<PCクエストノベル(4人)>


ソーン全国サイコロの旅 〜第6夜〜

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【 冒険者一覧 】
【 整理番号 / PC名 / 性別 
             / 種族 / 年齢 / クラス 】
【 1185 / バンジョー 英二 / 男
              / 魔皇 / 30 / 俳優 】
【 1184 / バンジョー 玉三郎 / 男
            / 魔皇 / 40 / 映画監督 】
【 1333 / 熟死乃 / 男
 / ナイトノワール / 43 / ディレクター兼カメラマン 】
【 1334 / 不死叢 / 男
 / フェアリーテイル / 37 / ディレクター兼ナレーター 】

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●前枠〜前回までのあらすじ【0】
英二:「玉ぴー、やってくれたね……」
 魔皇であるバンジョー兄弟の弟・英二はそう言って、兄である玉三郎の方を見た。玉三郎はといえば、両手で顔を押さえてその場にうずくまっている。
 サイコロの目に従い、『黄金の楽器』を求めてソーン各地を旅してきた一行。その第4の選択の時に、悲劇は起こった。
 何と玉三郎は、こともあろうにあの『強王の迷宮』へ向かう目を出してしまったのである。
 『強王の迷宮』――そこはヴァンパイアが封じられていた迷宮。しかも未だ各種ギルドが協力して探索中という、どんな危険が待ち受けているか分かったもんじゃない場所だ。
 だがそれは、これから始まる悲劇の序章にしか過ぎなかったのである……。

●出ちゃったもの【1】
 さて、明らかに危険が待ち受けているであろう場所に向かうことになり、当然のことながら一行はうろたえていた。
英二:「おい待てよ! どうすんだよヴァンパイアなんて!」
 真っ先にぼやいたのは、もちろん英二だ。だがそれはいつもの『とんでもない場所へ行くこと』に対するぼやきではなく、『生命の危険を感じた』ぼやきだ。
不死叢:「出ちまったもんはしょうがないだろ! 行くしかないんだよ!」
 英二のぼやきに対し、即座に反応したのはこれまた予想通りフェアリーテイルの逢魔・不死叢である。
不死叢:「……俺だって行きたかねぇよ。でも出ちまったんだもん。どこぞの誰かさんが出しちまったもの」
 ややトーンダウンし、本音をぶちまける不死叢。
熟死乃:「だよねえ」
 同意とばかりに、ナイトノワールの逢魔・熟死乃がデジタルビデオカメラを回しながらつぶやいた。『行きたくない、でも行かなきゃいけない』――何とも矛盾した状況だ。
 そして熟死乃が玉三郎の方へデジカメを向けた。玉三郎はまだしゃがんだまま、遠くを見つめていた。現実逃避の典型的な図である。
不死叢:「おい、おっさん! あんたのせいだろ。とにかく行きますから、強王の迷宮に我々は」
 現実逃避中の玉三郎を促す不死叢。しかし玉三郎はちらりと不死叢を見ただけで、こう言い放った。
玉三郎:「……ヤダ」
英二:「兄さん、ダダこねてる場合じゃないだろ! 行くったら行くんだよ!!」
玉三郎:「……えぇー……?」
 心底嫌そうに言い放つ玉三郎。言葉だけでなく、表情もかなり嫌そうだ。
 こうして玉三郎のいつものわがままが出たものの、一行は近くの村で一応それなりの装備を整え、翌朝早くに目的地である『強王の迷宮』へ向かったのだった。

●出すんだよ、この人は【2】
 早朝に村を発ったからか、あるいは途中で馬車に乗ることが出来たからか、もしくはいつもの無謀なスケジュールをこなしたためか、一行はその日の夜には『強王の迷宮』に到着することが出来た。
 『強王の迷宮』がある辺りは岩場なのだが、各種ギルドが協力して探索中ということもあり、小さいながらも詰め所がいくつか出来ていた。少なくとも、全く無人の場所ではない訳だ。
英二:「いやあ、テレビ的には美味しいねえ」
 複雑に入り組んだ岩場の一角にあった迷宮の入口の前に立ち、半ばやけ気味に英二が言った。
玉三郎:「ヴァンパイアが封じられていたからって、何もこんな時間に着かなくてもねえ」
 愚痴る玉三郎。この時間帯、ヴァンパイアなどのアンデッドにとっては活動しやすい頃合な訳で。
英二:「誰かの悪意を感じるなあ」
 誰の悪意かはともかくとして、一行にはこんな場所でうだうだと過ごすつもりは微塵もなかった。とっとと次のサイコロを振って、移動をしようと思っていたのである。
不死叢:「ではこれを」
 不死叢が英二に羊皮紙を手渡した。読み上げる英二。
英二:「よーし、第5の選択! ……お? チャンスタイムにしたんだね?」
不死叢:「当然です」
 不死叢がきっぱりと言い切った。
英二:「いやー、不死叢くん。君もでれくたーとして成長したねえ。
 1・2・3・4・5! 振り出しに戻る・聖都エルザード!
 6! ……は? これはシャレです・強王の迷宮で1泊?
 おい、ヒゲ! お前っ……全然成長してないだろ!」
不死叢:「いやっ……! やっぱり番組のことを考えるとですねぇ……」
 責める英二に対し、笑いながら答える不死叢。
英二:「番組なんかどうだっていいんだよぉ。俺たちが生きるか死ぬかの問題だろぉ? で、どうせ振るのこの人なんだろ?」
 英二が玉三郎を指差した。玉三郎はとっととサイコロを渡せとばかり、右手を伸ばしていた。
不死叢:「そりゃ、ここに僕らを連れてきたのがこの人ですから。責任取ってもらわないと。でも脱出の目は5つあるんですから大丈夫でしょう、いくら何でも」
英二:「その残り1つをぽろっと出すぞ、この人」
不死叢:「じゃあ君が振るかい?」
英二:「……それは嫌だな」
 すぐさま拒否する英二。結局、今回のサイコロも玉三郎が振ることになったのだった。
英二:「何が出るかな、何が出るかな!」
 いつものように踊りながら言う英二。玉三郎が勢いよくサイコロを振った。サイコロを追いかける熟死乃。
 そして、出た目は……6。そう、6だ! 無常にも現地1泊の目を出してしまったのである!
英二:「……何してんだよ! 兄さん!」
玉三郎:「ゴメン!」
 怒る英二に、玉三郎が間髪入れず謝った。熟死乃がそんな玉三郎にずいと近寄り、困惑の表情をアップで撮った。
英二:「俺たち殺す気か?」
玉三郎:「本当にゴメン!!」
英二:「だから言ったろ〜。出すんだよ、この人はぁっ!」
不死叢:「……彼を信じた僕が馬鹿だったね」
 玉三郎、散々な言われようである。
熟死乃:「で、どこに泊まるの」
 ぼそっと熟死乃が言った。まあ泊まる場所は、ないことはないのだが……問題は泊めてくれるかどうかだ。
不死叢:「交渉に行くしかありませんかなぁ」
 当たり前の結論を口にする不死叢。そして、玉三郎に他の3人の視線が集中した。
玉三郎:「泊めてくれるか、聞いてきます……」
 申し訳なさそうにこそこそと、詰め所へ向かう玉三郎。
不死叢:「当たり前だろぉ」
英二:「……玉三郎兄さんはダメなひと〜♪」
 英二の歌をBGMに、熟死乃は詰め所へ行く玉三郎の姿を撮り続けていた。だが詰め所に入っては出て、入っては出てを繰り返す玉三郎。その表情は芳しくない。
熟死乃:「ありゃダメだねえ」
 熟死乃の言葉通り、戻ってきた玉三郎は開口一番こう言った。
玉三郎:「ダメです、どこも泊めてくんない」
 曲がりなりにも詰め所である。どこの馬の骨とも分からないような者たちを、怪我しているならともかく、普通に泊めるはずがないのだ。
英二:「じゃあ、ここにテント張るってことかい?」
 英二が皆に尋ねるように言った。一応装備品の中には、小さいながらもテントがある。テントを張って中に入れば、雨風や夜露を凌ぐことは出来る。けれども、何故か不死叢が浮かない顔をしていた。
玉三郎:「おや、どうしたんですか?」
不死叢:「いや、あのですねぇ。実は、テント張るのはいいんですが……寝袋が2つしかないんです」
英二:「は?」
不死叢:「だから寝袋が2つ」
英二:「俺たちゃ4人……」
不死叢:「足りないねぇ」
英二:「ばっ、馬鹿言うなよぉ! 当然その寝袋は、タレント陣に……」
 その時、不死叢に抗議しようとした英二の肩を玉三郎がぽんっと叩いた。
玉三郎:「……しょうがない、俺たちは毛布だ」
 全てを悟り切った表情でそう言うと、玉三郎は毛布を借りるべく再び詰め所の方へと向かっていった。男らしいんだか、何だかよく分からない行動である。
 英二はなおも抗議を続けたが、玉三郎が早々と諦めてしまったこともあり、2つしかない寝袋はディレクター陣が確保することとなったのだった。

●痛々しい……【3】
 固定されたデジカメは、まだ畳まれた状態のテントを映し出していた。そこに、不死叢の合図の声が入ってきた。
不死叢:「レディ・ゴー!」
 合図の声で、一斉にテントへ駆け寄る4人。そして手分けしてテントを張り始める。
 テントは徐々に形となり、やがて小さいながらも立派な姿をデジカメの前に現した。
玉三郎:「完成!」
 テントが無事完成し固定され、玉三郎の声が辺りに響いた。
不死叢:「どのくらいかかりましたかなぁ」
玉三郎:「3分ちょっと過ぎたくらいじゃないかと」
英二:「また記録破れなかったか……」
 どうやらどれだけ早くテントを立てられるか、挑戦していたようだ。だが、この行為が無理にでも盛り上げようとしているようで、痛々しく見えるのは気のせいだったろうか……。

●人間の本性、心からの叫び【4】
 テントが完成し、中へ入る一行。ディレクター陣は寝袋で、タレント陣は借りてきた毛布に包まり、さっそく横になっていた。
 だが小さいテント、大の大人が4人も入ればぎちぎちである。寝返りも打てやしない。当然愚痴の1つや2つ、いやそれ以上出てくる訳で――。
英二:「……もう少し向こう行けよぉ。狭いんだよぉ」
不死叢:「行けねぇって。だって隣に熟死ーが居るんだもん」
熟死乃:「何だい、俺のせいかい?」
不死叢:「熟死ーの機材が場所取ってんだよ。……熟死乃くん、外に出していいかい?」
熟死乃:「出すなって!」
英二:「不死叢くんがもう少し痩せたらいいんだろぉ。こん中でお前が一番幅取ってんじゃねぇか」
不死叢:「……おたくの兄貴が幅取ってんじゃないかい」
玉三郎:「こっちに矛先来るかぁ? 僕はもう、テントの端ぎりぎりでねぇ」
英二:「兄さんはこう言ってんだから、やっぱりお前だろ、ヒゲ」
不死叢:「何だよ……デブだと悪ぃのかよ」
 けれども、まだ愚痴が出ているうちは大丈夫なのだ。余裕があるということだから。これが愚痴ではなくなると――こうなる。
英二:「ね、寝れないんだよ! 俺たちこんな所じゃ寝れないんだよ!!」
 熟死乃のデジカメに、ドアップで映る英二。英二の隣には、もう辛抱出来ないといった様子の玉三郎が映っていた。
玉三郎:「背中がねえ……痛くって、痛くって……」
 背中をさする玉三郎。改めて言うがここは岩場である。つまりテントの下も、固く冷たい岩な訳だ。身体にいい場所とは決して言えないだろう。しかし、これはまだ序の口。
英二:「お茶の間には聞こえてるのかい、これ? 呻き声とか、何か変な声がさぁ、迷宮から聞こえてくるんだよぉ! テントの回りに、何か気配があるんだよぉ! さっきも、よく分かんないけど外で何かピカピカ光ってんだよぉっ! なまら怖いんだって!!」
玉三郎:「カメラの向こうの皆さんも1度やってみな? 俺たちの怖さと苦しみが分かるから!」
 バンジョー兄弟が恐怖の様子を切々と訴える。もうすっかり余裕がなくなっていた。
英二:「俺たちもう寝れないんだよぉ……」
 かくして、恐怖の一夜は過ぎてゆく。

●新たな行き先は?【5】
 翌朝――『強王の迷宮』入口前。熟死乃のデジカメの前に、いつものようにバンジョー兄弟が立っていた。
不死叢:「おはようございます」
英二:「…………」
玉三郎:「…………」
 朝の挨拶をする不死叢に対し、バンジョー兄弟は無言で会釈だけ返した。2人とも目の下にはくまが出ていた。
不死叢:「……お2人とも少しお痩せになられましたかな?」
英二:「あ? そう言う君の方こそ痩せたんじゃないかい?」
玉三郎:「頬なんかもうげっそりと」
 にこりともせず言い放つバンジョー兄弟。よほど今回の野宿が堪えたのであろう、雰囲気がどんよりとしていた。
英二:「熟死ーなんか、もう顔がてっかてかだし」
熟死乃:「俺のことはいいんだよ」
玉三郎:「とにかく、早くここから帰ろうよ」
 溜息混じりに玉三郎がつぶやいた。すると申し訳なさそうに不死叢が言った。
不死叢:「あのねえ……その前に、ちょっと謝らなきゃいけないことが」
英二:「何だい、謝らなきゃいけないことって。寝袋以外にもあるのかい」
不死叢:「これなんだけどねぇ」
 そう言い、不死叢は『ソーン観光ガイドマップ』なる書物をバンジョー兄弟に見せた。そのページには、クレモナーラという村についての説明が書かれていた。
玉三郎:「……何か楽器の名産地って書いてあるけど」
英二:「行こうやそこ! というか、最初っからここ入れとけよ!!」
不死叢:「いやぁ、『黄金の楽器』が迷宮にあるって言うから、村のことはすっかり失念してたねぇ」
英二:「お、何気に責任転嫁か?」
 危うくまた喧嘩が始まりそうだったが、ともかく一刻も早くこの場から立ち去りたいということもあり、すぐさまサイコロを振ることとなった。
不死叢:「ではこれを」
 不死叢が玉三郎に羊皮紙を手渡した。今度は玉三郎が読み上げて、英二が振るのだ。
玉三郎:「えー、第6の選択です。
 1・2・3! チャンスタイム! クレモナーラ村!
 4! アクアーネ村!
 5! フェデラ!
 6! ルナザームの村!」
不死叢:「今回は村で統一してみました」
玉三郎:「村なだけにまだ安心だけど……説明がないのが気になるなあ」
 不安を口にする玉三郎。そんなことにおかまいなく、英二がサイコロを振る。
英二:「何が出るかな、何が出るかな! とうっ!!」
 いつものように踊り、そして勢いよくサイコロを放る英二。岩場を転がるサイコロを、熟死乃が追いかける。
 出た目は……5。
玉三郎:「5?」
 羊皮紙を見る玉三郎。5といえば、行き先はフェデラである。
英二:「どこだよフェデラって!」
 自分が出したにも関わらず、何故か逆切れする英二。
不死叢:「目についた村の名前を、羅列しただけですからなぁ……。今から調べてみましょう」
英二:「お前ディレクターだろ、ヒゲッ!! 書く前に調べとけよぉっ!!」
 英二の絶叫が岩場にこだました。
 一難去ってまた一難。謎の村・フェデラに向かうこととなった一行。そこで一行を待ち受ける物は何なのか――。

【ソーン全国サイコロの旅 〜第6夜〜 おしまい】