<PCクエストノベル(2人)>


卓球骸骨〜ぴんぽんだっしゅだ!

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【冒険者一覧】
【 1348 / 螢惑の兇剣士・連十郎 / 狂剣士 】
【 1354 / 星祈師・叶 / 陰陽師 】
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 ――いずれの時か夢のうちにあらざる、いずれの人か骸骨にあらざるべし(『一休骸骨』)
 本文とはまったく関係のないエピグラフ、だ。

◇◆◇ 壱 ◆◇◆

 素数のうちもっとも小さなふたつ、2と3をかけあわせる、すなわち6、その6と6を乗じて得られる数字を36。36の聖獣に守護されし国、聖獣界ソーン、なかでもユニコーンの手厚い加護をえた土地の中心部・特異点は、聖都エルザードとなった。
 異文化が錯綜する都市エルザードにおいても、さまざまな物質や思惑がたゆとう昼の街、アルマ通り。
 の、小さな一角。
 手振りの小さな鐘がけたたましく鳴り響く。螢惑の兇剣士・連十郎(けいこくのきょうけんし・れんじゅうろう)がみまもるなか、女は陽気な調子で宣言した。

女:「おめでとうございます。一等ハルフ村温泉旅行券、大当たりです〜♪」
連十郎:「お」

 せっかく流れ込んだ異世界、楽しまにゃ損損、それにこうしていろいろなものを試していれば、いつかほんとうに欲しいものにめぐりあえるかもしれない、と自由気ままに食い倒れをふくめた買い物道中にいそしんでいた連十郎、中途でおしつけられた抽選券をつかってみると、こんな結果が出た。

連十郎:「だってよ、叶。いってみよーぜ」
叶:「おんせん‥‥」

 連十郎とともにアルマ通りを楽しんでいた、星祈師・叶(ほしにいのりし・かない)は、おんせんとはどんなものでしたっけ、とかすかにわずらう。叶と連十郎が生を受けた元の元の世界は中つ国というのだが、そこでの叶は、肉体と魂を切り離されることを余儀なくされた。
 さまよう心は中有をこえると、ソーンで実体へと変貌をとげた。だが代償に、彼は多くの記憶、想い出、夢をうしなった。
 それもまたひとつの物語にて、新しい物語はこれよりはじまる。
 と、いうわけで。
 たしかおんせんって、ペンギンとはちょっとちがいますよね、とほんのり考える叶。記憶喪失でうしなった部分によけいな知識をふきこんだ人間がいるのか、あるいはおのずと接収したのか。
 とりあえず「ん」の部分しかあっていない、ということだけは指摘しておこう。

◇◆◇ 弐 ◆◇◆

 ぴんぽん。

連十郎:「なぁ叶。たしか俺たちが招待された村は、『はるふ』とかいうんじゃなかったか?」
叶:「僕もそうだったと思うんですけれど」

 ぴんぽん。
 ここにたどりつくまでの道中が、何事もなかったとはいいがたい。ユニコーン地帯を離れるととたんに聖獣のまもりはうすくなり、怪物・魍魎の闊歩する危険区域に突入した。
 しかし、彼らもかつてはサムライと呼ばれたもの。たとえ夢うつつの世界であっても、その腕はいっこうに衰えることはない。

連十郎:「おらおら、そこをどきやがれ!」

 炎の剣。躍動する深紅が、五尺二寸の兇刀・饕餮をつつむ。水平にながれる切先、なつかしい、とかんじる。いつかどこかでそっくりなものを、違う、まったくおなじものをまったくおなじ人があやつっていた。ような。
 叶は声をあげた。

叶:「そ、その技にはみおぼえがあります。
叶:「たしか、えんこうきんっ。
叶:「えんじょこーさいにみついだ金額が限度額を超えたとき、家計が火の車になることで、人は魔の炎を身体におろし自由にあやつる、というかあやつられる、と伝説の‥‥」

 ばたん、きゅう。

連十郎:「峰打ちだ、安心せぇ。つか、おまえ、じつは記憶とりもどしてるだろ?」

 正解は『焔法刃(えんぽうじん)』かもしれません。
 なにはともあれ、そういう理由で、叶は戦線離脱。連十郎はひとりで活路を切り開く。

連十郎:「待ってろ、温泉!」

 ――しかし、命を賭してまで『招待』をうけて、収支は正になるのだろうか?
 無粋な疑問は、なしにしておこう。なにはともあれ、彼らはたどりついたのだから(より正確なことをいうと、一部、連十郎が叶をずりずりひきずって入村をはたした)。
 で、その村にあったものは。

 ぴんぽん。

 村の入り口にはためく大きな幟、連十郎も叶も読むことはできないが、ただなんとなく意味をかんじることのできる飾り文字、そこからはこんなふうに読み取れた。

 ♪ ぴんぽん ♪

連十郎:「ちょっと訊いて来る」

 連十郎が手近な村人をつかまえると、村人はあざやかに微笑んだ。

村人:「いらっしゃい、あなたたたちが招待選手の方たちですね!」
連十郎:「はぁ?」

 詳細を教えられるにつれ、連十郎の頬に赤みがさす。

連十郎:「あんの女、はめやがったな!」

 事情は、こう、だ。
 温泉のわく村ハルフでは、年に一度、卓球大会――これが『ぴんぽん』というらしい――がもよおされる。異邦人が温泉文化のひとつの典例としてもちこんだらしいスポーツの大会は、開催当初は大きな話題を呼んだものの、次第に飽きられ、わびしいものとなりはてた。そこで、ハルフ村の村長は一計を案じる、異邦人がもちこんだものならば、異邦人の手によって新たな道を切り開こう、と。
 抽選一等、ご招待券は、その撒き餌だったというわけだ。
 怒り狂う連十郎となだめようもなくおろおろする叶に、村人はおびえながら提案する。

村人:「ええと、参加賞としてもれなく『しばわんわんといっしょに、温泉入湯権』がつきますが」
連十郎と叶、ふたり同時に:「「やります」」

 解決。

◇◆◇ 参 ◆◇◆

 そうして、いろいろなご都合により、ふたりは順当に勝ち進む。しばわんわん強し。というより、『だまされた』ことはアレでソレではあったが、けっきょくふたりともお祭りそのものは嫌いではなかったのだ。いや、はっきりいって、大好き。

連十郎:「くらえ、最終扇一撃必殺!」 ←故意の誤字あり

 力技でボールごと相手をねじ伏せるミスター鉄人卓球・連十郎。
 炎が螺旋を巻く殺人ボール、視覚特殊効果はほどこしておりません。

叶:「はみゅ? えぇと、こんなかんじでいいんですか?」

 天然属性ゆえ攻撃の読めない偶然の魔術師・叶。
 『らけっと』で『ぼぉる』をうって『こぉと』のなかに入れる、の手順をなんとか理解したと思ったら。‥‥とりあえず、式神にボールを運ばせるのはやめなさい。アウトですから。

叶:「ダメなんですか? そんじゃ、太極四天陣でこぉとを暗黒結界に敷き詰めるのはどうでしょうか」

 それは人死にが出る。
 ま、なんとか、ふたりは新たな再会の地へと突入する。決勝戦。

連十郎:「やはり、俺たちは戦わなければいけない宿命だったようだな。叶、遠慮はなしだ」
叶:「連十郎さん、僕ぼく‥‥っ」

 仲のいい役者がふたり、呼吸もぴったり、瞳うるむ叶に連十郎は宣戦布告の人さし指をつきつける。

連十郎:「とりあえず、どっちが勝っても優勝の品は山分けといこうじゃねぇか。俺が勝ったときは、俺が7でおまえが3。おまえが勝ったときは、おまえが4で俺が6だ、分かったな?」
叶:「はいっ」

 待て。特に、叶。一回深呼吸してから、もうちょっとよく考えてみろ。
 サーブアドバンテージ、連十郎。右ペンで表ソフトで、戦型は前陣速攻な連十郎、ひくくかがめた腰、ある一点ではじけるバネのように跳ね上がり、内角をえぐるようにして打つべし!
 ‥‥なんかイヤな予感がしてきたんですが。

連十郎:「このソーンで一等賞になりたいの、俺は。そんだけ!」

 の台詞とともにまっしろのセルロイドボール、地上274cmを時速140kmのゆるやかなカーブ(便宜上、地球標準単位を使用しております)で疾走、テーブルコートにワンバウンドするも炎の弾丸のごとき超高速殺人スマッシュ(「や、やつのボールはあの真っ赤な夕焼けより、俺の流れる血潮よりも、紅かったぜ」「アニキぃ、死なないでくれよ。アニキヒィィィ」なくらい ←わかんねーよ)はおさまることなく。
 やばい。いろんな意味で、やばい。やばさの詳細を語ることすら、すでにやばい。
 いや待てよ。連十郎がこの台詞を口にしたからには、付き合いのいい叶はもしかすると。

叶:「卓球なんて、死ぬまでの暇つぶしだよ」 ←一度すでに死んでますがな

 あぁ、やはり、カット主戦型の右シェイク、F面裏ソフトB面ツブ高な人になってる。さすがだソーン、なくてもいいものまでなんでもありだねっ。

叶:「嘘です、ぜんぜん暇つぶしじゃありません。怖い〜」

 正気にもどった叶は、ラケットをめちゃくちゃにふりまわす。ぐるぐる一周二周三週新曲連続チャートインこのままどこまで独走態勢をたもてるか、じゃなかった。野分みたいな叶のアクションは偶然にもヒットする。ラリー続行。
 会場は興奮のうつぼ、ウナギ目ウツボ科の海魚の総称、全長50〜150センチメートル。体形はウナギに似るが太く、胸びれと腹びれがない、そんな聖獣がまぼろしにながれながれてひとあくび。‥‥誰かいいかげん、それは『坩堝』だとつっこんでくれ。
 シングルス。5ゲームマッチ。試合はなんとなく拮抗し、おたがいに2ゲームを奪取、このゲームをとったほうが勝利、という場面。スコアは10対10のジュース。ひょろん、と叶は先制をとった。ひょろん。さぁなにがあったか読み手よイマジネーションを働かせ(殴打)。
 とにかく、話をすすめる。

連十郎:「ち、ここは‥‥。
連十郎:「ぜったいに負けらんねぇな!」

 叶のサービスを、連十郎は渾身に打ち返す。気が吼える。風がうめく。熱が生まれ、光へと成長する。気体状の白い尾がそのうしろにたなびき、ミクロの世界で酸素との情熱的なタンゴダンス。
 ボールはびみょーに燃えていた。

叶:「ぴゃうっ」

 さすがに、叶の運もつきたようだ。焦げつきたボールの燃えカスが額のどまんなかに命中。これは死ぬ。確実に、死ぬ。うぅん、とひとつうなり、どってん、と背中から、叶は大地に抱きついた。

審判@実は、いた:「ワン、ツー、スリー、フォー‥‥テン!」
ゴング@無生物:「カン、カン、カン、カン」
審判@実は、独身:「ウィナー連十郎!」
螢惑の兇剣士@リングネーム:「おっしゃあ、ベルトはもらったぁっ!」
審判@名前は、レフェリーとか:「な、わけありません。叶さんの勝ちです」
螢惑の兇剣士@源氏名:「(とりあえず、余計なこと書きぃの異世界にむけて蹴りをいれてから、審判にむかって)あ、やっぱ?」
審判@水虫ですが:「どっからどうみても、反則ですよ。それに、これは格闘技ではなく、球技ですから」

 そういうことだ、叶。おめでとうっ!

叶:「う、うぅん‥‥」

 授与式の壇上にあがっても、叶の意識はいまひとつはっきりとしていなかった。体もすこしぼんやりしてた、霊体にもどりかけている。それを準優勝の連十郎がうしろから二人羽織の要領でささえる。
 大会責任者であるというハルフ村村長は、ふたりに少々いんちきっぽく笑いかけた。

村長:「おめでとうございます。優勝の叶さんには賞品として『名誉村民第一号』、また準優勝の連十郎さんには『名誉村民第二号』の称号がおくられます。
村長:「おふたりはこれから、毎年ハルフ村卓球大会の招待選手として参加できる権利を、獲得されました!」

 点灯、天道、また転倒。

叶:「ちょ、ちょっとそれはいりませんからっ」
連十郎:「そうだ。参加賞よこしやがれ!」

 連十郎がむなぐらつかむ村長は、そっけなく首を横に振る。

村長:「やだ」

 その後、連十郎がおどしたりすかしたり、叶が一生に一度のおねがいをしてみたりしたのだが、村長はどうしても聞き入れてくれなかった。けっきょく彼らの本日の獲得品は、大きい優勝カップ、小さい準優勝カップ、ありがたいんだかありがたくないんだかの名誉村民の称号の一号、二号だけだった。
 ちなみに、べつに力の一号、技の二号、とか呼ばれたりしない。

◇◆◇ 肆 ◆◇◆

 かっぽん。ちゃぽーん。

連十郎:「最初からこれだけで我慢しときゃあよかったんだよなぁ」
叶:「気持ちいいですね〜」

 ふたりは『名誉村民』の称号になんとかふくまれていた湯治をたのしむ。さすがにこれくらいの役得はあってもよかろう。やたらにひろめの大浴場、露天風呂。しばわんわんはなしだったが、田舎ならではの枯れた景色や、裸になって全身をつけるという温泉のつくりも、彼らが元いた世界のものにそっくりで、それはそれで楽しかった。
 時刻は、夜。
 月も星もきれいな、夜。

叶:「ふ〜、生き返る心持ってのはこんなものなんですかね〜」
連十郎:「おい、生き返るどころか、魂でかけてるぞ」
叶:「あ、いけない。いけない」

 どうもあの決勝戦以降、叶は魂逃亡が癖になっているようだ。これがおちつくまで、ハルフ村にとどまるのもいいかもしれない。

叶:「湯治で記憶も戻るかな〜」

 湯治、というより、水泳。叶は湖みたいなお湯の面積をいいことに、バタ足煽り足カエル足で、はしからはしへ移動する。卓球の次は、シンクロか? 連十郎は少々恐怖におののく。

連十郎:「仮に治ったとしても、そりゃあ卓球の衝撃だろ‥‥」
叶:「はぁい、連十郎さん。僕を呼びましたか?」
連十郎:「なんでもねぇよ」

 と、じゃれる。他には客もいなかったから、ふたりじめ。無邪気に遊ぶ叶は、ふと、気になっていたことをおもいだした。

叶:「でも、連十郎さん。エルザードにもどらなくってもいいんですか?」
連十郎:「ん? なんでだよ」
叶:「だって、なにか欲しいものがあるっていってたじゃないですか。だから、アルマ通りへお買い物に行ったんじゃなかったでした?」
連十郎:「‥‥あ、あぁ。そんなこともあったな」
叶:「この村より、エルザードのほうが情報も集まりやすそうなんですけれど‥‥」

 叶はいったん水泳を中止する。湯船に肩以上まで沈め、連十郎をみあげる。連十郎は、ほ、と息をはいて叶の視線をうけとめる。

連十郎:「いいんだよ」

 すら、と視線をはずす。まさか、いえるわけもない。連十郎のほんとうに欲しいものが、叶に記憶をとりもどさせるためのなにか、だったなんて。そんなことを叶に心配させるつもりはない、だから金輪際いうつもりはない。
 浴槽のふちに腕を伸ばすと、石の冷感が骨の髄まで忍び込んでくる。頭のてっぺんまでふりきった湯の温感との対照が、極楽へ直行しそうに気持ちいい。彼がそのまま伸びをすると、夜空をみあげる体勢になった。
 ほっこり浮かぶまんまるお月様と、しばし睨み合う。
 ソーンの月も、青かった。

※ ライターより
 書いているうちにちょっと整合性がとれなくなってきましたので、優勝賞品がプレイングでご指摘のものとちがっております。もうしわけございません(汗)
 元の世界にあわせてなるべくカタカナ外来用語は使用しないようにと思ったのですが、ソーンという性質上、やはり無理な場面がいくつか出てきてしまいました。でも、やっぱり楽しかったです。いろいろと。
 で、すいません。卓球もプロレスも、実はぜんぜん分かりません。水泳はまだちょっとだけ分かります(笑) 本文でかなりいいかげんにパロった某映画がもうすぐテレビ放送されるようで、楽しみです。