<PCクエストノベル(4人)>


ソーン全国サイコロの旅 〜第4夜〜

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【 冒険者一覧 】
【 整理番号 / PC名 / 性別 
             / 種族 / 年齢 / クラス 】
【 1185 / バンジョー 英二 / 男
              / 魔皇 / 30 / 俳優 】
【 1184 / バンジョー 玉三郎 / 男
            / 魔皇 / 40 / 映画監督 】
【 1333 / 熟死乃 / 男
 / ナイトノワール / 43 / ディレクター兼カメラマン 】
【 1334 / 不死叢 / 男
 / フェアリーテイル / 37 / ディレクター兼ナレーター 】

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●前枠〜前回までのあらすじ【0】
 ハルフ村・入口の村名が記された看板前。
 ナイトノワールの逢魔・熟死乃が撮影するビデオカメラの前に、三つ揃いの漫才芸人風スーツに身を固めた男2人が、やる気なさげに左右からフレームインしてくる。魔皇である玉三郎・英二のバンジョー兄弟である。
 そしてフェアリーテイルの逢魔・不死叢のキューの合図で2人は面倒臭そうに口を開いた。
英二:「はい、どーも。青空リュックサックのリュックでございます」
玉三郎:「同じくサックでございます」
 2人とも口調からして、もうやる気がなさそうであった。
英二:「それはそーと、サックくん」
玉三郎:「何ですか、始まってそうそう薮から棒に」
英二:「キミ、何でも世間の皆様から見て、馬鹿馬鹿しい旅をしているそうじゃあないですか」
玉三郎:「馬鹿馬鹿しい旅? いやー、それは心外だなー。ボクはただ、サイコロを振ってその出た目に書かれているボードの内容に従って、ソーン世界の旅を続けているだけだよ? これのどこが馬鹿馬鹿しい旅ですか、リュックくん?」
英二:「サックくん。それを世間では、馬鹿馬鹿しい旅って言うんです。はい、お客さんここ笑うトコね、笑うトコ」
 青空リュックこと英二が、客に笑いを強要した。しかし、客などどこにも居やしない。
英二:「それはそれとして、サックくん。今までどこへ行ってきたんです?」
玉三郎:「はいはい、それはですね。聖都エルザードを出発し、チルカカ、エルザード、チルカカときて、今度は一気に温泉で有名なハルフ村に来ております。どうですか、リュックくん」
英二:「ほうほう、なるほど。しかしサックくん。チルカカからハルフ村は、結構距離あるらしいじゃあないですか。いやー、キミ以外に同じことしている奴がもし居たら、見てみたいもんですなあ」
玉三郎:「いやいや全く。って、そりゃキミもやがな」
 青空サックこと玉三郎の手の甲による突っ込みが、ボスッという鈍い音とともに英二の胸元に入った。
英二:「はい、お客さん。ここも笑うトコ、笑うトコだから」
 またしても客に笑いを強要する英二。だから、客などどこにも居やしない。ゲラゲラと笑っているのは、不死叢ただ1人。
玉三郎:「キミとはやっとれんわ」
英二:「はい、どーもでした」
 2人はベテラン芸人のごとく軽く頭を下げると、各々別方向にフレームアウトしていった――。

 ややあって、2人がまた熟死乃のビデオカメラにフレームインしてきた。
玉三郎:「こ、こんなんでいいんですか、前枠っ?」
英二:「笑ってんの、このヒゲだけだぞ? 熟死ーなんか、カメラ回しながらずっと『何が面白いんだろう?』って顔してたぞ、おい!」
 前枠の出来に不安げなバンジョー兄弟。しかし、不死叢は胸を張って答えた。
不死叢:「オーケーですよぉ。熟死乃くんのそれはいつものことですから」
英二:「そうかい? 絶対熟死乃くん、後で映像確認しながら首傾げて『分っかんねーなー』って言うぞ?」
熟死乃:「分っかんねーなー……」
玉三郎:「ほら、もう言ってるじゃないですか!」
不死叢:「大丈夫です、前枠ですからこのくらいで」
英二:「段々と前枠後枠、シュールなコント劇場になってきてねえか? だいたい、この衣装よく持ってきてたよな! あいつか? あいつが用意して渡したのか?」
 誰か心当たりがあるのか、英二はしきりに不死叢に尋ねていた。
不死叢:「ささ、お2人。行きましょうか」
 それでは、本編スタート――。

●今回の企画発表【1】
 ハルフ村・何故かあった温泉饅頭屋前。
 熟死乃のビデオカメラの前に、バンジョー兄弟が立っていた。その後ろには『ハルフ村名物・温泉饅頭』というのぼりが、しっかりと映っていた。
玉三郎:「という訳で」
 トークの口火を切ったのは玉三郎の方であった。
玉三郎:「我々、無事ハルフ村の方へ着きました」
英二:「いやー、たかだか移動するだけで、危うく死にかけるとは思いませんでした、私」
 移動中のアクシデントをしみじみと思い返す英二。ハルフ村へ移動する途中で、ウォーホースが暴走して死にそうな目に遭ったのだ。
玉三郎:「ともかく、せっかくこうしてハルフ村に来た訳ですから、名物の温泉を味わってみたいと思います」
英二:「おおっ、温泉ですかあ! いいですなあ、ぜひともこう、全身で味わいたいですなあ」
不死叢:「ちょっと待ってください、お二方」
 温泉に心揺れるバンジョー兄弟に対し、不死叢が口を挟んできた。
不死叢:「ハルフ村の名物は、温泉だけじゃないらしいんですよぉ」
玉三郎:「はいっ?」
英二:「不死叢くん、キミはひょっとして着いて早々に見つけたあれことを言っているのかい?」
 後ろののぼりを指差す英二。繰り返しになるが『ハルフ村名物・温泉饅頭』というのぼりだ。
不死叢:「ええ、そうですよ?」
 不死叢はさらりと言ってのけた。そして話はまだ続く。
不死叢:「さっき店の前に行ってみたんですよぉ。そうしたら、たまたまですよ? 早食い大会が催される模様なんですよぉ」
英二:「早食い大会かい? そりゃあれかい、当然食べる物は……」
不死叢:「名物の温泉饅頭に決まってるじゃありませんかぁ。しかもあれですよぉ、優勝すればリゾート地の宿泊券が貰えるらしいんです」
英二:「リゾート。それ魅力」
 リゾートという言葉に、英二が反応した。
玉三郎:「それはまあいいとして。……誰が参加するんです?」
不死叢:「はい、何がです?」
玉三郎:「いや、だから誰が」
不死叢:「あんたに決まってるでしょ?」
英二:「ああ、そういや兄さんは無類の甘いもの好きだった。こりゃもう決定かな」
熟死乃:「不死叢くん、それでいいんじゃないかい?」
 熟死乃が玉三郎に近付き、顔のアップをビデオカメラで押さえる。
玉三郎:「はえ?」
 3人から当然のごとく参加を勧められ、狼狽する玉三郎。他の皆には甘党だと思われている玉三郎だが、実は甘いものは大の苦手だったのだ……。
不死叢:「それでですね、もう申し込みしてきましたから。不参加だと、キャンセル料取られるらしいんで」
 この不死叢の言葉が決定打となり、結局玉三郎は早食い大会に参加させられることとなったのである。何せ、低予算の旅ですから。
不死叢:「そして、英二魔皇様」
英二:「ん、俺も参加するのかい?」
不死叢:「あなたにはもう1つの名物を味わっていただきます」
英二:「もう1つってーと……温泉かい?」
不死叢:「そうですよぉ。英二魔皇様が露天風呂に入っている絵を、熟死乃くんのカメラでこうびしっと! いただきたいと」
英二:「そうかい、そうかい。不死叢くん、キミもなかなか話せるようになってきたじゃあないか」
 笑みを浮かべ、満足げな様子の英二。
不死叢:「じゃあ、先に温泉へ行ってスタンバイを。我々、早食い大会が終わりましたら、すぐに行きますんで」
英二:「分かった分かった。よーし、キミたちが来るまでに僕は、源泉がからっからになるまで温泉を飲み尽くしてやるぞぉ」
 英二は意気揚々と温泉へ向かった。その後姿を、しっかりとビデオカメラで押さえる熟死乃。
 そして残された玉三郎たちは、早食い大会の会場へと移動することとなった。

●いざ早食い大会へ【2】
 ハルフ村・村の広場特設会場。
 10名以上の参加者が横1列に並ぶ中に、もちろん玉三郎の姿もあった。客の入りはそれほどでもなく、暇つぶしに見てみるかといった様子の者たちがほとんどであった。
大会主催者:「それでは、これより温泉饅頭早食い大会を開催させていただきます」
 大会主催者である温泉饅頭屋の主人が、参加者に説明を始めた。
大会主催者:「参加者の皆様には、これより12個の温泉饅頭をいかに早く食べ切ることが出来るか競っていただきます。最後の1個が口の中からなくなったら、こうポーズを取っていただきます」
 わざわざテレマークのポーズを取ってみせる大会主催者。
大会主催者:「優勝者にはリゾート地の宿泊券を差し上げます。以下、温泉饅頭の残り個数で順位を決定してゆきます。そして最下位となりますと、罰ゲームとして川下りを行っていただきますので、真剣に頑張っていただきたいと思います」
玉三郎:「!?」
 聞いてない、といった表情で慌てて不死叢たちの方を向いてアピールする玉三郎。
不死叢:「玉三郎魔皇様、頑張ってくださいよぉ。リゾートですよぉ」
 だが、予想通りというか何というか、不死叢は玉三郎のアピールを無視した。
大会主催者:「それでは位置について」
 無情にも、大会は進行されてゆく。他の参加者たちが準備を始めるので、玉三郎も仕方なく準備をした。
大会主催者:「プレイボール!」
 大会主催者のその言葉を合図に、一斉に目の前の温泉饅頭に勢いよくかぶりつく参加者たち。
 玉三郎も甘いものが苦手なのならゆっくり食べ始めればいいものの、そこはそれ。負けん気が強いものだから、同じように勢いよくかぶりついたのである。当然、たっぷり詰まった餡が玉三郎の口の中へ入ってゆく。
玉三郎:「うぐっ?」
 1個目。玉三郎の眉が、ぴくっと動いた。
玉三郎:「むぐ……」
 2個目。玉三郎がのけぞり、喉の辺りが露になった。
玉三郎:「うー!」
 3個目。玉三郎は激しく頭を振った。
玉三郎:「むー、むー!!」
 4個目。玉三郎が激しく地団駄を踏んだ。
玉三郎:「……お……」
 5個目。玉三郎の目が、もうかなり涙目になっていた。
玉三郎:「…………」
 6個目――玉三郎生き地獄。
不死叢:「もが……はい、もっともっと頑張ってくださいよぉ! むぐ……うめえな、これ……ペースが落ちてるじゃないですかぁ! あぐ……いい餡ですなぁ……」
 玉三郎が甘いものによる生き地獄を味わっている間、不死叢は何度となく玉三郎をけしかけていた。自分用に買った温泉饅頭をバクバクと食いながら。
 というか、玉三郎より不死叢の方が明らかに食べるペースが早い。
不死叢:「むぐむぐ……熟死ー、ちゃんと撮ってるかい?」
熟死乃:「撮ってるよ」
 ビデオカメラを構えた熟死乃が、不死叢に返事をした。確かにビデオカメラは回っていた。けれども、映し出されているのは玉三郎ではなく、ほとんどが風景であった。
不死叢:「あぐあぐ……ちゃんと撮ってるんだね?」
熟死乃:「撮ってるさ」
 見事な大きさの樹木だったり、どこかへ運ばれてゆく面白い形の岩、それから立ち上る湯煙など……。玉三郎が映ってる割合より、風景が映ってる割合の方が高いというのは、どうなのだろう?
不死叢:「もぐもぐ……ちゃんと撮ってるってことでいいかい?」
熟死乃:「撮ってるって」
 自分の好きな物を撮れ、熟死乃は御満悦の様子。ま、いつものことだが。
大会主催者:「そこまで! ゲームセット!」
 やがて12個食べ切った参加者が出た所で、大会は打ち切られた。当たり前の話だが、優勝者は玉三郎ではなかった。どこか知らない人である。
 そして玉三郎の結果はというと、案の定最下位となってしまった。
玉三郎:「…………」
 玉三郎は頭を抱え、不死叢たちの所へ戻ってきた。その表情を、しっかり押さえる熟死乃。
不死叢:「玉三郎魔皇様、まだまだですなぁ」
 すっかり空になった温泉饅頭の箱を手にしながら、不死叢は玉三郎に声をかけた。

●名物・ハルフ村の温泉【3】
 ハルフ村・岩造りの露天風呂。
 英二が1人で露天風呂の中央で浸かっていた。
英二:「おおうっ!」
 英二は思いっきり両手を上げ、熟死乃のビデオカメラに向かってアピールをした。
 温泉終了。

英二:「おい、待てや! 長い間待たせておいてやっと温泉入ったと思ったら、これだけしか使われねえのかよ!」
 はい、使いません。

●名物堪能後【4】
 ハルフ村・温泉の入口前。
 うなだれている玉三郎と、憤慨した様子の英二が熟死乃のビデオカメラの前に立っていた。
不死叢:「では」
英二:「ああ?」
 バンジョー兄弟にトークを促そうとした不死叢に対し、英二は不機嫌そうに返事をした。
不死叢:「いやっ……ですからトークを」
 笑いながら言う不死叢。しかし、英二の機嫌がそう簡単に直るはずもなく。
英二:「トークしろってかい? 僕に対して、あんな酷い扱いしといてだ」
 先程の温泉での仕打ちを、まだ怒っているらしい英二。
英二:「おまけに僕の知らない間に、この人が川下りの罰ゲーム押し付けられたんだろ? 僕は一切聞いてないよ?」
 玉三郎を指差して英二が言った。
玉三郎:「……すいません……」
 肩を竦め小さくなる玉三郎。反論なんか、今の玉三郎に出来るはずもなかった。
英二:「だいたい、この旅ゴールするのか? 俺たちゃ黄金の楽器探すんだろ! これ、どんどん本筋から離れてってるぞ? も〜っ、いつもこれだよ〜っ!!」
 そうぼやく英二は、本気で嫌がってるように見えた。不死叢はそんな英二を見ながら、ゲラッゲラと笑っていた――。

【ソーン全国サイコロの旅 〜第4夜〜 おしまい】