<PCクエストノベル(2人)>


虹の雫を探して

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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】

【0401 / フェイルーン・フラスカティ / 魔法戦士 】
【1213 / カレラ・クラウン / 剣士 】


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聖獣界ソーン。
36の聖獣と、それらに呼ばれ選ばれた人々が住む世界。
最初に世界があり、そこから夢に呼ばれ訪れた人々が住まうようになり……
いつしか「夢」はこう、呼ばれる。
「聖獣」と。
そして、この不思議に満ち満ちた世界では今日もまた色々な冒険者達が
冒険を追うべく歩き出す。

…これはそんな、ある日の出来事…。


・序

エルザード城の近く、「白山羊亭」と言う店がアルマ通りにある。
そこに何か面白い話を聞いたように瞳を輝かせる金の髪の少女が一人。
少女の名はフェイルーン・フラスカティ。
魔法戦士の少女である。
フェイルーンの隣りに居た少女も無言のまま、瞳でマスターへと話の続きを促す。

フェイルーン:「虹の雫? なあに、それ?」
白山羊亭マスター:「貴石の谷にある宝石の一つだよ、お守りになるともいわれている…それは美しい宝石だそうだよ」
フェイルーン:「貴石の谷に行けばそれ、取れるの?」
白山羊亭マスター:「勿論。ただ取りに行くには一人じゃ無理だな…あそこの深部は高価な宝石が多いといわれてるが強いモンスターもうようよいるし」
フェイルーン:「大丈夫! カレラちゃんも一緒に連れて行くから!」

フェイルーンのその言葉に隣にいた少女――カレラ・クラウンもこくりと頷く。
無言の了承にフェイルーンもにっこり微笑んだ。

フェイルーン:「じゃ、決まり! お弁当もって、ピクニック気分でレッツ、ゴー!!」
白山羊亭マスター:「や、だからだな…準備は万端に…って、もう行くのか二人とも!」
フェイルーン:「とーぜん♪ 善は急げって何処かの国の言葉でもあったし♪ じゃ、いってきまーす」

にこにこと手を振りながら白山羊亭を後にするフェイルーンと無言でフェイルーンの後をついていく
カレラの後姿に、白山羊亭のマスターは大きな溜息をついた。
「今の子供達は元気だねえ」…と。


・貴石の谷へ

フェイルーン:「お菓子も飲み物持ったし♪ さ、カレラちゃん、入るよっ」
カレラ:「…了解、あ、でも」
フェイルーン:「何?」
カレラ:「強いモンスターには深部に行かないと逢えないのか?」
フェイルーン:「んー…大丈夫、中に入れば一杯強いモンスターに逢えると思うっ」

にこにことフェイルーンが断言するとカレラは漸く微笑んだ、様に見えた。
実際、目的とする者が違う二人である。
カレラは強いモンスターたちに逢いたくて。
そうして、フェイルーンはと言えば――マスターには言ってなかったが、お守りになるということだし
是非その綺麗な石を大事な人にあげたかったから、なのだ。
「ありがとう」と笑ってくれる顔が見たい。
「嬉しいよ」と言ってくれる声が聞きたい、フェイルーンを動かしたのはそんな恋する女の子特有のとても優しい気持ちから。
谷へと一歩を踏み出す。
地下へ続くひやりとした空気が一瞬、肌に触れ…二人とも視線を合わせ不敵に笑う。

フェイルーン:「ふふ、目的のものをとるべくサクッといって、サクッと帰ろうね」
カレラ:「モンスター倒すのも忘れずにな」
フェイルーン:「それはカレラちゃんにお任せするよ? なんてったって私の目的は――虹の雫、なんだから!」

ゆっくりと――ただゆっくりと歩みだす。
目的の物を探すべく。


・探索

フェイルーン:「あれでもないし、これでもないし……」

きょろきょろと色々なところを探し回るフェイルーンに、少しだけ肩で息をしているカレラが冷ややかな瞳で見つめる。
先ほどから襲い掛かる宝石(いし)喰いを倒しているのだが「あ、こっちにも綺麗なのが!」と
駆け回るフェイルーンを庇いながら宝石(いし)喰いへ攻撃しているのだから。
が、フェイルーンは意に介さず谷にある小さな小粒ほどの宝石から様々なものをじぃっと見ている。

カレラ:「だから…まだまだ先だと思うぞ?」
フェイルーン:「でもでも! もしかしたら、こう言うところにもあるかもしれないんだよっ? こう言う積み重ねが良い結果に結びつく――って、誰かが言ってたしっ」

…まあ真理である。
カレラも、その言葉には頷かざるを得ないのだが…だがしかし!

カレラ:「とは言え探しながらお菓子食べるってのもどうかと思うんだが…それはどうなんだ、フェイルーン」
フェイルーン:「やだなあ、カレラちゃん♪ 冒険者は余裕を忘れちゃ駄目だってば♪」
カレラ:「…何かが微妙に違う気がするが」

ぼそり。
思わず聞こえないように呟いてしまうカレラだが多分きっと、大声で言ったとしてもフェイルーンは気にしないだろう。
それくらい先ほどからありとあらゆる場所を重箱の隅をほじくる様に探しているのだから。
が、漸く納得が言ったのかすっくと立ち上がると歩き出した。

フェイルーン:「んー…じゃあもうちょっと先に行こう♪」
カレラ:「先に、だな。今度立ち止まったら置いて行くからな?」
フェイルーン:「酷っ! カレラちゃんってば何時からそんなに冷たくなったの?」
カレラ:「…私の体力温存の為もある、目的の前にあちらこちらで止まられてその度に戦闘では息も切れるしな」
フェイルーン:「…つまりカレラちゃんは一体一体倒すんじゃなくて纏めて一網打尽が好きなのね?」
カレラ:「ま、そう言う事だな」
フェイルーン:「…じゃあなるべくカレラちゃんが大好きな状態に持ち込めるように頑張るねっ♪」
カレラ:「ああ、ありがとう」

…会話がかみ合っているのかかみ合っていないのか良くわからない二人である。
が、これで二人とも相互のコミュニケーションが取れているのだからある意味良いコンビなのかも知れなかった。

――貴石の谷を歩いてから既に時半ば。

深部へと行こうとする二人は、さてどうなるのだろうか?


・虹の雫

先ほどから少しばかりの時間が経った頃だろうか。
漸く二人は貴石の谷の深部に辿り付いた。
そこには、滅多にもぐる人も居ない所為なのか、それとも宝石を目指してきても宝石(いし)喰いに
襲われてしまうゆえなのか、ありとあらゆる色とりどりの宝石があった。

フェイルーンは立ち止まり、一瞬何を探しに来たのだか忘れそうになる。
だが、
(……絶対に探して見つけるんだから!)
決意を新たに先ほどと同じように、だがそれよりももっと懸命にフェイルーンは虹の雫を探し始めた。
宝石を持ち、あれやこれやとまた検分をしている姿に、ざわりざわり、と谷の空気が動き出す――いや、動いて行く。

そして、やってくるのは。
宝石(いし)喰いの団体様ご一行。

カレラは、いつも持っている愛用の剣を抜くとフェイルーンへ叫ぶ。

カレラ:「こっちは任せてさっさと探せ!」
フェイルーン:「勿論! 背後は任せたからちゃきちゃき、ぶった斬ってよ!?」
カレラ:「了解。では……、参る」

武器による斬り攻撃――スラッシング――で、カレラは数体の敵をまずは切り刻む。
これで少しは前にいたも宝石(いし)喰い達を退け、かつ後ろに居るフェイルーンが探せる空間を作り出す事が出来たはずだ――とカレラは後ろを一瞬だけ振り返るとそう、確認した。
大丈夫、フェイルーンはまだ探せる。
フェイルーンの周りに、もうモンスターは居ないのだから。

まだ懲りずにわらわらやってくるも宝石(いし)喰い達へカレラは次にどうすべきかを瞬間的に考えた。
真空の刃であれば。
敵のみを切り裂ける、あの魔法ならばどうだろう?
それとも。
――それとも黒狼を召喚すべきか。
剣を数度、振り上げ連打を決めようと「どちらか」の選択に惑う。
最初は一括での攻撃を考えていただけに、この変更はかなりきつい。

どちらが最良の選択であるのか悩む隙も時間も、ない。
魔法の発動より、召喚よりも剣を動かしている時間が何より早いのだ。
カレラはそのどちらも選択をせずにただスラッシングによる攻撃を繰り返す。
後ろから、声。
もうじきで、この場所も探し終わるのだろうか。

(なら…もう少し持てばよいわけだ)

それにしても本当にこの宝石(いし)喰い達は何処からやってくるのだろう?
まるで持っていくのを止める番人の様だ。

フェイルーン:「もう少し、持たせてねカレラちゃん! あと少しだから!」
カレラ:「ああ、こちらは大丈夫だから心配するな」
フェイルーン:「うんっ。……あ。…あったぁ!!」

大声を上げ、振りかざす「虹の雫」。
確かにその名の通りゆらゆらと光り輝くそれは虹の様に変化し美しい宝石で。

カレラ:「よし! 走れ、フェイルーン!」
フェイルーン:「ええっ? 走るの?! 魔法で一括攻撃は?」
カレラ:「それを最初考えてたが…これだけ見事な宝石を魔法やら何やら使って壊すわけにはいかんだろうがっ」
フェイルーン:「…カレラちゃんって堅実すぎ」
カレラ:「フェイルーンが、おのんきすぎるんだっ! だぁ、速く走ってくれ頼むから!」
フェイルーン:「解ったけど…むぅ…」

ダッシュで走りつつも、自分へ攻撃してくるそれを回避にて避けながら攻撃をカレラに任せたフェイルーンは困惑顔。
何て言うかスパーン!と攻撃してくれるカレラを一目見たかったなあ、などと考えてしまう。

その後カレラはと言うと、無事に最後の一匹を仕留めた時にフェイルーンから「お駄賃だよっ♪」とおやつに持っていったお菓子を少し貰ったり、それを苦笑しつつ食べたりした。

何はともあれ。
二人は無事に「虹の雫」を手にする事が出来た。
虹の雫を手にしたフェイルーンがその後、大事な人へこのアイテムが渡せたかどうかは――また、別の話。

晴れ渡った午後の日の、ある日の話である。


―END―