<PCクエストノベル(1人)>
暁月夜に見る夢
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【冒険者一覧】
【 0812 / シグルマ / 戦士 】
【助力探求者】
【 なし 】
【その他登場人物】
【 戦乙女の旅団の人々、その他 】
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▼1.序章
聖獣界ソーンの中心、聖都エルザードから少し外れた何もない平原。
世界を覆う空はどんよりと重く、今にもその黒い雲の合間から雨が落ちてきそうだった。
そんな空の下を、男が一人きりで歩いていた。―――多腕族、シグルマだ。
シグルマは、酒場の酔った男から白虎模様の兜についての噂話を聞いて、次の日にはもうエルザードの城下町を出ていた。
今回は情報があまりにも少ないから、少し長引くかも知れないと。それだけを見知った連中に言い置いて。
冒険者として名を馳せることを目標にしている以上、冒険に出る準備は常に完璧だ。そして、大分旅に慣れた身であるので、まずどうすべきかもすぐに判断がついた。
まず思い付いた目指す先は、戦乙女の旅団。交易や治療など、困ったらとにかくこのキャラバンに出会えれば何とかなると聞いている。治療はともかく交易にも長けているのならば、白虎模様の兜について何か聞き知っていてもおかしくない。
シグルマ:(まあ、それ以外に今のところ目星なんかないけどな)
自分でも今まで聞いたことがないくらいなのだから、戦乙女の旅団に聞いたところですぐに大きな情報を掴めるとは思っていない。少しでも兜に近づけるような、些細な噂話でも良いから何かないものかと戦乙女の旅団を目指す。
シグルマ:「そろそろ見えてくるはず……」
兜の想像図を描きながら平原の中をひたすらに突き進んでいると、今までは一直線だった地平線にキャラバンらしき点々とした影が見えた。
シグルマ:「アレだ」
シグルマは足取りが心なしか速くなるのを感じながら、真っ直ぐ前を見据えて歩を進めた。天気は悪いが、既に兜に一歩近づけたような気がして、心の中は空とは対照的に随分と晴れやかだ。
あと少し。
あと少しで、きっともう一頭の白虎と合間見える時が訪れる。
▼2.郊野のキャラバン
近付いて行くにつれて、シグルマの目にはバタバタと慌しくテントの間を行き交う数人の人々の姿が映った。
忙しいのならば、話を聞いてもらうことは出来るだろうかと思っていた、矢先。
ぞろぞろと人が集まりだして、立ち並ぶテントを背後に守るように人垣が出来た。シグルマが疑問に思う間もなく、人々は各々武器を持って身構える。―――視線を、近付くシグルマに据えて。
シグルマ:「……は……?」
旅団の団員らしき集団は、何列か横隊を作って武器を来訪者であるシグルマに向けていた。明らかに敵視されている。
それを敏感に感じ取ったシグルマは、すぐに近付くのを止めて何とかして害を与えるつもりはないことを証明しようと考えた。
シグルマ:(どーするかな……。話だけで信用されるとは思えないしな)
かと云って、強行突破すれば良いという話でもない。
戦乙女の旅団は、皆身を守るための訓練を受けてそれなりの腕をしていると聞いている。
とにかく相手に話をしなければ始まらないと思い立つが、相手は武器を向けたきり何の動きも示さない。
それを訝しむころ、立ち並ぶ人垣の真ん中が割れて、妙齢の女性が前に―――シグルマの方へと進み出てきた。
シグルマ:「……アンタが、キャラバンマスターか?」
女性:「如何にも。お前は一体何用で此処へ?」
シグルマ:「俺はシグルマ。ちょっと聞きたいことがあって来たんだが……」
この対応は何事だ、と。
口に出さずとも相手には伝わったらしく、キャラバンマスターにしては若すぎる感もあるその女性は、少し申し訳なさそうにした後、安心したように笑った。
キャラバンマスター:「シグルマか、噂を聞いたことがある。悪かったな。今武器は下げさせるから」
シグルマ:(噂?)
何のことだ、と云いたげなシグルマは其方退けで、キャラバンマスターだと名乗ったその人物はてきぱきと指示を出し、見事と云っても良いほど綺麗に並んだ列を散らして、シグルマに付いてくるように仕草で示した。
また忙しそうに走り出す団員を横目で見つつ、大人しくキャラバンマスターに着いていくと、シグルマは、中でも一際大きなテントに通された。
キャラバンマスター:「本当にすまなかった。最近、ちょっと襲撃を受けているものだから、皆敏感になっているんだ」
シグルマ:「そうか……でも、良いのか? すぐに俺をこんなところに通して」
キャラバンマスター:「ああ、シグルマと云えばあちこちでいろいろやらかしていると聞くから。とりあえず、襲撃をするようなヤツではないだろうと思って。まあ、襲う様子もなかったしな」
シグルマ:「やらかしてるって……」
一応、少しは名が通っていると思っても良いのかどうか。非常に微妙な心持ちのするシグルマだった。
それでもとりあえず信用はされているようなので、一安心する。
シグルマ:「そう云えば聞いたことがあるな。戦乙女の旅団が、近頃モンスターの襲撃を受けてるって」
キャラバンマスター:「ああ、そうだ。どうにも何物かがモンスターを差し向けてるようなんだが……何物なのか、目的は何なのか、今のところ何も判っていない」
シグルマ:「それで、近付く者みんなああやって警戒してるのか?」
キャラバンマスター:「純粋に交易なんかを目的に来ている人には悪いと思うが……。テントや荷物を荒らされて、怪我人も絶えないしどうしようもないんだ」
シグルマ:「そうか……」
どうやら、本当に困っている様子だ。
いくら訓練を積んでいるとは云え、女性ばかりのこのキャラバンではモンスター相手に闘うのにも一苦労なのだろう。やはり男性との体格や力の差は否めない。
そして、そんな話を聞いて、例え自らの目的を果たしたとしてもそのまま帰れないのがシグルマだった。
シグルマ:「よし! 俺で手助け出来ることなら何でもしよう。今日も襲撃があるのか?」
キャラバンマスター:「え? そんな、」
キャラバンマスターが少し驚いたように断りの言葉を告げる前に、シグルマは続ける。
シグルマ:「そんな話を聞いたら黙っていられないのが俺の性格なんだ。それに、戦乙女の旅団は冒険をするヤツらから、いざというとき助けてくれると評判が良いんだ。俺も冒険者として、そんな人たちが困っていると知ったら放っておけない」
キャラバンマスターは少し呆気に取られたようにしたが、すぐに持ち直すとアハハと豪快に笑い出した。
キャラバンマスター:「いや、有り難いよ。じゃあお世話になることにしよう」
シグルマ:「任せておけ」
キャラバンマスター:「ところで、シグルマ殿は何を目的に此処へ来たんだ? 目的も果たさないで助けてもらうわけにはいかない」
シグルマ:「ああ、聞きたいことがあったんが、別に急ぎでもないし後で良い。それで、今日も襲撃がありそうなのか?」
急ぎの用ではない、というのは少し嘘だ。
シグルマは、先ほどまではすぐにでも情報を手に入れたいと思っていたのだから。
けれど今は目の前にある話題に意識をほとんど持って行かれていた。キャラバンマスターは本当に良いのか? という顔をしたが、シグルマの真剣な表情に圧されて少し考えるように今の状況を説明してみせた。
キャラバンマスター:「ああ。大抵、暗くなってから来るからな。今日も来ると思う。前から何回か襲撃はあったんだが、近頃は毎晩なんだ」
シグルマ:「怪しいな……」
キャラバンマスアー:「だろう? たまになら、こんな場所で生活しているせいだと納得もするさ。だがこう毎晩来られると誰かの指図ねなのだと疑うのも当然だろう」
シグルマ:「そうだな。何処か、集中的に襲われる場所はあるか?」
キャラバンマスター:「それがまちまちなんだ。何処に何があるか判らないせいかもしれないが、だから目的も掴めなくて……」
シグルマ:「なるほど」
キャラバンマスター:「ああ、でも荷物を狙っているのかも知れないな。このテントにはあまり向かって来ないから」
シグルマ:「そうか。じゃあ、暗くなったらどこか適当に身を潜ませてもらうか」
キャラバンマスター:「助かる。じゃあ少し待っていてくれ。他の者に伝えてくるから」
シグルマ:「おう」
少し待たされて、今度は何人かがテントに入って来る気配がした。
シグルマが入り口へと顔を向けると、入って来る人たちは皆大きな皿を抱えていて、シグルマは些かギョッとする。
女性A:「シグルマさん、マスターから聞きました。助けて下さるんですって? 本当に有難うございます」
女性B:「助かります。これほんの少しですが、どうぞお食べになってください」
シグルマ:「いや、俺から云い出したんだし、そんな気遣ってもらわなくても」
女性A:「そう云わずに。本当に皆喜んでるんですから、お礼だと思って。さっきも悪いことをしてしまいましたし」
女性C:「それに、襲撃の前に少しでも腹の足しになれば、と思いまして」
そこまで云われてしまえば、シグルマも断るわけにはいかない。流石に酒がないのが実のところ少し残念ではあったが、一暴れする前に力が出るようにと有り難く頂くことにした。
▼3.真夜中の襲撃
シグルマ:「流石にちょっと喰いすぎたかな……」
こんな野原の中、生活する彼女たちのことだ。あまり、食物は豊富ではないだろう。それなのにあんなに食べてしまって良かったのだろうか。次から次へと運ばれてくるので、シグルマは食べなかったら食べないでそれも申し訳ないとは思ったのだが。
逆に動けなくなるくらい食べてどうするのか、と己を叱咤しながらシグルマはテントの影に隠れて腹を擦っていた。
もう日はとっくに暮れて、辺りは闇と静寂に包まれている。闇とは云っても月明かりが辺りを照らしていて、夜目に慣れれば割と遠くまで見渡すことが出来た。
キャラバンの面々もまだ寝静まることなく、各テントに散らばって息を潜めていたので辺りは驚くほど静かだ。
それも毎夜続く襲撃のせいか、とシグルマが思っていると、風の音に紛れて何かのうめき声のような音が聞こえてきた。
シグルマ:(―――来たな)
周囲の団員も気付いたらしく、辺りに緊張が迸る。
身を潜ませながらも辺りを窺うと、そう離れていない場所に蠢く影があった。
そんなに大きくもなく、数も多くはないようだが間違いなくモンスターの集団だ。
シグルマが確認していつでも飛びかかれるように身構えた一瞬後、その集団は雄叫びを挙げて猛進してきた。
どっと散らばったので到底全部の相手は難しいだろうが、運が良いと云うか何と云うかシグルマの居る近くにひとかたまりの集団が突進してきた。
シグルマ:「よし!」
あんまり早く姿を現して、モンスターたちが他の方向へ向かってしまったら自分が出て行く意味がない。
時を見計らって、シグルマはモンスターの前に飛び出した。
シグルマ:「俺が相手だ! 掛かって来い!」
案の定、モンスターは引き返すこともせずに目の前に居るシグルマだけを目標物にそのまま突進してくる。シグルマはそれぞれの腕に持った剣、斧、鉄球、金槌の武器を改めてしっかりと持ち直した。
シグルマ:「うらぁ!」
周囲では団員でも数少ない男たちが率先してモンスターに立ち向かっている。しかし、流石は“戦乙女の”旅団と云うか、心なしか一緒に戦う女性たちの方が頼もしい気がする。
シグルマは余裕があるかのようにそちらを見回して、またモンスターを一瞥。斧を持った手を振り下ろし、斜め後ろに居たモンスターの脳天を直撃させる。剣を振り回した手はまた別のモンスターを標的にし、既に狙ったモンスターは押され気味だった。また別の手で振るった鉄球は、少し離れてこちらを窺っていたモンスターをふっ飛ばし、しかし、金槌だけは少し手加減して当てておく。
そんなことを繰り返していれば、段々とモンスターの数は減ってくる。仲間意識があるのかどうかは判らないが、シグルマを危険人物だとみなしたらしく別の場所で暴れていたモンスターもシグルマの方へと集まってきた。
シグルマ:「多腕族の戦士であるこの俺に向かってくるとは、良い度胸だ」
宣言通りに向かい来るモンスターを蹴散らし、いつの間にかシグルマはモンスターの身体が倒れている輪の中心に居た。
シグルマ:「もう終わりか」
シグルマがそう云って武器を収めると、一瞬の沈黙のうち、周囲の団員たちがわっと歓声を上げた。
男A:「やった! モンスターを全部倒したぞ」
男B:「一安心だ。おい、怪我人はいないか?」
女A:「ありがとう、シグルマさん。貴方のおかげです」
わいわいと夜中だというのに賑やかな面々を見て、シグルマはほっと息を吐いた。
シグルマ:「モンスターを倒しただけじゃまだ安心とは云えない。怪我人の治療も大事だが、ちょっと静かにしててくれるか? 考えがあるんだ」
テントの中に入るように仕草で示しながらシグルマは皆に伝える。
今回の件の立役者であるシグルマがそう云うならと、キャラバンの面々は騒ぐのを止めて負傷した者の治療に専念し、それぞれ近くのテントへ身を隠した。
云った本人であるシグルマは少し物陰に身を隠して、累々と折り重なって倒れるモンスターの山を窺った。
一匹だけ、わざと力を加減して金槌を一発当てただけのヤツが居たはずだ。気を失っているにしても、そろそろ目を覚ますはずである。
シグルマが睨んだ通り、もぞもぞと一つだけ影が動いて、その影はテントではなく何処かへ駆けて行こうとする。
男A:「ああ、一匹逃げる! どうするんですか、シルグマさん」
一人、シグルマの近くで同じようにモンスターを窺っていた男が慌てたようにシグルマに声を掛けた。
シグルマ:「追いかける。アンタたちは、此処で大人しくしててくれれば良い。もしまだ襲おうとするモンスターがいれば、悪いがアンタたちだけで何とかしてくれ。すぐに戻る」
シグルマは「えっ!?」と慌てふためく男を置いて、一匹だけ逃げ出したモンスターを追うべく、闇の中へ身を投じた。
▼4.闇の中の密談
先に逃げ出したモンスターを追いかけるのは、思ったより簡単だった。
何しろキャラバンの周りは平原で、あるものと言えば所々に生える気木々くらいで、それさえもまばらだった。月明かりの中の見渡しの良い平原では、モンスターがどちらの方向へ向かうのかが良く判った。
ただ、相手に自分が追っていることがバレないよう、それだけは慎重に進む。
やがてモンスターが辿り着いたのは、少しだけ木が密集している場所だった。キャラバンからそう離れていなく、走ってきた方向を見るとキャラバンの影を見ることが出来る。良く見ると木々の合間にテントが張られているようだったが、上手く茂みに隠れていて一見すると何の変哲もない、オアシスのような場所だった。
シグルマ:(こんな近くに居るなんて―――大胆だな)
だが、盲点だ。
まさかこんな近くに黒幕が居るとは、とても思えない。シグルマは茂みなのを良いことに、自分も大胆に近くへ行った。
近付くにつれて、中から男の怒鳴り声が聞こえてくる。
男1:「くそっ! もう少しであの旅団を潰すことが出来ると思ったのに……」
男2:「あれだけ毎日襲ってれば、そろそろ疲れてくると思ったのにな」
男1:「なのに何でだ!? 何で一匹だけしか帰ってこねーんだぁ!?」
男2:「まさか、あの旅団に誰か……」
シグルマ:「その通りだ」
影が二つしかないことを悟ったシグルマは、ならば楽勝だと男の声がするテントへ潜り込んだ。
男1:「なっ……何だ、お前は!?」
シグルマ:「無用心だな。こんなところで黒幕が悪事の算段をしているとは」
男2:「まさか、お前が……」
シグルマ:「モンスターなら俺があらかた倒した。一匹残しておけば敵の本拠地に帰るだろうと思ってな。睨んだ通りだ。目的は何だか知らないが、お前たちには一緒に来てもらうぞ」
男2:「へっ! まさか2対1でオレらに勝てるとでも……」
シグルマ:「思っているが?」
シグルマはわざとらしくそれぞれの武器を持ったままの四本の腕を高く掲げた。モンスターに襲わせていただけあって、男たちは自分の腕に自信はないらしく、それだけで竦み上がる。
大人しくなった男たちを日本の腕で掴み挙げて、シグルマはまた来た道を戻った。目的は聞いていないが、先程少し聞こえた話から推測すればどうせキャラバンの交易で得た財宝や、情報が目当てだったのだろう。ただどのテントに何が置いてあるか判らないから、その調査も兼ねて手当たり次第襲っていただけの話だ。情報は生身の人間が持っているものだから、盗み出すわけにもいかずに襲って疲れさせたところを突くつもりだったのだろう。
詳しい話は旅団に突き出せばあのマスターが聞き出すだろうし、シグルマの役目はヤツ等をつき渡せば終わりだ。
シグルマ:「にしても、思ったよりあっけなかったな〜」
掴まえた二人を逆上させるだけの台詞を呟きながら、シグルマはまあとにかく帰ったら酒を飲もう、と心に決めていた。もちろん、旅の荷物の中でも酒は標準装備だ。
▼5.終章 ―終決の朝―
今まで旅団を苦しめていた事件とともに、夜が明けようとしていた。
旅団の面々はシグルマがどういうつもりだったのかはきちんと理解していたようで、息のあるモンスターを縛り上げてシグルマの帰りを待ち望んでいた。
シグルマが男を二人引き摺って戻って来るのを見つけると、今度こそわっと盛り上がってシグルマを迎える。
団員A:「本当にありがとうございました!」
団員B:「コイツらが黒幕ですか」
シグルマ:「ああ、どういうつもりだったかは聞き出してないが、とにかくアンタらに引き渡そうと思ってな」
キャラバンマスター:「本当に助かった。後は私たちで何とかするので、シグルマ殿は休んでくれて良い。昼にでも宴会を開こう」
シグルマ:「良いって良いって。コイツらの尋問とか、忙しいだろ。俺はこれで失礼する」
キャラバンマスター:「しかし……」
シグルマ:「それに、昨日のうちにご馳走になったからな。アレで十分だ」
引き止める彼等を横目に見て、シグルマは振り返った。
非常に晴れやかな気分だ。天気も、昨日とは打って変わってシグルマの気分を代弁しているかのように澄んでいる。夜明けの瞬間、今が一番冷え込むが天気が良くなるだろうことは感じ取れる。
またエルザードへ戻ろうと歩いていたシグルマは、今一度キャラバンを振り返った。
きっと、彼女たちを狙うのはシグルマが捕まえた二人だけでなく他にも沢山いるのだろう。だが、とりあえず今彼女たちを苦しめる災厄の種は捕まえた。例え見返りがなくとも、人のためになることをするのは良い気分だ―――と考えて、シグルマはあることに思い至った。
シグルマ:「兜のこと……聞いてねぇ……」
そもそもそれを目的にキャラバンを目指したのに。
しかも格好つけて去ってきてしまった手前、ちょっと戻りづらい。
シグルマ:「まあ―――背に腹はかえられねぇか……」
きっとあの押しの強い連中に後押しされて、宴会とやらに引きずり込まれてしまうのだろうが。まあ、宴会なら酒も出るだろうし丁度良いかも知れない。
一度背を向けて歩いた道とも云えぬ道を引き返す。
シグルマの背後には、明るい朝が訪れていた。
-END.-
■□■ライター通信
発注ありがとうございます。ライターの那岐イツキです。
毎度ながらにギリギリの納品で申し訳ないです……。
シグルマさんの格好良さが良く出ている、書き甲斐のありそうなお話だなぁと思ったのですが、ちゃんと表現出来ているのか甚だ疑問です。
旅団のマスターの口調やらモンスターやら黒幕の目的やら、謎な部分もツッコミどころも満載ですが、少しでも気に入って頂けましたら幸いです。
シグルマさんの冒険に関しては私も応援している一人ですので、これからも是非頑張っていただきたいです。兜と早く出会えると良いですね〜。
それでは、ご活躍をお祈りしております。
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