<PCクエストノベル(1人)>


村の占者〜封印の搭〜

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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】

【1758 / シヴァ・サンサーラ / 死神】
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■オープニング〜村にて〜
 死神を本業とするシヴァ・サンサーラは、聖都から南東へと向かっていた。足の赴くまま、目的のために続く果てしない旅。彼は、最愛の妻・パールヴァティーの転生者を捜し求めていた。
 日の傾きを見せた頃、シヴァは小さな村に立ち寄った。野宿が続き、身体がふかふかと体の浮くベッドを求めている。宿の部屋に入ると、一途ベッドに走り、寝っ転がった。

シヴァ:「ふう……」

 うとうとし、つい寝入ってしまいそうな身体をなんとかベッドから起こし、シヴァは手を耳へと寄せた。小さな音が鳴り、シヴァは大切そうにそれをとった。この金でできた鈴のイヤリングは、妻の形見である。
 シヴァは振り絞る思いでそれを箱の中に入れ、部屋の机の上においた。置いたか置かなかったか意識のない数分、シヴァは深い眠りに陥った。


 翌朝、シヴァは大きな叫び声で起き上がった。部屋の窓から外を見下ろすと、外の森ではさほど珍しくない――しかし、村の中ではほとんど現れないモンスターが、子供1人を脇に抱えていた。
 シヴァは急いで、布で覆われた大きなそれを片手に、宿を出た。

シヴァ:「こんな小さな村に……?」

 突然現れたシヴァの姿に、村人はざわめいた。モンスターはシヴァの尋常ならぬ雰囲気を察知してか、うめき声をあげる。

モンスター:「ぐぅるる……」
子供:「ふえっ……」

 モンスターの声におびえて、子供は今にも泣きそうだった。子供は泣くのを必死でこらえ、村人は沈黙した。村人の視線がシヴァに集まる中、シヴァが1つ舌打ちをした。直後、シヴァの長い黒髪が揺れ、形勢は逆転した。

モンスター:「ぎゃァ――っ」

 モンスターを倒した大鎌をすぐさましまう。モンスターが倒れこむと、子供は大きな声を出して泣き出した。息絶えたにもかかわらず、モンスターにおびえる村人は、子供に近寄ろうとはしない。
 シヴァが1つため息をつき、子供を抱き上げた。母親らしき人物と、年老いた老人がシヴァの元に駆け寄った。

母親:「アクタっ」
子供:「おかあさんー」

 村に歓声が沸き起こる。老人はシヴァに手を出し、感謝を述べた。

村長:「村長のジィドです。モンスターから助けてくださって、なんとお礼を言ったらいいのか……」
シヴァ:「いえ、そんなことは」

 シヴァも手を差し出し、手を握り合う。村長が小さな声でシヴァに伝える。

村長:「腕を見込んで、少々お願いしたいことがあるのですが……よろしいですかな?」

 村人達の歓声をよそに、2人は村の奥へと歩いて行った。そこまできてもなお届く歓声は、半ばお祭り騒ぎとなっている。林に入って数メートル、シヴァと村長がついたのは小さな洞窟だった。
 洞窟の中を入っていくと、やがて小さな祠へとたどり着いた。

村長:「これです」

 祭壇にあった木箱を、村長が慎重な面持ちでシヴァの元へと差し出す。全面墨で呪文の書かれた木箱は、白い紙で封印されている。だが、シヴァはそこから自分と似た、――死神である自分と似た邪気を感じ取った。

村長:「あなたの腕が立つこと見込んで、頼まれて欲しい。――その魔剣を、封印の搭に封印してくれまいか?」
シヴァ:「封印されているように見えますが、これは……」

 村長は目を伏せ、木箱をじっと見つめた。

村長:「この封印自体は、数百年前に、ある高名な魔導師によって施されたもの……だがここ数年、封印が弱まっているのか、魔剣がモンスターを呼び寄せているのです」
シヴァ:「なぜそう思われるのです?」

 シヴァの問いかけに、村長は半ばためらいながらいった。顔に浮かぶ動揺の表情が、空気を重くした。

村長:「――つい先日現れた占い師が、魔剣がモンスターを呼び寄せている、と。自分は封印の搭にいけないが、数日後に現れるだろう猛者が、必ずや力になってくれる――そう言ったんです」

 あてもない、思うがままの旅をしている自分の進路を、その占い師が知っていたとは思えない。占いと言うのは、得体の知れない気味の悪さを感じさせるもので、シヴァはしばらく沈黙していた。

村長:「いかが、ですかな?」
シヴァ:「――旅の目的も特にはありませんし、引き受けしましょう。ただ、その占い師について少々聞きたいのですが……」
村長:「――魔剣を封印されてからでよいでしょうか? 胸のかせが外れて、ほっとしていますゆえ、……なにぶん」

 シヴァは頷き、魔剣の木箱を大鎌の入った布で隠れるようにしてもち、洞窟を出た。

シヴァ:「2〜3日で戻ります」

 洞窟から出てきた村長にそう告げると、宿によって荷造りをし、イヤリングをつける。村長から魔剣について聞きつけた村人が宿に集まり、やどの前はごった返していた。

「がんばってくれ!」「あんたならやれるよ!」

 シヴァは困惑しながら、村人の合間をかいくぐっていく。中には貴重な意見もあった。

「番人には気をつけるんだよ! その話すりゃ、それでヤツは満足なんだ!」

 シヴァ自身、封印の搭に対する風聞は聞いたことがない。もう少し情報を集めたいところだが、遅くなってはこちらが得る情報に新鮮味がなくなってしまう。
 早々に村を出ると、あたり一面に広がる平地。相棒の大鎌・ロンギヌスを片手に、シヴァは平原を歩き、封印の搭へと向かった。



■対戦〜封印の搭にて〜
 封印の搭にたどり着いたのは夕暮れ時。このまま搭にはいっても、周りが暗くては危ないので、搭に入るのは夜が明けてからにした。――幸い、搭の近くに小屋があったので、野宿は避けられた。身構えながら小屋に入ると、そこにいたのは一人の青年。

青年:「こんばんは、冒険者の方ですか?」
シヴァ:「ああ……」

 青年が笑顔でシヴァに尋ねる。手馴れた手つきで室内の暖炉に火をともす。シヴァが呆然と立ち尽くしていると、青年は気付いたようにいった。

青年:「僕はケルノイエス・エーヴォ。ケルノって呼んでください。この搭の……搭守って言うのかな、――をしています」

 シヴァは目の前の青年を見た。暗がりでよくはわからないものの、身体の線に余分なところはなく、顔のラインもきれいだ。女性的なものを伺わせつつも、しなやかではない、しっかりとした体躯は男のもの。
 シヴァ自身、腰まであるこの黒髪と顔立ちのおかげで女性に見られたことが何度かあるが、そんな自分自身に勝るとも劣らない美青年である。――そんなことを言っていても虚しいだけだが。
 シヴァは暖炉に近付き、手をあてた。

シヴァ:「私はシヴァ・サンサーラ。この搭へは依頼で来た」
青年:「あなた――もですか。その依頼とは?」

 青年は興味深そうに尋ねた。シヴァはあごで木箱を差した。

シヴァ:「あの中の魔剣をこの搭に封印する――それだけだ」

 青年はもの珍しそうに木箱へと近付いた。邪気を感じ取ったのか、近付いただけで木箱には何もしない。

青年:「今まで、どんなことをしていたんです?」
シヴァ:「どんなことって、仕事したり……依頼受けたり……」

 こんな成り行きでであった青年に「死神だ」と言っても信じられないことは百も承知なので、シヴァは職業を黙った。にもかかわらず、青年は一方的にシヴァへと質問を繰り返す。
 シヴァは村を出るときの村人の言葉を思い出した。

村人:「番人には気をつけるんだよ! その話すりゃ、それでヤツは満足なんだ!」

 その番人が目の前にいる青年だということに気付いたシヴァは、大きくため息をついた。しかし、名案が思い浮かばない。シヴァが黙り込んでから数分も経っただろうか、シヴァの隣で規則正しい寝息がきこえる。シヴァは青年のその様子に安堵の息を漏らし、そのまま考えるように床に倒れこみ、眠りについた。


 翌朝、日の昇るよりも早く起きたシヴァだったが、青年の目覚めも早かった。――そして朝から質問付け。できることなら、朝寝をはじめた、モンスターの活動が活発でないこの頃に封印の搭に入って封印したいのだが、ケルンがこの調子で一行に静まらない。
 シヴァは大きくため息をつくと、ケルンをじっと見つめた。

ケルン:「あなたがここに依頼で来たのは分かっています。――けれど、あなたに生きて帰ってこられる力量があるとは到底……」
シヴァ:「帰ってきたら、外の話でもして差し上げましょう。聖都は今、美しい季節ですから」

 シヴァは朝焼けを背に、搭へと入り込んだ。
 搭にはいると、大鎌を覆っていた布を取り払い、切っ先を空気に触れさせた。布で隠すように持っていた木箱が揺れだし、白い紙がだんだんと破れ始めた。シヴァはその様子をじっと見つめた。
 いくら時がたったのか、木箱は運動を止めた。――その直後、魔剣が木箱を破り、剣士の姿となる。鎧も、体中全て血塗られた剣士は剣を振り回し、シヴァに襲い掛かった。
 剣士が両手を頭上に振り上げたのを見計らい、シヴァは大鎌・ロンギヌスを勢いよく左右に薙ぎ払う。剣士が真っ二つに両断される寸前に、シヴァは背中に金色の翼を広げ、浄化を施した。

シヴァ:「冥福を……」

 シヴァの足元に、壊れた木箱とただの黒い剣が転がる。大釜を覆っていた布を破り、魔剣をくるむ。気休めだと思いながら鎌で切り傷をつけ、血文字で呪文を布に書く。搭の一室にあった宝箱に剣を収めれば、あとは――搭に入った冒険者次第である。

シヴァ:「これで安心、ですね」

 シヴァの口元にはわずかに笑みが浮かんでいた。小屋には寄らず、村へと向かった。



■エンディング〜村にて〜
 シヴァが村につくと、村長が笑顔で迎えた。村人達も彼の健勝をたたえるように、酒を水のように彼に浴びさせる。シヴァ自身にとって、さほど疲れた、と言った感じはなく、ただ淡々と終った、という感じの実感しかなかったりする。
 一通りの騒ぎが収まると、シヴァと村長は人払いのされた部屋にいた。

シヴァ:「早速ですが、お話を……」
村長:「これは勝手な好奇心ですが、理由を伺えないでしょうかな?」

 自分が来ることを予言した占い師について、シヴァは村長に迫った。村長は逆にその理由をシヴァに問うた。どう答えるべきか悩んだ挙句、シヴァはぽつりと言っただけだった。

シヴァ:「捜している妻の行方を知りたい」

 村長は息を漏らし、棚の引き出しを開けた。そこから出された古ぼけた地図には、新しいインクで多くの矢印が書かれていた。

村長:「占い師が言っていた、『これから行く自分の道』です。本当のところどうなのかはさっぱりですが……あたってみると良い」
シヴァ:「私がこう尋ねることさえ……」
村長:「私は良く知らないよ、人にあらざるものなど」

 村長は窓辺に近付き、呟いた。ゆめゆめ、目の前にいた男が、死神だとは知らずに。シヴァは地図を握り、不安と希望を抱いていた。――もしかしたら。

 窓から見える太陽は、高くさんさんと大地を照らしていた。





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■        ライター通信         ■
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はじめまして、発注ありがとうございました。ライターの天霧です。

シヴァさんは死神ということで、孤高な感じで書きましたが、
如何でしたでしょうか?

よろしければ、ご意見・ご感想などをいただければ嬉しいです。
では、ありがとうございました。またの機会にお会いできれば幸いです。
短いですが、これにて。
天霧 拝