<聖獣界ソーン・白山羊亭冒険記>


新米冒険者 ―趣味を持とう―

〜オープニング〜

「やぁ」
 短くそう挨拶して入ってきた男にルディアは目を少し大きくした。
「あら、マーガレットちゃんのお兄さん。今日はマーガレットちゃん来てませんよ」
「あー知ってる。今日はじいちゃん家に行ってるからな」
 覇気という物がまったく感じられない青年、ティムはカウンターに腰掛けるとルディアにコーヒーを注文した。
「騎士団は今日お休みですか?」
「ん……まあな。いや、実は頼みがあって来たのさ」
 ティムの言葉にルディアは苦笑しながら小さく首を傾げた。
「もしかしてマーガレットちゃんの事ですか?」
「まあな」
 ティムも苦笑を浮かべた。
 ティムの妹マーガレットは冒険者に憧れる好奇心旺盛な15歳の少女。夢は世界一の大冒険者で勝手にロバート・ブリンダムと名乗っている。
 ティムはマーガレットに冒険者になる事を諦めさせたいのだが、なかなか上手くいっていない。そこでまた一つ妙案を思いついたようなのだ。
「あいつに何か別の趣味でもできりゃ旅に出るのを諦めるんじゃないかと思ってな」
「趣味ですか?」
「そう。例えば……ままごと、とか」
「ままごとは趣味じゃないですよ」
 苦笑するルディアに決まり悪気な顔で頭を掻くティムは視線を逸らした。
「例えばの話だよ。ままごとでもあやとりでも、とにかく冒険だとか旅だとかからあいつの興味を外せればいいんだからな」
「趣味ねぇ……」
 呟いたルディアにティムは息を吐いた。
「俺も騎士団の仕事があるからそんなにあいつに構ってられないからな……誰か良い奴紹介してくれないか?」
 そう言われたルディアは少し考え、そして頷いた。
「わかりました。誰か引き受けてくれないか探しておきます」
「助かるよ。報酬が必要なようだったら言ってくれ。じゃ、頼んだよ」
「はい。任せてください!」
 ぽん、と胸を叩きルディアはティムの願いを快諾したのだった。

■多彩な講師陣
「……大丈夫、かしら?」
 一抹の不安にそう呟いたルディアは目の前の人物達を見た。そこには良い意味ではじつに多彩な……悪く言えば統一感待ったくなしの講師陣が、座っている。
「大冒険者ねぇ、こりゃまたなんつーかな、アレだ。夢見るうら若き乙女の甘く熱く怪しい、どきどき青春イロモノ浪漫ってトコかね?」
 そう言い、不敵に笑ったのはオーマ・シュヴァルツ。どきどきと青春と浪漫は当てはまるかもしれないが、イロモノはどうだろう……今後の成長次第、というところか。
「趣味ですか。僕は多趣味ですが、冒険にも出ていますけどねぇ〜ロバートちゃんにあうような趣味ですか」
 アイラス・サーリアスは微笑みながらオーマの隣に腰掛け、考えている。
「何故、私がここに……私に何が教えられるというのか」
 そう嘆くイルディライはまたもあの赤毛の少女と関わる事になった己の不運に額を押さえた。
「新しいシュミ……?シュミって夢中になれるものって前に教わったわ。マーガレットちゃんはそれを探しているの?……そういえば、スゥにもシュミがいないわ……」
「あの、スゥちゃん……?」
 姿勢良くイスに座り、一点を瞬きもせず見つめながら言ったスゥ・シーンに冷や汗を流しながらルディアは確実に『シュミ』を勘違いしているスゥに何か言いたい様だが、どこから手をつけて良いのか困り最後の一人を見た。
 まったく我関せずの姿勢で本を読んでいる本男はルディアの視線も気づかぬフリ。
「……えっと、兎に角皆さん、分かってますよね?」
「分かってる。まぁ、何だ。依頼ってーなら仕方がねぇけどよ……そうだな。ンじゃちょいとばかし煽って……もとい、ますます興味を持つ様に……じゃねぇ兎に角、この腹黒同盟総帥にして親父道師範の俺に任せとけって。な?」
「……任せられませんってば」
 にやにやと笑うオーマに嫌な汗が止まらないルディアは頭を抱えた。
「あぁ、心配だわ……」
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。趣味を一緒に楽しむだけですから」
 そう言ったアイラスにルディアが小さく溜息を吐くのと同時に白山羊亭の扉が元気良く開かれた。

■主役登場
「おっはよ〜。話って何?」
 現れたのは一連の騒動の中心。ロバート・ブリンダムことマーガレット・ノートン。赤く無造作に切られた髪がまるで彼女のありあまる元気を現しているようにクセ毛が飛跳ねている。
「こんにちは、ロバートちゃん」
「うっ……こ、んにちは」
 にっこり挨拶したアイラスに何故か怖気づくような仕草を見せるマーガレット。まだ苦手意識が抜けないらしい。
「ほぉ、成る程な。ただのうら若き乙女じゃない訳か。格好は一端の冒険者してるじゃねーか」
「あんた、誰?」
 品定めをするように視線を向けたオーマを指差し言ったマーガレットに、彼は益々笑みを深くする。
「俺か?俺は、オーマ・シュヴァルツ。医者兼ガンナー及び副業、同盟総帥など数多の舞台で活躍している俺様が可愛い後輩の為に一肌脱いでやろうってー親心でやってきたのさ」
 一気にそう言われ、ぽかんとしているマーガレットの服をスゥが引っ張る。
「あ、何?」
「あのね、スゥにもシュミがいないの。だから、一緒に探しに行きましょ」
「は?趣味??え、ちょっと待った!どこに行くのさ!?」
 兄のティムから何も聞かされていないマーガレットは目を白黒させながら、スゥに引き摺られるまま、白山羊亭を出て行った。
「おやおや。大丈夫ですかね?僕、一緒に行って様子を見てきますね」
「お願いします、アイラスさん」
「んじゃ、俺も行くか」
 オーマとアイラスも去り、白山羊亭にはルディア、イルディライ、本男の三人が残った。
「……で、私は何をすれば?あまり、出番は無いように思えますけどね」
 静かに、本から目を話す事無く言った本男。彼の言葉に静かに頷きで賛同するイルディライ。
「えっと、まぁ今は確かにそうかも知れませんけど」
 苦笑するルディアは、一本の瓶を取り上げた。
「新しいワインがあるんですけど、飲みますか?」
「……貰おう」
「頂きますよ」
 一人は微かな微笑みともう一人はぶっきらぼうな声で返って来た返事に、ルディアはグラスを取り出した。

■電波キャッチ中?
 さて、街に繰り出した一行を引き連れているお人形さんは、きょろきょろと辺りを見回し歩き出す。向かう先には通りを歩く人々に威勢の良い掛け声で呼びかける屋台のお兄さん。
 お兄さんの方もスゥに気づいたようで、爽やかな笑顔で声をかける。
「や、お嬢ちゃん。お友達とお買い物かい?」
「ううん。違うの。あのね、スゥたちはねシュミを探しに来たの」
「趣味?あーそりゃ残念だな〜この屋台にはお嬢ちゃんたちの趣味になりそうなものはないなぁ」
 お兄さんの言葉にスゥは小さく首を傾げた。
「ないの?でも、オニイサンは良いシュミになりそうだと思うの。マーガレットちゃん、そう思わない?」
「え?!ボク?」
 いきなり話を振られてしどろもどろになるマーガレットだが、疑問に思っていた事を口に出した。
「あのさ、さっきから趣味を探すって言ってるけど、なんでボクまで探しに行かなきゃ行けないのさ?」
「何故って、だって、マーガレットちゃんもシュミがいないんでしょう?」
「あのさ〜趣味はいないとかそういうんじゃなくて、ないって言うんじゃない?……はっ!もしかして、シュミって名前の人を探してるの?な〜んだ、それならそうと早く言ってよ。この未来の大冒険者が探してあげるからさ!」
 胸を張り鼻息荒くそう言ったマーガレットにスゥは首を横へ振った。
「違うわ。スゥが探しているのはシュミって人じゃないの。お母さんよ」
「え、お母さん?そりゃ、大変だ!キミ、迷子だったんだね。こうしちゃいられないや、早速探しに行かなきゃ!!」
 と言うと、今度はマーガレットがスゥの手を掴み走り出し、雑踏の中へと消えて行った。
「……なんか、すっげー電波な会話だったなぁ、オイ」
「そうですねぇ」
 一部始終見ていたアイラスとオーマは呆れつつ顔を見合わせた。
「ここらでビシっと……」
「趣味を教えてあげましょうか」
 仲良く一つの台詞を言った二人は顔をお嬢さん方が消えて行った方へ戻し、歩き出した。

■不運な料理人
「あ、ルディ!」
 これは偶然か必然か。いずれにせよ、彼にとっては不運としか言い様がなかった。
「……何をしている?」
 明らかに不機嫌そうにイルディライは鉢合わせてしまったマーガレットに尋ねた。
「あのね、今ね、スゥのお母さんを探してるんだ!」
「ちがうのよ。シュミを探しているんだわ……お母さんも探しているけど」
 大きなつぶらな瞳で文字通り瞬きせずにマーガレットを見つめるスゥは首を傾げた。少し彼女も混乱してきているようだ。
 そんな彼女たちを見ながら、イルディライは静かに深い溜息を吐くとマーガレットを見た。
「……付いて来い」
「どこ行くの?」
 当然尋ねるマーガレットに無言でいいから来い、と言うと彼女も雰囲気で察したらしくスゥの手を離した。
「ゴメンだけど、ちょっとお母さん探しはお預け。白山羊亭で待っててよ」
「そう?わかったわ。また後で探しに行きましょうね」
 スゥに大きく頷いたマーガレットを横目で見ながら、イルディライはまた小さな溜息をついた。折角、逃げ出して来たというのに……と内心ぼやきながら。

「料理の基本は新鮮な食材」
「ふむふむ」
「売られている旬の物だけではなく、時には自分で手に入れなければならない時もある」
「ほおほお」
「今から食材調達をするぞ」
「なるほど。で、なんで突然ボクまで料理する事になったの?」
 腕組みをして今までイルディライの言葉にいちいち相槌を打っていたマーガレットは首を捻った。イルディライは当然今回の経緯をティムが話していると思っていて何を今更と心の中で呟いただけだが、きっと少女が事情を知らなくても、口数の少ない彼は特に説明をするという事はしないだろう。
 今日も口数少なく、イルディライは自慢の武器を鞘から抜いた。

■銀獅子と料理人と見習い冒険者もどき
「おーいたいた」
 オーマは視線の先に見える二つの姿に片眉を上げた。
「いましたけど、何をしているんでしょうね?」
 アイラスも姿を確認し、首を傾げる。
 イルディライとマーガレットは林の奥で立っている。ひとりは刃の大きな武器を持ち、パッと見れば子供を脅しているか、盗賊行為が行なわれているように見えなくも無い。
「まぁなんだ。何してるにしても、一丁俺の出番と行くか」
 そう言うなりオーマの体に異変が起こり始める。アイラスの見守る中、オーマは地面に手をつき、その体がゆっくり大きく膨らみ銀色へと色を変える。気がつくと、そこには銀色の巨大な獅子が現れていた。
『ちょいと行ってくるぜ』
「はい。お気をつけて」
 アイラスに見送られて、オーマはのっしのっしと足音を響かせながら歩き出す。その物音に気づいたマーガレットは振り返り、見上げて大きく口と目を開いて銀獅子を見上げた。
「うわ、でかっ!ルディ、でっかい獅子だよ!!」
「……わかっている」
 同じく見上げるイルディライの頭の中に声がした。
『よぉ、ご苦労さん。オーマだ。ちょいと俺の話に合わせてくれ。いいな?』
 微かに眉を寄せ、見上げるイルディライにただ銀獅子は唸っただけだったが、その双眸は笑っている。
『お前たち。冒険者か?』
「うわっ喋った!喋ったよ!!」
 面白いくらいに反応するマーガレットに笑いを堪えながら、オーマは続ける。
『俺が喋るのが珍しいか?何が喋ろうが、お前の知った事ではない。俺の勝手だ。さぁ、お前は冒険者か?』
 唸りながら、巨大な顔をゆっくりマーガレットに近づけるオーマ。彼の目的は彼女の望みを尊重し、冒険者の道に導いてやる事。その覚悟を試す為に獅子に変身し心の強さを試しているのだ。
「そうさ!ボクの名前はロバート・ブリンダム。未来の大冒険者さっ!!」
 二度、同じ質問をされ腰に手を当て獅子を見上げて得意気に言ったマーガレットの鼻先で、オーマは一声吼えた。
『はっはっは!笑わせてくれる。お前のようなチビが大冒険者だと?』
「ムッキー!チビっていうな。おまえがデカイだけだい!!」
 恐いもの知らずと言おうか、はたまた恐怖心が欠落しているのか、マーガレットは臆する事なくそれどころかまるで巨大獅子と対等のように会話している。
 そんな彼らの近くの茂みが揺れ、猪を大きくしたような魔獣が姿を現した。騒がしさに獲物かと出てきたようなのだが、オーマの姿を見ると恐怖からか彼を凝視し動きが止まってしまった。
「あ、ルディ。あれじゃない?さっき言ってた食材」
「あぁ」
 短く頷いたイルディライはちらりとオーマを見た。
 予期せぬ来客に、オーマは楽しそうに目を細めマーガレットに言った。
『小さな冒険者よ。あの獣を倒してみろ。お前のその力、見せてみろ!』
「のっぞむところだー!」
 掛け声一つ、小さな体は魔獣に向かって駆け出した。

■実はスポーツ未経験なんです……
「お帰りなさい。わぁ、これまた大きな獲物を獲りましたねぇ」
 街の入り口で出迎えたアイラスはオーマとイルディライが引きずる魔獣のなれの果てを見た。
「へっへ〜すごいでしょ?ボクが倒したんだよ!」
 と、自慢するが実際倒したのはイルディライ。詰めの甘いマーガレットが危ない、寸での所を仕留めたのである。
「ねぇロバートちゃん。今度は僕に付き合ってくれないかな?」
「いいけど……どこ行くの?」
「決まりですね。じゃ、行きましょう」
 アイラスはオーマとイルディライに会釈をすると、マーガレットの手を引き雑踏の中を歩き始めた。
「ねぇねぇ、どこ行くの?」
「んー楽しい所ですよ。ところで、ロバートちゃんは何か趣味はありますか?」
 問われてキョトンとしながらも、マーガレットは答えた。
「趣味?んー考えた事ないから良くわかんないけど……皆今日は何かヘンだよ。趣味、趣味ってさ」
「あはは。そうですか?」
 笑ったアイラスは目的の場所が見え、指をさした。
「あ、あそこですよ」
 そこは街から少しでたところにある、原っぱを利用した広場でたくさんの人々が思い思いにスポーツをして楽しんでいる。仮にスポーツ広場としておこう。
「スポーツ広場じゃないか。何すんの?」
「もちろん、スポーツを楽しんでもらおうと思って」
 そう、にこにこ笑顔で言ったアイラスは悩み始めた。
「何から始めましょうか?そうですねぇ、バスケなんかどうでしょう?サッカーも駆け回れるから楽しいと思うんですけど……ここは広いから野球も良いかもしれませんね」
 どうします?と意見を求めてマーガレットを振り向いたアイラスは彼女が困ったような顔で頭を掻いているのに瞬きをした。
「どうしました?」
「うん……あのさ、バスケとかサッカーとかボクわかんないんだよね」
「え……やったことは?」
 小さく頭を振ったマーガレットにアイラスは少し考えたが、すぐに笑顔になりマーガレットの肩に手を置いた。
「じゃ、やってみましょう。僕が教えてあげますよ」
「本当?よろしくっ!」
 満面の笑みに変わったマーガレットにアイラスも優しく微笑んだ。

■時には読書も
 アイラスとマーガレットが白山羊亭に戻ってきた時には、夕暮れに街が赤く染まっていた。
「あ、お帰りなさい」
 二人の姿を見つけたルディアはすぐさま二人をカウンターに招いて座らせた。
「ちょっと遅いから心配してたのよ……どうだった?」
 少し不安そうに尋ねたルディアだが、すぐにその不安は吹き飛んだ。
「すっごく楽しかった!」
「そう。良かったわね〜」
 笑顔のマーガレットに頷き、ルディアはアイラスを見て安心した笑顔を見せた。
「さて……では、最後は私ですね」
 今まで読書に没頭していた本男は読み終わった本を閉じ、マーガレットへ体を向けた。
「まさか、また趣味とかいうんじゃ……」
「おや、鋭いですね。その通りです。私のお勧めは本です。何せご趣味は?と訊かれて返ってくる回答でも一位二位を争う程の人気ですからね、読書は」
 そう言って微笑んだ本男にマーガレットは渋い顔をした。
「え〜でもさ、本って眠くなるしさ〜それに、本なんか読むより特訓する方がいいや」
「冒険者にとって情報や知識は必要不可欠。この本なんかは私の知り合いの冒険者が必読だと言っていましたが……」
 そこまで言ってちらりとマーガレットを見ると、明らかに興味を示した様子。だが、あえてそ知らぬ顔でさも残念そうに本男は言った。
「いや、残念です。あなたには不必要なようですね」
「読む読む読むー!」 
 慌てて身を乗り出したマーガレットに小さく本男は笑むともったいぶった動作で本を手渡す。
「仕方ありませんね。本来なら本を読んだら眠くなる、などという不逞な方にはお貸ししたくは無いんですけどね」
「寝ないよ。ちゃんと読むからさ!」
 すっかり読む気になっているマーガレット。そこを逃さず本男は更に本を取り出した。
「では、これもお貸ししますよ。これは絵本なんですが冒険者を扱った英雄譚のものなんですよ。あと、これは実際の冒険者の記録です」
 次々に出てくる本に、マーガレットは目を丸くしていたが出てくる本全て冒険者絡みとあっては断ることも出来ず、渋々といった感じで本男から本を受け取った。
「いいですか?無理に夢を諦める必要はありませんが、無知の所業ほど恐ろしいものはありません。知識を得た後も危険を承知で目指すと言うならば、私は止めません。お兄様の説得をしても構いませんしね」
 静かに言う本男にマーガレットも神妙な顔つきで聞いている。
「……ただ、今すぐではなく、知識を蓄えお兄様に子供扱いされないようになってから、ですね」
 目を細めて微笑んだ本男にその場に居た者たちは頷いた。
「確かに、な。青春は神出鬼没大胆不敵傍若無人に駆け抜けてこそなんぼのモンっつっても、やっぱ身内は心配するだろうからな」
 オーマの言葉を受け、アイラスはマーガレットの髪を優しく撫でる。
「それに、ロバートちゃんはまだまだ若いですからね。これから先、時間はいくらでもありますよ」
「……ふん。まだまだ未熟だ」
 そう言って厨房から出てきたイルディライはマーガレットの前にサンドイッチとスープを置いた。
「うわ〜おいしそう〜」
「お腹空かして帰って来るだろうからってイルディライさんが作ってくれていたのよ」
 笑顔で言うルディアに、余計な事をと呟いたイルディアイはすぐにまた厨房へと引っ込む。他のメンバーの分も入れに行ったのだろう。
「ありがとールディ!」
 厨房にそう声をかけたマーガレットは舌なめずりして、早速スプーンを手に取った。
「ねぇ、マーガレットちゃん」
 口に運ぼうとしていた手を止め、マーガレットはスゥを見た。
「ナニ?」
「シュミって人の事じゃなかったのね。スゥ教えてもらったのよ。だから……」
 目をぱちくりさせて、続くスゥの言葉を待つマーガレット。
「ごはんを食べたらシュミを買いにいきましょうね」
 その言葉に皆笑い出し、スゥに趣味の説明をした本男はやれやれと額に指を当て小さく頭を振ったのだった。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0811/イルディライ/男/32歳/料理人】
【1649/アイラス・サーリアス/男/19歳/フィズィクル・アディプト】
【1953/オーマ・シュヴァルツ/男/39歳/医者兼ガンナー(ヴァンサー)副業有り】
【0376/スゥ・シーン/女/10歳/マリオネット】
【0589/本男/男/25歳/本の行商】

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■         ライター通信          ■
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こんにちは、壬生です。
新米冒険者第三段如何でしたでしょうか?
今回は皆さんのキャラの個性が強く、マーガレットは振り回されてしまいましたが、次は負けませんよ!(何
マーガレットの趣味は獲得されたか、どうか……
元々趣味が冒険のような子ですからね(笑)

それでは、またご縁がありましたらお会いしましょう。