そして黒の恐怖はあらゆる魔法攻撃を無効化し、そしてその魔法を倍に増幅して術者へと打ち返すという特殊能力を持っていた。
アムドゥシアス:「スパイク、任せたぜ」
スパイク:「おう! いくぜっ!!」
 黒の恐怖の弱点、それは物理攻撃。
 本体自身はガラスのようなもの……物理的攻撃を受ければ、即座に壊れてしまうのだ。
スパイク:「壊れろぉぉぉっ!!」
 スパイクは見慣れない形の剣を構え、黒の恐怖へと走って行った。異国の剣術……刀術である。
 黒狼のティオーレもスパイクの横を沿うように走る、黒い球の前に走り込み、黒の球の動きを止めていた。
 そして、スパイクの刀が黒い恐怖へと突き刺さると……心地よい音を立てて激しく割れる。
アンジェリカ:「やったね、スパイク!」
スパイク:「ふぅ……別にけがもしてないし、あっけないものだぜ。 こんなのにあいつらはけがを負わされていたのかと思うと、ばかばかしいぜ」
 フィーリが割れた黒の恐怖のかけらを手に取る。……正真正銘、ガラスである。
フィーリ:「……ガラス以外の何物でもないね。でもただのガラス球が意思を持って攻撃してきたと言う事になるのかな? これもここに住む、ヴァンパイアの力なのかな」
アムドゥシアス:「……ヴァンパイアの力は、人間の血を吸って自分の僕とする以外にもあるのものさ」

☆強王の迷宮〜承・白色の恐怖〜

 更に地下深くへと降りて行く冒険者達。
 一本目の松明も尽き、二本目の松明に火をつける。迷宮に入ってから既に数時間が経過している。
スパイク:「もう降り始めて何時間になるんだろうな……ずっと続く階段に嫌気が差してきたぜ……」
 そしてアンジェリカが、ずっと降り続けて気がついたこと。それは、迷宮の1フロアの構成が全く同じ構成のフロアが何度も続いていることに気づく。
アンジェリカ:「……何だか同じ階をぐるぐると回ってるみたいなの。 ……多分、この先の角を右に曲がれば……階段があるんじゃないかしら?」
 アンジェリカの言う通り、角を右に曲がったところに階段はあった。
フィーリ:「……ちょっと聞いたことがあるんだが、ヴァンパイアの魔法なんじゃないか? 幻惑の魔法を使えると聞いたことがあるし」
アンジェリカ:「……そうかもしれないわね。 ……もしくは、次の恐怖を倒さないと、次の階層には進めないのかもしれないわ」
アムドゥシアス:「黒い恐怖は倒した訳だから、次は白い恐怖か、灰色の恐怖だろう」
 そう四人が話していると、アムドゥシアスのティオーレが前方に向かって吼え始める。
 四人がそちらの方に対して構えると……壁を突き破って出てくる球体。
 冒険者たちの方へぴょんぴょんと跳ねて向かってくる。
アンジェリカ:「きゃぁぁっ!」
 その球体の色は白色−−そう、白い恐怖である。
 ボーリングの球のように転がってきたかと思うと、今度はぽんぽんと跳ねるかのようにして冒険者たちを押しつぶそうとしてくる。時折「ぶるんっ」という音を出したりするのが、白の球体の体が柔らかいことを物語っている。
 ……まるで、大きなマシュマロみたいとアンジェリカは片隅に思う。しかしぶよんぶよんと自分たちに向かって跳ねてくるのに、押しつぶされそう、と恐怖を感じる。
スパイク:「こいつの弱点は魔法攻撃だ! アンジェリカ、頼むぜっ!」
 スパイクがそう叫ぶが、アンジェリカはすっかり白い恐怖に怯え、座り込んでいる。
スパイク:「しっかりしろっ! 皆殺されちまうぞ!」
 という言葉と共に、スパイクはアンジェリカを立たせて後ろから後押しする。
アンジェリカ:「わ、わかったわよぉ……」
 半べそをかきながら、アンジェリカは魔法の詠唱に入る。
 魔法を感知して、アンジェリカに対して攻撃してこようとする白い恐怖。
 フィーリとアムドゥシアスが彼女の周りを取り囲む。剣を立ててパリィを行うものの、それによって白い恐怖からは白い有害な煙を放たれ、それが気管へと入り咳き込んだ。
フィーリ:「ゲホっ! く……早く放ってくれっ!」
 その間に、アンジェリカの魔法の詠唱が終わる。
アンジェリカ:「壊れてぇぇーーっ! 『マジックアローッ』」
 アンジェリカの魔法の矢が、白い恐怖へと放たれる。
 その矢は白い恐怖を貫き、壁のほうへと突き抜けていく。
 そして、激しい音を立てて、白い恐怖は崩れていった。

☆強王の迷宮〜結・灰色の恐怖〜

 強王の迷宮、最下層。
 王座があり、そこには誰かが座っていた。
?:「……ふん、なかなかやるな、あの冒険者たちは」
 遠隔地透視で、冒険者たちの姿を見つめる一つの影。
?:「さて……白い恐怖も、黒い恐怖も越えてこれたが、次の灰色の恐怖はどうかな? 誰もが逃げ帰ったあの恐怖……一筋縄ではいかないぞ」
 にたりと笑うその男。その口元からは、鋭い牙が見え隠れしていた。
 そう、彼はこの強王の迷宮の主であるヴァンパイア。
 ガルフレッドをヴァンパイアにしたのも彼であり、その力はここに出てくる恐怖とは比べ物にならないほどに強い力を持つのである。
 今までやってきた冒険者たちを、こうやって遠隔地透視によって見ていたのだ。
?:「……灰色の恐怖よ、冒険者たちを恐怖に陥れるのだ」
 ヴァンパイアの言葉に呼応するかのように、灰色の恐怖が生じ、そして冒険者の所へと転がって行く。
?:「さぁ……見せてもらおう、君たちの力を。 ……強い奴しか、この強王の迷宮には必要無いのだからな……クックック」
 不気味な笑いが、最下層に響き渡った。
 
 白い恐怖を倒し、階段を下りるとその先は違う階層になっていた。
 どうやら、同じ階層を回り続ける魔法は解けたようで、目新しい構成のフロアが次々と広がる。
フィーリ:「やっと同じ階層を繰り返す幻惑の術は解けたようだね。 ……ジークはすっかり疲れてるようだけど」
 ジークはフィーリの肩の上ですっかり寝息を立てている。それはもう幸せそうに。
 かわいい寝顔に、起こす気もなくなってしまうような。
アンジェリカ:「……本当にジークって、かわいいわねぇ……」
 ちょっとその寝顔に見とれるアンジェリカ。
 冒険者たちが更に地下深くへと潜っていく。財宝はいまだ見つからない。
スパイク:「本当に財宝なんてあるのか、不安になってきたぜ……」
アンジェリカ:「そうねぇ……もう、地下200階になるわよ」
 丁寧にマッピングしていたアンジェリカ。マッピングする紙もそろそろ尽きてきて、左上に書いた階層は地下200階を越えていた。
アムドゥシアス:「元々地下に封じられていたヴァンパイアが住んでいた迷宮さ。ヴァンパイアは不老不死、数千年の命を持つ者もいる。そんな奴らが暇をもてあますために、地下数百階の迷宮を作り上げるというのも不思議な話ではないさ」
 アムドゥシアスの言う通り、この地下迷宮はヴァンパイアが暇をもてあまして、魔法で作り上げた迷宮である。
 更に地下へと降りていくと……ヴァンパイアの召還した灰色の恐怖が近づいてくる。
 その気配をいち早く察知したのがフィーリの子竜のジーク。
 フィーリの肩で寝ていたジークが、むくっと目を覚まし、そして羽ばたく。
フィーリ:「ん? どうした、ジーク?」
 周囲をくるくると飛ぶジーク。そしてフィーリの肩に降りて、人語を話す。
ジーク:(……次の恐怖が、表れたみたい)
フィーリ:「本当か?」
ジーク:(うん……僕の勘が、そう告げてるんだ)
フィーリ:「そうか……わかった。ご苦労様、ジーク」
 フィーリはジークの頭を撫でる。
フィーリ:「ジークが、何か感じ取ったみたいだよ。 灰色の恐怖が、迫っているって」
スパイク:「わかった。 ……灰色の恐怖は確か、物理的攻撃と魔法が一緒に決まらなければ倒れないはず。……気合を入れて行こうぜ」
 スパイクの言葉が終わると共に、前方に現れるのは灰色の恐怖。
 灰色の恐怖は、冒険者たちを追い返すかのように転がり始めてきた。
 その動きは素早く、時折浮き上がるものだから今までの二つの恐怖と比べて段違いに難しい物になっていた。
アムドゥシアス:「くっ、素早過ぎて狙いをつける暇が無いぜ!」
 アムドゥシアスが悪態を突くが、それで動きがどうなるというわけでもない。
 次第にばらばらになり始める四人を、スパイクが怒号でばらばらにならないように呼びかける。
スパイク:「拡散するな! 散りじりになれば、それだけ危険が増すぜ」
 スパイクの言葉に、再度終結する冒険者達。
 事態は一向に好転していなかった。
フィーリ:「……! スパイク、階段まで一度引き下がろう!」
スパイク:「どうしてた?」
フィーリ:「階段なら狭い一本道、あいつがちょこまか動き回る横幅は無いんだよ、だからこそ狙いがつけやすくなるはずだ」
スパイク:「……そうだな、皆、いったん引くぞ!」
 灰色の攻撃をパリィでかわしながら、じりじりと下がって行く。有害な煙を吸い込み、咳き込みながらも階段へと足をかける。
 そして、灰色の恐怖が上に戻る階段の通路へと入ってきた時。
スパイク:「いまだっ! 行くぞっ!」
 スパイクと共に、アムドゥシアスが前へと立つ。
 そして、アンジェリカが魔法の詠唱に入り……そして詠唱が完了する。
アンジェリカ:「行くわよーーっ」
 アンジェリカの魔法が灰色の恐怖へと放たれると同時に、左右からアムドゥシアスとスパイクの魁蒼刀が灰色の恐怖へと突き刺さる。
 魔法によって一瞬体が光ったかと思うと、左右から突き刺さる剣によって、灰色の恐怖の体は引き裂かれた。
スパイク:「……よし、やったぜ」
 肩で息をしながらも、スパイク達は無事、三つの恐怖を倒したのだ。

☆終章〜宝の奥の扉〜

 スパイクたちが更に階段を降りていく。
 奥の一つの部屋。そこには少しばかりの財宝が残っていた。目方ではその額、多分1ヶ月くらいは遊んで暮らせる程度の金額になるかと予測出来た。
スパイク:「やったぜ、これで俺達も暫くは遊んで暮らせるぞ!」
 等と喜んでいる中、一人アムドゥシアスは奥にドアを発見した。
アムドゥシアス:「……あれは」
 と、アムドゥシアスがそのドアへと向かい、手をかけると。
?:(……良く灰色の恐怖をも倒したものだ。お前たちの力、良くわかったよ。 人間にしておくのは惜しいくらいだ……どうだ? 私の僕とならないかね? ヴァンパイアはいいぞ、死なんて来ないのだからな)
 アムドゥシアスの頭へと直接話しかけるのは、最下層に住むヴァンパイア。
 しかしアムドゥシアスは。
アムドゥシアス:(いらぬ。 ……俺は悪魔。ヴァンパイアの力など取るに足らん)
?:(ふふふふ……そうか、いい話だと思ったのだがな。 まぁいい、いつかまた逢うこともあるだろうからな)
 と言うと、ヴァンパイアの声は消えて行く。
スパイク:「アムドゥシアス、どうした? 本もあったぜ?」
 スパイクが本を持って、アムドゥシアスに近づく。本の名前は「人間研究」……アムドゥシアスの今一番興味あることであったりするのはなぜだろう。
アムドゥシアス:「……ああ、ありがとうな」
 内心では喜びながらも、苦笑いで受け取るアムドゥシアスであった。
 そして、財宝をあらかたバック等に放り込む。
スパイク:「そろそろ戻るとするか、収穫もあった事だし!」
 スパイクが部屋を出ようとすると。
?:(……君達、力が欲しくないかい? ……欲しくなったら、またここに来るんだ。 ……君達のお越しを、心より待ってるよ……ふふふふ)
 妖艶な声に、一瞬体が固まるスパイク。
 周りの者から「どうした?」と声をかけられ、正気に戻る。
スパイク:(……気のせいだよな、気のせい……)
 とスパイクは自分に言い聞かせて、帰りの道を急いでいった。