<PCクエストノベル(1人)>
Blue Drop
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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】
【1175 / リア・フォールト / 魔道士 】
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聖獣界ソーン。
36の聖獣と、それらに呼ばれ選ばれた人々が住む世界。
最初に世界があり、そこから夢に呼ばれ訪れた人々が住まうようになり……
いつしか「夢」はこう、呼ばれる。
「聖獣」と。
そして、この不思議に満ち満ちた世界では今日もまた色々な冒険者達が
冒険を追うべく歩き出す。
…これはそんな、ある日の出来事…。
・ゴンドラに揺られて
「美しき水の都」と。
その場所は称えられる。
何処までも蒼く澄んだ水と活気溢れる人々が暮らす、その都に喩えられる場所の名を。
アクアーネ村、と言う。
ぱしゃん。
水を弾く音をさせながら、ゴンドラはアクアーネ村を渡ってゆく。
その中に一人、金髪、碧眼の少女が居た。
さらさらとした艶やかな金の髪を風に遊ばせ、森を映したかのような碧の瞳は蒼く何処までも蒼く澄んだ水を飽きることなく見ていた。
リア:「本当に美しいところね、ここは」
案内人:「そうでしょう? ここは観光で成り立っている村でもありますが…それでも尚、古き良きものを残そうとする姿勢もあります。右手方向に見えるのが昔からある講堂で、内部にも外部にも施されている繊細な紋様の細工が女性に人気の場所です」
リアは言われたとおりに案内人の右手方向を見た。
壁に一面の細かい細工と、絡まる蔦と花の調和があまりに見事でほう……と感嘆の溜息を漏らしてしまう。
リアはハーフエルフで、森と動物たちと共に過ごしてきたリアにしてみれば珍しいものばかり。
こう言うのもたまには良いわね……と、柔らかな音を唇へとのせた。
「おや」と案内人の顔が驚きの表情へ変わる。
案内人:「お客さん、観光は初めてですか?」
リア:「そうなの、美しい所だって聞いてたし観光に一度来て見たくて……あ、ねえ? ここでは水上の市場、何ていうのもあるの?」
繊細な細工の建物たちから目を離すと、水上――しかも、小型の船で野菜や果物を売っている人々が見え、リアは更に目を丸くする。
ふっと案内人が少し、優しく微笑んだような気がした。
案内人:「ここは陸よりも水上の方で行商をする人が多いんですよ、通り道ですからね」
リア:「へぇ……やっぱあるものは有効利用しようという考えなのかしら?」
案内人:「ええ…さて更に前方、向かって左に見えてくるのがこの村が誇る水上庭園。花々は四季折々全て違う色合いへと変化する場所です」
案内人の言葉にリアは目を細めて前方、左方向を見る。
そこには。
リア:「………綺麗………」
どう、他に言えばいいのだろうか。言葉が見つからないと言うことは今までも多くあったけれど、これには遠く及ばない程強い衝撃をリアは受けた。
色は優しい色合いばかりの花々が、埋もれることなく一つ一つその存在を際立たせている、と言えばいいのだろうか……まるで絵に描かれたような美しさがそこにはあった。
リア:「ねえ、案内人さん? ここで止めてもらえる?」
案内人:「勿論、ここからなら村の宿屋に行くのも難しくないでしょうから」
リア:「オススメの宿屋、とかある?」
案内人:「この時期は何処もオススメですよ。お客さんが入りたいと思ったところが一番です」
人の良い微笑を浮かべながら案内人はゴンドラを庭園の脇に着け、止める。
リアは一言「ありがとう」と呟くと、水上庭園の内部へと歩いて行った。
背に案内人の「良い一日を」と言う言葉を受けながら。
・水上庭園にて
庭園の内部へ、内部へとリアは進む。
柔らかな樹木の色と花々の色が織り成す庭園は進むにつれて柔らかく、柔らかくなっていくようだった。
かさり、と。
音をたて、木々を分けてとある場所へと入り込む。
するとゴンドラに乗っているときには良くは見えなかった風景が、あった。
庭園の中心に憩いの場を作るように、大きな噴水がそこにはあったのだ。
水の都と言われるだけに豊富な水を使われている、それはきらきらと陽を受け眩しく輝き。
噴水を囲むように水中で咲くと言われる花たちが艶やかに咲き誇る。
蝶や鳥たちも水を求めて舞うように踊る。
リア:「やっぱ、降りて正解だったわね♪…出来るのならこの風景ごとお土産にしたいくらいだけど」
唇だけで綺麗に微笑の形を作ると、リアはベンチへと腰掛け、陽の光を受け輝き虹を作りあげる噴水を瞳を細めて見上げた。
森では全てが瞳に優しい碧の色で構成されている。
いつもいつも、それを見ていたから飛び出してみたくもあった、外の世界はこんなにも綺麗な色で溢れていたのだと知って、何故だか嬉しくなってしまう。
(自分がずーーっと居た世界だけが全てじゃないのよね♪)
森の中に篭っているのだけが全てではないから。
こうして、観光へ来れた事を感謝しながら、リアは水の匂いのする風に吹かれ続けた。
遠くで、ゴンドラから聞こえてくるだろう歌声と音を聞きながら。
・日暮れまでの散策
庭園をぐるりとまわり終わると、リアはそこから再び違う場所へと歩き出そうと歩をすすめた。
宿屋へ行くには、まだまだ時間がある。
何せ、急ぐ旅ではないしのんびりと色々なものを見てまわりたいし……思案しつつ、立ち止まる。
どうしようか……。
(いっそ、こういう時は思う方向へ歩いてみるのも楽しいかもしれないわ)
それに、此処はリアが来た初めての場所だ。
初めてだからこそ行ける場所と言うものもあるだろうから。
(よし、決定! 人の声がする方へ歩いて行って見よう)
少しばかり歩いていた道を引き返し、声が聞こえる賑やかな通りへと歩く。
「村」と言うけれど活気溢れるこの村はどちらかと言えば小さいながらも一つの「街」のように作り上げられていた。
石畳で作られた歩道。
その道の上で踊り、演奏する芸人たち。
何処までも何処までもついてくる水の豊かな匂い。
ゴンドラから見た水上の店々とはまた違う品が売っている店。
取れたての物ばかりなのか果実は午後の柔らかな光を受けて噴水の水と同じように輝いていた。
果実屋店主:「おや、可愛いお嬢さんだ。どうだい、一個味見してっちゃ」
リア:「――いいの?」
果実屋店主:「勿論、味を見なくちゃ美味しいかどうかもわからないだろう?」
リア:「じゃあ、お言葉に甘えて……」
店主から差し出された果物をリアは受け取ると一口、口にした。
森で食べてきた果物とはまた違う美味しさが口の中へと広がってゆく。
リア:「ん、美味しい☆私、森でも美味しいものばかり食べてきた筈だけどこう言うのは始めてかも」
果実屋店主:「お嬢さんは旅行者か…じゃあ、一個差し上げよう。――旅の記念に」
リア:「え、でも試食もさせてもらっちゃったし…料金、払います!」
果実屋店主:「此処へは初めてなんだろう? 一個くらいはこう言う思い出があっても面白いと思うぞ?」
リア:「……おじさん、言葉上手ね。そう言う風に言われちゃったらその言葉に甘えたくなるじゃない」
果実屋店主:「いいじゃないか。そのかわり、また此処に観光に来てくれればいいんだから」
リア:「ええ、また必ず来るわ。ありがとう、おじさん♪」
果実屋店主:「良い観光を」
リアは果物を受け取ると更に道をひたすらに歩く。
果実や魚等が売っていた通りから、次は織物や細工物が売っている露店が立ち並んでいた。
その中で、一つ嫌に視界に紛れ込んでくる装飾品が一つ。
水を映したように蒼い、蒼い、石。
石には銀の職人技とも取れるほどに細かな細工。
細工は、建物といい装飾品といい、この村の特徴なのだろうか、とても繊細に施されており、それが涙のような澄んだ形の、耳飾りを一層際立たせて。
リアは、此処まで目を引く装飾品もそうそうないだろうと考えると、思い切って店番をしているのであろう少女へと話し掛けた。
リア:「あの……この、耳飾りって…高い?」
少女:「いらっしゃいませ! えっと、こちらの商品ですか? …それほど高くもないですよ?」
リア:「……い、幾らくらいで買える、かしら?」
少女:「このくらいです♪」
そう言うと少女は紙に値段を書き、リアへと手渡した。
リアはそれを受け取ると「え?」と大きく綺麗な緑の瞳を丸くする。
あまりに安すぎる、ぼられるよりはまだマシだが、この値段はいっそ夢か……もしくは冗談ではないだろうか?
リア:「こ、こんなに安く買えるのっ? 冗談でしょ?」
少女:「冗談じゃありませんよ〜。何でこの商品がこんなに安いかというと製作者が解らないからなんです。そう言う商品でもよければとこちらも勉強させてもらってるわけでして……」
リア:「な、なるほどね……じゃあ、買うわ。こんなに綺麗な細工滅多に見ないしお値打ちだもの♪」
少女:「お買い上げ有難うございます。銀はいたみ易いので、手入れはきちんとしてくださいね?」
リア:「ありがとう」
商品を受け取ると、何処からか美味しそうなスープの匂いが漂う。
ああ、そう言えばそろそろ泊まる宿屋を探した方がいいのかもしれない。
今日の散策は、此処までにして。
果実屋で貰った果物を寝床で食べて、綺麗な耳飾りをつけてどれだけ自分に似合うか見てみることにしよう。
そして明日、また少し散策してそれから森に帰るのも悪くはないもの。
(…今日は久々に良い夢が見られそう…)
多分、きっと。
これから泊まりに行くだろう宿屋でも優しい人たちが待っている。
そう、自然に思えるから。
アクアーネ村。
そこは水溢れる、美しき水の都であり柔らかな活気溢れる人たちが住む観光地。
―End―
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