<PCクエストノベル(2人)>


桃色顛末記〜ハルフ村〜

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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】
【1921 / クインタ・ニート / 護衛部隊員】
【1552 / パフティ・リーフ / メカニック兼ボディガード】
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●序章
 聖獣界ソーン。
 数多の世界から様々な冒険者が集う世界。そこからもたらされた雑多な文化技術が入り混じった世界でもある。
 各地に眠るたくさんの遺跡。ソーン創世の謎を探る手掛かりと目され、こぞって冒険者達が探求しようと躍起になっていた。その謎を持ち帰る事が出来れば、莫大な報酬が贈られる。そんな一攫千金を夢見て、彼等は仲間と連れ立って探索に出ていった。
 夢への探求を続ける冒険者にとって、ある意味貴重な資金源にもなった。交易船を駆使して、あちこちの地方へ赴いて財を成したトープ家もその一つである。

パフティ:「ふう、やっと着いたわね」
クインタ:「今回は結構大変だったな」

 船の甲板で、潮風に吹かれる二人。
 のんびりと柵にもたれかけ、思い切りよく背伸びをするパフティを、クインタはどこかうっとりと見つめている。じろじろと見ていた訳ではないが、勘のいい彼女のこと、すぐに気付いて顔を向ける。

パフティ:「‥‥なに?」
クインタ:「あ、いや、なんでもない!」
パフティ:「そう? 変なの」

 慌てて視線を逸らし、海の方を見るクインタに不思議そうに笑うパフティ。
 その間にも船は徐々に桟橋へと差し掛かり、やがて停泊する。乗員である彼らだが、既にやるべき事は終わっているので、特にすることはない。後は次の航海までの間、この村では休暇という事になる。

パフティ:「そういえば、今回の交易は温泉の湯と客への物質の交換なのよね」
クインタ:「あ、あ、あのさ、パ、パ、パフティ」
パフティ:「なに、クインタ?」
クインタ:「その、えっとな‥‥取引には少し時間かかるだろ? だ、だから‥‥い、一緒に温泉にでも行かないか?」

 何故か真っ赤な顔をするクインタを不思議そうに眺めながら、パフティは「そうね」と一言返した。
 その答えにパッと彼の顔が明るくなったのも束の間。

パフティ:「長旅が続いたから、子供達も温泉に入れてゆっくりさせたいわね」
クインタ:「え?」
パフティ:「そうと決まったら、早く行くわよ」
クインタ:「あ、あのー……」

 二人っきりで、という言葉が言い出せぬまま、子供達を抱えたパフティはさっさと船を下りていく。仕方なくクインタは、がっくりと項垂れたまま彼女の後を付いていった。


●第一章〜温泉地〜
 とある露天風呂を見つけた二人。
 さっそく入ろうとした二人だったのだが……。

パフティ:「え、覗き?」
主人:「そうなんです。近頃何故か増えてきまして……」

 さらに主人は、置き引きも増えてるから、くれぐれも荷物には気を付けるよう念を押す。どうやらそのせいで、ここ最近は来る客も減少している様子だ。
 どうりで他の客の姿をあまり見ないと思ったら。

主人:「いいですか、くれぐれもも荷物等には注意をしておいて下さい」
クインタ:「……そんな事になってるのなら、俺がお風呂のハシゴがてら見回りをしようか?」
パフティ:「そうね。そんな連中、放ってはおけないわ」
クインタ:「パフティは、ゆっくり子供達をお風呂にいれさせておいてよ。俺がきちんと犯人捕まえてやるからさ」

 さすがに子供連れの女性に、その辺を見回りはさせられない。ましてや彼女――パフティは、クインタの愛する女性だ。危険な目に遭わせるわけにはいかない。
 それに、だ。

クインタ:(「……パ、パフティの、その……姿を覗かせる訳にはいかない!」)

 彼はそう心の中で拳を上げ、なんとしてでも覗き犯を捕まえる事を決意する。
 そんな燃えるクインタを、パフティはどこか不思議そうに眺めていた。元々、エマーン人である彼女にとって、子供を産み、生殖期を過ぎてしまえば、羞恥心が殆どない。誰に見られようが構わない、と考えている彼女には、覗き犯ではなく置き引き犯を捕まえる事に燃えているように見えた。

パフティ:(「置き引きを捕まえるの、そんなに難しいかしら?」)

 どこまですれ違う二人の感情。
 まあ、ある意味微笑ましいといえば微笑ましいが(苦笑)。
 ともあれ。

パフティ:「それじゃあ、私はここのお風呂に入っておくわね」
クインタ:「じゃあ、俺は――あっちの方から順々に入って見回ってくるな」

 クインタが指差したのは、温泉街の一番端の公衆浴場。
 そのまま二人は、目当ての温泉へと入っていった。


●第二章〜追跡〜
 さて。
 風呂のハシゴをしながら、怪しい人物がいないか周囲に注意するクインタ。さすがにジロジロ見るわけにはいかないのだが、実際それほど人がいるわけでもないので、比較的簡単な事だった。
 そうしてハシゴをすること五件目。

クインタ:「ふぅ……少しは温泉を楽しまないとなー」

 露天風呂の開放感も手伝って、肩に入った力を思わず抜く。
 が、その時。

クインタ:「……ん? 誰か、来たのか?」

 ごそごそと、脱衣所に感じる人の気配。
 誰か他の人が来たのかと思ったが、その割には入ってくる気配がない。むしろ極力音を立てないようにしてる様子だ。

クインタ:(「――まさか」)

 そっと湯船から抜け出し、こっそりと音を立てずに扉の方へ向かう。さすがにそのままの格好ではマズイので、頭に乗せていたタオルを腰に巻いて。
 ゴソゴソゴソ。
 やはり誰かがいる。
 クインタは確信を抱いて、少しだけ扉を開けた。
 そしてそこで見たものは――。

クインタ:「おい、あんた! そこで何してる!!」
??:「!?」

 バッと浴場から飛び出したクインタ。
 そこにいた男は驚き、ハッと振り向く。その手には誤魔化しきれないクインタの手荷物が握られていた。
 間違いない。

クインタ:「あんた、最近増えてる置き引きだな。言い逃れは出来ないぜ」
犯人:「チッ!?」
クインタ:「あ、待て!」

 待てと言われて待つ馬鹿はいない。
 制止しようと伸ばした手を振りきって、男は一目散に逃走した。ちゃっかりとクインタの荷物を持って。
 慌てて追おうとして、自分の姿に一瞬躊躇する。今のクインタの格好は風呂上がりのため、タオル一枚を腰に巻いているだけだ。だが、このまま時間をロスしてしまえば、男を取り逃がしてしまうだろう。
 おまけに自分の荷物もたった今取られてしまったのだ。
 着替えるべきか、否か。
 迷いは一瞬。

クインタ:「えーい、このまま追うしかないか」

 結局クインタは、そのままの格好で男の後を追った――このあたり、彼もまたエマーン人であると言えるかもしれない。羞恥心が薄れているというところでは。

 かくして、静かな温泉街に、二人の男の追いかけっこが始まった。

●第三章〜湯上がり〜
パフティ:「ふう、いいお湯だったわ」

 上気する肌の湯気に身を包まれながら、湯船から上がるパフティ。バスタオルを身体に巻いて、湯浴みの椅子にそっと腰掛けた。
 温泉に入っている間、特に注意して周りをみていたが、どうやら覗きの方は現れなかったようだ。他の女性客も何人かいたが、特にそうした騒ぎはなかった。

パフティ:「クインタの方はどうなったかしら?」

 ふと呟いた、その時。
 なにやら脱衣場の方が騒がしい。
 まさか、覗き?
 ハッと振り向いたパフティ。慌てて駆け寄った彼女が、扉を開いた瞬間に目に入ってきたものは――。

犯人:「し、しつこいんだよ!」
クインタ:「あ、あんたこそいい加減諦めろ!」
パフティ:「……な、なに?」

 飛び込んできたのは……女性の脱衣所であるにもかかわらず飛び込んできた男二人。
 しかも片方は、腰にタオルを巻いただけの格好。当然ビックリするのは着替えていた女性達。慌てふためく彼女らに構わず、二人は必死になって逃げ、追い掛ける。
 そして。
 逃げる男が、パフティが開けた扉の方へやってきた時。

犯人:「ど、どけ!」
クインタ:「あ、パ、パフティ!? あ、危な――い!!」

 男の声は迫力満点。
 並の女性ならすぐに後ずさりしたことだろう……が、生憎パフティは並の女性ではなかった。船長のボディガードまでこなす身のその腕前は、決して男性に引けを取らない代物で。
 いっこうにどかないパフティに、男が強引にどかそうと肩に手をかけた途端。

パフティ:「はっ!」

 掛け声が空気を一閃。
 直後、男の視界は天地が逆になっただろう。目の前で見ていたクインタも、一瞬信じられない光景だったかもしれない。
 見事な一本背追いを繰り出して、パフティは男を投げ飛ばしていた。
 数秒の後。
 ドカンと大きな音がして、男が床の上に投げ出される。その音で正気に返ったクインタは、目の前のパフティの格好に思いっきり真っ赤になった。

クインタ:「お、おまえ、よ、よくも、ぱ、ぱ、パフティに触ったな〜!!」

 いや、触ったというより投げ飛ばされたのだが、その辺り彼にとっては関係ないらしい。
 最愛のパフティの玉の肌に触れた事が、クインタにとっては重要なトコらしく、すでに気を失いかけていた男にトドメの一撃を加えたのだった。

クインタ:「ぱ、パフティ! 大丈夫? どこも怪我はない?」
パフティ:「…………クインタ、あのね」
クインタ:「くっそー、よくもパフティの身体に触ってくれたなー。畜生、俺がついていながら」
パフティ:「……ちょっと、クインタ」
クインタ:「もうちょっと俺が早く捕まえてれば、パフティの珠の肌を晒す事なんて」
パフティ:「ク・イ・ン・タ・!」
クインタ:「え、え? なに?」

 慌てるクインタを、パフティはようやく意識を向けさせた。覗き込んだ彼女の顔は、少し怒っているように見える。それが犯人に触られた事だとばかりクインタは思っていたのだが。
 次の瞬間。
 彼女はニッコリと笑みを浮かべる。まるっきり心のこもってない笑顔を。

パフティ:「あなた、ここがどこだかおわかり?」
クインタ:「……え?」
パフティ:「――女性の脱衣所に、おまけにそんな格好で……」

 ガシッと彼女の手がクインタの肩と股間を掴む。

クインタ:「ちょ、ちょっ!」
パフティ:「入ってくるんじゃないの!!」
クインタ:「うわぁ――ッ!?」

 気付いた時には、クインタの視界は空を映し、そして――暗転した。
 バタンと大きな音が、再び脱衣所の中に響き渡る。

パフティ:「……まったく。これじゃあどっちが覗きだかわからないわよ」

 どこか呆れたように呟くパフティ。
 そこに少しばかりの好意めいたモノが含まれていたことを、意識をなくしたクインタは知らない。



【END】


●ライター通信
 葉月です。
 毎度毎度発注いただき、ありがとうございました。今回、クインタさんがちょっと抜けた感じになってしまいましたが、如何だったでしょうか。
 お気に召していただければ幸いなのですが……。

 それではまた、ご縁がありましたらよろしくお願いします。