<PCクエストノベル(4人)>
衝撃! 一角獣の窟に白い巨大鰐は存在した!
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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】
【1528 / 刀伯・塵 / 剣匠】
【1117 / 多寡道 / 鬼道士】
【1581 / 無月風・己浬 / 鬼道士】
【1582 / 玉響夜・日吉 / 戦巫女】
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●序章・再び連行、エルフ村。
――エルフの村の大騒動から二週間後の事である。
多寡道と刀伯・塵の二人はあいも変わらずいつもの酒場で飯と酒をかっ喰らっていた。
ソーンに来てからもう結構な時間が経ったとは言え、やっぱり今まで食べてきた中つ国風の食事に比べれば相変わらず物足りない。
やっぱり人間(いやラセツか)、故郷の味が恋しくなる。
そこで、多寡道は再び考えた。
キャッチフレーズは『無いならば つくってしまおう ホトトギス』――そんな感じ。
そこ、『文章は違えど前回と同じ事考えてるんじゃねーの?』とか言っちゃいけませんよ?
多寡道:「と、言うワケでだ……また出かけるぞ」
塵:「……待て。全然話が見えないんだが」
多寡道:「見えなくてもついてくりゃ一発で解るって」
塵:「解らん所に行く趣味はない」
多寡道:「じゃぁ、またエルフの村に行くって言ったら着いてくるんだな?」
塵:「エルフの村ねぇ……あの時は大変だったよな……」
塵は思わず遠い目をする。――その距離、実測三千里。
あの時は目の前にいる誰かさんのお陰で、恐竜に追いかけられて滝壺に落ちたあげく、その後生け捕りにした恐竜暴れさせて、エルフの村を荒らしただけの気がするが――その辺りの細かい事をツッコむと、塵の精神衛生上およろしくないので細かい事はあえて放置プレイ。
多寡道:「どうせだからよ、今回はお前の所の子供も連れて来いよ。飯は大勢で食った方が美味いしな。出発は二日後の朝。……んじゃ、決定って事で」
塵:「……俺に拒否権はないのか」
――そろそろそう言う星の下に生まれたのか、天から授かった宿命辺りだと思って割り切った方がいいと思いますよ、塵さん。
●再び迷惑、路上の男。
そして二日過ぎて――出発当日。
待ち合わせの広場付近に立つ市に、塵とその息子と娘である無月風・己浬、玉響夜・日吉の姿はあった。
己浬:「あ、これなんかどう? 『聖都名物エルザード饅頭』かぁ……」
塵:「おいおい……もっと普通のにしておけよ」
己浬はオーソドックスな黒糖皮粒あん十二個入りの饅頭の箱を手に取った。
此方の父親は無難に保存の利く香辛料や乾燥肉などを購入中。
己浬:「でもさ、これから行くエルフ村って山奥だろ? こういう珍しくて甘い物の方が喜ばれると思うんだけどなぁ」
日吉:「そうですわね、中つ国ならともかく、この世界ではお饅頭って珍しいみたいですし……」
娘も別の『聖獣饅頭』の箱を手にしている。――ちなみに此方の中身は各種聖獣の形をした可愛いお饅頭だったりする。
塵:「全員に配るとなると結構な量になるぞ? どうするかな……」
――と、家族揃って平和にエルフ村に持参するお土産をチョイスしている最中、その男はようやくやって来た。
多寡道:「よう! 待たせちまったな」
大きな声と登場した多寡道の姿は結構凄い事になっていた。
どれくらい凄いかというと、通りすがりの一般人に『ママー、あのひとなにー』『しっ、タローちゃん見ちゃいけません!』と言ったコメントを戴けそうな位。
まず、背中の巨大リュックには各種食材調味料料理道具が、これでもかと言わんばかりにみっちり詰められている。
そして両手にはいつでも振り回せるように抜き身の大包丁が一本ずつ――。
まさに天下無敵のフル装備である。
多寡道:「いつ食材が現れるかわからねぇからな、万が一を考えてだ」
塵:「エルザードの生き物すら食材にする気か、お前は……」
流石多寡道、今回もジャンジャンバリバリ狩ります、喰います、泣かせます。
塵:「……泣くのはきっと俺なんだろうな……」
●再びダイブか、ご一行。
日もほどなく高くなった頃、一行は前に来た滝の上に立っていた。
ちなみにここは、前に塵と多寡道が恐竜に追いかけられ滝に落ちた場所でもある。
日吉:「あの滝の下の方にある集落がエルフの村ですわね」
己浬:「此処から見ると高くていい眺めだな。……だけど、あそこまでどうやって行くんだよ?」
多寡道:「フフフフフフフ……俺に任せろ。こんな時のために色々用意してきてるんだぜ?」
怪しげかつ楽しげな笑みを浮かべながら、多寡道は背中のリュックより四本のロープと四本の杭を取り出してみせる。
多寡道:「まず、安全そうな所に杭と打ち付けるだろ?」
己浬:「ふむふむ」
多寡道:「んで、ロープを端をしっかり結わえる」
日吉:「それから?」
多寡道:「もう一つのロープの端は、足にしっかり括ってだな……」
塵:「なんか嫌な予感がしてきたんだが」
多寡道:「後は、ぽーんと滝の下に飛……」
塵一家:「却下」
多寡道:「何だよ! お前ら、この俺様のステキ案を最後まで聞かずに却下するなよ!」
塵:「そんな失敗して地面とかにぶつかったら死にそうな案は賛成できるかぁっ!」
多寡道:「ダイジョーブだろ? この前も上手くいったしよ」
塵:「……あのなぁ……ありゃ偶然だろーに……」
多寡道:「それに俺達サムライだしよ、そう簡単に死にゃしねーだろ?」
確かに。
一般人より頑強な作りになってるサムライだから、うっかり地面激突しても、瞬間肉ミンチ即死にはならない。
――ただ、ちょっぴり骨がバキッと折れたり、皮膚がガバッと裂けたり、内臓の端っこがグチャッてなる位。
もちろん、死ぬほど痛いけどね。
日吉:「……無傷で安全に行けるルートを探した方がよろしいですわね、父上様」
多寡道:「俺の案はナシかよ」
塵:「あたりまえだ(どきっぱり)」
と、言う訳で。
己浬:「我々一行は信頼できる別ルート情報を元に、ユニコーンが住むと言う伝説の残る洞窟まで来ていた」
塵:「何でナレーション調なんだ」
己浬:「や、こういうのでは基本だと」
塵:「どこの世界の基本だ」
己浬:「カワグチヒ○シとかフジオカヒ○シとかの世界だろ、やっぱり」
塵:「……少なくとも中つ国じゃないみたいだな」
日吉:「このソーンは様々な文化が存在する世界ですからね」
多寡道:「ま、ここでぶちぶち言ってもエルフの村に着く前に日が暮れるだけだ。……早く入ろうぜ」
塵:「(珍しくまともな事言ってるよ、オイ……。 ←かなり失礼)」
●再び発見、白い鰐。
多寡道:「ユニコーン見つけたら教えてくれよ」
塵:「(……見つけたら狩って即馬刺しにしそうだな、こいつ)」
一行は静かな天然の洞窟を奥へ奥へと歩いてゆく。
意外な事に、激しい高低差や分かれ道もなく、順調に進んでいた。
――その時。
さっき通り過ぎた大きな泉の方から、水が跳ね上がる轟音が響いた。
比喩でも誇大でもなくまさに轟音。
思わず、四人は振り返る。
塵:「な、なんじゃありゃーっ!」
それは、巨大な鰐。
栄養や環境が良かったのか、それともみるみる溢れるソーンの力おかげか――そんじょそこらの一般鰐(?)と比較して当社比1.5倍サイズ。
それが怒涛の勢いで襲って来たのだ。
多寡道:「うっひゃー! 見てみろよあの大きさ! あれだけの大きさなら四人でも余るくらい喰えるぜ!」
塵:「そんなモン喰おうと思うなー!」
多寡道:「何言ってんだよ、普通に鰐食う地方もあるじゃねぇか。……焼き物にも煮物にもイケるんだぜ?
塵:「いや、俺の言いたいのは食材がどうとかじゃなくて……」
日吉:「そうですわよね。あんな愛らしい鰐を食べようとするなんてもってのほかですわ」
塵:「…………」
いや、そうでもなくて――と日吉にもツッコミたいが、塵はあえてもう言わぬ事にした。
横にいる娘にこにこ笑ってはいるが、何とも言い難いどす黒いオーラが濃密に漂っていたりするから。
――もちろん、そんな些細な事はおかまいなしに多寡道は包丁を構え突貫してゆく。
多寡道:「そこな鰐ケモノ! いざ俺のメシになれぇー!!」
――ぶんぶんぶん。
――すかっ。
――ぱきり。
――がちん。
塵:「ああっ、何時の間にか多寡道が鰐に喰われてかけてるー!?」
己浬:「凄い……まるで手抜きをした位の早さだ……」
半分ぐらい頭を突っ込んでるが何とか必死で口をこじ開けている。
力を抜いたらぱっくりやられるのは確実である。
食材に飛びかかったはいいが、逆に食材に狩られそうになっている姿は何とも。
ちなみに持っていた大包丁がすでに壊れてるのは、お・や・く・そ・く。
己浬:「くっ、再会してまだ少ししか経ってないのに、こんな事になるなんて……」
塵:「多寡道! お前の今までの勇姿はきれいサッパリ忘れてやるからなっ!」
多寡道:「……てめぇらぁ……バカ言ってねぇでとっとと助けろ!」
己浬&塵:「…………(すでに夜空に多寡道の笑顔のラストショットで話をシメようとしている)」
多寡道:「親子で俺を殺すなぁっ! ぬぉぉぉぉぉぉぉっ!」
多寡道は気合いで鰐の顎を振り外し、間合いを取るために奥へ走り出した。
案の定――鰐もつられて走り(?)出す。
いわゆる戦術的後退。――雑魚い敵ならともかく、美味しそうな食材(?)を逃がす趣味はないのだ。
己浬:「親父! 日吉! 俺達も追うぞ!」
日吉:「ささ、父上様、ぼーっとしてないで! 可愛い鰐の命がかかってるんですから!」
一行がしばらく走ると、多少暴れても大丈夫そうな広い場所に出た。
天井に走った深い亀裂から日光が射し込み、濡れた鰐の体表がきらきらと光る。
その色はほぼ白に近く、さらなる異様さを醸し出す。
多寡道:「白い鰐か……喰ったらさぞかし珍味だろうな」
塵:「だから喰おうと思うな!」
日吉:「……ちょっと待って下さい! あの色は……!」
リュックを置いて改めて戦闘に応じる
多寡道:「うっし、これでもう負けねぇぞ! くたばれぇ!」
日吉:「あの子は……あの子は……!」
日吉は必死で途切れた記憶の糸を先を辿る。
そして――思い出したようにさっきよりもしっかりとした声で叫んだ。
日吉:「ミケ! 止めなさい! 私達が解るでしょ!」
多寡道:「……ミケかよ!」
瞬間、ミケと呼ばれた鰐は日吉の声に反応し――急に大人しくなった。
一方の多寡道は、いきなりのミケの静止に対応できず、勢いあまって瞬間バランスを崩して芸人も真っ青な感じで勢いよくずっこけ――滑って転んで壁に大激突。
己浬:「うわー、お笑いコントみたいだ」
塵:「そこは冷静にツッコんでやるな……」
塵は十八番の遠い目をしつつ、静かに息子の肩を叩いた。
●再び邂逅、飼い主とペット。
塵:「しかし、ミケもいつのまにかソーンに紛れ込んでいたとはな」
日吉:「ええ、まさかこんな事があるとは思いませんでしたわ……」
久方ぶりの再会に日吉はミケを抱きしめ、優しくその背中をさする。
ミケはその感触にうれしそうに(?)目を細める。
多寡道:「で……感動の再会はさておきだ。こいつ、何で名前がミケなんだ?」
日吉:「ほら、この辺をよく見て下さい」
日吉はミケを転がらせてお腹の方を見せる。
――そこには申し訳程度に茶色と黒のブチ模様が何点か。
日吉:「ね? この色とブチ、なんだか三毛猫みたいでしょう?」
多寡道:「…………」
塵:「今更ツッコミはなしだぞ……ウチはそういう家なの、わかってるだろ?」
己浬:「そうそう。昔も怪生物多くて名前付けるだけでも一苦労だったもんなぁ」
日吉:「ところで父上様、こうやってここでミケと逢えたのも何かの縁……連れて帰ってイイですか?」
塵を見上げる日吉の瞳は涙のが少し溜まってうるうると輝く。
世の中、これでダメと言える父親はいるだろうか?
いや、いないはずだ。
――いやはや、父親って生き物は、時代や世界が変わっても娘のおねだりには弱いもので。
塵:「……昔みたいにちゃんと世話するんだぞ」
日吉:「父上様……ありがとうございますっ! ミケ、これからは昔通り一緒ですからね♪」
その後、行程にこれといった障害も無く、彼らは無事にエルフ村に到着することが出来たのだが――村人には毎回デカイ生物を連れてくる人々として認知されたとかされないとかは、また別の話。
●ライター通信
こんにちは、沢邑でございます。
今回は発注頂きありがとうございました。
遅れて申し訳ございません……。焼き土下座モノです。
それと勝手に鰐の名前つけちゃいましたが、良かったんでしょうか……。(滝汗)
ちなみに、鰐のサイズが1.5倍と書いてあったので、普通の鰐がどれくらいのサイズかちょっぴり調べたところ、これがまた種類によってサイズがまちまちで、小さいので1.8〜2m位、大きいのになると7mくらいあるそうです……。
まぁ、4m位あれば十分人は食べれるようですのでそれ位のサイズかもしれませんが……その辺りどうなんでしょう?
それでは、またいつかどこかで。
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