<PCクエストノベル(4人)>


 魔法の糸?

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 今回の冒険者

【整理番号 / 名前 / クラス】
【 0401/ フェイルーン・フラスカティ/魔法戦士】
【 1083/ カーライル・スターウィード/冒険家】
【 1211/ ルシリア・ヴィアサント/歌手】
【 1213/ カレラ・クラウン/剣士】

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1.エルザードの冒険者達

 世の中の人間全てが、朝から晩まで仕事をしているわけでは無い。
 仕事をしない者は論外としても、例えば、夜に仕事をして昼間に寝る者も居る。
 歌手のルシリア・ヴィアサント(愛称:ルシア)は、ライブの練習こそ昼間に行うが、本番のライブは一般的な人間が仕事をしない時間帯、夜や休日などに行う事が多かった。
 そして、真夜中。いつものように歌い疲れたルシアは、家路に着こうとするが・・・

 フェイ:「ルシアちゃん!クモの巣に行こう!」
 ルシア:「フェイ!?どうしたのよ、あんた、いきなり。クモの巣…ったって、今日はもう遅いわよ?」

 知り合いの魔法戦士がライブハウスの控え室に駆け込んできた。フェイルーン・フラスカティである。どこのクモの巣に行くか知らないが、今日はもう真夜中だ。

 フェイ:「うん、さすがに今日は行かないけどね。何か凄いクモの糸があるらしいの。明日、カール君とカレラちゃんも呼ぶから、みんなで採りに行こうよ!」
 ルシア:「ふーん、よくわかんないけど・・・うん、別に構わないよ?」

 付き合いの良いルシアは、二つ返事でフェイの誘いに応じた。
 だが、もちろん世の中の全ての人間が、ルシアのように二つ返事でフェイの頼みを聞いてくれるわけでは無い。例えば、冒険家のカーライル・スターウィード(愛称:カール)という男が居る。

 カール:「あのな…クモの巣に行こうって、もう少し詳しく事情を話せよ。そうじゃなきゃ、答えようが無いぜ?」

 と、ぶっきらぼうに言いつつも、彼は冒険家である。内心の興味を隠せない様子だった。

 フェイ:「うん、それもそうだね。えーとね・・・」

 フェイはクーガ湿地帯の大蜘蛛が産み出す、魔法の糸を取りに行く計画の事を説明した。

 カール:「クーガ湿地帯…か。確かに面白いけど、フェイのお守りってのは…」
 
 フェイの話を聞いたカールは、何やら考え込んでいるが、冒険の目的自体に不満は無いようだ。

 フェイ:「うぅ、事情を話したら命を賭けて手伝ってくれるって、カール君が言うから話したのに…私の事、騙したのね!」
 カール:「だぁー、一緒に行ってやるから、嘘泣きをやめろ!うっとおしい!」

 と、結局断れない男が、カールだった。

 フェイ:「おしゃ、カール君もゲットしたよ!嘘泣き作戦成功!」
 カール:「ゲットってなんだ、ゲットって…」
 ルシア:「『取得、手に入れる』って意味よ、カール君。というわけで、後はカレラさんね。ま、あの人は『オレより強いヤツに会いに行く!』系の人だから、強そうな魔物が居るって言えば、一緒に来てくれるよね!」
 フェイ:「うんうん。全くだね!」

 ルシアの言う通りだった。

 カレラ:「魔法の糸などに興味は無いが、500年を生きた大蜘蛛とやらには興味がある。…斬ってやるさ。私がな」

 三人の話を聞いたカレラ・クラウンは、無表情に淡々と答える。確かに頼もしいが、無表情な所が少しだけ怖い剣士である。

 フェイ:「カレラちゃん、糸は持って帰るから、あんまり斬っちゃだめだよ!」
 カレラ:「ふふ…任せておけ」
 ルシア:「それじゃあ、四人集まったから行こうか!」
 カール:「行くのはいいけどよ…何か、女ばっかりだな、今回…」
 
 少し、居心地が悪そうにカールが呟くが、誰も相手にしなかった。
 その後、簡単に旅支度を整えた四人はエルザードを後にする。

 2.クーガ湿地帯の探索

 というわけで、四人はクーガ湿地帯にやってきた。
 水分を含んだ地面がどこまでも続き、蒸し暑い空気が漂っている。嫌な雰囲気の湿地帯だ。

 カレラ:「…で、これからどうするのだ?」
 
 とりあえず、目に見える範囲に大蜘蛛の姿は無いぞ。と、カレラが言う。

 フェイ:「まず、おやつを食べよう!」

 フェイが即答して、白山羊亭で仕入れてきた紙袋を取り出した。

 ルシア:「フェイ、おやつ食べても、大蜘蛛は倒せないって…」 
 カール:「ま、大蜘蛛はこの辺の洞窟に住んでるらしいから、まず、それらしい洞窟を探すしか無いな。…いや、おやつを食べてれば蜘蛛を倒せるなら、俺もそうするけど」
 ルシア:「そうだね。まずは大蜘蛛の洞窟を探しだね」
 フェイ:「よし、頑張ろう!」
 カレラ:「…フェイルーン、探索中、お菓子は禁止だ。緊張感が無い奴を見ていると斬りたくなる」
 フェイ:「う、うん、わかった…」

 フェイが紙袋をしまい、四人は大蜘蛛の洞窟を探して湿地帯を歩き始めた。

 ルシリア:「何か、地面がどろどろだね」

 水気を含んだ湿地帯の地面は滑りやすく、靴が泥まみれになる。ルシアは嫌そうな顔をした。

 カール:「ま、湿地帯だからな。みんな、足元には気をつけろよ」
 ルシア:「うーん…やっぱり、女の子の足が汚れるのって問題だよ。ここはカール君が一人で湿地帯を歩き回って、洞窟を探してくるってどうかな?」
 フェイ:「うん、がんばれカール君!後でおやつを分けてあげるよ!」
 カレラ:「…特に異議は無い」
 カール:「お前ら、冒険する気が無いなら帰れ…」
 カレラ:「…おい、それはそうと、最近の地面というのは勝手に盛り上がったり沈んだりする物なのか?」

 おもむろに剣を抜きながら言ったのはカレラだ。
 15メートル程先の地面が、細かく振動しながら波打っている。カレラに言われて、他の三人も身構えた。

 カール:「地面の下に『何か』居るなら、ああいう風に動くと思うぞ」
 カレラ:「なるほど。それなら私にもわかる」
 フェイ:「大蜘蛛かな?」
 ルシア:「地面に潜る大蜘蛛…ってちょっと変だけど、とりあえず、調べてみようよ」
 カレラ:「同感だ。私も手伝う」

 と、ルシアとカレラは黒狼の召還術を使った。

 ルシリア:「あんた、そこの地面の様子、ちょっと見てきてくれる?」
 カレラ:「…行け」

 さっそく、二人は召還した黒狼を蠢いている地面の所へ走らせるが…

 魔物:「ボグシャァァァ!」

 一瞬、地面が開き、体長4メートル程の大きなミミズのような物が飛び出し、瞬く間に二匹の黒狼を飲み込んだ。

 フェイ:「大蜘蛛…じゃ無いよね、あれ」
 カール:「ああ、『泥食い』っていう、湿地帯にたまに居る魔物だな。ああして土に潜っていて、獲物が来ると地面に飛び出してくるんだ。お宝も持って無いし、戦ってもしょうがないんだけどな」
 カレラ:「こっちのやる気が無くても、向こうはやる気らしいぞ。しかも、私達より奴の方が足が早そうだ」

 カレラの言うように、『泥食い』は、そのまま地面を這いつつ、猛スピードで4人の方に向かって来る。

 ルシア:「うぅ、狼君の敵!」

 ルシアが炎の矢を放つが、湿地の底で眠り水分を含んだ『泥食い』の体には効果が薄いようだった。

 フェイ:「よし、剣で斬っちゃおう!」
 カレラ:「…特に異議は無い」

 続いて、フェイとカレラが剣を抜いて走る。カールは動かず、ルシアを護るように彼女の前に立っていた。
 フェイとカレラが『泥食い』に向かって剣を振る。二人の剣が『泥食い』の体に二本の線を刻んだ。
 だが、『泥食い』は構わずに走る。『泥食い』の標的は、最初に自分に炎の矢を放ったルシアだった。

 ルシア:「ちょ、ちょっと、こっちに来るわよ!カール君、何とかしなさいよ!」
 カール:「お前が挑発したんだろうが…炎の矢が通じる相手かどうか、考えろよ」

 …やっぱりルシアを狙ってきたか。と、カールは剣を抜く。

 泥食い:「ダーラッシャァー!」
 
 泥食いがルシアを飲み込もうと口を開く。
 それを予想済みのカールはフェイントを絡めつつ『泥食い』の口の中に飛び込み、剣を突き刺すが、

 カール:「おわー!」

 『泥食い』は、そのまま口を閉じた。
 
 ルシア:「う、うわ、カール君が食べられた!」

 フェイ達があわてて『泥食い』を切りつけて止めを刺し、カールを助け出す。

 フェイ:「カール君が汚い…とりあえず、洗おう!こういう時は魔法だね。『8月の夕立』!」

 フェイが適当な水の魔法を使い、泥食いの体液まみれのカールに瞬間的に雨を降らせた。
 
 カール:「相変わらず怪しい魔法だな。風邪引きそうだ…」

 ずぶ濡れのカールは着替えなど用意しているはずもなく、ぶつぶつ言っていたが、体はきれいになった。他の三人はカールの文句は気にせずに周囲の探索を続ける。そうして蒸し暑さを我慢したり、魔物を退治しながら探索していると、やがて洞窟は見つかった。

 カール:「それらしい洞窟があるな」
 ルシア:「とりあえず、大蜘蛛が居たらラッキーの方向で、行ってみない?」
 フェイ:「だめ!洞窟に入るのは、ちょっと待とう!」

 珍しく、止めに入ったのはフェイだった。

 カレラ:「そうだな。乗り込む前に作戦を立てておいた方がいいな。」
 フェイ:「う、うん。おやつでも食べて休みながら、考えよう!」
 カール:「フェイは、おやつが目的か…」

 図星である。

 カレラ:「…まあ、洞窟に入ってからではそんな余裕も無いか」
 ルシア:「そうね、言われてみれば確かに蒸し暑くて疲れたし、洞窟の入り口でちょっと休もっか?
 
 相変わらず緊張感が無いフェイの事はともかく、小休止を取ろうというルシアの言葉には、他の者も賛成だった。一行は外程は蒸し暑くない洞窟の入り口で、少し休む事にした。

 フェイ:「いっただっきまーす!」

 さっそく、フェイがおやつの紙袋を取り出す。

 ルシア:「…で、大蜘蛛を見つけたら、どうしよっか?」
 フェイ:「剣で斬っちゃおう!」
 カレラ:「そうだな。すぱっと斬ってしまおう」
 カール:「いや、そーじゃなくて、もうちょっと具体的な案は無いのか、お前ら…」

 洞窟の入り口で、作戦会議が続く。

 フェイ:「それじゃあ、魔法も使おう!」
 カレラ:「…特に異議は無い」
 ルシア:「そーね、私が囮になって蜘蛛を引き付けるから、たこ殴りにしちゃおう!」
 カール:「他に作戦も無いし、ルシアの手で行くか?」
 フェイ:「うんうん。『ルシアちゃんが囮になって食べられてる隙に、剣と魔法でたこ殴りにしよう作戦』で行こう!」
 カレラ:「…特に異議は無い」
 ルシア:「いや、別に食べられないってば」

 こうして、話はまとまった。
 少し休んだ後、一行は明かりに灯をつけ、洞窟に踏み込んだ。

 カール:「外の湿地ほどじゃないけど、洞窟の中も滑りやすいな。」

 たいまつを片手に持ちながら、先頭を歩いているのはカールである。冒険家だし男だし、先頭を歩け。と、強制的に決められていた。

 カレラ:「こういう所で戦いになったら、少し不利だな。足場が良い広い場所があったら、そこに大蜘蛛を誘い出そう」
 ルシア:「そうね」
 フェイ:「うん、その辺は囮のルシアちゃんの腕の見せ所だね!」

 女性達の中では、剣を使わないルシアが右手にランタンを持っている。
 カールのたいまつとルシアのランタンと、二つの明かりで洞窟を照らし、一行は進む。
 洞窟在住の大蛇やらスケルトンやらが時折姿を見せるが、肝心の大蜘蛛と糸は、なかなか出てこない。

 フェイ:「ハズレ洞窟だったら、やだよね…」
 ルシア:「あんた、それは言わない約束だよ…」

 蒸し暑くてだるい。そろそろ街に帰りたくなっている今日この頃である。
 
 カレラ:「そうだな…そっちの通路の先でも探して何も居なかったら、諦めて帰るか?」

 カレラが一本の通路を示した。
 不自然に暗い、その通路は、たいまつやランタンで照らしてもほとんど効果が無く、フェイが適当に使った光の魔法も大して効果が無かった。
 おそらく、何らかの魔法の通路だろう。ここは誰かが様子を見てこようと、一行は通路の前で話し合った。

 カレラ:「こういう所に全員で一斉に乗り込んでは、何かの罠で一網打尽の可能性がある。誰かが偵察に行くべきだと思う。私達の中では冒険家としての経験と回避能力があるカーライルが、偵察に行くのに適任だと思うが、どうだ?」
 フェイ:「うんうん。頑張れ、カール君!」
 カール:「行きゃいーんだろ、行きゃ!」

 カールの希望に関わらず話は進んでいく。

 ルシア:「でも、さすがに一人で行くと危ないよ?」
 カレラ:「そうだな。多少なりとも魔法も使えるし、フェイが同行するべきだろう」
 ルシア:「うんうん。頑張れ、フェイ!」
 フェイ:「へ?」
 カール:「よし、行くぞ。フェイ…」
 
 結局、カールとフェイが先行して魔法の闇の通路を見に行く事になった。

 カレラ:「何かあったら、すぐに駆けつける」
 ルシア:「二人とも頑張れ!」
 フェイ:「はーい…」
 カール:「んじゃ、行って来る…」

 フェイとカールは、あまり元気が無い。
 二人の姿を見送ったルシアとカレラはしばらくその場に居たが、

 ルシア:「…今、思ったんだけどさ、『魔法も使える』人より『頭を使える』人の方が、偵察って向いてるんじゃない?」
 カレラ:「魔法が使える=頭が切れるでは無いな、確かに…」

 送り出すだけ送り出して、大丈夫なんだろうかと不安に思い始めた。

 3.魔法の糸

 ルシアとカレラの心配をよそに、フェイとカールは通路を歩いている。
 あまり役に立たないたいまつは消し、フェイの魔法の明かりだけが周囲を微かに照らしていた。

 フェイ:「うぅ、落とし穴とかあったら、嫌だね」
 カール:「だから、地面を軽く叩きながら歩くのさ。こういう時は」

 と、フェイの前を歩いて、剣で地面を突いているカールだったが…

 カール:「ん、な、なんだ!?」
 
 急に、悲鳴を上げた。

 フェイ:「うわ、ど、どーしたの!?」

 フェイがあわててカールに駆け寄り、

 フェイ:「ありゃ?」

 同じように声を上げた。

 カール:「ば、馬鹿、お前まで一緒に引っかかってどうする!」
 フェイ:「それもそーだね…」
 カール:「しかし、参ったな…」
 フェイ:「しょーがないから、カレラちゃん達が来るのを待とう!」
 カール:「そーするか…」

 二人は、何かの罠にかかってしまった。
 その頃、中々帰って来ないフェイ達の事を心配したルシアとカレラの二人は、通路に入る。
 ほとんど周囲を照らしてくれない、頼りないランタンが、それでも頼りだった。
 
 カレラ:「おい、無事か?」
 ルシア:「フェイ!おやつあげるから、出てきなさい!」

 カレラとルシアが二人の事を呼びながら通路を進んでいると、

 カール:「蜘蛛の巣に引っかかった!助けてくれ!」
 フェイ:「あわてて走ってくると、蜘蛛の巣に絡まっちゃうから、あわてちゃだめだよ!あわわ、でも、でっかい蜘蛛が来たから、ちょっと急いで!」

 カールとフェイの声が聞こえてきた。
 どうやら、大蜘蛛の巣に引っかかってしまったらしい。カレラとルシアが急いで駆けつけると、カールとフェイの姿が、不自然な格好で宙に浮いていた。そして、二人のすぐ先には体長5メートル程の蜘蛛が居た。

 カール:「暗い上に、蜘蛛の巣の糸が細くて見えないんだ、気をつけろ!」

 カールは空中で何やらもがいているが、動けないようだ。カレラがウインドスラッシュを放って糸を切ろうとしたが、魔法の真空刃はかき消すように消えてしまう。

 フェイ:「この蜘蛛の巣の糸、やたら丈夫で魔法も全然効かないの!多分、これが魔法の糸だよ!やっと見つかったね!」
 カレラ:「呑気な事を言っている場合じゃ無いな…ルシア、囮になって蜘蛛を引き付けてくれないか?私が糸を何とかしてみる」
 ルシア:「OK!元々、囮になるつもりだったからね!」

 カレラが糸に絡まれないように注意しながら糸を切りつけ、ルシアがミラーイメージを使いながら大蜘蛛の気を引こうとする。

 カレラ:「…なるほど、噂どおりの上質な魔法の糸だな。剣でも簡単には斬れないか」

 苦労しながら大蜘蛛を引き付けているルシアの様子を見ながら、カレラが呟く。囮の為、ルシア自身も蜘蛛の巣に踏み込まざるを得なくて、何本かの糸に絡まれつつあるようだ。

 カール:「こうなったら…カレラ、たいまつの火で蜘蛛の巣を燃やしちまえ!」
 カレラ:「仕方ない…な」

 カレラがたいまつに火をつけて巣に放る。
 瞬く間に蜘蛛の巣が燃え始めた。

 フェイ:「あちゃちゃちゃ!」
 カール:「よ、よし、『ルシアが食べられてる間にたこ殴り作戦』だ!」

 フェイとカールは燃えそうになりながらも蜘蛛の巣から抜け出し、大蜘蛛に向かった。

 ルシア:「ちょ、ちょっと、頭から食べられたら、さすがに死ぬわよ!?」

 気づけばルシアは蜘蛛の巣に絡まれ、食べられそうになっている。そこに、他の三人が駆け込んだ。三人の剣に切りつけられた蜘蛛は、あっさりと通路の奥に逃げ出す。

 カレラ:「…暗闇と魔法の糸で作られた巣は大したものだが、本体はただの大きい蜘蛛だな。歯ごたえが無い」
 カール:「下手に追いかけるのは、危険だな」
 フェイ:「うん。また、見えない蜘蛛の巣とかあったら危ないしね」
 カレラ:「それより、のんびりしていて良いのか、お前達。魔法の糸とやらが燃えてしまうぞ?」
 
 魔法の糸が燃えてしまっては意味が無い。あわてて、蜘蛛の巣の火を消す一行。

 ルシア:「うーん…糸、結構燃えちゃったね…」
 フェイ:「仕方無いよ…疲れたし、もう帰ろっか…」
 カール:「確かに引き際だな」

 フェイやカールは服や髪が焦げているし、見るからに限界だった。一行は洞窟を離れて、エルザードへと帰る事にした。

 4.帰還

 エルザードに帰った一行は白山羊亭で打ち上げをしながら、持ち帰った魔法の糸を四等分する。
 カレラは糸には興味が無いと言ったが、それでは他の者達の気が済まないので、糸は四人で分ける事にした。

 フェイ:「カール君、蜘蛛にも食べられたら、『一日に二回食べられた人』って事でエルザードギネスに載れたのにね!」
 カレラ:「残念だったな、カーライル」
 ルシア:「ほんと、残念」
 カール:「載りたくねーよ、そんなもん…」
 
 そうして、冒険明けの白山羊亭の夜は更けていく。
 後日、糸を服屋に持っていくと、『多少魔法の効力を減らせる魔法の服(魔法の糸含有率1%)』を作れるようなので、フェイはさっそく魔法の服を作った。他の者達が糸をどうしたかは、定かではない。

 (完)