<聖獣界ソーン・白山羊亭冒険記>


ソラン魔道士

 (オープニング)

 ソラン魔道士協会は、エルザードの中心部にひっそりと建っている。
 あまり規模の大きな魔道士協会ではないのだが、エルザードに住む者達は何かしらの形でソランの魔道士を見かける事が多かった。
 エルザードの街で火事があれば、ソラン魔道士協会は消火の為にとりあえず魔道士を派遣する。祭りがあれば、季節に合わせて何かしらのイベントを開く。
 そうした地域密着型スタイルの魔道士協会である事が、ソラン魔道士協会を規模の割には有名な存在にしていた。
 今日もソランの魔道士達は、地域奉仕活動という名の雑務と売名行為の傍ら、魔道の研究に励んでいた…
 「ニールは、魔道士になりたいのかい?」
 魔道士ウルは、自室に呼び出した、弟子の見習い魔道士に尋ねる。
 「あ、はい。それは、まあ」
 そりゃ、魔道士になりたいから見習い魔道士をやってるわけなんですが…
 見習い魔道士ニールは、なんと答えたら良いのやらと、気の抜けた答えを返した。
 「別に、魔道士になるだけが魔法の勉強をする道では無いよ。
  特にうちの魔道士協会に所属すると、何かと忙しいし」
 ウルは言葉を続ける。
 「はい、それはわかっています…」
 冬の祭りで魔法の暖房器具の売り子をした事、夏祭りで魔道ペットボトルロケットを打ち上げた事、思えば微妙に何か違う忙しさばかりの見習い生活だった。ニールは遠い目をする。
 「それでも、ソラン魔道士になりたいかい?」
 「はい」
 その質問には、ニールは即答した。優柔不断な少年にしては珍しい事である。
 「じゃあ、最後の試験。心の試験を始めようか…」
 ウルはニールに、正規の魔道士への最後の昇格試験について説明し始めた。
 すでにニールは、幾つかの試験を終えている。
 仲間達と魔法人形のダンジョンに行く事で、戦闘技術を証明した。
 枯れ木に花を咲かせる事で、魔道技術を証明した。
 残っているのは最終試験だけだった。
 「一週間で、いいよ。
 魔法人形達の街へ行って、人形の王の代理を務めるんだ。
 上手く出来たら、それで合格だから」
 ウルは言った。
 「コ、コピー君と入れ替わりですか…」
 何だか大変そうだなーと、ニールは思った。
 心を持った魔法人形の街の王は、幾つかの事件の末、今はニールの能力をコピーした人形が勤めている。
 少なくとも心では、自分のコピーの人形に負けたくはないなー。とニールは思った。
 数日後、ニールは魔法人形の街へと出発した。
 ほんの数人程、噂を聞きつけたりウルに頼まれた者たちが、ニールを追って魔法人形の街へ向かったという…

 (依頼内容)
 ・見習い魔道士のニールが、魔法人形の街で王の代理をしています。誰か何とかして下さい。
 ・魔法人形の街の観光客も募集中です。

 (特に関連ありそうな過去の依頼)
 ・宝玉と黒ローブの魔道士1〜3
 ・魔法人形のダンジョン
 ・花咲か魔道士

 (本編)

 1.先に着いた者と、後から着いた者

 ニールが魔法人形の街へ旅立った翌日の事である。白山羊亭には、旅の行く先や冒険のネタを探している者達が集まっていた。
 「聞きましたか?
  ニール君が、また魔法人形の街に行ってるらしいですよ」
 テーブルの一角で、アイラス・サーリアスがニールの事を話している。果たして、彼はどこで噂を聞きつけてきたんだろうか?
 彼の話を聞いているのはエルダーシャとロイラ・レイラ・ルウだ。
 「あー、あのコピー君が王様をやってる街ですねー」
 エルダーシャは頷いた。人形の街にも、ニールが何しに人形の街へ行ったかにも興味があった。ロイラも、じーっと話を聞いている。
 「それがですね…」
 と、アイラスはニールが試験の為に魔法人形の街へ行った事を二人に説明した。本当に、どこで噂を聞きつけて来たのだろうか。謎の多い男である。
 「へー、それじゃあ様子を見に行きましょうかー」
 「あ、私も行きたいです。ニール君ちゃんとやってるか心配だし」
 アイラスから事情を聞いたエルダーシャとロイラは、一緒に行こうと言った。
 それから、三人はのんびりとニールを追ってエルザードを後にした。観光半分、ニールの様子見半分といったところだ。
 数日後、三人より先に出発していたニールは魔法人形の街に着いた。
 さすがに緊張した様子のニールを街で出迎えたのは、人形王のニール・コピーの他に二人。織物師のシェアラウィーセ・オーキッドと探索士のスラッシュだった。
 「後から出たはずの私達の方が、先に着くとは…ニール、少しのんびりし過ぎじゃないかな?」
 ふふっと、シェアラはニールを見て笑った。
 「…全くだ」
 スラッシュも頷いた。
 「ど、どーも」
 いや、早すぎです。あんた達。とは言えずに、ニールは会釈するしかなかった。
 「じゃあ、僕はしばらく町外れの小屋に隠れてますんで、一週間がんばってね」
 人形王のニール・コピーはニールに言った。彼はフードを被って顔を隠している。すでにウルと打ち合わせ済みの彼は、ニールが自分の代理をする間、隠れる場所も準備していた。
 何処へとも無く、ニール・コピーは去っていく。ニールの一週間の始まりだった。アイラス達が人形の街に到着したのは翌日の事だった。

 2.王宮風の建物と、王の仕事

 魔法人形の街で合流した一行は、ひとまず王の宮殿のような場所へ向かった。途中、街並みを見渡してみると、色々な面で以前よりも整っていて、とりあえず一つの街として充分に機能しているようだった。観光客や外部からやってきた商人なども目に付く。
 「栄えてる街かそうでないかを判断する一つの基準は、どれだけよそ者が多いか…だな」
 シェアラが呟いた。彼女が言うまでも無く、賑やかな街には、人が自然と外部から集まってくるものだ。
 「私の育ったの村なんて、全然お客さん来ませんでしたよ」
 平凡な村に生まれ育ったロイラは、ちょっと遠い目をしている。
 「世の中には色んな街がありますよねー」
 エルダーシャはさらに遠い目をしている。
 「…まあ、人が集まれば賑やかになるが、もめ事も増えて、管理する側は大変になるわけだね」
 ふふっと、シェアラが笑った。スラッシュも声を出さずに微笑んだ。
 「勘弁して下さい…」
 ニールは笑えなかった。
 人形の街に住んでいる人形は、3000体程度である。人口から想定出来る街の規模としては、せいぜい中規模程度だ。なので、その統治者は王というより、実質は市長といったところだろう。まあ、王であれ市長であれ、見習い魔道士の少年が簡単に代理を出来るものでは無い事に違いはなかったが…
 街並みを眺めつつ歩いた一行は、やがて王宮らしき所にやってきた。
 「なるほど、こういう王宮も庶民派な感じで良いですね」
 アイラスが王宮っぽい建物を検分している。やや大きめの、2階建ての屋敷である。落ち着いた感じの造りでアイラスには好感がもてた。エルザードで売りに出されたら、小金持ちが飛びつくに違いないと思えた。
 「とりあえず、執事人形さんに挨拶をしましょうか…」
 と、ニールは屋敷に在住しているはずの執事人形を呼ぶ事にした。呼び鈴を鳴らすと、すぐに執事人形はやってきた。
 「いらっしゃいませ、王より話は伺っております」
 老人風の執事人形は、セバスチャンと名乗った。随分古い感じの名前だが、大昔に造られた人形だから仕方ないのだろう。
 1階の応接間に案内された一行は、各種簡単な説明をセバスチャンより受けた。
 民家風の王宮は、1階が王の職場になっていて、玉座風のパイプ椅子や机があったり、書庫があったりするようである。2階が王や客の寝室になっているようだ。一行は基本的に2階で寝泊りする事になる。
 「今週は、魔法人形のダンジョンの利権に関しまして、近所の冒険者ギルドの長と会談をする事になっておりますので、その時だけはお気をつけ下さい」
 一行は魔法人形の街の現状と、王の仕事についての話も聞いた。
 現状、魔法人形の街は比較的落ち着いているようである。街が創設された時のごたごたも一段落したし、魔法人形のダンジョンの建設とテストも終わり、冒険者ギルドに売り込める段階になっていた。残った課題は、冒険者ギルドとの折衝である。
 「ウルめ…そういう事情は先に言っておいてくれても良いのにな」
 とりあえず弟子を現場に放り込むウルのやり方に、シェアラは苦笑した。
 「…好意的に解釈するなら…あえて事前に説明をしない事で、対応力を測る試験…か」
 「ただ、深く考えてなかっただけだったりして…」
 スラッシュとロイラが、色々邪推している。
 「うーん、あの人、頭は良さそうですけど、たまに適当ですからね…」
 多分、ロイラが正解なんじゃないかなーとアイラスは思った。真実は謎である。
 「ぼ、冒険者ギルドとの折衝ですか。なんか、とっても大事な気がするんですけど、そんな事、僕がやっちゃって良いんでしょうか…」
 「ウルさんの申し出で、ニール殿が行うのであれば、何の問題もございません。皆でサポート致します」
 執事は淡々と言った。ただ、責任の重さだけがニールに押しつけられていた。
 「なるほど、王様って大変なんですねー」
 エルダーシャが納得していた。
 アイラスは、雑務でも手伝いますよ。と、書類を整理している事務員人形に声をかけた。
 そうして、人形の街での一週間は始まった。

 3.鈍く光るアミュレットと、冒険者ギルドとの折衝

 数日の間は、特に何事も無く過ぎ去り、やがて冒険者ギルドとの折衝が行われる日がやってきた。一行が魔法人形の街にやってきてから5日目の事である。
 ニールは民家風の王宮で、執事人形達と打ち合わせに余念が無かった。
 「シェアラさん、ちょっと一緒に居てもらえませんか?」
 前日、ニールはシェアラに言った。
 「私か?
  別に構わないが、今までの交渉の流れ等は知らないから、あまり役には立たないと思うぞ」
 さすがのシェアラも、何でも知っているというわけではない。
 「いえ、ただ居てくれるだけで良いです。
  やっぱり、一応王宮なんで、宮廷魔術師でも居たほうが良いかなーという話になりまして…」
 「宮廷…ただの民家な気もするが…まあ、見栄えも大事か。だが、あんまり見栄えを取り繕うとすると、逆に馬鹿にされる気もするな…」
 こんな屋敷で、宮廷魔術師も何も無い気がするが…
 「まあ、いいよ。臨時の宮廷魔術師として、同席するよ」
 シェアラは言った。後で笑い話のネタ位にはなるかもしれない。
 「というわけで、アイラスさんも書記としてお願いできますか?」
 「ん?
  僕もですか。全然構わないですよ」
 面白い話が聞けるならメモでもしておきたいし、丁度良いかな。とアイラスは思った。
 こうして、二人は折衝の席に同席する事になった。 
 他の三人は、そういう席に同席するような芸風でも無いし、屋敷に残っていても邪魔になるだろう。と、観光がてら街の様子を見に行く事にした。
 昼前に屋敷を出た三人は、近所の食堂で昼食を取りながら休憩する事にする。
 「店員さんも、魔法人形さんですよね?
  私、思ったんですけど、ここの人形さん達って、本当に人間みたいですよね」
 ロイラが、街を歩いてみて思った感想を店員人形に言った。暇そうにしている店員人形は、会話に乗ってくる。
 「そうなのかな。人間をあんまり知らないから、僕にはわからないな」
 店員人形は、不思議そうに首を傾げる。少なくとも見た目上は、人間と変わらない。
 「そーだ、ちょっと聞いてみたかったんですけども、店員人形さんって、何で店員人形さんになったんですか?」
 エルダーシャが店員人形に尋ねた。人形達が、何を考えて生きているのかを知りたかった。
 「何でって…それは、ベルク様にそういう風に作られたんだもん」
 店員人形は困ったように、創造主のベルク・マッシェの名前を挙げて答えた。
 そういう風に物事を考える所は、少し人間とは違うようだ。と、エルダーシャとロイラは思った。
 「…違う自分になってみたいとは…思わないのか?」
 スラッシュが、静かに尋ねた。
 「違う自分かー…よくわからないなー」
 店員人形は困っているようだ。
 「店員人形さん、生まれてからお店の外に出た事も、あんまり無いんですよね」
 私も、小さい頃は村の外の事とかわからなかったもんなー。と、ロイラは思った。
 店員人形は生まれてから数ヶ月の間、この店でひたすら店員をしているのである。物事を考えるにしても、知識が少なすぎるのだ。
 「そっかー。じゃあ、街の外を旅してみたいとかって思う事は無いですかぁ?」
 「あ、それならあります。王様のコピー元のニールさんが居る、エルザードっていう街には一度行ってみたいと思いますし」
 エルダーシャの問いに、今度は店員人形は即答した。
 好奇心という心を、ベルク・マッシェは確かに人形達に吹き込んでいたようである。3人は、人形達の考え方が少しだけわかった気がした。
 それから、しばらく休んだ3人は、町外れのニール・コピーの所へ向かった。
 「ずっと気になってたんですけど、スラッシュさんのアミュレット、綺麗ですね。この街に来てから、何だか光ってるみたいだし」
 ロイラがスラッシュのアミュレットを見て言った。
 「…ああ、これか。
 これは…そういう物なんだ」
 スラッシュはアミュレットの事をロイラに説明した。
 以前、スラッシュは一人で魔法人形の街を訪れた時、一つのアミュレットを道具屋で買った。魔法生物を感知して光る力を持ったアミュレットである。特にベルク・マッシェの魔法人形を近くに感知した時には、普段と違う輝きを放つそうだ。
 「あー、ここってベルク・マッシェの魔法人形さんなら、いっぱい居ますもんね。
 そりゃー、光りますよねー」
 「…そういう事だ」
 エルダーシャとスラッシュが話している。せっかくなので、アミュレットの力を発動させっ放しにして、輝きを楽しんでいるスラッシュだった。
 アミュレットは穏やかに光を放っている。ベルク・マッシェの魔法人形を感知した時、このアミュレットは一番穏やかに光るそうだ。
 きれいだなー…
 と、ロイラもアミュレットを眺めていたが、
 「…あれ?
  今、ちょっと色が変わりませんでした?」
 一瞬、輝き方が変化したのをロイラは感じた。
 「…鈍くなったな、一瞬」
 「使いすぎで電池切れ…じゃないですねー」
 スラッシュとエルダーシャも、輝きが一瞬鈍くなったアミュレットに気づいたようだ。
 「…確か、ここら辺を通った時に…」
 と、スラッシュが少し道を戻ると、再びアミュレットの輝きは鈍くなった。道の脇には、一軒の民家が建っていた。他に周囲には何も無かった。
 「この家って…」
 ロイラが鈍く光るアミュレットと家を見比べている。
 「アミュレットが…こういう風に光るのを見た事は無いな」
 スラッシュが言った。三人は、少しの間、民家の前に佇んだ。この民家には、何らかの人形が住んでいる事に間違いない。
 一方、屋敷風の王宮の方では、冒険者ギルドと魔法人形の街の折衝が終わっていた。応接間にはシェアラとアイラス、ニールに執事人形のセバスチャンが残っている。
 「まあ、無難に終わって良かったね」
 シェアラが涼し気な顔で感想を述べる。特に大きな問題は無く、折衝は終わっていた。
 「なんか、魔法人形のダンジョンの賃貸料とか、すごく大事な事にサインしちゃった気がするんですけど、大丈夫なんでしょうか…」
 対象的に、ニールは死にそうな顔をしている。よっぽど緊張したようだ。
 いえ、あんなもんで良いです。と執事人形は言った。
 「一番の大仕事も終わりましたね、これで」
 アイラスは話し合いの記録をまとめている。あんまり面白い話は無かったので、そういう意味では少し残念だった。
 冒険者ギルドとの折衝組は、応接間でのんびりとしている。
 そこへ、街に出ていた組が帰ってきた。
 「へー、鈍い光ですか」
 何だろう。と、アイラスは首を傾げる。スラッシュ達はひとまず何もせず、そのまま事情を伝える事にして、王宮風の屋敷に帰ってきた。
 「鈍いけど、色自体は同じ色って事は…なんだろうなー」
 ニールは、悩んでいる。大事件という程の事でも無いかもしれないが、王として放っておくわけにもいかない気がする。
 「昨日、住民票の整理とかしてたんで、ちょっとその家の事を調べてみますね」
 アイラスは書類を見ている。
 「色が同じ色である事に目をつけたのは、悪くないな。
  おそらく少し違うベルク・マッシェの人形なのか、ベルク・マッシェを模して誰かが作った人形なのか…」
 シェアラは首を捻る。具体的な事は、まだ何もわからなかった。
 ニールが王の代理を務めるのは残り二日。その間、一行は調べられる事は調べてみる事にした。

 4.試験の結果

 それから2日間、鈍い光の魔法人形に関する調査は続いた。
 「その、アミュレットが鈍く光った民家には、街娘人形さんが住んでるみたいなんですけどね、ちょっと不思議な事があるんです」
 住民票を見てると、少し気になった事があった。と、アイラスは言った。ほうほう。と、一行は話を聞いている。
 「魔法人形さん達は、作られてから動き出すまでの間、奥の倉庫で眠ってたわけなんです。
  …でも、あそこの民家の街娘人形さんだけは倉庫でなく、民家があった場所で眠っていたんです」
 「ちょっと不思議な話ですね」
 不思議だなー。という事以上は、ロイラにも他の者にも判断がつかなかった。
 また、民家に住む街娘人形の評判は普通で、特に変わったことは無いようだ。
 「で、ニール君はどうするんですかー?」
 街に出かけて話を聞いてきたエルダーシャが、ニールに尋ねた。
 「そうですね、確かにちょっと違う人形さんみたいですけど、特に問題は起きてないみたいですし…
  騒ぎを大きくしないで、このままにしておこうかと考えてるんですけど…
  街娘人形さん自身も、自分の事に気づいてないみたいですし、そっとしておくのも良いんじゃないかなーって」
 「…真相がわかると、幸せが壊れる可能性は…あるな」
 スラッシュも、どちらかというとニールの意見に賛成だった。
 「ニール君がそう思うなら…それで良いんじゃないですか?」
 ニール君の思う通りにすれば良いと思います。と、ロイラは言った。他の者もひとまず反対はしなかった。
 そうして、ニールとコピーが入れ替わる一週間は終わった。
 ニールは、ふーっとため息をついた。
 冒険者ギルドとの折衝も無事に済んだし、大きな問題は無かった。スラッシュのアミュレットに反応した魔法人形の件も継続して様子を見るという事でまとまった。
 可もなく不可もない一週間だった。不可が無いという意味では合格と言えるだろうか?果たしてどうなる事やら。とニールは、再び悩む。
 魔法人形の街を離れようとする一行だったが、ただ、最後に一つだけ言いたい事がある。とシェアラは言った。 
 「ずっと気になってたんだが、人形王の事を『コピー』って呼ぶのはやめないか?
  立派に一人立ちしているし、そろそろ自分の名を名乗っても良いと思うぞ」
 「そうですね。執事人形さんも、セバスチャンって名前がありますもんね」
 アイラスが頷いた。
 「一応、『コピー』って言うのが僕の名前なんですが…
  名前を変えたいなーとか、時々考えます。確かに…」
 もう少し考えておきます。とニール・コピーは言った。
 それから、一行はニール・コピーと別れてエルザードに帰った。さらに数日後、ニールが見習い魔道士を卒業する事を許可され、正式な魔道士になった事がロイラの耳にも入ってきた。
 ニール君。がんばってたなー。と、ロイラはため息をついた。
 …私もがんばろう。
 ただ、そういう風に素直に思う事が出来るのは、ロイラの長所だった。

 (完)

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス】
【1514/シェアラウィーセ・オーキッド/女/184才/織物師】
【1649/アイラス・サーリアス/男/19才/フィジクル・アデプト】
【1805/スラッシュ/男/20才/探索士】
【1780/エルダーシャ/女/999才/旅人】 
【1194/ロイラ・レイラ・ルウ/女/15才/歌姫】

(PC名は参加順です)

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■         ライター通信          ■
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 毎度遅くなって申し訳ありません、MTSです。
 結局、ニールは試験には合格出来たようです。
 今回は、いつも以上に地味になってしまったロイラでしたがいかがでしたでしょうか…
 お久しぶりで、色々書きたい事もあるんですが、ともかくおつかれさまでした。
 次回があれば、またよろしくお願いします…