<東京怪談ノベル(シングル)>


朱き凶星の輪舞



王国に堕ちた星は双つに割れ
蒼き秩序と朱の混沌を与えた

慈愛の絹に包まれ
穢れ無き魂を宿せしは蒼の星

幽閉の鎖に繋がれ
暗き闇の魂を秘めしは朱の星

煉獄の炎を宿し闇黒の衣を纏う
朱は蒼の影としてのみ存在を許された

忌み畏怖される朱の姿が
唯だ蒼と鏡合わせの如きが故に

螺旋の輪舞は果てなく続く
双星が其々の身を大きく成しても

海と空に育まれた綺羅の彗星は
双星の間に降りて花の円舞曲を踊り

望まれて蒼の傍らに佇むと
その灯火を一つのものとした

思いを交わした時の蒼は偽物で
入れ替わっていた朱であることも知らず

蒼を自らの片翼と信じ
朱の想いと存在を見いだすことは無かった

夢に円舞を見る朱は
現に仮面を被りて斬剣を舞う

戯れに花々の蜜を味わい
笑んで草々の叢を踏み潰す

暗い影に満ちた朱の瞳に
火を灯すのは綺羅の彗星の残像のみ

国と親と蒼を憎んで
なお彗星のためだけに朱は血の海に舞う