<PCクエストノベル(1人)>


腕試し〜チルカカ洞窟〜
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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】

【1829/チェリー/デュエリスト】


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◇魔物の噂◇


チェリー:「魔物が出る?どこに?」
宿の近くの店で夕食をとっていると、隣の席にいた数人の男が話しているのが耳に入り、
思わず声をかけていた。男たちは町の者らしい。突然話しかけられて戸惑った様子だったが、
その中の一人が話し始めた。

男:「チルカカ洞窟だよ。見たとこ冒険者みたいだけど、あそこはやめといた方がいい。
奥に行った奴らは誰も戻って来てないって話だ。ここに来る冒険者の半分くらいはあそこに行くみたいだが、
大抵奥までは行かずに戻って来てる。危ねぇ割には宝があるって話も聞かねぇしな。
だから冒険者が行って帰ってきても、皆手ぶらだ。たまに何か持って帰る奴がいても、
前に行った奴が落とした物だったりする。行くだけ無駄だぜ。骨折り損のくたびれもうけって奴だな」
チェリー:「ふーん・・・。でも、腕試しには良さそうだね」
そう言って行く気満々になっているチェリーを見て、また同じ男が釘をさす。彼女がまだ
若いので、無茶だと思っているようだ。
男:「やめとけやめとけ。魔物は洞窟の奥深くに住んでるって噂だ。よっぽど運が
良くなくちゃ会えもしねぇよ」
男は肘をついて手のひらだけひらひらさせながらそう言ったが、既にやる気になっている
チェリーにはほとんど聞こえていなかった。


◇チルカカ洞窟◇

翌日の昼、チルカカ洞窟の前にチェリーの姿があった。早速腕試しにやってきたのだ。
チェリー:「ここがチルカカ洞窟か〜。いかにも何か出てきそうな感じね。ついでに
何かいい物でも落ちてるといいんだけどなぁ」
チェリーは蒐集癖があるためか、洞窟で何か見つけたら何でもいいから持って帰ろうと
思っているらしい。冒険の記念のようなものかもしれない。
チェリー:「よーし。適当に探してやっつけて帰るかな」
ゆうべ、町の男が言っていたことなどまるで頭にないようだ。魔物はすぐに見つかると
思っている。が、洞窟に入ってしばらく歩くと本当に何もない。
チェリー:「うわー、見事に何もないよ・・・。それに真っ暗じゃん。松明持ってきて
ほんと良かったわ」
たまにこうもりに出会う以外、本当に何もないし、何もいない。用意してきた松明で
足元も照らして何か落ちていないか探しながら歩いているが、今のところ石や木の枝、
松明の燃えカス以外は何も落ちていなかった。
チェリー:「いくら何でも、松明の燃え残りやら石持って帰ってもつまんないしなぁ。
このまま何もなかったら帰ろうかな・・・。っと、あれ?」
松明の少し頼りない光に照らされて、チェリーの少し前で何かが光った。
チェリー:「何だろ?」
小走りで近寄って拾ってみる。
チェリー:「ペンダント?結構いい感じね〜」
前に来た冒険者の落し物だろうか、緑の石のついたペンダントだ。銀でできているらしい
細い鎖の先に豆程の大きさの丸い石がついている。
チェリー:「うん、これはもって帰ろう。いただき、と」
そう言ってポケットにペンダントをしまう。そして、さらに歩き出そうとした瞬間、
何かが飛びかかってきた。チェリーはとっさに後ろへ飛んで避けた。体勢を立て直して
飛びかかってきた何かを見ると、チェリーをにらみつけて唸っている狼がいた。
チェリー:「ちょっとちょっと!狼がいるなんて聞いてないわよ!?」
狼はさらにチェリーに向かって飛びかかってくる。今度は左に避ける。避けながら
剣を抜く。本来、チェリーは二刀流で闘うのを得意としているが、今は片手に松明を
持っているため片手にしか剣が持てない。チェリーが武器を手にしたためか、狼は
先ほどより慎重になっているようだ。しばらくにらみ合いが続く。と、また狼が
チェリーに向かって跳躍した。チェリーも狼に向かって飛ぶ。狼の爪をかわしながら
斬りつける。
チェリー:「スラッシング!!」
チェリーと狼が背中合わせに同時に着地する。着地してすぐさまチェリーは狼の方に
向き直る。手ごたえは感じていたが、しとめていなければ続けざまに襲われるかも
しれないからだ。狼はしばらくよろめいて倒れた。どうやらチェリーの攻撃は急所を
ついたようだった。しばらく狼を見つめ、剣を握ったまま動かないのを確認してから
剣を鞘に戻す。
チェリー:「ふぅ。いきなり出てこないでよね、びっくりしちゃったじゃない。
魔物は見つかりそうもないし・・・。全くもう、つまんないのっ」
と、チェリーが愚痴をこぼした時。ぐぅ、と彼女のお腹が鳴る音が洞窟の中に響いた。
チェリー:「お腹空いちゃった・・・。このままじゃ夜までに町に帰れないし、
どうしようかな〜」
魔物がすぐに見つかると思って食料は用意していなかったので、夜までに町へ
帰れないと夕食は抜きになってしまう。少し悩んだ末、チェリーは町に帰ることにした。


◇エピローグ◇

チェリーは町に帰ってすぐ、昨日と同じ店に向かった。その頃にはすっかり疲れきっていた。
食事を頼んでぼんやりしていると、昨日の男が店に入って来た。
男:「よぅ。洞窟へは行ったのか?」
チェリー:「ええ。でも、魔物には会えなかったわ。狼ならいたけどね」
男の質問にため息をつきながら答える。
男:「だから言っただろ、行くだけ無駄だってな。ま、無事に帰ってこれただけでも
良かったと思うんだな」
チェリーの頼んだ食事が運ばれてきたので、それだけ言うと男は店の奥に行ってしまった。
チェリー:「あーあ、次、どこ行こう?」
運ばれてきたピラフを食べながら、もう次のことを考えているチェリーだった。


おわり