<PCクエストノベル(2人)>
子供達の行方を追え!〜ルナザームの村〜
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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】
【1117 / 多寡道(たかみち) / 鬼道士】
【1054 / 刀伯・塵(とうはく・じん) / 剣匠】
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●序章(…かもしれない)
聖獣界ソーン。
数多の世界から様々な人達が集う世界。それぞれの世界からもたらされた多種多様な文化技術が幾つも入り混じり、ある種独特な世界観を形成している。
そして、この世界を特徴として上げられるのが、36の聖獣によって守護された世界であるという事。
その中の一つ、ユニコーンが守護する地域の中央部にある聖都エルザート。様々な人間が集まってくる街には、それこそ星の数ほどの出来事が起こるというわけで。
その事件を耳にしたのも、そんな背景があってのことだろう。
何故ならば――
塵:「……いいから早く始めてくれ」
苛立ったツッコミが入ったな。
失礼、話を始めようか。
まずは舞台はここ、エルザートの街から始まった――。
●第一章〜お父さんは心配性?〜
苛つく男は、あっちをうろうろ、こっちをうろうろしながら、落ち着かない気持ちのまま頭をクシャリとかき回す。
男の名は、刀伯・塵。
かつて中つ国という世界で、サムライをしており、ふとした拍子にこちらの世界に紛れ込んでしまったようだ。でかい図体に似合わぬ苦労性な性格が災いしてか、しなくてもいい面倒事まで抱え込んでしまう。
やれやれ、相変わらずのお人好しだ。
塵:「うっせぇよ」
そこ、ナレーションに突っ込まない。
……そんなワケで(どんな訳だ?)、今も彼は、エルザートで最近多発している事件に首を突っ込んでいた。
小さなお子様の誘拐事件。
別に彼自身の子供が誘拐された訳ではない。確かに六人も子供がいる彼だったが、別にもう子供自身は小さくもないし、一人は幽霊(ぇ)だったりするのだから。
だからといって見過ごす事など、この男に出来るわけがなく。
塵:「しょうがねぇじゃないか。誘拐された子供の親はなぁ、それこそどんな想いでいることか!」
ああ、うん。そんな力説しなくても。
親御さんの悲痛に思いっきり感化された彼。実際のところ、その気持ちは他人事ではありません。
そして、彼は立ち上がりました。
ちょうど偶然、自分の住処にぶらりと立ち寄った、俺様青年を無理矢理に巻き込んで。
多寡道:「ったく、人使い荒いおっさんだよなぁ」
塵:「うっさい! そんなコトより、どうだったんだ? 子供達の行方は見つかったのか!?」
多寡道:「ちょ、ちょっとマテ。んなに焦るなって」
塵:「早くしないと子供達は……」
多寡道:「いいから少しは落ち着けって」
塵:「こ、これが落ち着いていられるか! 親御さん達は、子供達を心配に思うあまり、今にも倒れる寸前なんだぞ!!」
多寡道:「いや、あんたが倒れそうだぞ、おい」
塵:「俺の事はいいんだ! 早く子供達の居場所を――」
多寡道:「いいからちょっとは……どわぁぁっ!」
ちょうど帰ってきた俺様青年……もとい、ラセツと呼ばれる種族の青年・多寡道は、子供達を心配するあまり、思い余って詰め寄る塵を問答無用で蹴り退けた。
ゴン、という大きな音が壁にぶつけた塵の頭から響く。まあ、お互い頑丈に出来てる身、その程度で意識を失いはしない。
多寡道:「ったく、旦那も相変わらずだな。ちったぁ、落ち着いて人の話、聞きやがれ」
塵:「ぁ、ああ……すまん」
多少、気が落ち着いたのか、今度は一転してシュンと落ち込んだ影を見せる。
そもそも、塵自身何もしないでいたわけじゃない。
それこそ地道な聞き込みやローラー作戦といった物理的なものから、思念投射に心眼といった己の特殊能力など、ありとあらゆる手段を使って、子供達の行方を捜したのだ。その時の彼の様子は、まさにプライドもなにもあったものじゃなく、さすがにここに記すのを憚られるものあった事を付け加えておこう(苦笑)。
だが、肝心の後一歩がどうしても届かない。足取りは掴めたものの、最終的な行方が分からない。
だからこそ、最後の望みを託して、多寡道の帰りを待ち侘びていたのだ。
塵:「で、どうだったんだ?」
幾分虚ろな目で見上げる塵に対し、やれやれと髪を掻き上げる多寡道。そして、僅かの間をおいて、彼はニヤッと笑みを浮かべる。
その瞬間。
落胆した塵の顔に、一筋の光明が射した。
多寡道:「へっ、この俺様をなめんなよ。生憎と手ぶらで戻ってくる程、落ちぶれちゃあいないんだよ」
どこまでも高飛車な科白だが、今はその姿すら後光が射しているように塵には見えた。
……例え、普段のどこまでいっても傲慢な態度が鼻についていたとしても。
多寡道:「…………ぉい!」
塵:「お、ああすまん。つい口に出てたか」
多寡道:「……まあ、いい。んじゃあ、とっとと行くぜ」
塵:「は? 行くってどこへだ?」
多寡道:「んなの、決まってんだろうが。行方不明になった子供達の居場所……ひいては、誘拐犯のヤサってトコだな」
塵:「そこまで分かったのか!?」
多寡道:「だーかーらー、この俺様に不可能はねぇって」
驚く塵。
その表情に満足なのか、ふんぞり返って威張る多寡道。
……まあ、いい。今は見逃そう(ぇ)。
まずは子供達を助けないとな。そんな塵の思考は、すでに犯人をボコボコにしている図が浮かんでいる。
塵:「おっし。多寡道、さっそくそこへ案内してくれ!見てろよ、子供達を攫うような連中は、この俺がぎたぎたに叩きのめして……」
血気逸る塵の様子に、「あー…」と呟いたきり、多寡道は思わず押し黙る。ぼりぼりと頭を掻いて、なにやら気まずそうな表情だ。
多寡道:「塵の旦那、それなんだがなぁ……て、おい?」
気がつけば、そこに塵の姿は既になく。
パタン、パタン、と観音扉が力無く揺れているだけだった。
●第二章〜いざ突撃、と思いきや…〜
塵:「……で? いったいどういう事なんだ?」
多寡道:「いや、見ての通りだろ」
茫然自失。
ひゅるりと音を立てて風が吹く。
そんな効果音がぴったりの現状に、塵の呟きは誰のツッコミも入らずに、多寡道によってあっさりと肯定された。
目の前には、泣き崩れる男が一人。「すいません、すいません」を何度も繰り返し、ただただ土下座をしている。その彼を脇で二人の女性が、同じように二人に向かって謝り続ける。
「園長は悪くないんです」「私達が」「どうしてもってお願いしたから」「さすがに一人もいなくて…」「でも、夢だったから」
ステレオで聞こえる声は、どうやら言い訳のようで。
それを理解するたびに、塵の気負いが一個ずつ萎えていく。勢いづいて乗り込んで来た筈なのに、だ。
多寡道:「だから俺が言ったろ。そんな凶悪犯なんていないって」
塵:「んなもん、いつ言ったぁ!」
多寡道:「旦那がさっさと出ていっちまったんだろ!」
それを言われると、返す言葉がない塵。
塵:「で、結局いったいどういう事なんだよ……」
幾分疲れた声で、再度状況説明を求めると、怒濤のようにさめざめと涙に濡れた言い訳の三重奏が、塵の耳に響き渡った。
――要約するとこうだ。
ここは、聖都エルザートから南下したところに位置するルナザールの村。そこに住む一人の若者が、とある夢を持っていた。幼稚園の先生になる事である。
昔から、子供達の世話をしてきた彼にとって、愛すべき子供達を親身になって育てる事に、自分の生き甲斐を見出したのだ。やがてその夢に賛同した二人の女性と一緒に、生まれ故郷であるルナザールの村でめでたく新しい幼稚園を開園することが出来た。
そこまでは、微笑ましい話。
問題はここから。
元々漁村としてのこの村は、年々過疎化が進み、子供が殆どいなかったのだ。
そのため、新しく開いた幼稚園に入ってくる子供もなく、まさに閑古鳥状態の日々がずっと続いていたという。
塵:「…………あーそれで? まさかとは思うが……」
どこか呆れた塵の声。
隣で聞いてた多寡道に至っては、大きな欠伸をしつつ既に船を漕いでいる。眠りという名の大海原に、今正に船出しようというところだ。
塵に思いっきり肘でどつかれて、敢えなく断念したが。
……三人の話はまだ続く。
園長:「このままでは園を続ける事が出来なくなってしまうんです」(塵:「いや、すでにそれって続けるどころの話じゃないだろ?」)
先生A:「私達、子供が大好きなんです」(多寡道:「いや、それってなんか言い方、危なくないか?」)
先生B:「子供達と一緒に、ずっと遊んでいたいんです」(天の声(ぇ):「それってなんかどっかの国で今話題――(検閲削除)」)
園長:「園児がいなくて……本当に僕達、困っていたんです。それで、ある日エルザートの都に行った時、ふと歩いてる子供達が目に入って……あんな子が幼稚園に入ってくれたならって思ってしまって……」
なんという真実!?
子供達を愛するがあまり、その手を罪に染めてしまうとは。
塵:「て、マテ! そんな理由で子供達を攫っていうのか!?」
怒ればいいのか。泣けばいいのか。
ある意味、笑い話にもならないお話。
それで子供達は、と塵が尋ねると、ちらりと園長の視線が背後の建物に移る。つられて視線を向ければ、そこでは誘拐されたと思われる子供達が、元気いっぱいに遊んでいる姿が目に入った。
その様子を見てしまった塵は、ますます怒れなくなってしまった。
塵:「……あーもう、なんつうか……」
とりあえず子供達は返してもらうぞ。
塵の言葉に、反省しきりの三人は間髪入れずに「申し訳ありませんでした!」と合唱した。
●第三章〜お父さんは苦労性(……はぁ)〜
塵と多寡道の手によって救出(?)された子供達は、無事に親御さんの元へと届けられた。三人の若者達はすっかり反省し、もう二度としない事を二人に誓った。
――と。
そこで終わっていれば、話は大円団で幕を閉じたのだが。
お人好しを地でいく塵にとっては、どうやらまだまだ厄介事を背負い込んでしまったようだ。
塵:「つうかさ、むしろ救済が必要なのは、この幼稚園だろ」
多寡道:「だからってなんで俺まで……ッ!」
塵:「乗りかかった船だ。ここまで来たなら、お前も手伝うのが人情だろうが」
多寡道:「俺は命令されんの、大嫌いなんだよ!」
俺様青年の反論もあっさり無視して、ずるずると彼を引っ張る塵の行く先は、エルザードの都の中心にある広場。その手にはどっさりとチラシを山ほど抱えている。
そのチラシには、デカデカと『ルナザール村に新たな幼稚園が開園! あなたもお子様をのびのびとした環境で育ててみませんか』と書かれていた。
多寡道:「旦那ぁ、なんで俺らがここまで」
塵:「しょうがないだろうが。あの園の窮状がどんなのか、知っちまったんだから」
多寡道:「いや、だからって」
塵:「うるせぇ。性分なんだよ」
多寡道:「…………」
結局。
困っている人を見捨てておけないのは、今も昔も変わらずで。
子供が集まらない幼稚園の為に、彼は一肌脱ぐことを決めたのだ。とはいっても、手伝える事といえば、こうしてチラシを作って都で人を募集するぐらいしか思いつかなかったのだが。
塵:「それでもやらないよりはマシだ……」
呟きは、隣でブーブー言う文句に隠れて消えた。
途端、拳骨が多寡道の頭に直撃する。
多寡道:「いってぇ――ッ!」
塵:「ここが終わったら、次は別の街に行くからな」
多寡道:「ちょ、ちょっとまて! まさか旦那、この辺の街全部にチラシを配る気じゃあ……」
青ざめる彼の目に、真剣な塵の顔が映る。
タラリ。
冷や汗が背中を流れた。
多寡道:「お、俺ぁ……」
塵:「ほれ、お前の分だ」
そうして渡されるずっしりと分厚い量。思わずよろめきかけたことからいっても、ちょっとやそっとの重さじゃない。チラシ自体はこんなに薄いというのに。
いったいどれだけの枚数があるというのか。
多寡道:「俺が何をした――――ッ!!」
塵:「ルナザール村の幼稚園、宜しく頼むぜ」
絶叫と、勧誘が。
いつまで続いたのかは……神のみぞ、知る?
※ライターより
すいません。折角発注して下さったのに、遅れてしまって申し訳ありませんでした。
久々のサムライだったというのに、うまく表現できずになんだかなぁ〜て感じで(汗) ひょっとしてもう忘れてる? と思わず一人で焦ってもみたり……(ぉい)
多寡道さんは書いた事ありましたが、塵さんは……初めてですよね?(マテ) 改めまして初めまして、葉月です。この度は、依頼して下さり、ありがとうございました(ぺこり)。
ご希望どおりギャグを……目指していたのですが、なんだか中途半端、な気がしないでもないかもしれないかも(て、どっちやねん)。
なにはともあれ、満足してくださるといいのですが……(苦笑)
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