<PCクエストノベル(1人)>


邪魔者〜麗しの瞳〜

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【整理番号 / 名前 / クラス】

【1359/天風 翔 /風使い】

【助力探求者】
【サクラ・アルオレ/精霊戦士】

【その他登場人物】
【アリエル/自称・超有名冒険者】

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◇怪しいライバル◇

???「お待ちなさい!」

突然どこからともなく現れ、翔とサクラの前に立ちはだかり、やたらとふんぞり返って
腰に手を当て、元気一杯に謎の人物は叫んだ。見たところ、冒険者のようだが、
はっきり言って服のセンスは最悪だ。その周囲に漂っている雰囲気だけで、既に
友達、知り合いにはなりたくない人物ナンバーワンだ。

???「アナタ達、お子様のくせに、私と張り合うつもりね!?いい根性だわ!」

よく分からないことを言い出した。ますます、関わりたくないタイプだ。

翔「あの・・・。先を急ぐので失礼します」

お子様呼ばわりされるのも仕方ない年だが、いくら何でも関わらない方がいいのは
翔にも分かる。目を合わせないようにしながら、サクラの手を引いて横を
通り過ぎた。

???「な・・・、ちょっと待ちなさい!アナタ達、この超有名冒険者のアリエル様を
無視しようっていうの!?」

超有名と言ってはいるが、勿論翔もサクラも、こんな危ない人物のことなど知らない。
せっかく通り過ぎたのに、アリエルと名乗った怪しい女は、走って翔たちを追い越し、
また立ちはだかっている。

サクラ「ねぇ・・・何でいきなりこんなややこしいことになってんの?」

突然目の前に現れ、わけの分からないことを言っているアリエルにうんざりしながら、
サクラが翔に耳打ちする。

翔「さぁ・・・?」
サクラ「さぁ、じゃなくて・・・。このままじゃ、ずっと付きまとわれかねないよ」
翔「そうだね。どうしようか」

翔とサクラが小声で話し合っている間も、アリエルとやらは、ずっと一人で何やら
話し続けている。時々高笑いが混じり、非常に鬱陶しい。


◇ライバル?登場前のこと◇

そもそも、翔がこの場所に来たのは、麗しの瞳という魔法を手に入れるためだった。
おおよその場所しか分かっていないため、ひとまず、調査だけでもしてみようと
思い、精霊戦士であるサクラと共にやって来た。

翔「じゃあ、さっき説明した通り、まずは上空から何かないか探してみるから」
サクラ「りょうかーい。変なのが出てきても、ボクが何とかしてあげるから!」
翔「うん、よろしく」

そうして飛行魔法で空からの探索を始め、何かの影らしきものを見つけて地上に
下りて、見逃しのないように、気を配りながら歩いていた。だが、何もないよう
だったので、見間違いだったのかと諦めて再度上空からの捜索を始めようとした
時。サクラが突然厳しい顔になった。

翔「どうしたの?」
サクラ「・・・何かいる。気配がするんだ」

サクラの言葉に、思わず翔も表情がこわばる。何者かと戦闘になった場合のことを
考えて、サクラと来たのだが、実際にそうなりそうになると、さすがに緊張した。
その直後。魔法でも使って身を隠していたのか、突然目の前にこのアリエルとかいう
怪しい人物が現れたのだ。

翔もサクラも、激しく脱力したのは言うまでもない。


◇ライバル?との小競り合い◇

サクラ「この人何とかしないと、調査どころじゃないよ?やっちゃう?」
翔「うーん、でも今のところ何もしてこないみたいだし・・・」
サクラ「敵意・・・ないのかな、これ。何がしたいんだろ」
翔「何なんだろう」

二人でボソボソと相談していると、さすがにアリエルも気付いたらしく、ずっと
続いていた話が止まった。と、同時に、翔とサクラの頭をぽこぽこと殴ってきた。

サクラ「いたっ!ちょっ、何すんの!?」
翔「うわっ、何このおばさん」

翔の発した、おばさんという言葉に反応したのか、アリエルは真っ赤になって
怒り始めた。

アリエル「おばさん!?人の話を聞かずに内緒話した上に、人のことを
おばさん呼ばわり!?冗談じゃないわっ!!」

どうも、翔は言ってはいけない言葉を言ってしまったようだ。
アリエルは何かの呪文の詠唱に入ったのか、ブツブツ言っている。

サクラ「げ、やる気みたいだよ?」
翔「そうだね、仕方ない・・・。やっちゃおう」
サクラ「おっし、任せといて!」

半ば、先ほど殴られた仕返しのつもりなのか、二人ともやる気満々である。

翔「ウィンドスラシュ!!」
アリエル「いっ!?」

アリエルは、翔が放った真空破を、紙一重でかわした。

サクラ「冒険者名乗るだけあって、避けるのはうまいみたいだね!じゃあ、これはどう!?」

と、サクラが攻撃を始める前に、アリエルは逃げ出していた。

サクラ「・・・え?」
アリエル「覚えてらっしゃーい!!」

すごい勢いで走り去りながら、捨て台詞を残していくアリエルに、翔もサクラも目が点に
なっていた。追うことも、背後から攻撃することもできず、ただ立ちつくしていた。

サクラ「・・・なんだったの?」
翔「多分、同じ物探してる人だと思うけど、きっと見つからなくて他の冒険者に八つ当たりしながら、嫌がらせしてるんじゃないかな」
サクラ「そんな感じだろうね〜。弱いみたいだったし。何にしても、嫌な奴!・・・まあ、とりあえず邪魔者はいなくなったし、調査再開、かな?」
翔「うん、そうしよう」


◇ライバル?との戦闘後◇

邪魔者がいなくなってから、調査を再開した二人だったが、それらしきものは何も
見つからなかった。何かある、と思って何度も地上に下りて周囲をくまなく探したが、
小動物の巣だったり、同じ目的でここに来て野営でもした冒険者がいたのか、焚き火の
跡だったりで、めぼしいものが見つからなかった。そうこうするうちに、太陽が沈もうとしている。

サクラ「全然いい物ないね〜。さっきのおばさんが邪魔しなかったら、もっと色々
探せたのに!」

アリエルのことを未だに怒っているのか、サクラがとげのある口調で言う。

翔「うん、でも。あの人、いつからここにいるのかな」
サクラ「さぁ?あの様子じゃ、随分前からいるんじゃないかな。ここは私の縄張りよ、
みたいな感じだったからね〜」
翔「そんな人でも見つけられない物なのかな・・・」
サクラ「うーん・・・。確かに沢山の冒険者が探しに来てるみたいだけど、未だに
見つかったって噂も聞かないしね。さっきのおばさんはともかく、私達よりずっと
経験積んでて腕もいい冒険者も、沢山来てるはずだし」
翔「やっぱりすぐには無理・・・か。仕方ない、今日は諦めるよ」
サクラ「え!?いいの?」
翔「うん。情報が少なすぎるし、一通り空から探したけど何も見つからなかったしね」
サクラ「そだね・・・」
翔「でも、いつかはきっと見つけるよ」
サクラ「うん・・・。キミが見つけたって話が聞けるように、ボクも祈ってるよ!」
翔「ありがとう」

そう言って微笑んだ翔の横顔は、夕焼けに染まってとても可愛いとサクラは思った。
目的の物は見つからなかったが、翔はきっと本当にいつか見つけると、そうも思った。



おわり。