<PCクエストノベル(4人)>


ドキッ☆男だらけの雪合戦!(褌もあるよ!)

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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】

【1528 / 刀伯・塵 / 剣匠】
【1117 / 多寡道 / 鬼道士】
【1348 / 螢惑の兇剣士・連十郎/ 狂剣士】
【1354 / 星祈師・叶 / 陰陽師】

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●序章

 ここはハルフ村。
 温泉が湧き出した事で一躍有名になった村で、今では多種多様の入浴施設を抱え、ユニコーン地域周辺でも注目株の観光地としてよく話に出る村だ。
そして、その村に修行と称してやって来たサムライ達が四名。

塵:「‥‥観光地で修行もクソも無い気もするが」

 それ言っちゃいけません。

 ――これは四人のサムライ達の熱きプライドを賭けた汗と涙と褌の物語である。


●恐怖! 褌野郎Aチーム

叶:「寒いですね。‥‥ここで雪合戦するんですか」
連十郎:「寒い所でも動ける様にだな。サムライたるもの、いつ何が起こっても良い様に常に鍛えておかねぇとな」

 星祈師・叶は少し大きめの防寒着の隙間からを白い息を吐きながら辺りを見渡す。
 寒中に己の身を晒し、雪を使い合戦を想定して動く事で、さらなる強靱な肉体を鍛え上げる――とか言えば確かに修行に相応しいような気がしなくもない。

塵:「いや、修行はいいんだが‥‥お前らのその格好、何とかならんのか?」

 息子とおそろいの防寒着を着た刀伯・塵は、無性に頭を抱えたくなるのを必死で押さえつつ、目の前にいるラセツ二人組――多寡道と螢惑の兇剣士・連十郎の姿を見た。
 二人の姿は弾けんばかりの裸体に褌一つ、と言うなんとも季節無視上等な姿。
 ちなみに褌の色は微妙に怪しげな黒(多寡道)と情熱の赤(連十郎)だったりする。
 冬の雪原でも褌一丁で平気で笑って立ってられるあたり、まさにソウルフルかつエネルギッシュな男達と言えよう。(多分)

多寡道:「当然だろ!? 漢なら雪の中でも褌! この心意気、お前らにも解るだろう!?」
塵:「解らねぇよ」
叶:「見てるだけで寒いです」

 多寡道の語る熱い心意気は着膨れ親子にあっさりと否定されてしまう。

塵:「それに俺お笑い芸人じゃねぇし、こんな所でそんな恥ずかしい格好出来るか!」
多寡道:「芸人じゃなくとも褌は付けるだろうがっ! お前ら、中つ国魂はどうした!」
塵:「どんな魂だよそりゃ‥‥」

 多寡道の勢いにちょっとげんなりしながら塵はため息をついた。


●激闘! 雪上デスマッチ

 いくら雪合戦と言っても修行は修行。――しかもするのはサムライ、生半可な戦いではない。
 石仕込みあり、武神力使用あり。両チームのどちらかが倒れるまでの無制限一本勝負デスマッチルールだ。
 班分けは勿論、塵と叶の防寒着チームと、多寡道と連十郎の褌チーム。

多寡道:「よーし、この勝負に俺達が勝ったら‥‥お前達には褌一丁になって貰う!」

 多寡道は自信満々で塵達に指を突きつける。
 ――どうやらよっぽど自信があるのかも知れない。

塵:「‥‥う‥‥なら、お前達から褌でも没収させてもらうか?」
多寡道:「‥‥何ぃ!褌没収って‥‥俺に死ねと!?」
叶:「いいじゃないですか、それ位。‥‥お二人とも元々裸ですし」
連十郎:「叶、お前っ! 褌姿と全裸をいっしょにするなぁ!」
多寡道:「そうだっ! 一枚脱いだだけで歴然とした差があるじゃねぇか!」

 確かに褌一枚脱いだら単なる怪しい人から犯罪者に即ランクアップするが――そんな事は二人には知ったこっちゃ無い。
 今はむしろ自分達をいかに褌一丁の魔の手から守るかのみを考えてる訳で。
 
 ――そんな訳で、お互いの漢の尊厳を賭けた戦いはこうして始まるのであった。


多寡道:「先手必勝!、一点集中! 弱いモノから狩って人数を減らすっ!」
叶:「わ〜ん! やめて下さい〜!」

 まずは多寡道が叶に向かって雪玉を勢いよく投げる。――流石褌なだけ素早く、早速叶は何回も雪玉を当てられた。
 だが、半泣き状態の叶は、式蜘蛛符で巨大な蜘蛛を召還してその影に隠れる。
 叶の横にいた塵も即座に鳥式神を数体出して防御体制を整える。

多寡道:「畜生、あれじゃ当たらねぇ‥‥」
連十郎:「ふっ、こんな事もあろうかと秘密兵器を用意しておいたぜ‥‥これでぶち抜け!」

 やけにニヒルにキメながら『連十郎特製・石が入ったラセツの怪力圧縮雪玉略して連玉』を多寡道に差し出す連十郎。
 連玉を受け取った多寡道は、投げやすい位置に置くと一瞬目を閉じ、構え――そして。

多寡道:「‥‥喰らえ、名付けて活殺降魔連弾! うらうらうらぁぁぁぁぁぁっ〜!!!」

 持ち前の怪力とスピードを駆使し、敵に連撃を打つ様な素早さで連玉を投げつけてゆく。
 その強烈な威力は流石肉体を武器にする鬼道士ならでは、と言った所である。

塵:「マズイ、突破された!」

 多寡道の強靱な腕から放たれた連玉は、塵の見事に鳥式神を貫通する。
 そして、本丸である式蜘蛛に幾つもの雪玉が降り注ぎ始める。――勢いに押されて段々後ろに下がってゆく式蜘蛛。

多寡道:「こいつでとどめだぁっ!」

 多寡道は叫びと共に手持ちの最後の一球を投げつける。
 そして、叶の式蜘蛛は弾け飛び――消えた。

叶:「えいっ、えいっ!」

 式神のあった向こう、最後の抵抗と言わんばかりに叶は雪玉を放つ。
 そして、その力無い雪玉が多寡道の下っ腹に二つ当たった。

多寡道:「へっ、そんなの痛くも痒くも‥‥」

 その時。
 多寡道はいきなり腹を抱えて倒れた。

連十郎:「何ィっ! 多寡道、どうしたぁっ!」

 答えは単純、単に冷たい雪玉の刺激で多寡道の腹が冷えたのだ。
 褌一丁という軽装が逆にアダになったのである。
 そもそも、防寒着をごっそり来ている親子チームと違って二人は褌一丁ほぼ全裸。
 ただでさえ寒いのに雪が当たったらさらに寒い訳で――。

連十郎:「うう‥‥立てっ! 立つんだ多寡道! ‥‥鉄の多寡道〜♪ 無敵多寡道〜♪」
多寡道:「‥‥う、歌ってないでお前も戦え‥‥」

 倒れた多寡道を励ますために手を前で振りながら応援歌を歌う連十郎。
 ――さりげなく雪玉作るだけの観戦モードに入っているのは気のせいだろうか?

塵:「チャンスだっ! ‥‥叶、式蜘蛛で雪をかき集めろ!」
連十郎:「ちょっと待て! マジかっ‥‥うわぁ!」
塵:「問答無用だ! 俺は褌なんかになりたくはない!」

 塵は連十郎に向かって月天剣舞を放ち一気に攻勢に入る。
 目がマジになっているあたりちょっと――いやかなり――ムチャクチャ怖い。
 今回の戦いには羞恥心や自尊心ががかかっている分、容赦が無くなっているのであろう。
 一方の叶は急いで式蜘蛛符を展開し、雪を一気にかき集める。

塵:「いけ! そのまま雪で押し流してやれ!」
叶:「え〜いっ! さっきのお返しです〜!」

 式蜘蛛は無慈悲に大量の雪を抱えて二人に迫る。
 逃げようにも多寡道は倒れたまま、そして連十郎は逃げ遅れ――。

多寡道:「‥‥ちょ、ちょっとタンマっ! 腹がっ! 腹がぁっ!」
連十郎:「ぎゃぁぁぁぁっ! 冷たてぇ! 寒いっ!」

 ――で。

 多寡道と連十郎の二人は見事なまで雪に埋まっていた。
 しかも逆立ち状態で太股から下のみと言う剛毅さで。
 遠くから見ると何もない純白の雪景色に中に肉色のVの字が二点。
 今、新手の前衛アートが完成した――。

叶:「こういうのって『スケキヨ』って言うんですよね」
塵:「叶‥‥何処でそんな言葉覚えてきたんだ‥‥?」


●戦い終わって日が暮れて?

叶:「これ、どうしましょう‥‥それと褌‥‥」

 叶は暫く困った様に天にそそり立つ脚四本を眺める。
 式蜘蛛で埋めたは良いが、なかなか自力で起きてこないのだ。
 しかもいい感じで太股まで埋まっているので褌回収すら出来ない状況だったり。

塵:「武士の情けだ、褌は諦めておくか。‥‥ほっといたら起きるだろうし、先に二人で宿屋と温泉に行くか?」
叶:「寒いですしね! 美味しい物も食べたいです」

 親子は何事もなかった様に仲良く手を繋ぎ、宿屋への細い雪道をさっさと戻って行く。
 先に待つのは美味しいご飯にほかほかお風呂。
 これであったかい布団(ベッド)で眠れたらもう言う事ナシ。
 まさに戦いの後の至福の一時である。

叶:「‥‥さぞかしお二人にはいい修行になってるんでしょうね」
塵:「まぁ、よっぽどのことが無い限り死ぬ事無いだろうしな、サムライだし」
叶:「そうですね、そう言えばここの名物ってなにがあるんでしょう‥‥?」

 一方その頃――。
 雪原上の肉のオブジェ二体――もとい、多寡道と連十郎はまだ埋もれていたりする。

多寡道:「ふ‥‥褌にもっと愛をっ‥‥!」
連十郎:「それよりも俺達に愛を‥‥誰か助けてくれ‥‥」

 ――いや、お後がよろしい様で。

多寡道&連十郎:「「よくねぇーっ!」」


●ライター通信
 お待たせしました、沢邑ぽん助です。
 この度は発注頂きありがとうございました。(平伏)
 今回は伝説のジャンル(何)褌をついに扱わせて頂きました。
 妙に戦闘物っぽい感じもしますが。(苦笑)
 しかし書いてて何か一皮むけた様な気がしました‥‥恐るべし褌です。
 それでは、またいつかどこかで。