<PCクエストノベル(2人)>


甘いお酒にご用心・・・。
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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】

【1285/オズ・セオアド・コール /騎士】
【1284/エンテル・カンタータ /女騎士】
【 / /】
【 / /】
【 / /】

【助力探求者】
【/】

【その他登場人物】
【/】

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 36の聖獣が加護するこの国、聖獣界ソーンでは、たくさんの冒険者で溢れかえっている。
 宝を探すもの。魔物と戦うもの。冒険というものを楽しんでいるもの。
 一口に冒険と言っても、目的は様々なのだ。

 冒険者もときには休息を必要とする。
 家で一日中休む者もあれば、どこかへ出かけて気分転換する者も・・・。

◇待ち合わせ

エンテル:「オズ!ごめん!待った?」
 大きく手を振りながらエンテルは小走りにオズの元へとかけよる。
オズ:「そんなに急がなくてもいい!」
 一生懸命自分に走り寄るエンテルに向かって声をかけた。

 エンテル、オズ共に「騎士」の称号を持っている。
 小柄なエンテルを見る人は「騎士?」と疑問に思いそうだが、
 きちんと「騎士」の称号を持つ女騎士。
 オズは、ジュカという大変珍しい種族。髪に美しい花を咲かせる。
 感情をあまり表も出さないが、整った容姿をしており、冷静さを際立たせている。
 そんな二人は、なかなかいいコンビで日々冒険していた。
 今日は、オズの提案により、このアクアーネ村で観光ということになった。
 いつもは、騎士らしくそれなりに動きやすさを考慮した服を着ているエンテルも、
 今日は冒険ではなく観光ということで、綺麗な桜色の服を着ていた。
 丈は膝上くらいのワンピース。
 綺麗に体のラインがわかるデザインは快活なエンテルらしかった。
 その色は金髪によく映え、エンテルの可愛らしさを一層引き立てていた。
 オズの方もいつもよりラフな格好だった。
 彼の性格を現すように、クールに纏められている。
 少し息をきらしながらエンテルがオズの隣まで辿り着いた。
オズ:「そんなに走らなくてもいいと行っただろう?」
エンテル:「オズを待たせたくなかったんだもん」
 オズを見上げるように、にっこりと笑う。
 オズはエンテルの乱れた髪を梳いてやる。
エンテル:「あ、ありがとね」
オズ:「さ、行こうか」
エンテル:「うん!」

◇アクアーネ村にて・・・。

 ここアクアーネ村は商業が盛んで、色々な行商が集まる。
 人も多く、いつでも、大通りには人の波ができていた。
 村に入って二人は大通りを歩き始めた。
エンテル:「ちょ・・・ちょっと待って!」
オズ:「ん?エンテル・・・」
 オズは頭を抱えそうになった。
 小柄なエンテルは自分の少し後ろで人波に揉まれ、まるで溺れているように、
 手を上にあげオズに助けを求めていた。
 オズは、力強く、しかし優しくエンテルの手を引いた。
 自分の元へと引き寄せたエンテルを人から護るように腕で庇う。
エンテル:「あーっびっくりした」
オズ:「大丈夫か」
エンテル:「ありがとね」
 助け出してくれたことと、腕で庇ってくれていることに対して
 エンテルは素直に礼を言った。
オズ:「ちょっと大通りから離れよう」
エンテル:「でも、お店がいっぱいあるのは大通りだよ?」
オズ:「しかし、そう人並みに揉まれていては疲れるだろう?」
エンテル:「大丈夫よ!元気が取り得だしね!」
オズ:「わかった。それじゃぁ・・・」
 エンテルの手を取り、繋いだ。
オズ:「これでましになるだろ」
エンテル:「うん!」
 エンテルはご機嫌で歩き出した。
エンテル:「オズ!あの服可愛い!!ねっ!」
 色とりどりに彩られたウィンドウを見ながらエンテルははしゃいでいた。
 オズは、はしゃぐエンテルを静かに見つめる。 
 最初はどうなることかと思ったけれど・・・
 エンテルが楽しそうにしているのを見て安心した。
オズ:「エンテル・・・あそこ」
エンテル:「ん?なぁに?」
 オズが指差す方向を見てみる。
 大通りから少し外れているが、趣のある店が目に入る。
 アンティークを取り扱っているようだ。

エンテル:「なんか、可愛いね。行ってみよう?」
オズ:「あぁ・・・」
 店内に入ると古い物の懐かしい匂いがする。
 店主は客が来たというのに、一瞬視線を向けただけでのんきに本を読んでいた。
 古い人形や皿など、色々な物がごった返している。
 店の中を見て回るエンテルの目にあるものが飛び込んできた。
 白い花をモチーフにした髪留めとイヤリング。
 すかさず、オズに声をかける。
エンテル:「オズ!オズ!こっちに来て!」
 早く早く!と手招きするエンテルの元へとオズは近寄る。
オズ:「どうした?何かいいものでもあったか?」
エンテル:「これ見て。オズの髪に咲く花みたい」
 エンテルの示す花はオズの髪に咲く白い花のように、美しく、可憐だった。
 保存状態がよく、今にも甘い香りがこちらまで香ってきそうだった。
オズ:「本当に似ているな」
エンテル:「ねっ!綺麗でしょ?」
 エンテルはその髪留めとイヤリングに見入っている。
 エンテルの視線はちらり・・・と値段が書いてある紙を見た。
 愛らしい小さな唇は残念・・・というように小さなため息をついた。
 それをオズが気付かないはずがない。
 後ろ髪ひかれるように、他の品物を見に行ったエンテルを確かめながら、
 髪留めとイヤリングを手にとった。
 エンテルに、買ってやろうか?と言っても遠慮するだろうことが分かっていたオズは、
 それをそっと、店主の元へ持って行った・・・。

 二人して店を出た。
エンテル:「あーぁ、あれ可愛かったね。お金貯めようかな」
 名残惜しげだ。
オズ:「なぁ、エンテル・・・」
エンテル:「何?あ!オズ何か買ったんだ!何買ったの?」
 可愛らしく包装されていない紙袋を見つけオズに尋ねる。
 オズは、ガサガサと紙袋を開け、中身を取り出す。
エンテル:「あっ!それ・・・」
 驚いたようにエンテルはオズを見上げる。
 オズはエンテルのそんな様子を気にすることなく、髪留めをエンテルの煌く金髪につけてやった。
 エンテルは嬉しそうに笑っている。
 オズはエンテルの髪を梳いて、イヤリングもつけてやった。
エンテル:「オズ、本当にいいの?貰っちゃって」
オズ:「エンテル以外に誰が使うんだ」
エンテル:「嬉しい・・・。似合う?」
 エンテルの美しい髪にはもちろん栄えるし、イヤリングも普段付けていないが、
 エンテルの可愛らしさを一層、引き立てた。
 それはオズにも分かっているが、「似合っているよ。可愛い」なんて言えるはずもなく・・・。
オズ:「あぁ・・・」
 ぶっきらぼうに一言もらすだけだった。
 エンテルはオズのことがよく分かっているので、その一言で満足したようで、
 ウィンドウを鏡代わりにして、自分の姿を映し、嬉しそうに髪留めを触っている。
オズ:「ちょっと休憩するか?」
 なんだかんだと結構歩きまわった。
エンテル:「うん!」
 元気よく返事し、オズと手を繋ぎ、二人はある場所へ歩いて行った。

◇ちょっと一息・・・。

 二人が歩いて行った場所とは、公園。
 日差しを遮る物はなく、木がほどよう木陰を作って、二人を迎えた。
 二人はのんびりと辺りを見つめる。
オズ:「エンテル、この後どこか行きたいところあるか?」
エンテル:「もうちょっとここでゆっくりしたいな。ねぇ、お酒とか飲んでみたいな」
オズ:「たまにはいいかもしれないな」
エンテル:「じゃぁ、決定ね!」
 今から、夜へと想いを馳せているのか、ニコニコと嬉しそうだ。
 しかし、しばらく経つと、目がトロン・・・と潤んできている。
オズ:「眠いのか?」
エンテル:「うん・・・ちょっと」
 もう、意識が半分睡魔に誘われてしまっていて、答えるのもたどたどしい。
 オズは、自分の膝にエンテルを倒した。
エンテル:「オ・・・オズ?!」
オズ:「少しだけ眠るといい。ちゃんと起してやる」
 驚いたものの睡魔には勝てないらしく、エンテルは小さな寝息を立て始めた。
 オズはエンテルを見下ろしながら、思う。
 今日は、少しでも気分転換になっただろうか。
 エンテルがいくら冒険が好きだといっても、たまには休養が必要だ。
 今日、疲れがとれるといい・・・。
 エンテルは気持ち良さそうに眠っていた。

 二時間くらい経っただろうか。
 日も暮れ、月がその姿を鮮明に映し出そうとしている。
オズ:「エンテル・・・」
 そっと揺り起す。
エンテル:「んっ・・・」
エンテルは身じろいだ。まだ、覚醒しきっていない。
オズ:「酒を飲みに行くんだろう?」
エンテル:「そうだった!」
 エンテルは飛び起きた。が、いきなり体を動かしたので、よろめく。
 オズはそれをそっと支えてやった。
オズ:「そろそろ行こうとか思ってな」
エンテル:「どのくらい眠ってた?」
オズ:「二時間くらいかな」
エンテル:「うわーごめんね」
オズ:「いい。気にするな。それより行こうか。早めに行ったほうが、混まないだろ」
エンテル:「そうだね。行こう行こう!」

エンテル:「うわぁ〜。人がいっぱい!」
 結構早めに来たはずが、かなり人が来ていた。
 とりあえず、二人はカウンターに座った。
 カウンターの奥には数えきれないほどの酒瓶が並んでいる。
エンテル:「どれがおいしいかな?」
 無数の酒瓶を指差しながらオズに尋ねる。
 オズは、酒瓶に視線を巡らせながら、マスターに声をかける。
オズ:「俺は、あれ。それでこの子には甘めのやつ作ってやってくれ」
 マスターは笑顔で頷き、グラスを用意し始めた。
エンテル:「オズは何を頼んだの?」
オズ:「あのシルバーの模様が入ったやつ」
 こちらの世界で言えば、ウォッカのようなもの。アルコール度数がかなりある。
エンテル:「うーん。お酒のことはよくわかんない。おいしいの?」
オズ:「俺はな。エンテルは飲まない方がいい」
エンテル:「きついの?」
オズ:「あぁ」
 そんな話をしている間にできたのか、エンテルとオズの前に酒の入ったグラスが置かれた。
エンテル:「わぁ・・・綺麗・・・」
 エンテルの前に置かれたのは、薄いピンクの色をしたお酒だった。
 オズの前には、エンテルのグラスと比べ、半分くらいのグラスが置かれる。
 小さいグラスということはきついお酒といういい証拠だった。
オズ:「乾杯しよう」
 オズはエンテルの目の前でグラスを掲げる。
エンテル:「乾杯!」
オズ:「乾杯・・・」
 カチンッと耳触りのよい音が鳴る。
 グラスを当てた衝撃で、カラカラン・・・と小さく氷がなった。
 エンテルは少しだけ飲んだ。
エンテル:「甘くておいしい〜!ジュースみたい」
 そう言いながら次はコクコクと勢いよく飲む。
オズ:「エンテル・・・ゆっくり飲め」
 ジュースみたいだと本当にジュース感覚で飲むエンテルに、オズがストップをかける。
 いくら口当たりが良いからと一気に飲むと、そこはお酒。
 侮ってはいけないのだった。
 エンテルは一気に三分の一くらい飲み干す。
エンテル:「ふぅ・・・おいしい」
オズ:「エンテル・・・ゆっくり飲んでくれ。酒なんだから」
 エンテルはそんなにお酒に強くないことを知っているので、オズは心配そうだ。
エンテル:「だ〜いじょうぶ!なんかふわふわして気持ちいい」
オズ:「ほらみろ、一気の飲むから・・・」
 オズはマスターに目配せする。
 マスターはクスクス笑いながら、水の入ったグラスをエンテルに寄越した。
エンテル:「これ・・・なぁに?」
オズ:「いいから、少し飲め・・・」
エンテル:「ん・・・」
 エンテルは素直に水を飲んだ。
 一心地ついたエンテルは思い出したように、オズを見つめる。
オズ:「なんだ?」
エンテル:「あのね、お願いがあるの」
オズ:「うん?」
エンテル:「冒険しているとき、護ってくれなくていいよ」
オズ:「なんでいきなり・・・」
エンテル:「私、強くなりたい。もっと・・・」
オズ:「今でも・・・」
 充分強いじゃないかと言おうとした。
エンテル:「オズを護れるくらいに!」
オズ:「エンテル?」
エンテル:「私ね、思ったんだ。いつもさりげなくオズは護ってくれるよね。
でも、オズがけがをしたら私悲しいもん。だから・・・」
オズ:「強くなりたい?」
エンテル:「そう!だから・・・!」
オズ:「そう言われても・・・俺もエンテルにけがをして欲しくないからな」
エンテル:「もうっ・・・いいの!私がオズを護るの!」
 酔いが回ってきたのか、呂律が怪しくなってきた。
 テーブルをバンバンッと叩いて一生懸命主張をしている。
オズ:「エンテルは充分に強い。だから強くならなくても大丈夫だ」
エンテル:「だいじょうぶ・・・じゃなーいの!」
オズ:「エンテル・・・俺の言っていることが信じられないのか?エンテルは強い」
エンテル:「そうじゃないの!私・・・の・・もんだいなの!」
 このまま言っても平行線で言い合うことになりそうなのだ。
オズ:「・・・わかった。次から心がけるよ。共に戦うように」
エンテル:「・・・ほんと?・・・わかってくれた?」
 お酒で潤んだ目で問い掛ける。
 オズは俺以外と酒を飲ませないと心に誓う。こんな可愛い顔されたら・・・。
オズ:「あぁ、わかったよ・・・」
 強くなりたいとエンテルは言うが騎士の称号を持っているくらいだから、
 本当に強い。
 しかし、自分がけがするのがいやだから・・・そう思ってくれているのが、オズには嬉しかった。
 これ以上強くなられてもな・・・とも思ったけれど。

 エンテルは安心したのか、オズの肩に体を預けている。
 オズは心配になり、エンテルの頬を撫でた。
エンテル:「オズゥ・・・今日は・・・ありがと。嬉しい・・・。ありがとう・・・」
オズ:「あぁ・・・」
 オズは優しく頷いた。
 二人はゆったりとした時間をお酒という甘い道具で楽しく過ごしたのだった。

                                         
                                        END

◇ライターより

ご注文、ありがとうございます。
今回、観光、デートということでこんな形になりました。
いかがでしょうか?
気に入っていただければ嬉しいです。
一作目から日が経ってしまって申し訳ないです。
もう少し、早くあげるつもりだったのですが、書きすぎてしまいまして。

また御意見などありましたら、聞かせていただけると嬉しいです。
次回もよろしくお願いします。

                          古楼トキ