<PCクエストノベル(1人)>
1人と1匹の大冒険 〜エルフ族の集落〜
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■冒険者一覧
■■番号 / 名前 / クラス
■■1058 / アーリャ / クォーターエルフ
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■序章
聖獣界ソーン。
それは36の聖獣によって守られた不思議な世界。どの世界に住んでいるどんな人でも、訪れることのできる不思議な世界。
その中でも特に発展を遂げているのは、聖獣ユニコーンによって守られているユニコーン地域だ。
その理由は、この世界において最も特異な都にして中心とも言える聖都エルザードが、そこに存在しているからである。
今回の舞台は、エルザードの遥か南西にあるエルフ族の集落。と言っても、たどり着けるかどうかはまだわからない。
目指すのはクォーターエルフの青年・アーリャ。果たして彼はエルフ族の集落にたどり着けるのだろうか……?
■本章
■■1.迷子
アーリャ:「――あ〜〜、なんやねん!」
空に向かって叫ぶ声。それは空気にとけてすぐに消えた。もちろん、返ってくる声などない。
(ホンマに、なんやねんもう……)
思わずその場にしゃがみこんだ。
彼はクォーターエルフのアーリャ。普通の人よりも歳のとり方が遅いので、27歳といえどもまだ少年で通るほどだ。
だが彼にとって問題なのは、そんな外見ではなかった。
「変やなぁ」としきりに呟き。
アーリャ:「俺エルザードでガキ達とかくれんぼしとったはずやのに、なんでこんなとこおるのやろ……」
どう考えてもここは、ユニコーン地域の外れ。エルザードからは結構遠い。
(頑張りすぎたんかなぁ)
――そう、問題なのは彼の精神年齢である。
楽しいことは何でも大好きなアーリャは、いつも子供っぽい言動をするし、子供たちと遊ぶのが大好きだった。そしてもちろん。
(でも負けるのは嫌やからな!)
負けず嫌いである。
彼がたかだかかくれんぼでこんな場所まで来てしまったのが、何よりもそれを証明していた。
アーリャ:「んー……こうしててもしゃーないな。せっかくやから楽しまんと!」
思考を明るく切り替えたアーリャは、元気よく立ち上がった。
(そういや、この辺ってエルフ族の集落がある言う話やったな)
思い出して、目的は決まった。
アーリャ:「よぉっし。探険しながら帰ろかぁ♪」
迷子の落ちこみなどすっかり忘れて、彼は元気に歩き出した。
■■2.シジュ
(何かを探す時の基本は、やっぱこれやろなぁ〜)
とアーリャが考えたのは。
アーリャ:「出てきや〜シジュ!」
アーリャの守護聖獣でもあるケルベロスのシジュだ。もっともこのケルベロスは子犬サイズで、実際この世界を守っているケルベロスとはかなりの差がある(親子みたいなもの?)。
シジュは喚ばれたことが嬉しかったのか、現れるなりアーリャの周りをグルグルと回っていた。
シジュ:「ワンワンっ、ワンっ」
アーリャ:「おいシジュ、そんなに回ったら」
シジュ:「クーン……」
アーリャが言い終わる前に、シジュはパタリと倒れた。目を回したのだ。
アーリャ:「アホやなぁお前……」
(誰に似たんやろ?)
そんなことを考えながら、アーリャは倒れているシジュの傍にかがんだ。
アーリャ:「なぁシジュ、お前一応犬やねんから、匂いでエルフの集落わからへんかな?」
シジュ:「ワゥン?」
アーリャ:「俺クォーターエルフやねん、匂いが少し残っとる思うのやけど」
するとシジュは起き上がり、懸命にアーリャの匂いを嗅ぎ始める。
シジュ:「クンクン……クンクン」
アーリャ:「ちょい待ちや、シジュ。今まで散々一緒におって、俺の匂い憶えてへんのかいなー!」
シジュ:「キャィ〜ン」
アーリャが呆れたように告げると、怒り出すと思ったのかシジュは、アーリャから離れ走り出した。そしてそのまま森の中へと入ってゆく。
(お、わかったんか?!)
アーリャは期待をこめて、シジュのあとを追った。
しかし――シジュがたどり着いた場所は。
アーリャ:「シ〜〜〜ジュ〜〜〜!! お前が食いたいだけやんかぁ」
森の中にある果樹の根元だった。しかも用までたしている。
アーリャ:「ホンマ役立たずな犬やなぁ!」
シジュ:「キャウン?!」
アーリャ:「なんや、やる気か?」
シジュ:「キャウウーン」
アーリャ:「お前犬の癖に生意気やねん」
シジュ:「ワオーン!」
通算何百回目かの、取っ組み合いが始まった。
身体は当然アーリャの方が大きいが、運動能力ではシジュも負けていない。
アーリャ:「くそぉ、やるなぁ〜」
シジュ:「ワワンっ」
ドタンバタンと地面を転げまわって、何度も果樹にぶつかった。2人の(正確には、1人と1匹の)周りは樹から落ちた果実でいっぱいだ。
――コロコロ……
不意にその1つが、2人のいる方へ向かって転がり始めた。しかし2人はまだ気づかずに、取っ組み合いを続けている……(しかも楽しそうに)。
■■3.トラップ
――コロコロ コロコロコロ……
2つ3つと、転がる果実の数が増えてくると。ケンカに夢中になっていた2人もさすがに気づき出した。
アーリャ:「――あれ?」
シジュ:「ワゥ?」
アーリャ:「なんか……変やないか……?」
シジュ:「ワワウ」
――コロコロ ゴロゴロ ゴリゴリ……
転がる音が徐々に、冗談にならない音へと変わってゆく。
アーリャ:「なんやぁ?! なんで果実がこっち転がってくるんや! 坂でもないんやぞ?!」
シジュ:「ワゥ? ……ワワワンvv」
アーリャ:「アホシジュ! 食ってる場合か。逃げるぞ!!」
まるで猫にするようにシジュの首根っこを捕まえて、アーリャは走り出した。
そこからはまるで、アスレチックコースを走っているかのようだった。
木は倒れてくるは、矢は飛んでくるは、ターザンごっこさせられるは、ロープかと思いきや蛇だったり。落とし穴にも2人仲良く幾度となく落ちた。
アーリャ:「ぜぃはぁぜぃはぁ……」
シジュ:「ぜぃはぁぜぃはぁ……」
アーリャ:「シジュ……お前なぁ、犬の癖に俺と同じ息すんなや……」
シジュ:「ぜぜぃははぁぜぜぃははぁ」
アーリャ:「余計高度になってるやん……はぁ……」
アーリャは余計に脱力してその場に倒れこむ。
2人はすっかり疲れきっていた。
アーリャ:「一体エルフ族の集落はどこにあるんやーーっ」
????:「もう来てるじゃないか」
聞こえた声に、アーリャの動きがとまる。
アーリャ:「――シジュ、今何か言うたか?」
シジュ:「ワウ!」
アーリャ:「嘘つけ」
シジュ:「クーン……」
キョロキョロと辺りを見回す2人。
アーリャ:「誰かおるんか?!」
????:「さっきからね」
アーリャ:「!」
クスクスと笑いながら、木の上から何者かが降りてきた。見ると、尖った耳を持っている。
(エルフか?!)
エルフ?:「君たちはずっと、集落の中で遊んでいたんだよ」
アーリャ:「へ?」
エルフ?はわけのわからないことを言う。
エルフ?:「エルフ族の集落は、人間の世界とは逆なんだ。内が外になり、外が内となる」
アーリャ:「? ?」
(なんかようわからんが、集落に来れたってことなんよなぁ?)
アーリャがそう納得しかけた時だった。
シジュ:「――ワゥ! ワワンっワンっ」
シジュが突然吠え始めたのだ。
アーリャ:「シジュ?」
そして何故か、エルフ?に襲い掛かっていった。
アーリャ:「どうしたんやシジュ?! ケンカなら俺が相手になるよって」
シジュ:「ワン! ワワンっ」
アーリャが声をかけても、シジュはエルフ?から離れない。
(シジュ……いつもと違う?)
まさかついに螺子が外れ――いや、いくらアーリャでもこんな時にそんなことは考えなかった(半分くらいは)。
(何か伝えようとしているんか……?)
シジュはまだ、エルフ?に食らいついている。
アーリャ:「! まさか――そいつ、エルフじゃないんやな……?! シジュ!」
エルフ?:「!?」
アーリャが叫んだ瞬間、エルフ?の身体は煙に包まれた。
■■4.本物
エルフ?を包んだ煙は、まだエルフ?の本当の姿を隠していた。その横で。
アーリャ:「やっぱり偽物だったんや……よくやったぞシジュ!」
シジュ:「ワゥン♪」
エルフ:「いや、本物なんですけどね(てへ)」
アーリャ:「――え?!」
喜び抱き合おうとしていた2人は、エルフ?の方から聞こえてきた言葉に耳を疑った。やがてエルフ?を包んでいた煙が晴れ、エルフ?の正体が明かされる――と思ったのだが、そこに立ってたのは先ほどと同じエルフ?で声も一緒だった。
アーリャ:「い、一体どういうことや?!」
シジュ:「ワゥ?!」
エルフ:「つまりですねぇ、さっきのが最後のトラップというわけですよ。偽物に気づかない人は、偽物のエルフ族の集落へ連れて行かれるわけです」
アーリャ:「! じゃ、じゃあ俺たちは……?」
エルフ?改めエルフは、ゆっくりと頷いた。
エルフ:「見事に突破しましたから、本物の集落へ連れて行ってさしあげますよ」
アーリャ:「おおっ」
シジュ:「ワオン!」
2人は手を取り合って喜んだ。
その様子を見て、エルフはクスリと笑う。
エルフ:「そんなに嬉しいんですか。エルフ族の集落で、何かしたいことでも?」
その問いにアーリャは、大真面目に答えた。
アーリャ:「休憩させてぇや。もうへとへとやねん」
シジュ:「クゥゥン……」
そしてシジュのその鳴き声は、哀愁さえ誘った。
■終章
その後の2人(しつこいようですが正確には1人と1匹)がどうなったのか。無事にエルザードへ戻れたのか。
そしてかくれんぼには勝てたのか。
それはまた別のお話――なわけはなく。
本物のケルベロスのみぞ知る……?
■終
■ライター通信
初めまして、こんにちは。伊塚和水と申します。発注ありがとうございました! そして大変お待たせ致しました_(_^_)_
今回可愛いPCさんもさることながら、ノベルの内容もかなり楽しいものでしたので、コメディタッチに頑張ってみましたがいかがでしょうか。
最初シジュのセリフを入れようか入れまいか迷ったのですが、入れてみたらあまりにもはまってしまって、書くのがとても楽しかったです(笑)。あまりに酷い扱いすぎでしたらすみません。加減がよくわからなくて(マテ)。
ご意見ご感想等ありましたらお気軽にどうぞ^^
それでは、またお会いできることを願って……。
伊塚和水 拝
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