<PCクエストノベル(3人)>


漫才コンビとの冒険〜貴石の谷〜
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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】

【1112 /フィーリ・メンフィス /魔導剣士】
【1217 /ケイシス・パール /退魔士見習い】
【1364 /ルーン・シードヴィル /神父】
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◇ジークのおねだり◇

ジーク「ねぇねぇ、フィーリ、いいでしょ?」

宿で夕食を取っていると、ジークが貴石の谷に行きたいとフィーリにねだってきた。
何でも、そこにあるという、永遠の炎という石を冒険で使う明かりにしたいと言うのだ。

フィーリ「貴石の谷か・・・。確か、宝石喰いがいたね。暇つぶしにも丁度よさそうだし、行こうか」

そのためだけにわざわざ行くのは少し面倒だが、フィーリは貴石の谷にいる、宝石喰いに
興味があった。
宝石喰いとは言っても、実際には宝石を取りに来た人間達を喰らう、大きな両生類のような
モンスターである。坑道の最奥にはとんでもない大きさの宝石喰いがいると噂されている。
だが、奥に行けば奥に行くほど高価な石が見つかるということもあり、訪れる冒険者は後をたたない。

石を掘るための道具などを準備して、翌日出発することになった。



◇貴石の谷へ◇

フィーリ「で・・・。ケイシスはともかくとして、どうして神父さんまでいるんですか」

翌日、貴石の谷へ行く準備を整えたフィーリとジークが出かけようとすると、何故か
ケイシスとルーンがいた。

ジーク「ごめん、フィーリ。朝ごはん食べてる時にケイシスとルーンがいて、うっかり
言っちゃったんだ」
フィーリ「そう・・・」

小声で囁きあうフィーリとジークをよそに、ケイシスとルーンは早くも盛り上がろうとしている。

ルーン「いえ、何だか面白そうだったので」
ケイシス「おい、ともかくって何だよ、ともかくって!」
フィーリ「どうせ、石が見つかればいい金になるとでも思ったんじゃないの?」
ケイシス「う・・・」
フィーリ「ほら、やっぱり」
ルーン「まぁまぁ、細かいことは気にしないで仲良くしようじゃありませんか」
ケイシス「うるせぇ!大体、俺はおまえが大嫌いなんだよ、このエセ神父が!」
ルーン「おやおや、嫌われてしまいましたねぇ」

早速盛り上がっている二人を見て、フィーリはため息をつきながら、頭痛を覚えていた。

ジーク「フィーリ・・・。負けちゃ駄目だよ・・・」
フィーリ「ありがとう・・・ジーク」

ケイシスとルーンに、今日の冒険のことを言ってしまった自分を責めながら、フィーリを
励ますジークだった。
気を取り直したのか、まだ言い合っているケイシスとルーンを放置して、貴石の谷へと向かおうとしたフィーリ
だったが、言い合いながらもきっちりと二人は後ろからついて来ていた。

フィーリ「どうせなら、あのままあそこで言い合いしてくれてたら楽なのに」
ルーン「おや、顔色がすぐれませんねぇ。大丈夫ですか?」
フィーリ「・・・なんでもありません、平気です」
ルーン「そうですか、それは良かった。モンスターでも出てきたら、きっちり守ってもらわないと
困りますからねぇ」
フィーリ「そうですね・・・」
ルーン「まあ、いざとなったらバロメッツがいますから、私だけは無傷で帰ってみせますが、皆さんに何かあっては心が痛みますからね」
ケイシス「けっ。よく言うぜ。だからエセ神父だってんだ、おまえはよ!たまには、
『私が盾になって皆さんを逃がしてみせます』くらいのこと言ってみろってんだ」
ルーン「おやおや、私に何かあったら誰が神の御言葉を世に広めるんですか」
ケイシス「おまえがやらなくても、誰かもっとまともな奴がやってくれるよ」
ルーン「私がまともじゃないような言い方ですねぇ」

フィーリ「・・・まあ、漫才だとでも思えば道中の暇つぶしにはなるかな」
ジーク「そうだね。結構面白いかも・・・」

こうして、時折すれ違う、他の冒険者や旅人達から奇異な目で見られている
ルーンとケイシスとは他人のふりをしながら、フィーリとジークは谷に着くまで
二人の会話で暇つぶしをすることになった。二人には聞こえないように、たまに
小声で突っ込みを入れるのがジークは楽しかったようだ。


◇魔法の石はどこだ?◇

フィーリ「ここだね」
ジーク「うわぁ・・・。結構ボロそうだね」
フィーリ「モンスターが棲みついてから、廃棄されてるからね。人の手もあまり入ってないし」
ジーク「崩れたりしないのかな」
フィーリ「絶対崩れない・・・とは言えないね」
ケイシス「大丈夫だって。もし、崩れてきても俺が防いでやるからさ」
ルーン「おぉ、これは頼もしい」
ケイシス「おまえは潰れてろ!」
ルーン「これは手厳しいですね」

またも漫才を始めたケイシスとルーンを置いて、フィーリはとっとと谷に入ることにした。

フィーリ「ふーん・・・。廃棄されたとは言え、まだ人が来るからかな。明かりが
ちゃんと点いてるね」
ジーク「ほんとだ・・・。前に誰か来た人がいたのかも」
フィーリ「そうだね。そうかもしれない」
ジーク「それにしても、あの二人、そろそろ静かにならないかな?」
フィーリ「ほんと、よく飽きないね」

谷に入ったフィーリを追って、ケイシスとルーンも漫才をしながら入ってきていた。
漫才、と言っても、正確にはケイシスがルーンに遊ばれているようにしか見えないのだが、ケイシス本人は気付いていないようだ。

フィーリ「明かりもあるし、地図が見やすいのは助かったね・・・」

そう言って、どこからともなくフィーリは一枚の地図を取り出した。

ジーク「フィーリ、地図なんて持ってたの?」
フィーリ「勿論。どこかの誰かと同じ無計画な性格じゃないからね」
ケイシス「おい、おまえそれどういう意味だ!?」
フィーリ「誰もキミのことだなんて言ってないよ。気にしすぎじゃない?」
ケイシス「くっ・・・」

悔しそうに黙るケイシスを見て、ルーンがケイシスで遊ぶ理由も少し分かる気がした
フィーリだった。

フィーリ「えーと・・・。この地図によると、石があるのは結構奥の方みたいだね」
ジーク「うわ〜、意外と広いんだね」

フィーリとジークのやり取りを聞いて、ケイシスとルーンもフィーリの持つ地図を
覗き込む。地図はかなり大雑把ではあったが、一応全ての通路が書かれているようではあった。

ルーン「この地図、大雑把ですね・・・」
フィーリ「宝石が掘られていた頃に、ここで働いていた人が作った地図を何度も、沢山の人が書き写しながら残してるものですからね。それが冒険者向けに売られている訳です」
ルーン「なるほど。簡略化されていくのは仕方ないですかね」
フィーリ「簡単に手に入って、道が分かればいいですから」

こうして、フィーリの持つ地図を頼りに、一行は奥へ奥へと進んで行った。


◇宝石喰い◇

フィーリ「なかなか会わないね・・・。宝石喰い」
ケイシス「あ?んなもん、会わない方がいいだろ」
フィーリ「いや・・・ジークは石目当てだけど、俺はそっち目当てだからね」
ケイシス「何だそりゃ・・・。物好きだなぁ、おまえも」
ジーク「あれ?フィーリ、今何か・・・」
フィーリ「ん?どうかした?」
ジーク「ううーん、何か動いたような気がしたんだけど。気のせいだったみたい」

ジークは気のせいだと思ったのだが、気のせいでも何でもなく、石を探して奥へと進んでいく一行を、
通路の奥で待ち構えているものがいたのだった。

フィーリ「・・・飽きてきた」
ジーク「え〜。フィーリ、まさか帰るつもり?」
フィーリ「いや、ちゃんと石は見つけて帰るよ」
ジーク「良かった・・・。でも、確かになかなかだね」
フィーリ「この地図、通路は正確に書いてあるけど、距離が適当なんだよね・・・」
ルーン「そのようですね」
ケイシス「何だそりゃ・・・。そんな地図ってありかよ」

フィーリが用意してきた地図に、全員が気を取られて油断していた。と、その時。

シーピー「メーーー!!」

今までほとんど動きもしなかった、ルーンの抱いていたバロメッツのシーピーが大きな声で鳴いた。
それに反応して、ルーンが通路の奥に目を凝らす。先ほど、ジークが気のせいだと思ったものが
そこにいた。フィーリの待ちかねた宝石喰いだ。

ルーン「どうやら、来たようですね」

思い切り、シーピーを盾にしながらルーンは早くも逃げ腰になっている。
フィーリとケイシスは、思わずルーンを守るような形で戦闘態勢に入った。

ケイシス「って、おいエセ神父!おまえも戦えよ!」
ルーン「私は見物しに来ただけですから」
フィーリ「・・・来るよ」

ケイシスとルーンがまた漫才を始めようとしている間も、宝石喰いは間合いを詰めて来ていた。
すごい勢いでフィーリ達に向かってくる。
が、間合いに入った瞬間、崩れ落ちた。

フィーリ「・・・なんだ。この程度?」

剣を抜いて構えていたフィーリが、宝石喰いが間合いに入った瞬間斬ったのだった。
あっけなく倒れた宝石喰いに、フィーリはつまらなさそうだ。

ケイシス「ちぇっ。俺の見せ場はなしかよ」
ルーン「いやぁ、フィーリさんが強くて助かりましたね」
フィーリ「とにかく、先を急ごう。宝石喰いが出たってことは近いのかもしれないし」
ジーク「そうだね。また他のが来ても困るし」
ケイシス「心配すんな!その時こそ俺が・・・」
ルーン「それは頼もしいですね、是非守ってください」
ケイシス「エセ神父はやられてろ!」

いつもの通りなケイシス達を半分無視しながら、フィーリとジークは石を探して先を急いだ。


◇永遠の炎◇

ジーク「あった!これだよ、フィーリ!」
フィーリ「やっとか・・・」

坑道の中で、途中何度か宝石喰いに会ったが、ことごとくフィーリとケイシスが斬り捨てた。
そして、フィーリが帰りたくなってきた頃、ようやく見つけたのだった。
ジークがほしがっていた永遠の炎を。坑道の奥の壁に埋まっているが、淡く輝いているため、
見つけるのはそう難しいことでもなかった。

フィーリ「よし、さっさと掘って帰ろう」
ケイシス「・・・掘るのか。・・・掘る・・・掘る。アハハ・・・はぁ・・・」
フィーリ「・・・道具、持ってないんだろ?」
ケイシス「・・・忘れただけだ!」
フィーリ「・・・あとで貸してやろうか?」
ケイシス「頼む・・・」

うなだれるケイシスの肩を、ルーンがポン、と叩く。
何事かと思ってケイシスが振り返ると、ルーンが一言呟いた。

ルーン「間抜けですね」

あまりのことに、今度ばかりは何も言い返せないケイシスを横目に、フィーリは石が傷つかないように、
用意してきた道具で石を掘り始めた。

フィーリ「よし。これでいいだろ、ジーク」
ジーク「うん、ありがと。これで明かりに困らなくなるね」

しばらくして、石を掘り終えたフィーリが、ジークに石を渡し、ケイシスに道具を渡そうと
近づいた時だった。

ケイシス「・・・なんか、揺れてないか?」

坑道のさらに奥から、ズシンズシンという音と共に何かが近づいてくる気配がする。
坑道全体も揺れているのを全員が感じていた。

ルーン「そういえば・・・。屋敷ほどの大きさの宝石喰いがいるという噂がありましたね・・・。それかもしれません」
ケイシス「・・・屋敷?何だそりゃ。でたらめじゃないか」
ルーン「ここで戦うのは上策とは言えませんよ。ここは他のところより道が狭くなってますし、
噂が本当だったとして、それほどの大きさのものと戦えば、崩落はほぼ確実でしょう。
どうします、フィーリさん」
フィーリ「ジークの目的は達した訳だし、もう宝石喰いとの戦闘も飽きたからね・・・。わざわざ危険を冒す意味もないし。逃げよう」
ケイシス「お、おい。俺の石は?」
ルーン「諦めましょう」
ケイシス「また収穫なしなのか・・・。くそぅ・・・。今日もついてねぇー!」

こうして一行は、あっさりと貴石の谷を後にすることになった。ケイシスの哀れな叫びだけを残して。


おわり