<聖獣界ソーン・黒山羊亭冒険記>
竜の棲む城
■ 発端 ■■
「何でも東の果ての城にゃあ、白い龍が棲んでるっつう話だ」
僅かに込み合い始めた黒山羊亭の一角、ランプが下から照らし出すテーブルについている小太りの男がそう言った。
其の向かいでちびちびと酒を舐めていたひょろ長い印象の男が、龍、と鸚鵡(おうむ)返しに相槌を打つ。
「そうさな、龍だ。元々東の果ての城は、領主と其の娘さんが住んでただけだったんだがな」
そう言うと、小太りの男はごくり、と美味そうに喉を鳴らしてジョッキに注がれた酒を飲み干した。
相変わらずひょろ長い男はちびちびと舐めるだけだったが、どうやら龍の話には興味があるようだ。
ぐいと身を乗り出して、其れで、と話の続きを促した。
「醜い魔女がやってきてな。自分より数倍美しい娘の姫に嫉妬して、白い龍に変えちまったんだとよ」
「で、どうなったんだ?」
おおい、追加頼む、と小太りの男はカウンターに声を掛ける。
新たな酒が注がれるまでの手遊(てすさ)びにとでも思ったのだろうか、一緒に注文していた焼き鳥を口に運びながら、ひょろ長い男の質問に小さく眉を動かした。
もったいぶって周りを確認しながら、小太りの男も身を乗り出す。ひょろ長い男の耳元に呟いた。
「自我を失っちまった姫さんは、王様も魔女も食っちまったんだとさ」
「へぇ、そりゃあ……」
ひょろ長い男も焼き鳥を摘みながら、ゆっくりと肉を口に運ぶ。甘辛いタレが利いた肉は、この酒場では人気メニューだった。
「何でも、退治しに行った冒険者も食われちまってるって話だ。だがな、満月の夜だけは、姫さんは自我を取り戻すんだとよ」
小太りの男は、漸(ようや)く注がれた酒をまたぐいぐいと呷りながら、うぅん、と唸った。
唇についた泡が、白髭のようだった。
「其の度に、やってきた冒険者に言うんだ。私を殺して、私を殺して──ってな。最近じゃあ城の地元の自警団も乗り出して、黒山羊亭に依頼を出したらしい」
そう言うと、小太りの男はもう一度、焼き鳥を口に運ぶ。
「龍になっちまった姫を殺しに行く冒険者を募集してるらしいぜぇ」
■ 東への誘い ■■
旅装に身を包み、腰に一振りの剣を携えた青年と見受けられるほどの背格好の男性──名をセフィラス・ユレーンと名乗る──は、其の重く圧(の)し掛かる様に聳(そび)える城に視線を遣った。
青年を含む数人の纏まりが目指す先──名も無き東の果ての城は、只其処に佇んでいた。ぽっかりと浮かぶ満月を背に、其の奇妙に小さい城はひっそりと存在している。梟(ふくろう)が一羽、ほうほうと笑い声を立てながら飛んで行った。
「……東の果てとは言え、領主の居城だと聞いていたが」
セフィラスは城から視線を離さずそう言った。ざり、と足元の砂を詰(なじ)って、一行は其の場所に立ち止まる。幾度も幾度も、この城の中では目も背けたくなるような惨状が繰り広げられてきたと言うのに。城は其れを呑み込むには小さすぎるような気さえ、した。
「元々此処一帯の御領主さまは質素な方で……奥方が亡くなられて以来、姫君と共にひっそりとした暮らしをしていたそうです」
セフィラスに答えるように、一行の中から声が上がる。鈴を振るような可愛らしい少女の声は、天使の少女であるメイのものだ。メイも同じく目元を厳しくしながら、ぽつねんと空間に取り残された東の果ての城を見つめた。
今宵は、満月。
「お姫様、って、ちゃんと話聞いてくれるのかな。まぁ、俺達の仕事は退治することなんだから、そんなことどうでもいいんだけどね」
からからと一人場違いに陽気な笑い声を上げながら、黒いコートを風にはためかせ、フィーリ・メンフィスはそう言った。其の言葉の意味を捉えてかそうでないかは判らないが、彼の肩に乗った白銀の小さな仔ドラゴンは、不安げにきぃと鳴いた。
フィーリは緩く目を細め、仔ドラゴンが乗る肩とは反対の腕をそろりと伸ばし、其の頭を擽(くすぐ)るように撫でてやる。仔ドラゴンはそうされても尚不安げであったが、もう一度鳴き声を上げることはしなかった。
「聞いてくれますよ、きっと。其の為に、今日と言う満月の夜を選んだのですから」
青いすっきりとしたデザインの服装に身を包んだ青年、アイラス・サーリアスはそう言った。彼は眼鏡越しに満月を振り仰ぎ、そして小さく溜息をつく。何しろ、此処までの行程が大変だったのだ。
黒山羊亭に皆が集結したのは正午丁度だと言うのに、其処から何本も乗り合い馬車や何やらを経由するうち、空はすっかり暗くなっていた。漸(ようや)く東の果ての駅だという場所に下ろされたのは一時間前で、其処から此処まで歩き通しだ。こんなことならもう少し出発時間を早くしてくれれば良いではないかと、皆は何度この行きを提案したエスメラルダを呪ったことか。
だが、自分たちは既に此処に着いた。白い龍の姫が棲むと言う、この東の城の前に立っている。
そんなことを考えているアイラスの隣に、すいとひらひらした影が並ぶ。豊満な体を持て余すように其の場に立ちながら、踊り子らしき服装の女性──レピア・浮桜は緩く瞳を閉じた。
「──この手で終わらせて、あげなくてはね」
そう、誰に気付かれるとも無く呟く。ゆっくりと怠惰(たいだ)に押し上げた瞳で、そろりと持ち上げた自分の掌を見つめた。自分と同じように、苦しむ姫君。せめて其の命を濯(そそ)いでやる事が、自分に出来ることだ。あの日、黒山羊亭の片隅のステージで耳に挟み聞いた時、迷うことなくそう思った。
■ 其々の心 ■■
「此れからの事、確認しておきましょうか」
城に一歩踏み込んだ、広く天井の高い玄関ホール。だが其処も既に彼方此方(あちこち)に蜘蛛の巣が張り、さぞ高価だったのであろうシンプルな調度品も、割れたり罅(ひび)が入ったり埃を被ったりしていた。そして、其処此処(そこここ)に散らばる折れた剣や砕けた鎧。此処へ白き龍を退治しに来た冒険者達の無念が、至る所に残骸として落ちていた。
そんな中、灯りの燈らないホールの真ん中で、のんびりとした穏やかな声が上がる。手に持ったカンテラに灯を入れながら、緑色の豊かに流れる髪を揺らして、エルダーシャは皆に微笑みかけた。
「此処で右往左往したって、しょうがないでしょう?」
エルダーシャはそう言うと、てんでばらばらにホール内に散らばっていたらしい冒険者達を手招いた。メイはいち早く其の場所に足を向ける。此処は光が無い。あのカンテラ一つだけで、暗かった城内が驚くほど明るくなったように感じた。つまり、其れだけ此処の城は暗いのだ。ふるりと小さく身を震わせ、メイは小さく眉根を寄せた。こんなところに独りぼっちだなんて。
「……私は白い龍に逢えれば良いのだけどね」
エルダーシャの言葉に小さく肩を竦めて呟いたのは、額に三つ目の瞳を持つヴェルダだった。ヴェルダは面白そうに瞳を細め、ぐるりとホール内を見渡す。暗がりへと続く細い廊下や螺旋階段を視界に止め、そうしてもう一度口を開く。
「さぞ綺麗なのだろうね。美しい姫君が龍になったのだ、きっと神々しいのだろうよ」
指先を口許に添え、小さく微笑んでみせる。ヴェルダの言葉に、セフィラスもゆっくりと、其の閉ざされていた唇を動かした。
「だが幾ら美しいと言えども、姫君の身体に巣食っているのは悪しき呪いなのだろう」
セフィラスは、そっとベルトに吊るした剣の柄飾りを撫でた。この細身の剣一振りで、自分は何が出来るのだろうか。取りとめも無く、そんなことを思う。姫君は今も苦しんでいるのだろうか。
僅かにしんとした一同の空気を、アイラスのぎこちなく紡がれた言葉が裂いて割った。
「僕、調べてみたんです。色々な書物や伝承を読み漁って、たった一つだけ、呪いを解く方法を見つけました」
「……でも」
アイラスが言葉を続けようと息を吸った瞬間、何か思いつめたような顔でレピアが呟いた。昼間は石像になって只運ばれているだけだったので、碌に喋れなかったのだ。だが、考えを纏める時間は長大にあった。半日かけて、レピアはずっと考えていた。
ゆっくりと顔を上げて、レピアは小さく喋り出す。
「死にたいと思う気持ちを、態々覆す必要はないのではないかと思うわ。あたし、判るもの」
レピアの切々とした言葉に、メイが小さく身動(みじろ)ぎした。
「罪は憎めども、人を憎むことは無いと思うのです。……レピア様は、一つの命を、吹き消してしまうおつもりですか?」
この大鎌でなら、魔と呪いを断ち切ることが出来ます。そう言って、メイは自分の小さな掌の中で、自分の武器である「イノセントグレイス」をぐん、と大きくして見せた。空間に突如現れた大鎌を見、レピアは小さく頭を振る。
「でも、あたしには判るわ。……あたしの昼間の石像姿、御覧になったでしょ?……どうしても、私とお姫様を重ねてしまうの」
淡々と紡がれる言葉に、誰一人何も言えなかった。其々の思いが綯(な)い交ぜになり、先へ進むことに躊躇(ちゅうちょ)が生まれる。フィーリは其の感覚をいち早く察知し、ねぇ、と場違いなほど明るい声を出した。
肩の上できぃきぃと鳴く仔ドラゴンを撫でてやりながら、フィーリは口を開いた。
「兎に角、お姫様を見つけなきゃしょうがないと思うんだよねぇ。とりあえず満月だから、話は出来るんでしょ?」
確かに、と頷いたのはヴェルダだった。
「とりあえず……っと、何かな?」
ヴェルダは中途半端に言葉を繋ぎ、眉を顰めて動きを止めた。途端、波紋が広がるように他の冒険者達も身体を強張らせ、耳を澄ます。しんと水を打ったような静けさの中、微かにだが、ずぅん、と何かが重く圧し掛かるような重力音が聞こえた。
「……お出まし、だね」
ヴェルダは細く緩く瞳を歪める。ゆっくりとホールに近付きつつある巨大な足音は、ふと、ぴたりと止んだ。かなり近くまで足音が響いていた為、冒険者達は身構える。
次の瞬間、物凄い轟音と共に、ホールに面した一部の壁が爆発した。
■ 白い龍 ■■
濛々(もうもう)と立ち込める土煙と埃の中、辛うじて冒険者達の瞳は其れを捕らえた。ある者は武器を抜きかけながら、ある者は魔法の詠唱に入りながら。
土煙の中に佇んでいたのは、目も眩むような白い身体を持つ龍、だった。
「……何と、美しい」
半ば呆けたように、ヴェルダの唇から言葉が滑り落ちる。龍は壁を蹴破ったまま、ぴくりとも微動だにしなかった。ただ其の首を擡(もた)げ、金色の美しい瞳をじっと冒険者達に注いでいる。成る程、確かに行き成り襲い掛かると言うことはしてこなかった。
「貴方が、この城に棲むと言われる白き龍か」
セフィラスが一歩前に踏み出し、張りのある声でそう問うた。
白い龍の首が、ゆっくりと縦に振られる。澄み切った金色の柔らかい眼光が、緩く瞬いた。
「最初の姿は、この城の姫君か」
もう一度、セフィラスはゆっくりと問い掛ける。
白い龍は緩く首を縦に振ったかと思えば、其の金色の澄み切った瞳から、ぽろぽろと大粒の涙を流し始めた。止め処(ど)なく流れる涙は大粒ではあったものの、カンテラの僅かな光にぼんやりと湾曲し、落ちる瞬間きらりと煌いた。
「どうか私を殺してください」
くぐもった声で、白い龍が呟いた。涙は後から後から溢れ出てくる。首を床に伏したまま、閉じた瞼から大粒の涙が溢れ出していた。
レピアがそっと、足を踏み出す。踊り子の性質か、ゆっくりと音を立てないように歩きながら、ふわりと白い龍の前に膝を折った。其の侭、そっと自分の頭あたりに位置している白い龍の鼻面に、自分の頬を押し当てる。龍は抵抗しなかった。
「辛かったでしょう」
レピアは静かに語り掛ける。貴方はあたしと同じだわ、と。
「あたしも、夜にしか許されることは無い身体を持っているの」
そう言って、レピアはそっと龍から身体を離した。そのまま、一歩二歩、と冒険者達の所まで後退する。
エルダーシャはそっと其のレピアを支え、彼女から白い龍へと視線を滑らせる。白い龍は僅かに頭を擡(もた)げ、此方をじぃと見つめていた。まるで、自分を殺してくれるのかと言わんばかりの瞳。
「貴方を、龍から引き離します」
アイラスは一歩前に足を踏み出し、白い龍に優しく語り掛ける。先程の話し合いの場で、口にすることが出来なかった方法。呪いを解く唯一の。其れは。
「メイさんの力で、貴方から龍の身体ごと呪いを引き離します」
メイはゆっくりと顔を上げる。こんな話は事前に聞かされていなかったが、龍が出てきた今、猶予は無い。姫君が万が一自我を失ってしまえば、自分たちは其れを討伐するしかなくなる。
そうなってしまうのは、避けたかった。どうしても。メイは、巨大化した大鎌の柄をぎゅう、と握り締めた。
白い龍の姫君は、事の顛末を理解していないようだった。引き剥がす。何を。そう言いたげな顔で、じぃとアイラスを初め、冒険者達を見つめていた。
メイはそろりと白い龍に近寄る。そっと、其の湿った鼻面を撫でた。
「罪は償いましょう?貴方は白い龍の身体しか持っていないから、身体は無くしてしまうけど……でも、償うことは出来る」
「……私、は」
白い龍は、ゆっくりと口を動かした。舌が閃く度に、鋭い牙が見える。だがメイは、怖くは無かった。そっと、大鎌を振り上げる。
其の侭メイは後ろを振り返り、小さく頷くことで合図をして見せた。姫君から白い龍が身体ごと離れてしまえば、白い龍は自我そのものを失ってしまうわけだから、必ず暴走する。振り返った冒険者達は、各々の武器を手にして待機していた。
ゆっくりと、白い弧を描いて鎌が振り下ろされる。
鎌の先端が白い龍に突き刺さるかと思った瞬間、ふわり、と天使の羽根のようなものが舞い上がった。
凄まじい咆哮を上げて、白い龍がのた打ち回り始める。其の勢いに吹き飛ばされそうになったものの、メイは辛うじて其の翼で自分の体重を支えた。其の侭、ふわりと後退する。
白い龍は苦しそうにもがき、やがて一つを白く発光する球体を口から吐き出した。どしゃりと床に落ちた其れは、徐々に人の形を為して行く。嗚呼、姫君だ──エルダーシャに支えられていたレピアは、其の手を振り払って駆け出した。精神体となって床に崩れ折れている姫君の透き通った身体を、そっと救い上げる。さらさらと流れ落ちそうなほどの透明感なのに、姫君の身体を支えることが出来た。
人であり、身体を失った存在。心と僅かな思念のみで構成された、天国の門も潜れぬ孤独の身体。
だが感傷に浸っている猶予は無かった。レピアは姫君を抱きとめたまま、其の侭被害の少ない部屋の隅へと転がり込む。
「来るぞ!」
セフィラスが声を張り上げる。白き龍は神々しさをすっかり失い、只の化け物になっていた。セフィラスが抜き身の剣で切り掛かる其の間、ヴェルダは魔法を詠唱する。現れた茨の盾に身を隠しながら、ち、と小さく舌打ちを漏らす。
「所詮は、姫君が美しかったと言うことか──あんなに醜くなってしまって」
茨の盾に守られながらそんなことを呟くヴェルダの真横を、風のようにフィーリが駆け抜けていく。
其の顔は愉悦に歪み、手には不気味に輝く一振りの剣がしっかと握られていた。どうやら剣は魔力を付加されているらしく、時折妖しいうねりが剣を取り纏う。
「ドラゴンバスターの試し斬り、させてもらうよ……」
時折聞かせた陽気な声とは打って変わって、奥の底まで冷え切った声。絶対零度のような其の声音が、大口を開けてフィーリに立ち向かってくる白い龍に向けられる。
フィールは大きく床を蹴り、白い龍の上顎(うわあご)を狙い、真っ直ぐに其のドラゴンバスターを突き立てた。肉が裂ける嫌な音と、血飛沫が吹き上げる音が同時に響く。
「……さよなら、ゆっくりお休みよ」
口許にひんやりとした冷笑を浮かべ、自らの両腕を吹き上げてくる血にどっぷりと浸しながら、フィールはぽつりとそう呟いた。
剣の柄から手を離して立ち上がるフィールを横目に、ヴェルダが白い龍へと近付いてくる。もう息は弱く、後少しすれば息絶える程度だった。矢張りこの白い身体の元は、あの姫君なのだ。本物の龍より脆くても当たり前だ。
「黙っていれば、綺麗なのにね」
ヴェルダがぽつり、と漸く体温が冷え始めた白い龍に向かってそう言った。
■ 姫君 ■■
昔は姫君の部屋だったのであろう其処は、白で統一された清潔な部屋だった。
窓から射し込む月明かりの下、目を覚ました姫君はぼんやりと其処に佇んでいる。体を通して、月の光が床の上に毀(こぼ)れていた。
「……どうして私ごと、殺しては下さらなかったのですか」
姫君の声は鈴を振るような声で、そんなことを呟く。
セフィラスは静かに目を細め、姫君に問い掛けた。極静かに、極小さく。
「貴方は、生きたいとは……思わないのか」
「だって……」
姫君は子供が泣き出す直前のような顔をして、其の侭肩を振るわせる。
「お父さまを殺してしまった。たくさんの罪無き人を殺してしまった。……そんな私が生きてて良い筈は、無いのだもの」
透き通った肩が、小さく震える。
誰も、何も言わない。フィールがきぃきぃと無く仔ドラゴンを宥めながら、そっと姫君の前に進み出た。
「こいつがね。話があるんだってさ」
姫君は小さく其方を向く。フィールの肩の小さな白い仔ドラゴンが、そっと姫君に向かって首を伸ばしていた。其の可愛らしさに、そっと姫君は透明な手を伸ばす。自分の手が透けていることに気付き、姫君ははっとして、そっと手を握りこんだ。
「ボクはね、貴方が心配だったんだ」
白銀の仔は、そう口を開いた。
「貴方は生きたいのに、我慢してる。それで、死のうとてたよね。ボクは其れが可哀想でしょうがなかったんだ」
姫君は驚いた表情で、仔ドラゴンを見つめていた。やがて、其の双眸から、ぽろぽろと真珠のような涙が流れ始める。白い龍のとき同様、とてつもなく綺麗な涙だった。ぽろぽろと、流れつづける。
「幸せに、なってね」
白銀の仔ドラゴンが口を噤んだのを見ると、フィールはゆっくりと冒険者達の間に戻る。そっと、其の頭を撫でてやった。
メイは、ゆっくりと口を開く。
「償いましょう、罪を。貴方に課題を与えます──」
にっこりと微笑んで、メイは姫君に言葉を投げる。
「近隣の村を、貴方が見守ってください。人が、長い生を全うして、やがて空へ還る──其の、流れを」
東の果てには、寂れた城がぽつりと佇んでいる。
白い龍に変えられた不幸なお姫様の話は、既に人々の記憶から消えかかっていた。
消え始めた不幸な話の代わりに。
近隣の村では、山道で迷った時や不慮の事故にあったとき、そっと助けてくれる女神の話が、ぽつりぽつりと咲き始めていた。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【2017 / セフィラス・ユレーン / 男性 / 22歳 / 天兵】
【1063 / メイ / 女性 / 13歳 / 戦天使見習い】
【1112 / フィーリ・メンフィス / 男性 / 18歳 / 魔導剣士】
【1649 / アイラス・サーリアス / 男性 / 19歳 / フィズィクル・アディプト】
【1926 / レピア・浮桜 / 女性 / 23歳 / 傾国の踊り子】
【1780 / エルダーシャ / 女性 / 999歳 / 旅人&魔法遣い】
【1996 / ヴェルダ / 女性 / 273歳 / 三眼族】
※登場順にて表記しております。
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■ ライター通信 ■
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今日和、ライターの硝子屋歪で御座います。(礼
メイさん、二度目の御参加有難う御座いますっ。(ぺこり
セフィラスさん、フィーリさん、アイラスさん、レピアさん、エルダーシャさん、ヴェルダさん、初めまして。御参加有難う御座いますっ。(ぺこり
「龍の棲む城」、お楽しみ頂けましたでしょうか?
ファンタジーの王道、龍に変えられたお姫様。
今回は其れを下敷きにして物語を書き上げてみたわけですが、ご自分の想像なさっていた結果と比べて如何でしたでしょう。
どう足掻いても王道な結末に転ばないのが硝子屋流儀で御座います。(何笑
全体的に皆様の出番を出そうと思ったのですが、見事に偏ってしまい。(とほほ
お話のバランスも悪くなってしまいましたが、書きたいことは全て書けたので満足です。(何
・・・・精進します、すみません。(滝汗
プレイングも生かせず・・・とほほ。
又機会がありましたら、どうぞ宜しくお願い致します。(礼
其れでは。
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