<PCクエストノベル(2人)>


探し物は何ですか?

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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】

【 1076 / スパイク・ブルースカイズ / 便利屋 】
【 1193 / アムドゥシアス / 旅人 】

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 失われた遺産が眠ると言われている機獣遺跡へと、スパイク・ブルースカイズとアムドゥシアスの二人が来たのは当然財宝目当てだ。
スパイク:「こんな海の底に、こんな遺跡があるんだな」」
アムドゥシアス:「なんだ?スパイクくんは信じてなかったのか?」
 海の底だと言うのに、空気が存在している不思議は余り気にしてないのか、二人はそんな事を言っている。
 この機獣遺跡が発見されたのは、近年の事ではあるがその内部は正に謎と言って過言ではない程、解明されてはいない。多くの者達が訪れ、そして行方を眩ましている場所でもある。
スパイク:「さて、何処に行こうかね」
アムドゥシアス:「あっちが良いと思うから、あっちに行こう」
 入り口を中心とした、放射状に伸びる幾つもの道の一つをアムドゥシアスは指している。
スパイク:「根拠はあるのか?」
アムドゥシアス:「無い。勘だ」
 その即答に、スパイクは言葉を失うのだった……


スパイク:「機獣遺跡?そんな場所があるのか?」
アムドゥシアス:「ああ、学者達の間ではかなり有名な遺跡らしいぞ」
 酒場で遅めの夕食を食べていたスパイクに、アムドゥシアスが声を掛けたのは4日前の事だった。
スパイク:「んで?そこには何があるんだ?」
アムドゥシアス:「知らん」
スパイク:「……」
 余りにも早い即答に、言葉を失うスパイクを尻目にアムドゥシアスは言葉を続ける。
アムドゥシアス:「ついさっき聞いてきた情報だ。知ってる方がおかしいだろう?」
 スパイクは内心、『だったら、最初からそう言えよ』とは想って居たが、何とか言葉には出さずに終ったようだ。だが、些か表情には出ていたのだろう。
アムドゥシアス:「どうしたスパイクくん?顔が変だぞ?」
スパイク:「……何でもない……」
 何とか搾り出すように、それだけ言うと目の前にあるエール酒を飲む。
アムドゥシアス:「どうする?行くか?まだそんなに探索されていない遺跡のようだし、強力な武器とか有るかも知れんぞ?」
スパイク:「ふん、そうだな……まあ、行く価値は有るかも知れんな」
 一瞬だけ、リスクや危険の度合いを考えかけたが、情報がないのだから土台無理な話。スパイクは一気にエール酒を煽った。
スパイク:「幾らなんでも情報が少なすぎるのも拙いからな、少し情報を仕入れてから行くぞ」
アムドゥシアス:「場所ならわかってるぞ?それだけじゃ駄目なのか?」
スパイク:「……」
 この夜、スパイクはアムドゥシアスに冒険の基礎をみっちり教えるのだった……


スパイク:「しかし、不思議な建物だな。こんなのは見た事がない」
アムドゥシアス:「そうなのか?俺にはどうでも良い事だが」
 建物を構成する建材に、冒険者として幾分スパイクは興味あり気だが、アムドゥシアスはどうでも良いらしく興味なさ気に辺りを見回している。
スパイク:「少しは興味持てよ。こんなの、普通に見れないんだからな」
 呆れた様に言いながら振り返るスパイクの視界に、アムドゥシアスが何かのボタンを押しているのが止まった。次の瞬間、スパイクの足元から地面が消える。
スパイク:「なっ!?この馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!!」
 叫びが木霊する中、ゆっくりと床が元に戻り始めていた……

スパイク:「何でお前まで来るかな!?」
アムドゥシアス:「一人じゃ嫌だからに決まってるだろ?」
 然も当然と言う口ぶりのアムドゥシアスの態度に、スパイクは頭を押さえた。少しずつ戻って行った床を見て、アムドゥシアスもまたこの穴に落ちて来たのだ。幸いこの穴の下は通路になっていたから良かった物の、これが穴だけとなれば二人して閉じ込められた所だ。
スパイク:「良いか?お前はもう壁に触るな!絶対だ!」
アムドゥシアス:「なんだか分からんが、取り敢えず分かった」
 全く理解してないと言う表情のまま、アムドゥシアスが頷いている。激しい不安に襲われながらも気持ちを奮い立たせスパイクは通路の先に歩を進めた。


スパイク:「とりゃぁぁぁぁぁ!!」
 気合一閃、閃く剣刃に確かな手応えを感じて、スパイクは一気に剣を振り切った。ガシャガシャと背後で崩れ去る音が響く。
アムドゥシアス:「スパイクくん!後ろだ!」
 その声と同時に一瞬の気配を感じて横に飛びのくスパイク。さっきまでスパイクが居た場所に、激しい衝撃が幾つも重ねられる。
スパイク:「くっ!?こいつ等何なんだ!?まるで気配がない」
 剣を構えながら敵を正面に見据えれば、全身から金属を思わせる光沢を放つ者達がゾロゾロとスパイクとアムドゥシアスの元にやって来ている。手には、見た事も無いような物をそれぞれが持ち、ゆっくりとだが確実に迫ってくる。
アムドゥシアス:「どうする、スパイクくん?このままでは、囲まれてしまうぞ?」
スパイク:「分かってる。何処か一点を突破するしかないだろう」
 見据える先の敵に、隙の一点がまだ見付からない。その時、状況を冷静に分析し伺っているスパイクの横を高速で何かがすり抜けて行った。
スパイク:「へっ!?」
ドカ!!バコ!!ガシャーン!!!!!
 激しい物音と共に前面の敵が吹き飛ぶ。
アムドゥシアス:「道が出来たぞ。さあ行こう」
 スタスタと歩を進めるアムドゥシアスに呆然とするスパイク。その後ろの壁が一枚丸々無くなっていたのを、スパイクは知らなかった。


 その部屋がどんな部屋なのか、二人には分からなかったがただ言える事があるのは凄まじいまでの蔵書が有る事だろう。
アムドゥシアス:「素晴らしい!!こんなに本が一杯あるなんて!!これなら、人間に付いて書かれた本が沢山有るだろうな」
 嬉々として本棚を巡るアムドゥシアスとは裏腹に、スパイクは興味なさそうに辺りを物色している。これと言って、目を見張る物は無い。と言うか、何に使って良いのか分からない物ばかりが辺りには存在しており、価値が有るのか無いのかすら分からない。仕方なく、スパイクはそこで横になると眼を閉じ休息をする事にした。
アムドゥシアス:「スパイクくん。起きろ」
 どれ位寝ていたのだろう、睡眠はアムドゥシアスの声に破られた。
スパイク:「ん?なんだ?」
アムドゥシアス:「大体見終わった、そろそろ帰ろう」
スパイク:「はっ!?冗談だろ?俺はまだ何も手に入れちゃ居ないんだぜ?」
アムドゥシアス:「気持ちはわかるが、もう夕刻に近い時間だ。そろそろ戻らねば、宿も取れないぞ」
 確かに宿がなくなるのは問題だが、スパイクは納得出来ない。
スパイク:「宿がどうした!?何らかの儲けが無いと、金だって払えないんだぜ?」
 スパイクの言葉に、少しだけの溜息と共にアムドゥシアスは荷物を開ける。
アムドゥシアス:「カンパンは水でふやけて食えない。干し肉も、塩水をすって話しにならない……そして此処は遺跡で、食物に成りそうな物は存在してない。そんな中でスパイクくん、君は一日と持つのか?」
スパイク:「……帰るぞ……」
 決断は、早かった。


 帰りの道中も、やはりあの不気味な敵が現れて道を塞いだが、一刻も早い帰路を目指す二人に叶う訳も無く、尽く突破された。数多くのトラップも何のその、二人は入って来た所へと再びやって来た。
スパイク:「おい、準備は良いか?」
アムドゥシアス:「いつでも」
 その言葉を聞いて、スパイクは中央にある天上へと続く梯子を上る。一番天辺迄来ると、辺りを探りそれを見つける。
スパイク:「おい!押すぞ!」
アムドゥシアス:「いいぞ!」
 答えを聞くと同時に、ボタンを押す。すると天上から水が噴出し一瞬にして辺りを浸水させて行く。二人は息を止め、じっと待った。
 室内が全て水に沈むと、天井の一番上が開いた。スパイクはジェスチャーでアムドゥシアスに合図を送るとそこから出て行く。ついでアムドゥシアスが出てくるのを確認すると、スパイクは扉を閉じ、二人は一気に水面まで泳いだ。
スパイク:「ぷは!?はぁ……はぁ……」
アムドゥシアス:「はぁ!?はぁ……はぁ……」
 取り敢えず水面に顔を出した二人は、夕暮れに染まる海を岸に向かい泳ぎ始めた。
 10分掛かるか掛からないか程で岸に着いた二人は、その場に倒れ込む。
スパイク:「はぁ……はぁ……酒飲みたいぜ」
アムドゥシアス:「はぁ……はぁ……その前に湯浴みだろ」
 二人はゆっくりと立ち上がり、街の灯が見える方へと歩き出した……