＜聖獣界ソーン・白山羊亭冒険記＞
魔法人形のダンジョン
------＜オープニング＞--------------------------------------
そこは、エルザードの中心部にひっそりと建つソラン魔道士協会の一室である。協会の制服である古風な黒ローブを纏った魔道士ウルは、今日も協会の雑務をこなしていた。そんなウルの部屋がノックされた。
「ご無沙汰しています、ウルさん」
ドアを開け、自分にそう話しかける少年に、ウルは見覚えがあったが、彼に『ご無沙汰しています』と言われる覚えは無い。彼とは毎日顔を会わせているはずだ。
「ニール…かい？」
ウルは不思議そうに、自分の弟子である少年の名前を呼んで、首を傾げた。
…やはり、おかしい。ニールは自分の事を、『ウルさん』とは呼ばない。それにニールにしては妙に落ち着いていると言うか、風格のようなものがあるとウルは思った。まるで、幾つもの修羅場を潜った大人のように…
そうして少し考えたウルは、目の前に居る少年の素性に思い当たった。
「ああ…そうか。
あなたは、人形師ベルクマッシェのコピー人形…魔法人形の王か。
一体、どうしました？
人形の街に、何か問題でも？」
珍しいと言えば、珍しい来客である。普段は沈着な青年であるウルも、少し驚いた。
彼の目の前に居る、彼の弟子と同じ姿をした少年は人間では無かった。人間の能力と記憶をコピーする能力を持った魔法の人形で、魔法人形達の王でもあった。
「ウルさん、何だか気恥ずかしいんで、あまり、僕にかしこまった話し方をしないで下さい。
僕は物理的にはあなたの弟子ではありませんが…でも、あなたを師匠と思う心を持っているんですから」
かつて、ウルも関わった幾つかの事件の後、人形はウルの弟子、ニールの能力と記憶をコピーした。今の彼は人形王のニール・コピーである。彼はウルの事を師匠とは呼べないが、心の中ではウルは師匠だった。
そんな彼は、人形師の迷宮内にある魔法の人形達の街で何となく王をやっているはずなのだが…
「いえ、特に差し迫った問題は無いのですが、良かったらウルさんに冒険者の方を紹介してもらおうかと思いまして…」
と、ニール・コピーは話を始めた。
ニール・コピー達、数千体の人形は、現在、自分達の街の周囲に広がる地下迷宮の一角を改造中だそうだ。
「将来的には近所の冒険者協会にダンジョンの一部を、初心者講習用ダンジョンや上級者の遊戯用ダンジョンとして売り込んだりしようと思いまして、今、戦闘用の機械人形や罠を設置しているんです。
ですけど、どれ位の難易度にしたら良いか、いまいちわからなくて…
だから、実際に冒険者の人に挑戦してもらいたいなーと思ったわけです。
もちろん、死人が出ないように精一杯サポートはします」
コピー人形は説明をした。
「なるほど、そういうダンジョンがあっても良いかもしれないね」
魔法人形達は、安全がある程度保障されたゲーム的なダンジョンを作ろうというわけだ。ニールのオリジナルの方に、その発想を学ばせたいものだとウルはため息をついた。
ともかく、ニール・コピーはニールでは無いがニールでもある。ウルにとっては可愛い弟子のようでもあった。ウルは冒険者の手配をしてやろうと思った。二人は、それから話を煮詰めていく。
トントン。
ある時、部屋のドアが軽くノックされた。
「師匠ー、頼まれてた冬祭り用の魔道暖気石５０個作ったんですけど、こんな感じで良いですかー？
って、あれー！？
コピー君！
お久しぶりです、元気ですか？」
今いち頼りなさ気に声を上げ、黒ローブの少年が部屋に入ってきた。ニールである。彼は、どこにでも居そうな見習い魔道士の少年以上でも以下でも無かった…
(依頼内容)
・魔道士ウルが、魔法人形達のダンジョンに挑戦する冒険者を探しています。誰か何とかして下さい。
・難易度は高そうだけど、命まで落とす事はほとんど無さそうなので、誰か来て欲しいらしいです。
・基本的に見習い魔道士のニールは同行したがっています。一方、魔道士ウルは人形の街で留守番したがっています。
・今回の依頼は参加者の方が５人以上集まるようでしたら、特に希望が無い限り、最大４人程度のグループで別個にダンジョンに入る形式で作成します。
０．人形師の街へ…
外壁に守られた街に出入りする時は、街に忍び込む盗賊でも無い限り、通常は街の門を通る必要がある。エルザードも例外ではない。
大きな街の例に漏れず、エルザードは人の出入りも物の出入りも激しい。それらが行きかうので、エルザードの門の周りはいつも人手溢れていた。
今も、エルザードを離れようとする者達が門から少し離れた広場に集まっていた。
十数人程の雑多な一団である。年齢、性別は元より、種族にも統一感が無い団体だった。
団体は人形の街のダンジョンへ向かう、冒険者(含む自称)の一行である。
「師匠。結構、色んな人達が集まりましたねー…」
広場に集合し、ざわざわと騒いでいる一行を見渡しながら囁いたのは見習い魔道士ニールだ。
「うん。人間じゃない方も結構居るみたいだね…」
ニールに囁かれた魔道士ウル、ニールの師匠である彼は、ニールに囁き返した。
魔法人形のダンジョンに挑戦する冒険者達を集めたのはウルだったのだが、その彼自身、想像以上にバラエティに飛んだメンバーが集まった事に少し驚いていた。
やがて、、一行はエルザードの街を離れ、魔法人形のダンジョンへと向かった。
道中、みんなで相談しながら話した結果、魔法人形のダンジョンには４人程度のグループに別れ、何度か入る事にした。
そうして色々なパーティで挑んだ方が、ダンジョンのテストになると思えたからだ。
パーティの構成は、くじ引きその他で適当に決め、以下のようになった。
最初のグループ→シグルマ、フェイルーン、ケイシス、ニール(１回目)
２番目のグループ→ニコラス、シェアラ、ロイラ、スラッシュ(２回目)
３番目のグループ→葵、コルネリア、エルダーシャ、フィセル
４番目のグループ→アイラス、ロミナ、鬼灯、ニール(３回目)
今の所、事後の整備時間も含めて、１日に１パーティずつしか潜れないそうなので、人形の街への滞在は少なくとも四日以上になる予定である。
…問題が起きないと良いな。
魔道士ウルの悩みは尽きなかった。
１．順番待ち…（４番目のグループ編）
数日後、一行は人形の街に到着した。
少しややこしいが、人形の街は人形師のダンジョンと呼ばれるダンジョンの一角に存在する、数千体の人形が住む街である。これから一行が潜ろうとするのは、その人形の街の周辺、つまり元々人形師のダンジョンであった場所を人形の街の魔法人形達が改修した場所である。一行は、順番にダンジョンに乗り込んでいった。
軽戦士のアイラス・サーリアス、傭兵戦士のロミナ、護鬼の鬼灯達がダンジョンに乗り込むのは最後の４番目である。三人は順番待ちの期間を人形の街を歩いて過ごしていた。
「いやー、本当に魔法人形さんが一杯いますねー」
当然と言えば当然の事を、アイラスは呟いた。彼は明らかに観光客気分である。アイラスは街を見渡した。人形の街は基本的には普通の街に見えた。ただ、建物の造りがやけに古風だった。それこそ１０００年前に流行ったような建物が並んでいる。まあ、１０００年前に造られたのだから当然と言えば当然なのだが。
「そりゃ、魔法人形達の街なんだから、たくさん居るに決まってるさ」
不機嫌そうに答えたのはロミナである。頭に生えている雄牛のような角が、彼女が魔族である事を証明していた。彼女のお目当てのニールが先にダンジョンに行ってしまったのが、彼女が不機嫌な理由のほとんどである。それでも、見習い魔道士のニールは修行の為に、最初と最後の２回程ダンジョンに潜る事になっていて、２回目はロミナ達と一緒なのだが。
「ま、まあ、そうですよね」
なんだか怖そうな人と一緒になったなー。と、アイラスは苦笑している。
もう一人のメンバー、鬼灯はといえば、あまり口を開かずに二人と歩いている。この街の人形達とは少し種類が違うが、やはり人形である鬼灯には思うところもあるようだった。この三人にニールを加えたメンバーが、四番目にダンジョンに潜るグループになる。
「ところで…ロミナ様は、この街が誕生した時の事件に関わってるとお聞きしたのですが、少し話を聞かせて頂けませんか？」
鬼灯がロミナに言った。
「ああ。構わないよ。別に、大した話じゃないさ」
ロミナは、以前の事件の事を話す。
「大昔、魔法人形をいっぱい集めた街を地下に造ってに住もうとしたマニアの魔道士が居てね、結局、完成出来ずに死んだらしいんだ。
それで、今になって、街の王になるはずだった人形が動き出して、この街を完成させたのさ」
「なるほど…
大昔に作られるはずの街だったから、古代遺跡みたいな街の造りになってるわけですね」
アイラスが納得している。
「本当に、馬鹿馬鹿しい事件だったね。
怪しい人形があっちこっちを回ってるって言うんで、色々探しまくって、最後にこの場所を突き止めて乗り込んでみたら、『これ』だからね」
少し懐かしそうに、ロミナは言った。
「でも…ここの人形達が仕えるはずの魔道士様は大昔の人物ですし…今、生まれたとしても、どうすれば良いのです？」
鬼灯が魔法人形達の行く末に、首を傾げている。
「主が居ないんじゃ、静かに眠りにでもつくか、それとも延々と暇つぶしをするしかないだろうね。
ま、人形達が勝手に決める事さ」
実際、魔法人形達の一部には、誕生した時から何もせずに眠りにつくことを選んだ者も多いそうだ。
「暇つぶしの答えの一つが、この街を観光地として造っていく事であり、今回の魔法ダンジョンというわけですね」
アイラスは察しが良い。
「暇つぶし…ですか…」
誕生した瞬間に目的を失った人形の生き方は、鬼灯にとっては感慨深い。
「…さてと、それはともかく、せっかくですし街をもうちょっと見て回りませんか？
ダンジョン攻略の情報集めになるかも知れませんしね」
「そういう面倒な事は、柄じゃないね。お前達に任せるよ」
「はい、行きましょう」
アイラスの言葉に、ロミナと鬼灯は正反対の対応を示した。ロミナは宿に帰り、アイラスと鬼灯は情報集めも兼ねて街を歩く事にした。
街を歩いた二人は、ある意味で恐ろしさを感じた。
普通なのである。
人間の街と変わらない、普通の街なのだ。ただ、歴史の教科書にしか載っていない建物や品物があったり、住人が人形である点だけが異なっていた。
鬼灯は人間になる方法を求めているので、その事について何体かの人形に訪ねてみた。
「僕は、生まれた時から人形だから人間になりたいとは思わないよ。
人間になる方法も…わかんないや。ごめんね」
ある、男の子の姿をした人形は鬼灯に答えた。
「でも、僕は男の子の人形で、壊れるまでずっと男の子だからね。
大人の人形になったり、女の子の人形になってみたいって思う事はあるよ。
そういう方法がわかったら、教えてよ」
男の子の人形は笑っている。与えられた物なのか自ら芽生えた物なのかはわからないが、そういう心を持った人形だった。
「うん、約束するよ」
と、アイラスは言った。
…ここの人形達は生まれた時から心を持った人形。
元が人間の私とは、少し違うのかもしれない。と鬼灯は思った。
…でも。
「鬼灯ちゃん、元は人間だったの？
どうやったら人形になれるか教えてよ」
人形は鬼灯に尋ねる。
…違うのは、ほんの少しだけ。
鬼灯は魔法人形達と話していて思った。
そんな風にして、３人は自分達がダンジョンに乗り込むまでの期間を過ごした。
やがて、初日のグループは予定外の区画に迷い込んだ末に帰ってきた。
２日目と３日目のグループは無難にダンジョンを探索してきたそうだ。
４日目のグループがどうなるかは、まだわからなかった…
２．魔法人形のダンジョン
「それじゃあ、気をつけて下さいねー」
ニール・コピーの声援を受けて、４人はダンジョンの入り口のドアを開けた。
なるほど、魔法人形達が手を加える以前、元々人形師のダンジョンであった区画と同様、魔法人形のダンジョンも比較的無難な石材を基調にして構成されている。さすがに魔法人形達も、そこまで根本的に改造はしていないらしい。
「じゃあ、ドアを閉めますね」
アイラスが言って、入り口のドアに手をかけた。ドアは重い音をあげて閉じていく。ダンジョン内の仕掛けが暴走した時に街に影響を及ぼさない為に、入り口のドアは非常に丈夫な造りになっていた。それこそ、光を一切通さない位だった。入り口のドアが閉じると、周囲は闇に包まれた。
「おい…何も見えないぞ？
ニール、とりあえず明かりをつけな」
大してあわてた様子もなくニールに言ったのは、ロミナだ。
「はいー…
すぐ、明るくしますねー…」
ニールはすぐに魔法の光を起こした。
「ちょっと驚きましたねー、いきなり真っ暗になるとは思いませんでした。
まあ、ダンジョンなんだから暗いのは当たり前なんでしょうけど…」
アイラスは用意してきたランタンに明かりを灯した。
「そうですね。ドアを閉めただけで、こんなに真っ暗になるとは思いませんでした」
入り口のドアを一枚挟んだ向こうに、人形の街が広がっているとは思えないと、鬼灯は言った。ダンジョンとしての緊張感は感じられる暗さだった。
何だか騙された気分だったが、四人は歩き始めた。隊列は四人の性格的な事もあり、放っておくとどこまでも勝手に突き進みそうなロミナを先頭にして、自然と他の三人がサポートするような形になった。
まず、最初の部屋のドアを開ける。
あまり特徴の無い部屋だった。強いて言えば、戦えと言わんばかりに大蛇を模した人形が部屋に配置されている事が特徴だった。
「うーん…最初の部屋ですし、倒さないと何処にも行けませんよねー」
「そりゃそうだろう。
というか、最初の部屋から逃げる事を考えるような奴はダンジョンなんかに入るな！」
「まあ、確かにそうかも…」
アイラスとロミナが、それぞれ武器に手をかける。
軽戦士のアイラスは防御を重視したサイを両手に、腕力を重視したロミナは大型の斧のような物を持っていたが、スペースの限られるダンジョン内だけに、大型の武器は少し使い辛そうだった。
大蛇はアイラスとロミナの二人を敵と認め、無機質に体を向けた。
ニールは援護の魔法が必要かどうか、いまいち判断が付かずに様子を見る。鬼灯に至っては、戦闘に関しては体の構造を変化させた重火器を主な攻撃手段としているので、屋内では使用が難しく、やはり様子を見ていた。
身軽なアイラスがサイを構えて、大蛇の人形に肉薄した。大蛇はアイラスに牙を向ける。
だが、彼は武器を振るう事も無く、そのまま横に飛んだ。
大蛇は体に似合わない俊敏さでアイラスを追い、彼に体当たりする形になった。
…あれ、思ったより速いな。
ちょっとマズイかも。とアイラスは思った。
だが、大蛇の動きは、アイラスに続いて走るロミナに無防備な腹を向ける事にもなった。その為の、アイラスのフェイントでもある。
ロミナは大蛇に向かって斧を振るう。
大蛇の人形は、その一撃で真っ二つに裂かれた。
「あいたた…思ったよりも身軽な人形ですね」
アイラスは大した怪我は無いようで、すぐに身を起こした。
「そうだね。まあ、それでも魔法の援護が必要な相手じゃなかったね」
様子を見てて正解だったぞ。とロミナはニールを褒めた。力づくで物事に当たる事を得意とするロミナだったが視野は広い。彼女は常にニールの動向を掴み、不慣れな彼に指示を出すつもりのようだった。
だが、
「皆様、油断なさらず！
あの自動人形様は、まだ完全には壊れておりません！」
鬼灯の、彼女にしては厳しい声が飛んだ。
彼女の言葉を受けたわけでも無いだろうが、再び大蛇の人形は動き出そうとする。
「冷たく切り裂く風よ…」
そこにニールの風の攻撃魔法が当たり、今度こそ大蛇の人形は戦闘不能になった。
「上出来だ。悪くないタイミングだよ」
ロミナはニールの髪をくしゃくしゃと掴んで褒めた。
「痛いです、ロミナさん…」
「それじゃあ、少し部屋を調べましょうか」
アイラスは部屋の様子を調べながら言った。
ロミナは力任せに突き進む性格だ。逆に、アイラスは逃げられる時は逃げましょうというスタンスだった。鬼灯はマイペースに、戦闘用の人形や機械的な罠の観察を行っていた。自分も自動人形だけに、鬼灯はそういったものに詳しかった。いまいち頼りないニールの魔法の援護まで加えると、一応、バランスのとれたパーティではあった。
そんな調子で、四人は魔法人形達が仕掛けた機械的な罠や戦闘用の自動人形を退けながら進んだ。
しばらく進んだ部屋で、四人は何度目かの小休止をとった。皆、そろそろ疲れが見えている。ロミナはあまり疲れていないようだったが、特にニールの疲労は濃いようだった。
「ニール様…大分顔色が悪いようですけれど大丈夫ですか？」
休憩中、鬼灯がニールに尋ねた。
「はい…ちょっと疲れただけですから…大丈夫です…」
ニールは、ぜいぜいと息をついている。
「ニールさん、初日、二日目とダンジョンへ行ってますからね。
あんまり無理しない方が良いかも…」
昨日は１日休んだようだが、それでも丈夫な方とは言えないニールは大分疲労しているようだった。もっとも他人事ではなく、アイラスも疲労の色が濃かった。
「そうだね。手抜きは許さないけど、あんまり無理しない方が良いね」
ロミナが、うんうん。と頷いた。
「ロミナ様…そう思われるのでしたら、ニール様に肩揉みなどさせない方が…」
鬼灯が言った。ニールは先程から、ロミナに言われて肩を揉んでいる。
それは確かにそうだ。と、ロミナ本人も思った。
「いえいえ、大丈夫です。
ロミナさんに会うのも久しぶりですから、サービスです。はい…」
ニールは疲れた顔で言った。悪い意味での人の良さは師匠に良く似た男だ。
「しかし、確かに大分疲れてるようだね。
…仕方ない。
うちの一族に伝わる疲労回復の儀式を伝授してやるから、ちょっとこっちに来な」
ロミナは有無を言わさず、ニールを別室へ連れて行った。
後にはアイラスと鬼灯が残った。
「魔族の疲労回復の儀式とは、何をなさるのでしょうか…？」
「さあ…」
アイラスと鬼灯は、ロミナ達の帰りをのんびりと待った。２人も大分疲労していて、口数は少ない。
やがて、ロミナとニールが帰ってきた。
「あの、どんな儀式をやって…いえ、やっぱりいいです」
何故かニールの首にキスマークが付いている。アイラスはあまり深く尋ねない事にした。
「…とは言うものの、さすがにニールは限界みたいだね。
所詮お遊びのダンジョンだし、そろそろ帰るかい？」
ロミナが言った。
「そうですね、無理する事は無いと思います」
「わたくしもそう思います」
アイラスと鬼灯は、あまり無理をする性格では無い。
四人は、そのまま街に帰ることにした。
３．事後報告
「…ああ。コピーとはいえ、可愛いニールの頼みだったしね。元々受けてやるつもりだったから、あんたは気にしなくていいさ。
それより、あんたの頼み通り、ニールの戦闘訓練もしといてやったよ。ま、言われなくても色々教えてやるつもりだったけどね。
…まあ、ニールが死なない程度にガンガン行っといたよ。
時には、あたしみたいなのが師匠としてふさわしい場面もあるさ。それをわかってるから、あんたもあたしにニールの指導を頼んだのだろ？
とにかく約束通り、帰るまでの間、もうしばらくニールは借りておくよ。
…なに？力づくは良くない？えーい、そりゃ余計なお世話だよ！」
そうしてロミナはウルに依頼の報告をした後、ニールの所に行った。
「念の為聞いておくけど…お前、コピーじゃないだろうね？」
ロミナはニールに尋ねる。以前の苦い記憶が頭をよぎった。
「は、はい。本物ですよ」
疲れたなー。と、ニールはぐったりしている。
「よし。それなら良い。
じゃあニール、今回は疲れだろう。あたしが良い所に連れてってやるよ」
今回、コピーに浮気しなかったんだから、あんたも誠意を見せな。と、ロミナはニールをお姫様だっこにした。
「あの…どこ行くんですか？」
「良い所だよ」
「そうですか…」
その後一行が帰路につく時まで、ロミナとニールの姿を見た者は居なかった…
(完)
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■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
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【整理番号 ／ ＰＣ名 ／ 性別 ／ 年齢 ／ クラス】
【1649／アイラス・サーリアス／男／１９才／軽戦士】
【0401／フェイルーン・フラスカティ／女／１５才／魔法戦士】
【1194／ロイラ・レイラ・ルウ／女／１５才／歌姫】
【0812／シグルマ／男／３５才／戦士】
【1514／シェアラウィーセ・オーキッド／女／１８４才／織物師】
【0781／ロミナ／女／２２才／傭兵戦士】
【1091／鬼灯／女／６才／護鬼】
【1720／葵／男／２３才／暗躍者】
【1739／コルネリア／女／５才／家事手伝い】
【1780／エルダーシャ／女／９９９才／旅人】
【1378／フィセル・クゥ・レイシズ／男／２２才／魔法剣士】
【1805／スラッシュ／男／２０才／探索士】
【1754／ニコラス・ジー二アン／男／２２０才／剣士】
【1217／ケイシス・パール／男／１８才／退魔師見習い】
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■ ライター通信 ■
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おひさしぶりです、ＭＴＳです。
今回は無計画に窓を開けすぎて、時間的に収拾がつかなくなってなってしまいました…
内容に関して、今回のロミナはウルから別の依頼を受けていたようです。
プレイングを見ていたら、こんな感じなるのかなーと思ったのですが、いかがでしたでしょうか？
ともかく、おつかれさまでした。また、気が向いたら遊びに来て下さいです。
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