<PCクエストノベル(2人)>
透明な音色〜アクアーネ村〜
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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】
■1805 /スラッシュ / 探索士
■1962 /ティアリス・ガイラスト / 王女兼剣士
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■□■
豊かな水に溢れるアクアーネ村近辺を、スラッシュとティアリス・ガイラストは共に歩を進めていた。
水に溢れるこの村の付近は、木々の緑も眩しく夏の太陽の光がキラキラと葉の間からこぼれ落ちてくる。
まるでこれからピクニックにでも行くような雰囲気を醸し出していたが、二人はこれからピクニックに行くわけではなく、アクアーネ村付近で最近発見されたという遺跡へと向かっていた。
これから二人で向かう冒険を前にティアリスは上機嫌だ。
それはもちろん、スラッシュの方からティアリスを冒険へと誘ってくれたからに他ならない。
満面の笑みでスラッシュの隣を歩いていくティアリスの金色の髪が太陽の光に煌めき輝く。
ティアリスの笑顔は差し込む日差しの様に明るい。
スラッシュはその笑顔を見て小さく微笑む。
本当に誘って良かったと。
本当は少し迷っていたのだ。ティアリスを冒険に誘うか否か。
迷った理由は危険な目に遭わせたくないといったようなものだったが、よくよく考えてみればティアリスは護って貰う事を良しとするような性格ではなかった。
どちらかといえば、危険であっても一緒に前へ進みたい、と思うようなタイプだ。それにやや先走り防御に欠ける部分はあるが剣の腕は確かだった。一緒に行くのに不足はない。
その考えに行き着きスラッシュはティアリスに声をかけたのだ。共に探索をしてみないかと。
そしてティアリスはスラッシュの誘いに一つ返事で承諾し今に至る。
どれだけ嬉しかったかは今の表情を見れば明らかだった。
但し、二人の目的はスラッシュは遺跡探索、ティアリスは剣の修行とそれぞれ違うものだったが。
ティアリス:「とっても気持ちいいわね」
木漏れ日に目を細めながらティアリスが告げる。
スラッシュ:「……そうだな」
スラッシュはいつも言葉少ない。そして感情が表情に表れる事も少ない。
だからこそ、その微かな表情の変化に気づくのは日頃見つめている者の特権だとティアリスは思う。
今も微かな笑みがスラッシュの顔に浮かんだ事に気づいて、ティアリスはもう一度幸せそうな笑みを浮かべた。
そんなまったりとした幸せな時間を過ごしながら、二人は目的地である遺跡へとたどり着く。
緑の中から急激に開けた場所には、陽の光が反射し眩しいくらいの水を四方に湛えた遺跡が存在していた。
その遺跡は湖の中に静かに佇んでいる。
遺跡とスラッシュ達の間を繋ぐのは一本の細い石橋のみ。
その橋から落ちたらもれなく湖での水浴び決定だった。
ティアリス:「さすが水の都ね……」
スラッシュ:「全く……」
煌めく日差しの中、一匹の魚が跳ね、ぱしゃん、と銀色に見える雫を振りまいた。
二人はそんな中、細い橋を渡っていく。冒険はこれからなのだ。
■□■
中は古代の遺跡だけあり、少々埃っぽい空気が漂っている。
しかし何度か出入りがあり空気が循環していたためかそこまで気になるものではない。
天上は高く、そして壁には全面細かな装飾がなされている。それだけでも価値のあるものなのではないかとティアリスは思いながら、ぐるりと辺りを見渡した。
二人の前にある通路は何処までも真っ直ぐ続いているようだった。
他に横道は存在しない。
ティアリス:「先に進みましょう」
ティアリスの言葉にスラッシュは頷き、そしてカンテラ代わりの輝石を取りだし先に立って歩き始めた。
スラッシュは注意深くトラップの有無を確認しながら進んでいく。
その後ろ姿を眺めながらティアリスもスラッシュの踏んだ場所を辿るように歩く。
まるで同じ道を一緒にずっと歩いているような気分になり、ティアリスはそれだけで嬉しくなる。
一緒に同じ道を歩いていける事。
それは好意を寄せている相手と一緒ならばなおのこと嬉しい。
そしてそんな時間がこれからも続いていく事を願う。
スラッシュ:「扉だ……」
スラッシュが歩みを止め呟く。
その肩口から覗き込むようにしてティアリスは目の前にある扉を眺めた。
目の前には周りの壁よりも豪奢な細工が施された扉があった。
ティアリス:「ここが最奥……な訳ないわよね」
スラッシュ:「外観からしてまだ奥に続いていると思う……」
ティアリス:「……入ってみるしかなさそうね」
ここで悩んでいても埒が明かない。
ティアリスの提案にスラッシュはそっと扉に手をかける。
その奥に何が存在しているのか。
予想もつかないが、静かに開けようとした扉には鍵がかけられているようだった。
鍵といっても、その扉自体に何かがついているわけではなくスイッチが何処かに隠されているタイプのようだ。
少し離れているようにいい、スラッシュは扉の付近を探し始めた。
軽く壁を叩いてみて厚さを調べる。
微かな音の違いでもスラッシュには分かるらしい。やはりここはスラッシュの探索士としての経験が物を言う。
真剣な表情で先へと進む鍵を探すスラッシュをティアリスは見つめていた。
コンっ、と先ほどとは違った音が聞こえスラッシュは動きを止める。
そしてその場所を軽く押し込んでみる。
すると、ガゴッ、という音と共に扉は動き出した。
横にスライドした扉は二人を更に奥へと誘う。
まず初めにスラッシュが先へと進み、そしてその後をティアリスが追った。
その場所は今までよりも更に高い天井があり、上の方に横穴があり2階までの吹き抜けのようになっている。
スラッシュ:「随分と変わった作りだ……」
ティアリス:「本当ね。でもあの横穴はなんなのかしら」
そう言ってティアリスが首を傾げた時だった。
ズザザザァッ、何かが迫ってくる音が聞こえた。
それは水が流れてくるような音にも聞こえたが、何かを引きずるような音にも聞こえる。
二人は身構え辺りを窺う。
四方から聞こえてくるような音は二人へと着実に迫ってきていた。
スラッシュ:「ティア……」
ティアリス:「大丈夫。無茶はしないから」
攻撃は最大の防御。しかしそれは一人の場合こそ効果は高いが、ティアリスには今安心して背中を預けられる人物が居る。
それならば戦闘スタイルも変わって当然だった。
辺りを窺う二人に向けて突然、高い天井から部屋を分断するように壁が勢いよく降りてくる。それと共に天上に開いた大きな穴から流れ込む大量の水。
それに二人が気づいた時には遅かった。既に二人の頭上付近までその壁が迫ってきており、水も二人の踝あたりまでたまっていた。
分断される部屋の向こう側に先へと進む扉がある。
咄嗟にそれで止められるとは思わなかったが、スラッシュは持っていた短剣で落ちてきた壁を支える。
鋭い衝撃が身体に走るが、そんなことは構っていられなかった。
人一人が通れるくらいの僅かな隙間にティアリスを押し込む。
ティアリス:「嫌っ!スラッシュっ!待って!」
スラッシュ:「いいから先に進めっ……俺はあそこから行く」
その言葉と共にスラッシュは短剣をティアリス側に蹴った。
ズンっ、という鈍い音と共に壁が完全に地に着く。
ティアリスは二人の間に隔たれた壁を見つめ声を限りに叫ぶ。
ティアリス:「スラッシューっ!」
また大切な人物を失ってしまうのかと。
先ほどまで同じ道を辿っていたと思えたのが嘘のようだった。
その厚い壁はティアリスの悲痛な声さえも遮断し虚しく響く。
ティアリスは呆然としながら、足下に浮かぶスラッシュの短剣を拾い上げた。
そして自分の心を奮い立たせるように呟く。
大丈夫、大丈夫と。
スラッシュは生きているから、と。
最後にスラッシュは『あそこから行く』と告げたのだ。だから道は一つではない。
ティアリスに与えられた道とスラッシュに与えられた道。
歩いていく道は違うかもしれないが、辿り着く先はきっと一緒だとティアリスは強く心に願う。
ティアリス:「絶対スラッシュの元に辿り着くんだから……」
きっ、と前を向いてティアリスは目の前の扉へと向かった。
■□■
壁が二人を隔て、水はその壁でせき止められた。
これであちら側は大丈夫だろう。
ティアリスはきっと目の前の扉へと進むはずだ、とスラッシュは思う。
そこで立ち止まるようなティアリスではない。
きっと微かな可能性を信じて前へと進むに違いない、とスラッシュは信じていた。
立ち止まる事が悪い事だとは思わないが、ティアリスは絶望の最中でさえ先に進む強さも持ち合わせている。
だから大丈夫だと。
そして自分がこれから先に進めば、前へと進んだティアリスと必ず合流出来るとスラッシュは思い上を見上げる。
スラッシュの頭上には先ほど見つけた横穴があった。
水位が上がればあの穴に入り込む事が出来るに違いない。
しかしわざとあの穴に追い込まれているような気がしてスラッシュは密かに眉を顰める。
嫌な予感がしたからこそティアリスを反対側へと押し込んだのだったが、それは探索士としての勘だったのだろうか。
とりあえずは先に進むしかない。このまま溺れ死ぬのはまっぴらごめんだった。
スラッシュはあっという間に上がった水位で天上付近まで浮かんでいく。
そして水が入り込んでくる前に横穴へと飛び込み細い通路を駆けた。
水はスラッシュを追いかけてくる様子はない。
やはりあの水攻めとも思われる仕掛けはこの横穴へと冒険者を誘い込むための罠に違いない。
水が追ってこない事に気づいたスラッシュは慎重に足を運んでいく。
スラッシュの足下でぱきり、と何かが折れる音が聞こえた。
不思議に思いそれを見遣ると、それは白骨化した人の手だった。
先に此処を訪れた者だろうか。
スラッシュは更に注意深く進んでいく。
今のところなにも見つからなかったが、此処で命を落としている者がいるのは確かだった。
その時だった。
音もなく近づいてきた獣にスラッシュが襲われたのは。
熊くらいの大きさの狼に似た黒い影。
それがスラッシュを襲う。
スラッシュ:「っ……!」
咄嗟にダガーで薙ぐが見切られ、それは何もない宙を切り裂く。
一歩後ろに下がった獣は反動を付け、スラッシュへと襲いかかった。
今度こそ、とスラッシュは斬りつけるが、宙で神業のように逆方向へと向きを変えられ上手く切り込めずにいた。
普段なら短剣も有るため、多少の融通は利くのだがそれも今はティアリスの手の中だ。
ダガー一本で仕留められる相手とも思えなかった。
スラッシュはじりじりと追いつめられるように後ずさる。
スラッシュの背には先へと進む通路がある。
狭い通路で戦っていては分が悪いとスラッシュはそのまま獣に背を向けて走り出す。
本来ならばそこで命を落とすのが侵入者の末路なのだろう。
しかしそれに大人しく従う義理はない。
先の方が明るくなっていたため、この通路の出口は近い。
少しの辛抱だとスラッシュはその通路を駆け抜けた。
そして目の前に開ける部屋。
目映いばかりに輝く一面水晶で出来た部屋があった。
一体どのようにして作ったのだろうと考える間もない。
獣の鋭い牙がスラッシュを襲った。
刹那の瞬間、スラッシュの方が後ろに跳躍するのが早かった。
飛ぶ瞬間、ダガーを振り致命傷にはならないが獣へも傷を負わせる事が出来た。
間合いを取り、獣の動きを見遣る。
その時、ぐらり、と一瞬スラッシュの身体がバランスを崩す。
その瞬間を獣は逃さなかった。
スラッシュへとの距離を一気に縮め襲いかかった。
■□■
スラッシュに示された扉は触っただけでなんなく開き、ティアリスを誘うようにスライドする。
先ほどの仕掛けが嘘のようなスムーズさだ。
ちりちり、と傷む胸を必死で鎮めながらティアリスは歩く。
どうやってついているのかは分からなかったが、その通路には青白い灯りが灯されている。ゆらゆらと揺らめく光がティアリスの影を長く伸ばした。
まるで迷路のように何処までも続いていく通路。
永遠に続いていくような長い長い通路が、まるでティアリスを死へと誘い込むようにも感じられ、気持ちは沈んでいく。
しかしそれでは前に進む事が出来ない。
スラッシュの短剣を握りしめてティアリスは歩いた。
こうして終わりのない孤独を旅する事になったら、自分はどうなってしまうのだろうと思う。
支えてくれる人の居ない一人きりの永遠の孤独。
ティアリスは気丈だったが、たった一人きりで歩いていけるほど強くもない。
周りに見守ってくれる人が居るからこその強さだった。
ティアリス:「スラッシュ……」
無事でいて、という言葉は敢えて飲み込む。
きっとスラッシュは無事なのだから。そしてこの短剣を返して、また微笑み合う事が出来るのだからという思いを胸に抱いてティアリスは前へと進んでいく。
先の方は真っ暗だったが、ティアリスが進んでいくのに合わせ青白い灯りが点っていく。
ティアリスを奥へ奥へと誘う光。
その道はちゃんとスラッシュの元へと続いているのだろうか。
不安がこみ上げるがティアリスには進むしか道は残されていない。
そしてようやくその永遠に続くと思われた通路にも終わりが来たようだ。
青白くうっすらと辺りを照らす灯りではなく、全体的に明るく照らす何かがある。
それと共に何かがぶつかり合う音。
ティアリス:「………!」
その音は金属と固いものがぶつかり合う音。
誰かが戦闘している。
スラッシュが戦闘している、とティアリスの中で文字が組み合わさる。
そう思った瞬間、足はもう駆けだしていた。
通路を潜り抜けたティアリスの目に飛び込んできたのは、光り輝く水晶で作られた部屋だった。
そしてその中央付近でスラッシュが戦っている。
ティアリス:「スラッシュっ!」
ティアリスはバランスを崩していたスラッシュに今にも飛びかかろうとしていた真っ黒い獣に鋭い突きを与えた。
それを避けるように獣はスラッシュから一旦離れる。
そして二人を窺いながら獣は低い唸り声を上げた。
スラッシュ:「ティア…良かった」
そう言ったスラッシュの瞳が安心したように細められてティアリスは泣きそうになる。
しかし泣いている暇はない。
今は目の前の獣をどうにかしなくてはならないのだから。
ティアリス:「スラッシュこそ。…安心したわ」
動揺を押し隠すようにティアリスはニッコリといつものように微笑むとスラッシュへと大事に持っていた短刀を返し、すぐに獣へと視線を移す。
敏捷性に優れている獣相手に防御などするだけ無駄だ。あっという間にこちらの体力を削られてしまう。
かといって、闇雲に突っ込んでいくだけでは意味がない。
ここは二人で協力するしかないだろう。
ティアリス:「お願いっ!引きつけてっ!」
その声に頷いてスラッシュは獣へと距離を縮めた。
そして今度は戻ってきた二つの武器を巧みに操り、獣を翻弄する。
金属と牙と爪が当たる音が小刻みに響き渡った。
爪で弾き返され、その度に逆に握ったダガーで獣の足を切りつける。
横から腹を裂くように向けられた爪を側転でスラッシュは回避し、飛びかかる獣の胸を鋭く突く。
憤怒の咆哮をあげる獣は目の前のスラッシュに夢中で、スラッシュの背後から間合いをゆっくりと詰めてきているティアリスには気づいていない。
獣はスラッシュの振り上げた短剣に牙を立て噛み付くと、そのままスラッシュを持ち上げ振り飛ばそうとする。
その反動を利用し、スラッシュは足を振り上げ獣の顎を蹴り上げた。
一瞬牙が緩んだのを察し、勢いよくその短剣で獣の口を裂く。
鮮血が宙に舞う。
黒い獣:「ギャォォォォオォォンッ!!!」
耳をつんざくような咆哮が響き渡った。
獣は怒りにまかせくるりと回転し着地したスラッシュを爪で薙ぐ。
ティアリス:「スラッシュ伏せてっ!」
両手を振り上げた獣。
その瞬間をティアリスは待っていた。
一気に加速し間合いを詰め跳躍する。
そしてティアリスは獣の頭部に渾身の力を込め剣を突き刺した。
それと同時にスラッシュも身を伏せたまま心臓部へとダガーをめり込ませる。
同時に二つの急所を突かれた獣は力を無くし、その姿は力を失ったと同時に霧散した。
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一気に脱力したようにティアリスはその場にぺたりと座り込む。
そしてその隣にスラッシュも座り込んだ。
ティアリス:「此処が最奥部?」
スラッシュ:「そうらしい……」
ティアリス:「それじゃさっきのが此処の守護神みたいなものね」
スラッシュ:「そうだろうな」
ちらり、と部屋の隅で蹲る黒い獣の姿を発見しティアリスが言う。
その守護神とやらは一度倒された者へは危害を加えないようだ。
大人しく丸まり、パタパタと尻尾を振っている。
再び二人の道は一つへと戻った。
別れた道は一つになり、そしてまた再び分かれる事があっても一つへと戻るのだろう。
そんな気がしてティアリスは微笑む。
ティアリス:「誘ってくれてありがとう」
途中心が引き裂かれそうにはなったが、それ以上に得られたものは大きかった気がする。
こうしてスラッシュとの戦闘で、息のあった戦闘が出来るようになった事も良い事だと思う。
以前のティアリスならば自分から先に敵へ突進し、それをスラッシュがフォローするような形でしか戦闘することが出来なかった。
それぞれの特性を生かし、それを戦闘に組み込んでいけばより効率よく戦闘を繰り広げる事が出来る。
自分が無茶をしでかして相手を傷つけるような事は避けたかった。
その様な思いはスラッシュも同じだったようで、小さな笑みがそれを物語っていた。
スラッシュ:「何か音が………」
その時、微かな音が聞こえてきた。
綺麗な澄んだ音。
そしてそれはすぐに綺麗なメロディとなり二人の耳に飛び込んでくる。
ティアリス:「これは……なに?」
スラッシュ:「水晶の部屋の上に雫が滴り落ちて…それが音を立てて音楽に……」
ティアリス:「綺麗……」
二人は天上を見上げる。
音楽は水晶で出来た部屋を包み込むように流れる。
今までに聞いた事のない、澄んだ美しい音色だった。
煌めく部屋に響く音。
それは二人の心に響き渡り、そして温かな気持ちを呼び起こす。
まるでそれは聖なる儀式を促すような音色。
透明な音楽。
ティアリスはそっと隣に座るスラッシュの手を握る。
今度こそ手放す事が無いようにと。
そしてまた道が分かれても再び出会えるようにと。
しっかりと繋ぎ合う何かを信じて。
スラッシュもそんなティアリスの手をしっかりと握り返し、美しい音楽の流れる部屋で溢れ出る愛おしい気持ちを噛みしめていた。
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