<PCクエストノベル(4人)>


ソーン全国サイコロの旅 〜第3夜〜

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【 冒険者一覧 】
【 整理番号 / PC名 / 性別 
             / 種族 / 年齢 / クラス 】
【 1185 / バンジョー 英二 / 男
              / 魔皇 / 30 / 俳優 】
【 1184 / バンジョー 玉三郎 / 男
            / 魔皇 / 40 / 映画監督 】
【 1333 / 熟死乃 / 男
 / ナイトノワール / 43 / ディレクター兼カメラマン 】
【 1334 / 不死叢 / 男
 / フェアリーテイル / 37 / ディレクター兼ナレーター 】

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●前回までのあらすじ【0】
不死叢:「玉三郎魔皇様の夢、どこの遺跡に眠るかも分からない黄金の楽器を見付けるという無謀な夢を叶えるため、いざ行動を始めた我々4人。
 しかし遺跡探索において全くの素人である我々は、まずチルカカに住まう冒険者に遺跡探索のイロハのイを教えてもらうべく、聖都エルザードを出発した。
 そして無事冒険者と合流した我々4人は、翌朝早くから小さな遺跡にて数々のトラブルを乗り越えながら、実践的な特訓を受けたのである。
 こうして、遺跡探索のコツをびしっと身に付けた我々は、いよいよ黄金の楽器探し、遺跡探索に向かおうとしたのだが……そこに玉三郎魔皇様の何気ない一言が待っていた」
玉三郎:「あ、その前にサイコロ振ろう」
不死叢:「かくして我々は、またしてもサイコロの神に運命を握られることになったのである。さて、気になる行き先は……いかに」
英二:「……あんたら、ナレーション生付けしてんじゃねぇよっ!」
 この場でナレーションを生付けしていた逢魔・不死叢とバンジョー兄弟の兄・玉三郎に、弟である英二が文句を言った。その様子を、デジカメを構えた逢魔・熟死乃が黙って撮影していた……。

●いざ、遺跡探索へ〜第3の選択【1】
 大きな湖に浮かぶ島であるチルカカ――一行はまだこの地に居た。そりゃあそうだ、気になる行き先はこれから決めようというのだから。紙製のちゃちぃサイコロで。
不死叢:「ささ! 魔皇様、これを読んでください!」
 不死叢がすっと羊皮紙を玉三郎に手渡す。そこには6つの行き先が記されていた。
玉三郎:「えー、それでは第3の選択です。
1! 素直に遺跡探索・チルカカ遺跡!
2! 遺跡は遺跡でもちょっと遠いぞ・コーサコーサの遺跡!
3! 温泉に行きたい・ハルフ村!
4! 海が見たい・フェデラ村!
5! 素敵な女性と過ごしたい・戦乙女の旅団!
6! 一回休み・トリニウム宅!」
英二:「君、馬鹿じゃないの?」
 一通り選択肢を聞いて、すかさず不死叢に文句をつける英二。
不死叢:「おや。英二魔皇様、何か御不満でもあるんですかな?」
英二:「我々は遺跡探索に行こうってんだ。だのに、どうして海見なきゃなんねーんだよ。それに6だよ、6!」
不死叢:「魔皇様、いつもならこういう目は喜んでいるじゃないですかぁ」
英二:「それは散々やられまくった後の夜だからだろぉ。見ろよこれ、今は昼だろ!」
 その通り、まだ昼にもなってない。外はまだまだ明るかった。
玉三郎:「まあまあ。出さなきゃいいんだよ、出さなきゃ」
 玉三郎が2人をなだめる。さすがバンジョー兄弟の兄であることだけはある。
玉三郎:「英二は何が出てほしい?」
英二:「まあ……この中だったら3か5かなあ? 不死叢くん、これ一緒にならないの? 温泉に素敵な女性出ると、視聴者のハートぎゅうっとわしづかみだよ?」
不死叢:「なりません」
 英二の問いに、きっぱり答える不死叢。
英二:「いやー、残念だなあ。とりあえず、今怖いのは6かな。1日馬鹿みたいにぼーっとして無駄にするぞ、これ」
不死叢:「ところでどちらが振るんですかな、サイコロ?」
 不死叢が玉三郎と英二を交互に見た。バンジョー兄弟も、どうするか視線で言葉を交わす。
玉三郎:「じゃあ……」
 結局サイコロを振るのは、玉三郎ということになった。
英二:「さあ! 何がでるかな? 何がでるかな?」
 英二が踊りながら言うのとともに、玉三郎がサイコロを振る準備に入る。楽しいのかヤケなのか、妙なハイテンションであった。
玉三郎:「とぉ!」
 勢いよくサイコロを頭上へ放り投げる玉三郎。落ちてきたサイコロはころころと地面を転がってゆき、熟死乃のデジカメがそれを追う。
 そして出た目は……3!
玉三郎:「3!?」
 玉三郎が羊皮紙に目を向けた。3の目はハルフ村、すなわち温泉である。
不死叢:「おおっ! やりましたなぁ……」
英二:「凄いよ、兄さん!」
玉三郎:「ああ……温泉かぁ」
 一同の顔に、一様に笑みが浮かんでいた。本音を言やあ、遺跡探索よりは温泉の方が嬉しいのだ。

●気になる移動手段【2】
英二:「で、ハルフ村ってどこにあるんだい」
不死叢:「えー……エルザードより結構南方ですなぁ」
英二:「おい、戻るのかよ!」
不死叢:「ある程度、そうなりますかなぁ」
玉三郎:「『ある程度』で済むんですか?」
不死叢:「……どうですかなぁ?」
 玉三郎の突っ込みに、不死叢が首を捻る。
英二:「ヒゲ、調べとけ! そのくらい!」
 そんな不死叢に、英二から叱責が飛んだ。
不死叢:「まあまあ、とりあえず行きましょうか」
英二:「そりゃ行くよ。サイコロの目がそうだもん。連絡船乗りゃいいんだろ? この島、出なきゃなんねーもん。4度目だぞ、あの連絡船乗るの。もう〜」
玉三郎:「連絡船の次は、また馬車ですよね」
 愚痴る英二と、その後のことを確認する玉三郎。だが、不死叢のこの後の余計な一言が、英二を奈落へ突き落とすことになった。
不死叢:「お2人、せっかくウォーホース召喚出来るんだから、それで移動すれば?」
玉三郎:「は?」
英二:「えっ?」
 驚きの玉三郎と、愕然となる英二。ちなみにウォーホースとは、文字通り軍馬・騎馬のことである。
英二:「ちょ、ちょ、ちょ……ちょっと待てよぉっ!」
不死叢:「おや? 何か不都合でも?」
英二:「不都合だらけだよ! 何で? 何でウォーホース? 来た時みたく、馬車乗りゃいいじゃん!」
不死叢:「だって英二魔皇様、同じ乗り物に飽きてらっしゃるんでしょう? さっきご自分でそう仰ってたじゃないですかぁ。でしょう?」
英二:「それとこれとは話が違うだろぉ! あ、そうだ! 熟死ーどうすんだよ! ウォーホース乗ったまま、カメラ回すってか? そんなの危ないだろぉ? 素直に馬車乗ろうや」
熟死乃:「いや、俺これあるから」
 そう言って、熟死乃は背中の黒い翼を指差した。
不死叢:「ああ、そういえば熟死乃くんは飛べますなぁ。という訳で、問題ないです」
英二:「……俺ヤだよ!」
 ごねまくる英二。よほどウォーホースに乗りたくないらしい。しかし、それにはれっきとした理由があったのである。
英二:「すみません、僕痔です!」
 英二の衝撃発言の後、一瞬場が静まり返った。そしてすぐに笑いが沸き起こる。もっとも大きかったのは、不死叢の笑い声であったが。
不死叢:「ぶははっ、ぶわはははははは! まっ、魔皇様……あなた痔なんですか!? いやぁ、衝撃発言でしたなぁ……」
英二:「痔主です! だからお願いっ! 馬車乗ろう!」
 とうとう哀願までするはめになった英二。けれども、兄・玉三郎のお気楽な一言が全てをぶちこわした。
玉三郎:「だったら、ついでに湯治、いや闘痔すればいいんじゃないか?」
英二:「兄さん……」
不死叢:「さあ、英二魔皇様に一言いただいてから、ハルフ村へ行きましょうか」
 熟死乃のデジカメの前に立つよう促す不死叢。渋々といった形で英二が移動した。さすがにもう諦めたようだ。
不死叢:「それではソーンでキュー!」
英二:「えー! それでは! これからハルフ村まで騎馬で頑張って行くぞ! ハイッ!」
 英二はデジカメに向かって、びしっと一言を発した。
 かくして――移動開始である。

●一路、ハルフ村へ【3】
 まず連絡船に乗りチルカカを脱出した一行は、熟死乃を除いた各人がウォーホースを召喚して騎乗し、本格的にハルフ村へ向かうことになった。
 手綱を両手にしっかと持ち、ウォーホースを走らせる玉三郎・英二のバンジョー兄弟。空を飛びながら、熟死乃がその様子を余すことなく撮影する。そして、不死叢もウォーホースで2人の後を追ってゆく。
 最初は1度エルザードまで戻らねばならないのではないかと思われていたが、連絡船の中で『ソーン観光ガイドマップ』をよくよく確認してみると、直線的に行けば距離を短縮出来ることが判明した。
不死叢:「ここをこう斜めに突っ切れば、だいぶ早く着けそうですなぁ」
英二:「君はいつもそう簡単に言うけど、そこを走るんだよ、俺たち?」
 連絡船の中でこんなやり取りがあったのは、まあ余談である。
 ともあれ、ウォーホースで山を越えてゆく一行。途中どこへ寄るでもなく、ただひたすらにウォーホースを走らせてゆく。そうなると、必然的に会話が中心となる訳で……。
玉三郎:「皆は、ウォーホースの本場がどこか知ってるかい?」
 不意に玉三郎がそんなことを言ってきた。
不死叢:「ほう、ウォーホースに本場があるんですか?」
玉三郎:「軍馬だけにね、本場は群馬県なんだよぉ」
 ――ダジャレだ。
不死叢:「おいおっさん! 黙ってろ!」
英二:「そういうのは要らないんだよ」
 非難囂々である。玉三郎はいたたまれないのか、ウォーホースを走らせる速度を上げ、先へ先へと行ってしまった。
英二:「いつもああなんだよな〜、ダジャレ言った後」
 まあ……玉三郎のダジャレはいつものことらしい。
不死叢:「それにしても、いい景色ですなぁ。どうですか! 楽しんでますか!」
英二:「おいおい不死叢くん……楽しめる訳ないだろぉ? さっきも言ったろ。僕はだ、痔持ちだ。この揺れがだ、痔にはよくないんだよぉ? 周囲の景色を楽しむ余裕なんて、ナッシング。ある訳ないぞぉ、君ィ」
不死叢:「……んー、熟死ー。饅頭屋あったら教えてくれよぉ」
英二:「聞けよ、おいヒゲ! だいたいこういう世界に饅頭屋がある訳ないだろ! どこ行っても、馬鹿みてぇに饅頭饅頭言いやがって!!」
不死叢:「おやおや、分かりませんぞぉ。意外な所に、意外な物があるとよく言うじゃありませんかぁ」
英二:「絶対ねぇよ!」
 などと英二が不死叢の言葉を否定していると、熟死乃がぼそっと言った。
熟死乃:「お、不死やん。馬車来たよ」
 熟死乃の言葉に前方を見てみると、確かに馬車が向こうからやってくる所であった。玉三郎の姿はすでに見えないので、恐らく馬車よりも向こうに行ってしまったのだろう。
 しかも、ちょうど周辺の木々によって道が狭くなっている場所であったので、馬車をやり過ごさないと英二たちは先へ進むことは出来なかった。
不死叢:「通り過ぎるのを待ちますかなぁ」
 不死叢のその言葉に従い、英二は手前でウォーホースを止めた。不死叢と熟死乃はその後ろへつく。
 どんどん近付いてくる馬車は、やがて3人のそばを通り過ぎようとしていた。英二はその様子を見ながら、カウントダウンを始めていた。
英二:「5秒前……3……2……1……」
 そして、ようやく馬車が英二たちのそばを通り過ぎた。
英二:「GO!!」
 英二が手綱を握り直した。が、ウォーホースが前に進もうとしない。
英二:「ん? おい、行くぞ!」
 ぽんっと尻を叩いて、ウォーホースの歩みを促す英二。その時――悲劇は起こった。
 ヒヒヒヒィィィィィーン!!!
 前脚を上げ威勢よく嘶いたウォーホースは、こともあろうかまっすぐ木々の中へ突っ込んでいったのだ。
 木々の中へ消える英二とウォーホース。枝やら何やらが折れたりする音が聞こえてきた。熟死乃のデジカメがその一部始終を捉える。
不死叢:「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!」
 緊急事態ではあるが、不死叢はとりあえず笑っていた。そうしなきゃ、テープが使えなくなるのだから。
 やがて、ぼろぼろになった英二とウォーホースが木々の間から姿を現した。
不死叢:「うはは……だっ、大丈夫ですか、魔皇様!? うわははははっ!」
英二:「ん、何が?」
 極めて冷静を装う英二。しかし、顔が恐怖で強張っている。
不死叢:「いったいどうなさったんです?」
英二:「手綱持ったっけ、尻叩いちゃって、もうウィリーさ」
不死叢:「で、どうでした?」
英二:「なまら怖かったよ!!」
 噛み付かんばかりの勢いで、英二が不死叢に叫んだ。
 それから3人は、先に行ってしまった玉三郎を急いで追いかけた。1本道だったのと、玉三郎が途中で止まっていたので、追い付くのは非常に容易であった。
玉三郎:「どうしたの?」
 先程の騒ぎを1人知らぬ玉三郎は、呑気に3人へ話しかけたのだった。

●そして、目的地へ【4】
 一行が必死にウォーホースを走らせた結果、夜遅くではあったがどうにかハルフ村に到着することが出来た。距離はかなりあったが、長距離移動は一行の十八番であるので問題なし。
 ハルフ村が見えてくると、湯煙が立ち上っているのが視界に入った。さすが、温泉で一躍有名になった村である。
英二:「いやぁ、さすが温泉地。見事に湯舟が立ち上ってるねぇ」
不死叢:「湯煙です」
玉三郎:「湯煙だよ」
熟死乃:「湯煙だって」
 英二の間違いに、他の3人が一斉砲火を浴びせた。
英二:「……すいません」
 英二が肩を竦めた。そうこうしているうちに、一行はハルフ村へと入った。
不死叢:「さあさあ! ようやくハルフ村に着きましたぞぉ!」
英二:「いやー、長かった」
玉三郎:「とりあえず温泉で汗を流そう」
不死叢:「温泉といえば、温泉饅頭ですなぁ」
英二:「だから饅頭から離れろよ! ないっつってんだろ!!」
 英二の言葉が響き渡った。が、熟死乃がある物を見付けた。
熟死乃:「あれ……そうじゃないかい?」
 一斉に熟死乃の見ている方を振り向く一行。そこには『ハルフ村名物・温泉饅頭』というのぼりが立っていた。
英二:「あら?」
不死叢:「ありますなぁ……」
 一行の珍道中はまだまだ続く――。

【ソーン全国サイコロの旅 〜第3夜〜 おしまい】