<PCクエストノベル(1人)>


『ともだち』

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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】

【 1679/ サリエル / 魔道士 兼 男娼】

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 封印の塔――
 呪われた道具を封印するためにつくられたその塔には、ひとりの塔守が住んでいるという。
 ケルノイエス・エーヴォという名のその男は、もうずいぶんと年を取っているはずなのだが、塔守の役目を果たすかわりにけっして老いることがないため、若々しい青年の姿を保っているという噂だ。
 彼が美貌の青年で、どうやら外の情報にうとく、世間話をしてくれる相手を探しているらしい――と聞きつけたサリエルは、趣味がてらにいとなんでいる本の館・『黒水晶の森』で仕入れた本を手土産に、封印の塔へと足を向けたのだった。
 サリエルは封印の塔へつくと、呪われた道具を封印しようとしている冒険者たちを尻目に、まっすぐにケルノの部屋のドアを叩いた。

サリエル:やあ、はじめまして。僕はサリエル。退屈してるっていうから、本を持って来たんだけど。中に入ってもかまわない? あ、あと、これは花ね。花は心をなごませる、っていうから。
ケルノ:ああ、どうぞ。わざわざ遠いところをありがとう。本なんて、重かっただろう? それに花まで……すごいなあ。
サリエル:まあ、そりゃあ、多少はね。でもキミの喜ぶ顔が見たかったから。
ケルノ:そうなんだ? いい人なんだなあ。

 ケルノはサリエルの意図にはまったく気づいていないらしい。
 にこにこと笑ってサリエルを部屋の中へと招き入れる。

サリエル:なんだか、殺風景な部屋だなあ……。
ケルノ:ああ、ごめん、いつもひとりだからなかなかそういうことには気がつかなくて。
サリエル:ふぅん。そういうものかな? まあ、いいんだけど。今日は外の話を聞かせてやろうと思って来たから。
ケルノ:外の話まで聞かせてくれるんだ? 嬉しいなあ……いつもひとりでいるから、退屈でね。
サリエル:まずは、なにから話せばいいのかな。漠然と外の話って言われても、なにを話せばいいのか少し困るよ。
ケルノ:じゃあ、まずはサリエルさんの話を聞かせてくれる?
サリエル:僕の話? そうだなあ……僕はね、実は一度死んだことがあるんだ。そう言ったら信じる?
ケルノ:……え? じゃあ、今ここにいるサリエルさんは?
サリエル:一度死んで、よみがえったんだよ。僕の愛する主君の手によって、ね。
ケルノ:なんだか、大変な経験だなあ……。
サリエル:そうでもないよ? そのおかげで僕は死なないし、老いることもない。あの方は魔族で、永遠の生を生きるんだ。その上、うつくしいものしか愛さない。だから、僕が美しいままでときを止めたのは、あの方にとっても、僕にとっても都合のいいことだったんだよ。
ケルノ:魔族? なんだか……ますます大変そうだと思うけど。
サリエル:そうかな。僕はあの方に愛されたいんだ。それが僕のすべてだから、ね。
ケルノ:……聞いていてちょっと照れくさくなってきたよ。若い人はストレートだなあ。
サリエル:まあ、もちろん、僕なんて、あの方からしてみれば、都合のいい手駒だったり、人形だったりするだけなんだけどね。
ケルノ:それって、寂しくない?
サリエル:ううん、寂しくないよ。僕はあの方のために存在するんだ。それだけが僕の存在理由だからね。でも……友達がほしい、って思うことはあるかな。
ケルノ:友達?
サリエル:そう、友達。ねえ、もしよかったらだけど、僕の友達になってくれない?
ケルノ:それは……かまわないけど。どうして、そんなに近づいてくるの?

サリエル:どうしてだと思う?
ケルノ:……近くの方が声がよく聞こえるから?
サリエル:なに、それ。なにかの童話?
ケルノ:いや、だって……近すぎるよ。そんな。
サリエル:言っただろ? 友達になりたい、って。僕はキミとおんなじだよ。老いることはないし、死ぬこともない。だから……きっと、いい友達になれると思うんだ。
ケルノ:そ、そうだね……。
サリエル:ねえ。僕のこと、どう思う……?
ケルノ:どう、って……。
サリエル:可愛いとか、きれいとか、魅力的とか。色々あると思うけど?
ケルノ:……。自信家だなあ。
サリエル:でなかったら、やっていけない商売だからね。男娼なんだ、僕。
ケルノ:だ……男娼!?
サリエル:どうしたの、そんなに驚いて。珍しい?
ケルノ:珍しい、っていうより、この展開はもしかして……って。
サリエル:そう、そのもしかして、だと思うよ? どう?
ケルノ:ど、どう?
サリエル:こんなところにひとりでいたら、寂しいんじゃない? 色々な意味で。
ケルノ:……それは……。
サリエル:大丈夫。あの方のことを心配してるんだったら、気にしないでいいよ。あの方は僕がちょっと遊んでるくらいじゃ、怒ったりはしないから。
ケルノ:サリエルさん……。
サリエル:少しだけ夢を見せてあげる。今日は、少しだけ……ね。

 しばらくして、サリエルは満足げな様子で封印の塔を後にした。

サリエル:ケルノが僕好みの美形でよかったな……年を取らないって言うし。しばらくは楽しめそう、かな。

 去りぎわにサリエルがつぶやいた言葉を、耳にとめるものはいなかった。

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【ライター通信】
 こんにちは、4度目の発注ありがとうございます。今回、執筆を担当させていただきました、ライターの浅葉里樹です。
 シチュエーションノベルに続いてクエストノベルの発注、ということで、なんだかむしょうにドキドキしてしまいました。両方ともあまり発注がありませんもので……。
 今回はクエストノベルということもあり、ほとんどがケルノとサリエルさんの会話だったのですが、いかがでしたでしょうか。
 会話文の中にもサリエルさんの魔性っぷりが出ていればいいなあ、と思っております。
 もしよろしかったら、ご意見・ご感想・リクエストなどがございましたら、お寄せいただけると喜びます。ありがとうございました。