<PCクエストノベル(2人)>
暗闇と炎 〜ルクエンドの地下水脈〜
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■冒険者一覧■
□1125 / リース・エルーシア / 女 / 17 / 言霊師
□1112 / フィーリ・メンフィス / 男 / 18 / 魔導剣士
■助力探検者■
□なし
■その他の登場人物■
□みるく / 羽ウサギ(ちいさな友人)
□ジーク/ 子ドラゴン(好奇心旺盛)
□ネフシカ / アイテム屋「魔と謎」の店主
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人は誰しも探求心を持つ。
不思議と危険。そして、心を躍らせる未知なる出来事。すべてを内包する世界ソーン。そのユニコーン地方は、聖獣が司るまさに冒険の都。
旅人、住人、冒険者達を引きつけてやまない空と大地は、今日もまたふたりの若者にその輝く招き手を差し出していた。
先日長き冒険を終わらせたリースは、まだ胸の中でその終わりを整理できずにいた。
リース :「ねぇ、ネフシカ……レグは幸せだったのかなぁ…?」
ネフシカ:「俺には分からん。ただ、飯のネタが減ったのは確かだ」
リース :「もう! すぐそれなんだから!!」
ネフシカ:「そう膨れるな――あ! それはそうと、こんな話を
仕入れてきたぞ。聞くか?」
リース :「はぐらかそうとしてるなぁ……。まぁ、いいよ。聞いてあげる」
アイテム屋であるネフシカの元には、冒険者の心をくすぐるネタが雑多に転がり込む。彼が口にした話はこうだ。
――ユニコーン地方の南西部に小さな島がある。島とは言っても、幅の広い河に挟まれた中州のような場所。そこにルクエンドと呼ばれる地下水脈が存在する。最近入った者の中に「異界」への通路を発見した人物がいるらしいというもの。
本当かどうかは、発見者が戻るなり意識を失い、現在も夢うつつ状態であることから判断はできていない。
危険を伴う可能性は高い。しかし、リースはネフシカの言葉が終わると、どうしても「異界」への入り口を探してみたくなった。自分のためではなく、淡い想いを寄せる幼馴染のために。
リース :――もしかしたら、価値感の違う世界に行けるかもしれない。
彼が「幻翼の忌み子」だと、嫌煙されない世界があるかもしれない。
+
フィーリ:「俺も行くの?」
ジーク :「うわぁ! 楽しそー! ねぇ、フィーリ行こうよぉ。リースちゃんと
みるくと冒険なんて久しぶり〜」
フィーリ:「ジークもうるさいし……ま、暇だったから。いいよ」
リース :「ほんとに!? 嬉しいな! ――そうだ、あたしの知ってる店で準備しよう」
リースは胸が弾んだ。彼と――幼馴染のフィーリと冒険に出るのは、初めてと言っていいほど。海辺の街「タワンブラ」にあるネフシカの店「魔と謎」に連れ立って歩いた。
リースが用意したのは、地図作成用の皮羊紙とペン。フィーリは以前の冒険で手にいれたという「永遠の炎」。店を出る時、ふたりはネフシカに呼び止められた。
ネフシカ:「いいか、お嬢ちゃん。『異界』への通路に入る時にゃ、覚悟が必要だ」
リース :「わかってるよ」
ネフシカ:「戻って来れねぇかもしれない――戻ってきても、常人でいるかどうか
は疑問なんだ」
リース :「注意するから。ふふふ、ネフシカもあたしがいないと寂しいんでしょ?」
慌てふためき顔を真っ赤にして、蝙蝠族の店主は天井に張りついた。リースはその姿に笑いながら外へと出た。その後をのんびりとフィーリが追う。肩のジークがみるくの名を呼びながら飛び立った。
今にも店を出て行こうとする少年の背を眺めて、ネフシカが声をかけた。
ネフシカ:「守れよ。リースは大事な友――ゴホッ、大事なお得意様
なんだからな!」
フィーリ :「……了解」
+
闇と轟音。
差し込む光が、落ちて行く水を輝かせている。まだ入り口付近だというのに、すでに異世界といってもいいほどの不思議な空間。
天井に開いた穴からは森の緑が見えるが、視線を前方へと向けると真鍮色の岩壁が押し迫ってくる。その威圧感に負けぬよう、リースはいつもより気合いを入れて明るい声を出した。
リース :「ね、フィーリは本当に『異界』へ行けたら、どうする?」
フィーリ:「さぁ……のんびり昼寝でもするよ。じゃ、リースは何をするつもり?」
リース :「あたしは――」
問われた言葉に、リースは目を閉じた。まっすぐに見つめたいのはフィーリ。片思いの相手。本当にしたいことを告げたいけれど、勇気がない。感情を持たずに生まれた幻翼人の異変種である彼には、リースの恋心が届くとも思えなかった。今は、まだ――。
戸惑いながら目を開けると、珍しくフィーリがしっかりとリースの方に顔を向けていた。思わず、顔が赤らむ。揺らぐ炎に見え隠れする彼の赤い瞳。
リース :言ってしまおうか……。フィーリとずっと暮らしたい――って。
その瞬間だった。言葉に迷って張りついた壁が崩れた。
奥は空洞。リースは落下した。狭かった水脈の中とは思えないほど巨大なホール。リースは幻翼人の中でも特に美しい白い翼を持っている。そのはずなのに、底の見えない恐怖に開くことが出来なかった。
突然投げ出された友人を追って、ジークとみるくが飛ぶ。いや、それよりも早くフィーリが飛んだ。
フィーリ:「リース!! 掴まれーー!!」
閃く黒い翼。
恐怖に気を失いそうなりースの目に飛び込んでくる姿。隙間から零れる森の緑を背に、広げられた黒い翼。
リース :「綺麗……。やっぱり、カッコイイよ。フィーリは――」
フィーリ:「何言ってるんだよ! 早く手を掴め!」
リース :「……あ。あ! う、うん!!」
落下速度と、フィーリの翼速は同じ。辛うじて、伸ばされた指先が触れた。
一気に引き寄せられる。
羽ばたきの音。安堵の吐息。リースの耳に届く、片恋の鼓動。
今なら、彼とふたり『異界』に迷い込んでもいいと、強く願った。抱きしめられながら、を通過していく冷たい風を感じる。暖かな胸。心臓の音。
暗闇でさえ、彼の投げ出した「永遠の炎」で明るく照らされている。
リース :彼は炎。
どんなに先の見えない闇でも、身を暖め、心を揺らし、
あたしを輝かせる炎。
リースはようやく広げることのできた翼で、ホールに浮かんだ。そっと、フィーリの体が離れていく。
寂しい感覚が残される。
でも、大切にされているのだと知ることができた。あんなに必死な幼馴染の顔を、リースは見たことがなかったのだから。
フィーリ:「冒険者としての基本に欠けてるよ、リースは」
リース :「ゴメン……」
フィーリ:「あれ? 血が出てる?」
リース :「ウソ!? ど、どこ?」
慌てて体を見回す。と、フィーリの指先が右足を差した。壁と共に落下した時、瓦礫にでも当ったのだろう。リースの膝に長い裂傷ができていた。
気づいていなければ痛みを感じない場合も多い。でも、リースは気づいてしまった。
リース :「い、痛ぁーーーい! ……さっきまで、なんともなかったのに」
フィーリ:「今日はもう帰ろう」
リース :「え…で、でも――
(せっかくのフィーリと冒険……次なんて期待できないよぉ…)」
フィーリ:「し切り直し。また来ればいいよ。俺も『異界』には興味あるしね」
珍しい言葉にリースは耳を疑った。大きな目がますます丸くなる。
フィーリ:「何? 来ないの?」
リース :「う、ううん! また、一緒に来よう!!」
太陽の光を頼りに地上への道を辿る。支えてくれるフィーリの体温を感じながら、リースは思った。
リース :いつか…いつか絶対に想いを伝えよう――だって、やっぱり…好きなんだもん。
去って行くふたりの後ろで、ホールの底が水面の如く揺らいだ。
落ちた小さな石が吸い込まれて消える。
『異界』の扉は、彼らふたりを見守るように再びその鍵を閉じた。
それは誰も知らない闇の出来事。
僅かにフィーリの手放した「永遠の炎」が照らすのみ――。
□END□
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いつもありがとうございます♪ ライターの杜野天音です。
リースの冒険を再び書くことが出来て嬉しかったです。しかも、フィーリも一緒なので書き甲斐がありました(*^-^*)
如何でしたでしょうか?
リースの淡い想いがいつかフィーリに届くことを祈っています。ちなみに、今作ではリース良いとこなしですね。
設定上で使ったと言えば、フィーリの黒い翼くらいなので冒険とはいいにくいかもしれません。うむむ。
楽しんで頂ければ幸いです♪ ありがとうございました!
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