<PCクエストノベル(5人)>


蒼の遊園地?

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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】

【1893/キャプテン・ユーリ /海賊船船長】
【1649 /アイラス・サーリアス /フィズィクル・アディプト】
【1953/オーマ・シュバルツ/医者兼ガンナー(ヴァンサー)】
【1988/カミラ・ムーンブラッド/なんでも屋】
【2055/リディア・A・コーンウェル/旅人?召喚術士】



【助力探求者】
【/】

【その他登場人物】
【/】


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 うっそうと繁る草を掻き分けながら、ある遺跡の前に彼は立った、今、巷で噂のアクア
ーネ村で見つかった遺跡の前だ。
入り口は小さく、奥深く続いているようには見えない。一見、小さな洞窟だがその奥には
大きな遺跡が残っているらしいというのだ。「らしい」というのが噂を噂たらしめる要因な
のだが。

 アイラス:「う~ん?危なくなさそうですね?噂で聞く限りは、トラップなどがあると聞き
ましたが・・・入るのもなんですし・・・ね。しかし、これは面白そうですね。誰かに報
告しなければ!」

のんびり口調に緊張は全く感じられない。これで中々、腕が立つのだから外見程あてにな
らないものはないだろう。
さぁ・・・と風が吹き、アイラス・サーリアスの薄い青色の髪がそよそよと吹かれる。肩を越す長めの
髪は後ろで一つに縛られ、特徴といえば、青い瞳とその瞳を覆う大きな眼鏡。
ここは外見通りで詩や音楽を好む文学的な面を持ち合わせた青年だった。
アイラスは、さてと、と方向転換し、まずは白羊亭へ向かった。

*白羊亭では*

 カミラ:「あら?オーマさんにリディアさん。今日は二人、ご一緒なの?」

白羊亭に入るなり、目に止まった二人にカミラ・ムーンブラッドは声をかけた。なんでも
屋の彼女の情報収集場所である、日が開けばくるようにしているらしい。人懐っこそうな
笑顔とふわりと薄いピンクの髪を二つに結っている女の子だ。一見、人間に見えるが吸血
鬼なのだ。血が苦手というそれは珍しい・・・。
その後ろをくっつくようにして離れないのは彼女の愛猫。黒い毛並みは美しく、聡明さが
表情にも表れ、美人な顔をしている。印象的なのは二つに分かれた尻尾。普通の猫じゃな
いことが分かる。額には五芒星の印のついた化け猫だ。
 
 オーマ:「お!カミラじゃねーか!今日も情報収集か?なんでも屋も楽じゃねぇなぁ。リ
ディアとはそこで会ってよ。一人で飲むのも侘しいだろ?付き合ってもらってんだよ」

オーマ・シュバルツは豪快な笑顔を振りまき、カミラまでも巻き込む魂胆が見える、すか
さず席を進める。その豪快な印象の通りかなり豪胆な人物で、オーマはこのソーンでも珍
しい、医者をやっている(もちろん兼業があったりするが)。身長2mを越す大男が繊細に
メスを使ってみせるのだから、一度オーマのオペを見たものは忘れることができないらし
い。
カミラは勧められるまま席に着きリディアの方へ向かって笑顔を零した。

 リディア:「久し振りね?カミラ。ここに座ったら最後、オーマの相手よ?」

オーマ曰く、そこで会って連れてこられたリディア・A・コーンウェルは素直に座るカ
ミラに笑いかけた。彼女はハイブリット種と呼ばれる種族で、天使、悪魔、竜、妖精、鷹、
鮫、獅子、神の遺伝子を掛け合わせて作られた。これだけ聞くとどんな人物・・・と思う
が、外見は結構色っぽい女性だったりする。黒い髪を器用に結い、体のラインのハッキリ
分かる美しい服を着ている。オーマにしてみれば両手に花である。

 オーマ:「まぁ、いいじゃねーか。ここで会ったのも何かの縁だろ?」

オーマは、まぁまぁ、とリディアにとりなし、カミラに笑いかけた。
その笑顔で、カミラは意図を察し、ジュースを頼んだ。昼からお酒はちょっと・・・と思
ったらしい。愛猫のためにミルクも忘れない。

 リディア:「ねぇ、カミラちゃん。今オーマクンと話していたんだけど、何か面白いことないかしら?
最近、あまり噂を聞かなくて・・・どこかに出かけようと思っているんだけどね」

情報通のカミラにリディアは期待の眼差しを向ける。ここのところ噂で満ちているはずの
白羊亭もさっぱりしたもので、あまり噂がなかったのだ。

 カミラ:「ん~これは確かか分からないけれど・・・アクアーネ村で新しい遺跡が見つか
ったらしいわよ?」
 オーマ:「おぉ?!本当か?それは面白そうじゃねーか」

にやり、とオーマ独特の笑みをもらす、その笑顔につられてリディアもにやり・・・とし
たが慌てて顔を戻す。その様子にカミラは幸運にも気づいていない。

 リディア:「じゃぁ、本当かどうか確かめに行けばいいじゃない?」
 オーマ:「面白そうだなぁ、俺も行くぜ!!」

乗り気な二人を眺めながらカミアは思案していた、噂はこれだけで他に何も情報がないの
だ、もう少し、何か情報が欲しいところだ。

 カミラ:「もう少し何か情報があればいいのだけど・・・」

そうぼやいたとき、また白羊亭の扉が開いた。
何故か小さな生き物を肩に乗せた、アイラスだった。

 オーマ:「アイラス!よぉ!久し振り・・・ってなんでユーリんとこのドラゴン連れてん
だ?」

小さなドラゴンは大きな目が愛らしく、また泣き声もきゅ~とかわいい。だが、いっぱし
のドラゴンであることが分かる姿をしていた。

アイラス:「そこで、パタパタ飛んでいるのを見つけたもので・・・。なんだかここに用が
あったみたいですよ?」
 カミラ:「あら?何か首についているわよ?」

カミラはたまきちの首についた紙を広げた。

『やぁ、皆、白羊亭にいると思って手紙を書いている。最近何か面白いことはないだろう
か?冒険に出かけていないもので、覇気に欠けるんだよ。たまきちと一緒にそちらへ向か
おうと思ったら船員から声がかかってしまってね。珍しくたまきちはおつかいというわけ
だ。何か良い情報があれば、僕にも教えてほしいんだがね。どうだろう?』

 リディア:「見計らったような手紙ね。何かレーダーでもついているのかしら?ユーリクンは」

おつかいのご褒美にたまきちの首を撫でてやりながら、リディアはおかしそうに笑った。

 カミラ:「あら、本当に。ちょうどいいですわね」
 オーマ:「あいつの顔が目に浮かぶよなぁ。ここに来ようとした矢先だったんだろうよ。
字が乱れてるじゃねーか」

その指摘に全員の目が集まる。すると同時に笑いが起こった。皆、一様に残念そうな顔を
するユーリを思い描いたのだろう。

 アイラス:「皆さん、ここで何か相談でもしていたんですか?珍しいですね」
 リディア:「アクアーネ村の遺跡へ行こうって話していたのよ」
 カミラ:「それにはもう少し、情報が欲しくて・・・」

その話を聞くとアイラスは満面の笑みになる。皆は???と首をかしげた。

 アイラス:「それは、まさしくちょうどいいです。僕、少し見てきたんですよ。遺跡。場
所はこれから説明します。それと入り口は狭そうでしたが、人は入れるようですし、探検
の余地はありますよ。充分に」

皆の顔に喜色が広がる。

 オーマ:「それじゃこいつを連れてユーリのとこへ行くか。誘いに行こうぜ!」
酒の入ったグラスを空にしてオーマは立ち上がると、皆もそろって立ち上がった。

*そのころ、スリーピング・ドラゴン号では*

 ユーリ:「あぁ、あんなことなら相棒をおつかいに出すまでもなかったよ・・・」

この船の船長はふぅとため息をこぼした。
一人でぼんやりとユーリは呟いた。あのドラゴンはユーリのドラゴンである。
ユーリが引きとめられたのは、船内の倉庫でおかしな物音がすると船員に呼ばれたからだ、
なんだなんだ?と行ってみれば小さな子供がかくれんぼをしていただけだった。
もう一度ため息をつくと被っている帽子を、左手に装着している義手である「貴婦人」で
弄んだ。緑の髪がそれに合わせてふわふわと揺れる。青い瞳はどこか虚空を見つめ、たま
きちの帰りを待ち詫びていた。何かいい情報をもって帰ってくるような気がしたのだ。

 ユーリ:「どこかへ行きたいものだよ。それも美しい女性がいれば申し分ない」

独り言というか願望を口に出しながら、窓の外をふと眺めた。ユーリのドラゴンがふよふ
よと飛びながら帰ってきていた。その後ろには数人従えている。

 ユーリ:「ん?なんだいあれは?」

ユーリは立ち上がると相棒を迎えに、部屋を出た。

*全員集合、そのあとは?*

ユーリ:「やぁ、皆してどうしたんだい?」
オーマ:「お誘いだよ、お誘い」
カミラ:「本当にタイミングがよろしいですわ、ユーリさんは」
リディア:「そうよね、何かレーダーでもついているんじゃないの?」
アイラス:「そうですよねぇ。ちょうど良すぎですよ、ユーリさん」

ユーリには何のことだかさっぱりだったが、一瞬で理解したのか、華やいだ笑みを浮かべ
た。

 ユーリ:「では、いい情報があるんだね?なんて僕はついているんだろう!!さっそく行
こうじゃないか!!」

そのまま歩き出しそうなユーリを引きとめ、アクアーネ村の遺跡について五人(と二匹)
は話し合った。カミラが持っていた地図を出し、アイラスが説明をし始める。リディアは
地図を眺めながら、話に相槌を打ち、オーマは率先的に質問を繰り返す。ユーリは楽しそ
うにいつもの笑みを浮かべていた。

 ユーリ:「打ち合わせはこのくらいでどうだろう?行ってみなくては話にならないよ」
その言葉を皮切りに、皆深く頷き、立ち上がった。
一路、アクアーネ村の遺跡へ!!

*アクアーネ村遺跡、入り口*

 リディア:「ここが本当に入り口なの?」

 リディアがそういうのも当然、入り口は小さく、アイラスたちのような人サイズの人間は
入るが・・・。どうみてもオーマは入りそうにないような気がして、4人はオーマを見つめ
た。注目を集めたオーマはというとさっさと歩いて行き、体を器用に捻ったりもがいたり
しながら、洞窟の中に入って行った。 

 オーマ:「狭いのは入り口だけだぜ!入って来いよ!」

陽気な声が洞窟に反響して聞こえてきた。

 カミラ:「本当に、怖いもの知らずですわーオーマさんは」
 アイラス:「本当に(笑)頼もしいですね」
 ユーリ:「いや、無鉄砲ともいうかもしれないね」
 リディア:「ユーリクン・・・穏やかな顔して結構言うわね」
 ユーリ:「そうかい?僕は女性には賛辞しか思い浮かばないが、男性は別だからね」

女性陣二人は、驚いたように目を丸めている。
その様子を穏やかに楽しそうに見つめているのはアイラス。

 オーマ:「おーい、早く来いよ!面白いものがある」

その言葉に誘われるように、皆は洞窟へ入って行った。
するとオーマの発言通り、洞窟は入り口だけが狭くなっており、中は広々と奥へと続いて
いた。
アイラスは、足場の不安定な洞窟でよろけた。とっさに壁に手を付く。するとざらりとし
た人工的な感触がした。

 アイラス:「え?これは・・・?」
 リディア:「何か文字のようね」

リディアは自分の特性を生かし、獅子の鬣のような黄金の羽を背から現し飛んでいた。
壁や地面に触れることなく、アイラスのそばに近寄り、文字のようなものを眺めた。
カミラは壁で手を擦った、アイラスの手に布をあて消毒している。

 オーマ:「俺が見つけたのはそれだ。何かの文字なんだろ?」

だろ?と聞くということは、今使用されている言語ではないことを如実に表していた。

 ユーリ:「こんなところに、文字か。危険な香りがしないかい?」

危険な香りと発言してはいるが、本人はいたって面白そうだ。そばの相棒はカミラの
愛猫と仲良くなったのが、リリスの周りをふよふよと飛んでいる。それに返事をするか
のように愛猫も二つに分かれた尻尾をふよふよと振りかえしていた。

 リディア:「だいたいこういうところにある文字って言えば・・・」
 カミラ:「いえば・・・警告文ですわね・・・」

女性二人は顔を見合わせ、肩をすくめた。止めたところで進むんだけどね、という暗黙の
了解であった。中々勇ましい。

 ユーリ:「カミラ、リディア、そんな肩をすくめて怖がらなくても大丈夫。君たちはこの僕
が命にかえても守ってみせるよ」

キラキラと目を輝かせて宣言してくれたユーリにカミラとリディアはにっこりと微笑む。
かわいい女の子と美しい女の笑顔に、ユーリは嬉しそうに微笑み返した。

 アイラス:「でも、せっかく入ったんですし、大丈夫でしょう?僕たちなら」
 オーマ:「そうだなー。さっさと進もうぜ?」
 ユーリ:「さぁ!僕の後ろへ!」

カミラとリディアを自分の後ろへと周らせ、リーダーシップのあるユーリは颯爽と歩き始
めた。
それに4人はついていく、オーマもアイラスもユーリと同様、このふたりのかわいく美し
い人たちに傷を残すようなことは・・・と思っていた。
アイラスは、“あんなかわいく綺麗な人たちに傷をつけては大変ですから”と責任感充分。
オーマは“あんな綺麗でさわり心地肌に傷でもつけちまったら泣くしかねぇよなぁ、おい”
と少々アイラスとは視点が違うようだ。
ユーリにいたっては先ほどの言葉通り、紳士的な思考回路によって行動を起していた。

一行は何故、洞窟があまり暗くないかという疑問をよそに進んで行った。

ちなみに、洞窟入り口の文、現代語訳してみよう。
『ようこそ、いらっしゃいました。ここは冒険の洞窟。トラップなど盛りだくさん!それ
をクリアし、辿り着いたものだけが、至上のものを見ることができます。さぁ!がんばっ
てね』
警告は警告だが・・・?今は時間が経ち遺跡になってしまっているアトラクション、機能
するのか?はてさて、どうなることやら。
ことの発端はかわいらしいユーリのドラゴンだった。カミラの愛猫と仲良くなり、嬉しそ
うにふよふよと飛んでいたときだった。
愛猫がが、にゃっ!と止めたときにはもうすでに遅し、たまきちは洞窟の天井に頭をぶつ
けて、きゅ~と痛そうにユーリにすり寄っていた。ユーリはよしよしとぶつけた頭を撫で
てやる。カミラも注意を促したかしこい愛猫を抱き上げ撫でてやっていた。
するとどこからともなく音楽が聞こえてきた。五人は顔を見合わせ、緊張が走る。
ユーリのドラゴンがトラップに頭をぶつけてしまったと思ったのだ。
その音楽はハープの美しい音色で壁からはボロを着た人形が出てきた。昔はきっと美しい
ドレスを纏っていたのだろう。二体の少女の人形は音楽に合わせてくるくると楽しげに踊
っている。
その様子を見て、五人は???となっていた。遺跡に人形?それも踊ってる?五人の思考
回路は今、珍しく一つになった。
心を和ませていたところに、ドラを叩いたような、ジャーンジャーンと緊迫した音がなる。
それをいぶかしんだ瞬間。人形の袖元からナイフが飛び出してきた。
ユーリ、アイラス、オーマはとっさにカミラとリディアを囲み、守りの体勢に入った。
ユーリはロックアップという義手にすばやくはめ変え、ナイフを叩き落としていく。ヴァ
ンサーのオーマは身の丈ほどもある銃でこちらも叩き落としていた。ここで銃を使って洞
窟が崩れるのを懸念したのだ。アイラスは腕っぷしの通り、武器落という技でこちらも次々
ナイフを落としているが、問題が発生した、ナイフは何か呪いが施しているようで、いく
ら落としてもこちらへ向かってくるのだ。

 カミラ:「ミラーイメージ!!」

するとナイフたちはあさっての方向へ飛んでいき、自ら壁に刺さっていく。カミラの魔法
だった。幻で攻撃をかわすのだ。その間にリディアが飛んで行き、天井を確かめる。
不自然な突起を見つけそれを押した。すると人形は壁の中へと戻って行ったのだった。
五人の連携で、事無きを得、かよわそうな女性陣の賢さに感嘆した三人だった。

 ユーリ:「僕たちの方が助けられてしまったね?」
 リディア:「そんなことないわよ。防御がなかったらできなかったことだわ」
 カミラ:「えぇ、魔法は呪文を唱えるときに隙ができてしまんですもの」
 ユーリ:「それは良かった。役に立てたようだね」
 オーマ:「けがはないか?二人とも」
 カミラ:「大丈夫ですわ」
 リディア:「えぇ、私も。ありがとう」
 アイラス:「それなら良かった」

和んだ雰囲気が五人を包んだとき、ユーリのドラゴンがきゅ~っと申し訳なさそうに飛ん
できた。

 ユーリ:「もうぶつけてはダメだよ?」

ドラゴンはきゅ~っと返事をする。そこへカミラの愛猫がユーリの肩に乗ってドラゴンの
頬をぺろっと舐めた。慰めているようだ。

 オーマ:「冒険の途中だってのに、和むもんだなー。いいな相棒ってのは」
 アイラス:「本当にいいですよねぇ」
 リディア:「本当に・・・可愛い」

その様子に皆、メロメロになってしまっていた。

オーマは銃を抱えなおすと、アイラスにこそっと耳うちをした。

 オーマ:「なんだかおかしくねぇか?危険は危険なんだが・・・」
 アイラス:「そうですよね・・・ちょっとおかしい」

その声を聞いてリディアも参加する。

 リディア:「あたしもそう思っていたところなの・・・」
 リディア:「だって攻撃するにしてもわざわざあんなに凝ることはないでしょう?」
腕を組み、悩ましげに眉を寄せる。

 オーマ:「なんてーか、お遊びみたいな雰囲気を感じるんだがな」
 アイラス:「僕もなんですよ。まるで他の世界の文献で見た遊園地のようです」
 リディア:「それは何?」
 アイラス:「なんだか、皆で遊ぶところのようなんですよ。色々な乗り物があったりしてわ
いわい楽しむものらしいです」
 オーマ:「確かに、お遊びというところでは似ているかもな」
 リディア:「そうよねぇ」
三人が思案しているとき、ユーリとカミアはお互いの相棒に心奪われていた。

*トラップなの?アトラクションなの?*

五人は進んでいくにつれ、疑問を増していった。ナイフの飛んでくる人形の後は、パン食
い競争のように、五つキャンディーが紐からぶら下がっている。その先は行き止まりだ。

 カミラ:「これはどれかを引いてくださいということですわね?」
 リディア:「どう見てもそうよね・・・一体どれを引けばいいのかしら?」
 アイラス:「ここは慎重にいかないと」
 ユーリ:「そうだね。また危ないことになるのはごめんだからね」
 オーマ:「まぁ、一回引いてみようぜ」

言うが早いか、オーマは中央のキャンディーをくいっと引いた。
アイラスはとっさに止めようと腕を掴もうとしたが、オーマの身長が高すぎて掴めず、リ
ディアが飛んで制そうとしたが間に合わなかった。
オーマはキャンディーを引くと、重厚な音とともに岩の扉が開いた。

 ユーリ:「偶然というか・・・運というか・・・」
 カミラ:「運ではないかしら?オーマさんに迷いはなかったもの」
 オーマ:「開いたぜ!!」

得意気に皆の方を振り返るオーマに感心したような眼差しが向けられた。

 オーマ:「おい?皆どうしたんだよ?」
 アイラス:「いっ・・・いいえ、何でもないです。さて、行きましょうか」

皆は同時に頷いた。
するとそこには、やはりボロを纏った青年の人形が立っていた。

 リディア:「今度は何かしら?」
 カミラ:「またナイフでも飛んでくるのでしょう?きっと」

女は強し、動じる気配はない。

 オーマ:「よし、やるぜ!」
 ユーリ:「僕たちで、守るんだ!」
 アイラス:「はい!」

男は、使命に燃えていた。
青年の人形はにっこり笑うと、五人に話しかけた。

 人形:「ようこそ。ここが最後です。僕としりとりをして負けた人から殺します」

何故にしりとり!そして殺されるのか!!
こう五人がつっこんだのは言うまでもなく。

 アイラス:「ということは一番初めにあの人形君を負かさなければいけませんね」

四人は、深く頷いた。

 人形:「では、始めましょう。まずは僕から。花」
 オーマ:「波」
 リディア:「蜜」
 ユーリ:「つばめ」
 カミラ:「瑪瑙(めのう)」
 アイラス:「兎」
・・・・・・一時間経過・・・・・・

 人形:「あぁっ・・・僕が負けてしまうなんて・・・。初めてのことです」

そういって泣き崩れる所作は人間そのもの。初めての言葉を聞いた五人は改めて辺りを見
渡した。骸骨・・・の山。

 人形:「しかし、せっかく僕と会ったのですから、記念に一人殺して差し上げますねっ!!」

目をぎょろっとさせ、こちらにとびかかって来ようとする人形を止めたのは、男性三人。

 オーマ:「おいおい、それはないんじゃねーかぁ?」
 ユーリ:「約束を破るなんて、いけないお人形だね」
 アイラス:「潔く認めたらどうです?」

三人ともにっこりと微笑んでいるが、体力を使い、頭を使い、相当苛立っているようだ。
人形は地面に倒され。心臓部分には、オーマの銃がつきつけられ、首もとにはアイラスの
手刀、そして眼球部分には、ユーリのロックアップが控えていた。

 リディア:「相当苦労したものね・・・疲れるわ・・・」
 カミラ:「えぇ・・・これ以上長くなったらどうしようかと思いましたわ」

三人の様子を見て先ほどを振り返る。
一時間も延々しりとりをやっていたのだ。言葉も尽きてくるし、その分頭も使う。
早く終って欲しい・・・というのが五人の本音であり、終れば、人形があんなことを言い
出したものだから、三人の怒りは想像できる。
ふざけんな!というところだろう。

三人はそれぞれの方法で人形を機能停止させたあと、感嘆の声を上げた。
人形が立っていたところにボタンがあり、それを開くと、湯気が辺り一面を覆い隠した。

 カミラ:「今度はなんですの?」

湯気を掻き分けながらリディアと手を繋いで、三人のもとへ行くと・・・。

そこは鍾乳洞になっていた。しかも、したたる水はお湯である。上のほうから光が差し込
み、青い空間を作っている。湯気がそれを反射して、蒼の洞窟のできあがりだった。
あの文章の「至上のもの」とはこのことだったのだ。
五人は我を忘れて、景色に見入る。青いお湯が静かに流れ、綺麗な水流の音を立てている。

気持ち良さそうなお湯に、リディアとカミラはそっとお湯に手をつけた。

 リディア:「あら?」
 カミラ:「まぁ!素敵」

二人が喜ぶのも仕方がない。お湯に手をつけた瞬間、お肌がすべすべになったのだ。
何だ?何だ?とオーマ、ユーリ、アイラスは二人に近寄った。

 リディア:「これは是非、入りたいわね」
 カミラ:「えぇ、是非!」

二人は辺りを見渡すと、奥に大きな壁のようになっている場所に気づいた。その奥を確か
めると少し深めの溝にお湯が溜まっていて広々としていた。
二人は目を見合わせてにっこりと微笑んだ。

 リディア:「ここから先は入って来ないでね」
 カミア:「入ったら、もう口聞きませんよ?」

二人の脅しに、何事かと思っている三人を他所に、二人は岩陰に消え、パシャンと水音が
聞こえた。

 ユーリ:「あの奥には素敵な光景が繰り広げられているようだね」
 オーマ:「あぁ・・・羨ましい・・・」
 アイラス:「邪なこと考えないでくださいよ!」
 ユーリ:「邪ってなんだい?」
 オーマ:「何を考えたんだよ?」

 ユーリとオーマはにやにやしてアイラスを見た。

アイラス:「かっ・・・からかわないでください!!」

アイラスの頬は真っ赤になって恥ずかしそうにそっぽを向いた。

 ユーリ:「こっちで僕たちも入ろうか」
 アイラス:「そうですね、折角ですし」
 オーマ:「俺たちもゆっくりしようじゃねーか。男ばっかでむさいけどな」
 ユーリ:「それを言ってはだめだよ・・・」
 アイラス:「そうですよ・・・」

考えないようにしていたことを言われ、意気消沈しそうになったが三人も湯につかった。

こんな美しいものを見られるなら苦労して良かったわね、と微笑むリディアにカミラも微
笑む。その頃、三人は、必死にきょろきょろしていた。
どこかに穴はないかと探していたのかは・・・彼らしか知らない。

END

*ライターより*
このたびは、オーダーをありがとうございます!!今回、初めまして古楼トキです。
遺跡の探検ということで、こんな感じになりました。少しは楽しげに、そしてシリアス
に、なったでしょうか?どちらかというとコメディー要素が強くなってしまいましたが・・・。
少しでも気に入っていただけると嬉しいです。
初めてクエストノベルの五人、を書かせていただいたのですが、とても楽しかったです。
素敵な方たちばかりだったので、また、いつか共に冒険ができるといいなと思っています。

お待たせしてしまい申し訳ありがせんでした。少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。

それでは、本当にありがとうございます!!そしてこれからも宜しくお願いいたします。

                         古楼トキ