<PCクエストノベル(1人)>
バッド・トラップ〜イン・クンフォーのカラクリ館〜
------------------------------------------------------------
【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】
【1552 / パフティ・リーフ / メカニック兼ボディガード】
【NPC】
【 イン・クンフォー / カラクリ館の主 】
------------------------------------------------------------
●序章
聖獣界ソーン。
数多の世界から様々な冒険者が集う世界。そこからもたらされた雑多な文化技術が入り混じった世界でもある。
各地に眠るたくさんの遺跡。ソーン創世の謎を探る手掛かりと目され、こぞって冒険者達が探求しようと躍起になっていた。その謎を持ち帰る事が出来れば、莫大な報酬が贈られる。そんな一攫千金を夢見て、彼等は仲間と連れ立って探索に出ていった。
それがこの世界でいう冒険者たちの『ゴールデン・ドリーム』である。
そして。
今日も一人の冒険者が、新たな探索に向かう。
――夜。
エマーン人特有の、標準的なスーツを身につけた女性が、立てかけているバイクの隣で身に付けている物をチェックしていた。
精神感応サークレットを身に付け、頭に被ったサンバイザーは、赤外線暗視装置付き。ガンベルトに二丁のビーム斧銃兼用機を装着し、隣のバイクへと颯爽と跨った。
パフティ:「さて、と。そろそろ行きますか」
軽くひとりごちて、エンジンをかける。
夜半の静けさの中、それは高らかに響き渡った。
パフティ:「マッドサイエンティストと聞いてますから、十分注意は必要ですね」
かくして。
彼女は、一人夜の闇の中を駆けていった。目指すはイン・クンフォーのカラクリ館。
果たしてどんな罠が待っているのか。緊張しつつも、少なからず楽しみにする気持ちがあることを、彼女は自覚して苦笑するだけだった。
●第一章〜侵入〜
パフティ:「‥‥ここね」
呟いた彼女の目に映るのは、どこにでもある平凡な屋敷。研究所と聞いていたからもう少し無機質なイメージがあったが、今目の前にあるのは本当に普通の家だった。
特に、番兵や番犬がいる様子もない。
本当にここに、彼はいるのだろうか?
パフティ:「でも、隠れ家だといっていましたから、あまりそういうのは置かないのかもしれませんね」
小さく呟く彼女は、徒歩だ。
バイクは離れた場所に止めておいて、ここまで歩いてきた。なるべく闇に紛れて近付いてきたのだが、その間特に何も起きなかったのだ。
そうは言ってもここはカラクリ館との異名を取る場所。油断大敵だ。
パフティ:「家の中にとんでもない罠が待ち構えている場合がありますから」
気を引き締めて、館の扉の前に立つ。
そして、注意深く開いてからそっと頭を覗かせたトコロへ。
パフティ:「‥‥これは、なに?」
罠に注意して一歩を踏み込んだ途端。
その最初の罠に彼女は遭遇した。
そうは言っても特に命に関わるようなものではない。勿論、こんなもので命に関わってたまるものか、と彼女は髪に付いた白い粉を大雑把にはたき落とした。
つまり、最初の罠とは、頭上から黒板消しが落ちてくる罠だったのだ。
どうやらここの主は、かなりお茶目心たっぷりの人物らしい。
パフティ:「そんなことで済ませていいのかしら?」
軽くナレーションに突っ込んでから(ぇ)、パフティは慎重に館の内部へと侵入した。
幾つか仕掛けられた落とし穴を回避し、扉と連動したカラクリ達を沈黙させ、彼女は館の中を徘徊していく。特に命が危うくなるような罠は仕掛けられていない。時々起こる爆発も、殺傷能力は大したことないようで、二三度頭から爆煙を被ってしまったが、それほど傷は負わなかった。
パフティ:「‥‥ここの主は、何を考えているのかしら」
お茶目、というよりは、どこか罠を仕掛けるのを楽しんでいる風がある。
その罠を嬉しそうに仕掛けている姿が目に浮かぶようだ。ひょっとしたらどこからか、罠にかかった人間を見ているのではないか。そんな風にも思えて、思わずパフティはキョロキョロと周囲を見渡してカメラを探したりもした。
そうして。
辿り着いた先に、彼女は厳重な封がされた扉を見つけた。
今までの物と違い、明らかにそれは不自然だ。
パフティ:「ここね」
カタン、と戒めを外して、彼女はその扉を開いた。
●第二章〜遭遇〜
ガチャン、ガチャン。
ゴトン、ゴトン。
コポコポ、ピー。
摩訶不思議な機械類がグルグルと回る。フラスコやビーカーから奇妙な色の煙が上がる。様々な道具や機材が、そこら中に転がっている。
おそるおそる部屋へと足を踏み入れたパフティは、周囲に人気がないことを確認する。
パフティ:「どうやらここが研究室のようですが‥‥イン・クンフォーさんはどこに‥‥?」
部屋の中であちこちを見て回るパフティ。
が、動いているのはカラクリの機材だけで、他に人の気配はない。
その時、ふと視線を感じて彼女は振り返る。そこには、壁に立てかけるように置かれていたカラクリ人形があった。これも何かの研究かと思い、一歩近寄った時。
パフティ:「な、なに?!」
ハッと後退る。
カラクリ人形が音を立てて動き出したのだ。意志持つ人のように、それは問答無用でパフティに襲いかかる。
パフティ:「これが番兵の代わりって事ですね」
咄嗟に抜いたビーム斧銃で振り下ろされた剣を受け止める。
同時に脇腹あたりに蹴りを繰り出したが、大したダメージもなく、相手は微動だにしない。「所詮、人形ということね」と呟いて、彼女は剣を弾き飛ばす。
相手がバランスを崩したところで、銃口をカラクリ人形に向ける。そして躊躇することなくその引き金を引いた。
あっけなく崩れ落ちるカラクリ人形。
ほう、と息をつくパフティ。
が、その油断が仇となった。
パフティ:「ッ! な‥‥ちょ、ちょっと、なにこれ!?」
いきなり背後から羽交い締めされて、彼女は焦った。
慌てて振り向けば、さっきのカラクリ人形と同型の人形が二体、彼女の肩を羽交い締めしていた。抜け出そうにも、ガッチリと押さえつけられていて、彼女の力ではふりほどけそうにない。
?:「やれやれ騒々しいのう。こうも煩いと、おちおち寝ておられやせんわ」
パフティ:「あ、あなたは‥‥?」
イン・クンフォー:「ほう、これはこれは。なかなか可愛らしい侵入者じゃのう」
パフティ:「まさか‥‥あなたが、イン・クンフォー?」
イン・クンフォー:「いかにも。儂がイン・クンフォーじゃ」
パフティの目の前に現れた小柄な老人は、おごそかにそう名乗りを上げた。
●第三章〜脱出〜
後ろからカラクリ人形に捕らわれたまま、パフティは身動き取れずにいた。
そんな彼女の周囲をグルグル回りながら、老人――イン・クンフォーはぶつぶつと独り言を呟く。
イン・クンフォー:「ふむ‥‥まさか軍部の連中に雇われたのか? いやいや、ひょっとしてスパイということも。儂の研究を狙っておる連中は山ほどいるからのう。はっ、もしやエッケハルトのヤツめ、この間コーヒーに唐辛子を入れた事を根に持って‥‥いやいやまてよ、ひょっとすると開発部の連中がこの前騙して宝探しをさせた事を恨んでおるんじゃあ‥‥」
パフティ:(「‥‥この人って‥‥」)
マッドサイエンティストだとばかり思っていた相手の、奇妙な独り言にパフティはなんだか肩の力が抜けてくる。まあ、確かにある意味ではマッドなのかもしれないが、どうやら命の危機まではないようだ。
だが、老人の独り言はどんどん奇妙な方向に進んでいる。
イン・クンフォー:「そもそもなぜこの娘はここへ辿り着けたのじゃ? あれだけ罠を仕掛けてあったというのに。よもや特殊な改造でもされておるのか? うーむ、軍部の連中め、そんなことまでしおったのか。ホントに怖ろしいヤツラじゃ」
パフティ:「え? ちょ、ちょっと‥‥(あんな罠なら誰だって入れるわよ)」
イン・クンフォー:「む、一度調べてみる必要があるのう。生体学はさすがに専門外じゃが、まあなんとかなるじゃろう」
パフティ:「ちょ、ちょっと待ってよ‥‥調べるっていったい(ま、マズイかしら‥‥ひょっとしてこのままなら解剖されてしまう?)」
さすがに冷や汗が出る。
なんとかここを抜け出さないと、ひょっとしたら命すら危なくなるかも。
サッと青ざめる彼女に、イン・クンフォーがゆっくりと近づいて‥‥「ん?」と首を傾げる。
イン・クンフォー:「このサークレットは邪魔じゃのう。どれ、外すとするか」
パフティ:「――――ダメ!!」
手を伸ばされかけた瞬間。
パフティは思わず叫んでいた。
同時にサークレットが彼女の思考に反応して、眩い光を放つ。
直後。
イン・クンフォー:「な、なんじゃ?!」
大きな炸裂音が轟くと同時に、部屋の中へバイクが突入してきた。驚くイン・クンフォーを余所にバイクは一直線にパフティへ向かう。
パフティ:「お願い」
彼女の言葉に反応して、バイクの武装からレーザー砲が飛び出した。レーザーはあっさりとカラクリ人形を吹き飛ばす。
イン・クンフォー:「ちょ、ちょっと待つのじゃ! ああ、儂の研究室がぁー」
パフティ:「ご、ごめんなさい。でも、私もちょっと解剖されるのは‥‥」
慌てふためくイン・クンフォーに軽く謝りながらも、パフティは素早くバイクに飛び乗った。
パフティ:「それじゃあ、失礼します」
イン・クンフォー:「お、おい!」
最後にそれだけを言い置いて、彼女は全速力でバイクを発進させた。バイクが入ってきた道を引き戻せば、ちょうど罠にも嵌らない。
そのまま一目散に彼女とバイクの姿は、夜の闇の向こうへと消えていった。
後に残されたのは、むちゃくちゃになった研究室と、その中にポツンと立つ老人が一人。
イン・クンフォー:「‥‥やれやれ。なんとも騒がしい夜じゃったわい。儂はもう寝るから、後片付けは頼んだぞ」
背後に控える無傷のカラクリ人形にそう言いつけると、老人は眠たそうに欠伸をしながら、寝室へと引きこんでいった。
パフティ:「ふぅ。ここまでくれば大丈夫かしら?」
館の影がすっかり見えなくなったところで、パフティはバイクを止めた。
そして、腕に仕込んでいた小型のビデオカメラを取り出す。
パフティ:「よかった。なんとか壊れてないわ。これなら少しは調査の資料になるでしょう」
頼まれていたカラクリ館の調査を無事終える事が出来て、彼女はホッと安堵する。危ない目にもあったりしたが、それも終わりよければ全て良しだ。
そう納得して帰路へと着いたパフティ。
だが、彼女は知らなかった。
カラクリ館にはイン・クンフォーによって電磁波を発する装置が各所に取り付けられているという事を。そのため、ビデオの中身はほぼ砂嵐の状態になってしまっている事を。
彼女がその事実に気付いたのは、すっかり夜も明けて依頼者と対峙した時であった。
【END】
●ライター通信
初めまして、葉月十一です。
この度は発注していただき、ありがとうございました。そして、お待たせして申し訳ありませんでした。
シリアスを目指してみましたが‥‥どうもオチがついてしまったような気がします(汗)。これはこれで楽しいとは思うのですが、如何だったでしょうか?
ご意見、ご感想等ありましたら、テラコンの方よりお願いいたします。
|
|