<PCクエストノベル(5人)>
五つの夏風達〜ルナザームの村〜
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【冒険者一覧】
【 1962 / ティアリス・ガイラスト / 王女兼剣士 】
【 2067 / 琉雨 / 召還士兼学者見習い 】
【 1996 / ヴェルダ / 記録者 】
【 1854 / シノン・ルースティーン / 神官見習い 】
【 1948 / カルン・タラーニ / 旅人 】
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☆序章
雑多な文化、人種、種族、あらゆるものが混沌の中で混ざり合い、融合と断絶を繰り返していつしか、一つ一つの粒子は明らかに個別の形を保ちながらも、数え切れない程のそれらが集まって新しい一個体を形成している、それが聖獣界ソーン。それらの粒子の下となったのは、各地に残る古の遺跡からの出土品、冒険談、或いはインスピレーションなのだと言う。
だがしかし、それでも尚、ソーン創世の謎が解けた断言するには真実は程遠く、誰もが納得する真実を手に入れる事が出来たのなら、富と名声を一気に手に入れる事ができると言われている。
それ故、今日も冒険者達・研究者達が名誉と財産を夢見て、仲間と、或いは一人でソーン各地の遺跡へと、果てなき冒険の旅に出る。ある時は危険な、そしてある時は不可思議な冒険に…。
それがこの世界での言う冒険者たちの『ゴールデン・ドリーム』である。
☆本章
〜夏・海・砂浜〜
…とは言うものの。全ての冒険が、そのように向上心や名誉欲や野心にばかり満ち溢れている訳ではない。
ティアリス:「今回の目的は、琉雨に海とは何たるかを教えてあげる事だからね、お宝や怪物の気配がしても無視よ、無視」
ヴェルダ:「…何も知らぬ顔をせずとも、その時の流れでまた考えればいい事ではないのか」
シノン:「……んー、それは多分…それをオッケーにしちゃうと、絶対そっちメインに流れていくからじゃないの?」
シノンが、そこに並んだ四人の顔を順番に眺めながらそう言う。最後に、窓ガラスを見てそこに映る自分の顔を眺め、自分も一緒なのだとちゃんと自覚している事を皆に教えた。
ここは俗に言う海の家。聖都エルザードから南東に川を下ったところにある漁港、ルナザームの村である。ソーンの食卓を全面的に担う漁港ではあるが、その近くには海水浴のできる砂浜もあり、観光地化し掛けている雄々しい岩場の岸壁ありで、海と言うものをヒトコトで説明するには丁度いい場所である。何しろ、港ありーの、砂浜ありーの、岩場ありーの、ついでに美味しい海の幸ありーの。さすがに女性ばかり五人のパーティなので、水着姿のおねーちゃんありーの、はどうでもいいらしいが。
カルン:「大体、この辺りに怪物が出るなんて話は聞いた事ないよ。それにお宝だって、あるなんて話があったら、こんなのんびりしてないような気がするんだけど」
ヴェルダ:「…それもそうだな。この辺りには冒険者の姿も目に付かないし、そう言う意味ではそれ程魅力的な場所ではないのだろう」
ティアリス:「好都合よ。こっちはのんびりと海見物に来たんだもの。騒がしい冒険者なんかに邪魔されたくは無いわ」
琉雨:「…海にもいろいろあるのですね……」
端から皆の勝手な会話を聞き、琉雨がしみじみと呟く。本や絵では見た事がある、知識としては人並み以上に海の事を知ってはいるが、実際にその目に映した事はなかったのである。物静かな表情はいつものままで、密かに好奇心に満ち溢れているその様子に、ティアリスは小さくくすりと笑った。
四人が乗り合い馬車を降りて向かう先は、ルナザームの村から少し歩いたところにある海辺である。岩場の多い所ではあるが、そこを抜けると真っ白の砂浜が広がる海水浴場となっている。こんな、焼け付くような暑い夏の日には、きっと多くの海水浴客で賑わっている事だろう。
シノン:「…海が近くなってきたね。潮の匂いがしてきてる」
琉雨:「潮の匂い…ですか?」
琉雨が不思議そうに首を傾げるので、そうだよとシノンが頷いた。
シノン:「…と言っても、どれが潮の匂いかって、なかなか説明は難しいよね。まぁもう少し近くに行けば、もっとはっきりするんだろうけどね」
ティアリス:「潮の匂いはいいんだけど、髪や肌がベタ付くのが玉に傷よね。あんまりねとっとしない爽やかな潮風ってないかしら」
ヴェルダ:「…そんな都合のいいものがある訳ないだろう。ものにはいい面と悪い面があるからバランスが取れているんだ」
カルン:「私は潮の匂いって大好きだけどなー。ベタつくのだって夏!って感じがするし。ただ……」
シノン:「ただ?」
カルンが途切れさせた言葉の続きをシノンが促す。ふぅ、と小さく溜息をついてカルンが上目で皆を見た。
カルン:「海の水は塩辛いから…喉が渇いちゃう」
ティアリス:「………」
海の水をいつも飲んでるの?とは恐くて聞けなかった。
そんな会話を続けながら、五人がひとつの大きな岩陰を曲がって前に出る。すると、風景は急に開けて、そこには広い砂浜と青い海のパノラマが広がっていた。
カルン:「わぁッ、海だ―――!」
ぱぁっとカルンの目が輝き始める。ティアリスが制止するのも聞かず、カルンは全速力で走り出し、その足は煌く水飛沫を上げて光った。当然服は来たままなので、瞬く間にカルンの服は濡れて色を濃くしてしまった。
ヴェルダ:「…いいのか、あれで。満足する頃には濡れ鼠だぞ」
ティアリス:「…まぁいいんじゃないの。夏だからすぐに乾くわ」
のほほんと他人事のように(実際他人事だが)ティアリスが言ってカルンの後を追う。ふと隣に居る琉雨の顔を見ると、初めて実際に目にした海の広大さに、黒い瞳を瞬きもせずに、じっと水平線の方を見詰めていた。
ヴェルダ:「琉雨、驚いているようだな。やはり聞いているのと目にするのとでは感じ方が違うか」
シノン:「そりゃそうだよ、だってヴェルダだって、実際にその目で見たものの方が、より鮮明に覚えられるんじゃないの?」
シノンがそう指摘すると、その通りだとヴェルダが口元で笑った。
シノン:「…と言う訳で…実際に経験してみないと!さ、行こう、琉雨!」
琉雨:「え、え、え、??」
いきなり手首を掴み走り出すシノンに、琉雨が驚いて目を瞬かせる。シノンは琉雨を連れてそのまま海へと入っていく。バシャバシャと立てる水音の数が、一つから三つに増えた。
カルン:「あ、シノンに琉雨だ!」
カルンが、嬉しそうに顔を綻ばせる。そこに、シノンの手の平が掬った海水が、バシャッとまともに掛かった。
カルン:「きゃ!…かっ、辛ーい!」
シノン:「当たり前じゃん、海水なんだから…って、わっ!」
笑うシノンにカルンの報復が弾けたのだ。髪までびっしょり濡れて立ち竦むシノンを、カルンの笑い声が挑発した。
シノン:「やってくれたわねっ!」
カルン:「だって先にやったのはシノンでしょっ!」
叫びながら互いに水を掛け合う二人の間に挟まって、膝辺りまで海の水に浸かったままの琉雨が、おろおろしつつその様子を眺めていた。
琉雨:「あ、あの、…お二人とも落ち着いて……きゃ!」
宥める琉雨の顔にも余波が飛んだ。桜色の前髪まで海水で濡らし、琉雨は目をぱちくりとさせる。
ティアリス:「…あら。琉雨ったら大丈夫かしら」
ヴェルダ:「大丈夫だろう。夏だからすぐに乾くさ」
完全に傍観者となった二人は、岩場の陰でのんびりと冷たいお茶など啜っていた。
波打ち際で楽しげな笑い声を立てながら水を掛け合うシノンとカルンだったが、ふと視線を逸らした所に居た琉雨を見て、慌てて水かけっこを中断した。
シノン:「ちょ、ちょっと琉雨ってば!」
琉雨は、顔が濡れた時に自分の唇を舐め、その水が塩辛い事を知ったのだが、それを更に確かめようと、手の平で海水を掬って口に運んでいたのだ。感心したように、頷きながらしみじみと呟く。
琉雨:「…本当に塩辛いんですね、海の水って…」
カルン:「喉、渇いちゃうよ」
大丈夫?とカルンが眉を寄せる琉雨の顔を覗き込んだ。
〜夏・日差し・アタック?〜
そんなこんなで三人が頭の天辺から全身ずぶ濡れになったので、どうせならと五人は水着になって本格的な海水浴をする事にした。ビーチでの目の保養、水着のキレーなオネーサン(いや、ティアリス達にとっての保養にはならないが)となり、そこら中の男達の視線を痛い程に浴びながら、五人はのんびりと白い砂浜の上にその身を寝そべらせた。
ティアリス「…いいわね、たまにはこう言うのも…」
シノン:「これもまた、夏の海の醍醐味だもんね」
琉雨:「…でもちょっと恥ずかしいです……」
琉雨にとって海水浴は初めてなのだから、身体のラインも露になる水着を身に纏うのも当然初体験である。恥ずかしげに身を小さくしている琉雨の隣で、ヴェルダが惜しげもなくその肢体を曝け出し、砂浜の上に横たわっていた。
ヴェルダ:「そうやって隠している方が逆に目立つものだ。胸を張っていれば、案外人は気にしないものだよ」
シノン:「…そりゃ、それだけのモノを持ってりゃ大胆にもなれるって」
ぼそりと突っ込むシノンに、ヴェルダが足の爪先で砂を掬い上げ、引っ掛けた。
ティアリス:「ね、ね、聞いて!あっちで楽しそうな事をやってたわよ」
カルンと一緒に飲み物を買いに行っていたティアリスが、やや興奮した様子で三人の前に膝を突いた。
ヴェルダ:「ティアリス、飲み物は?」
ティアリス:「…あ、忘れた。まぁいいじゃないの。それよりも!あっちでビーチバレー大会をやってたのよ!」
琉雨:「ビーチバレー…ですか?」
首を傾げる琉雨に、身を起こして砂を払いながらヴェルダが言った。
ヴェルダ:「その名の通り、ビーチで行うバレーボールだ。一般のバレーボールと違って、二人一組で行うのが特徴かな」
琉雨:「二人で…ですか。忙しそうなスポーツですね…」
ティアリス:「その分、コート自体が小さめだからいいのよ。でね、そのビーチボール大会って賞品が出るらしいのよ。しかも優勝者への賞品は『ハルフ村・天然温泉美人の湯と豪華料理食べ放題の旅、五名様まで大満足大満喫!』だって」
温泉。その単語を聞くと、五人の目がキラーンと光った。
シノン:「これは…やっとかないとダメでしょう、やっぱ」
にやり、不敵な笑みを浮かべ、五人はティアリスとカルンに案内され、会場へと向かった。
ビーチバレー大会は五人一組で参加するトーナメント戦であった。試合に出るのは二人、選手の交代はいつでも自由で何回でもOK。かなり自由度の高いルールだが、その分、試合の内容も相当ハードなものらしい。
…と言うか、ハードにしたのは他でもない、ティアリス達だったと言う話もあるが。
ティアリス:「はいっ、行くわよ!」
ティアリスの手がカラフルなビーチバレー用のボールをトスする。綺麗に真っ直ぐ上に上がったそれを、高くジャンプしたヴェルダが、勢いよくアタックを決めた。ボールはあまりの勢いで楕円形に変形しながら敵コートの砂浜に突き刺さる。激しく砂煙を上げてボールは砂の上で錐揉み状に回転し、弾けたそれが相手方の男の顎を襲った。
カルン:「きゃーっ!スゴイ、スゴイ、ヴェル姐さん!ティア姉さまもカッコイイー!」
耳をつんざく程の甲高い声で、カルンが狂喜乱舞する。ぴょんぴょんとその場で飛び上がって大喜するカルンに向け、ヴェルダが親指を立ててビシッとキメた。
ビーチバレー大会の参加者は、女性も居るには居たが、大抵は屈強な男ばかりのチームが多く、その中で女ばかりのティアリスのチームはかなり異色であった。しかも、全員それぞれに違う魅力を持った美女、美少女ばかりである。当初は、大会に華を添えるレースクイーン(いや、この世界には居ないから)的な感覚で見られていたのだが。
ヴェルダ:「行くよ!」
ティアリス:「まかせて!」
ティアリスがレシーブしたボールを、今度はヴェルダが的確にトスをする。ジャンプし、アタックするティアリスの長い髪が太陽の光を反射して煌く。それに思わず見蕩れるが、コートに突き刺さるアタックの猛烈さはその見た目からは到底想像が付かなくて、相手方の選手はつい自分の目を擦って、今のが事実かどうかを確かめるのであった。
最早この対決の力量の差は歴然としているのだが、それでも温泉を諦めきれないのか、相手方はしつこく食い下がってくる。相手のサーブをまずはヴェルダがレシーブする。早いタイミングでティアリスがトスし、その低めのトスから、ネットの上ぎりぎりの低い所から繰り出されるヴェルダのアタック。それをレシーブしようと果敢に立ち向かった相手選手だったが、その余りにも激しい球勢に、男の大きな身体は木の葉のように跳ね飛ばされ、もんどりうって砂の上に叩き付けられた。
シノン:「…うわ、あれは…相当キたわね…」
琉雨:「大丈夫でしょうか、あの方…」
端で相変わらず大喜びしているカルンは置いといて、シノンと琉雨は、自分達の横を担架に乗せられて退場していく、さっきの男を心配そうな目で見送った。敵方とは言え、あのヴェルダのアタックに真っ向勝負を掛けたことだけは評価に値すると、シノンは思わず両手を合わせ、南無南無と拝んだ。
シノン:「迷わず成仏してね…賞品は、代わりにあたし達が思う存分堪能してくるから…」
琉雨:「…いえ、まだお亡くなりになってませんから……」
だがそのうち、死者のひとりやふたりはかるーく出そうな勢いだった。
きゃーきゃー応援を楽しんでいたカルンは、ヴェルダと交代してコート内に入る。ティアリスが汗ばむ額を手の平で撫で、微妙に緊張気味のカルンにニコリと笑い掛けた。
ティアリス:「大丈夫、大丈夫。リラックスよ、カルン」
カルン:「う、うん…頑張るね、ティア姉さま」
こくんと頷くカルン目掛けて、相手方のサーブが飛んでくる。どうやら、ここはティアリスを狙うよりもカルンを狙った方が勝つ確率が上がる、との作戦らしい。鋭い軌跡を描いて飛んでくるボールを、えい!とばかりにカルンが勢いよくレシーブをした。
が。
シノン:「……高く飛んだね〜……」
琉雨:「…まだ落ちてこないですね……」
空を見上げるシノンと琉雨は、片手で日除けを使ってボールの影を捜す。カルンの力任せのレシーブは、何故か空高く舞い上がり、太陽の中に消えてそれっきりいつまで経っても落ちてこないのだ。幾ら元気で行動力のあるカルンとは言え、そんな成層圏まで届く程のレシーブが打てる程の際立った身体能力がある訳ではないのだが。
結局、カルンの打ったボールはそれっきり落ちてこなかった。どうやら、空を飛ぶ鳥か何かに持ってかれたらしく、ティアリス達のチームに初めての失点をもたらしたのであった。
その後のカルンは、ヴェルダ達に比べれば上手くないとは言え、一生懸命さでそれをカバーし、砂だらけになって頑張り、それ以上の失点を許さなかった。ティアリスとヴェルダのコンビネーション技もさる事ながら、シノンと琉雨もそれぞれに活躍をし、見事に優勝を勝ち取った。今回の事でティアリス達の事は、『白い砂浜の悪魔』とのちのちまで称え?られたと言う。
〜夏・夜風・星空〜
夜になり、砂浜にも人気がなくなった頃、ティアリス達は一番最初に訪れた岩場の辺りで火を熾し、バーベキューをして楽しんでいた。ビーチボール大会が済んでから五人はルナザームの漁港へと戻り、獲れたての魚や貝類、海老などのシーフードを買い込んできたのだ。
辺りには彼女達が囲む赤い炎しか光源は無く、ただ向こうから波飛沫の音が聞こえ、潮の匂いを感じるのみだ。そんな場景を、琉雨は興味深そうな目で周囲を見渡していた。
カルン:「どしたの?何か気になる事でもあるの?」
琉雨:「…いえ、そう言う訳では…ただ、海と言うのは、目で見えなくてもその存在は際立っているものなのですね。実感しました」
ヴェルダ:「海は、人間の五感の全てを刺激してくるからね。記憶に引っ掛かる部分も多いのさ」
ヴェルダが、木の枝で炎の燃え具合を平均化しながら言った。その隣で、長い串に挿した小振りの魚を取り、焼け具合を確かめた後でシノンが琉雨へと差し出した。
シノン:「はい、焼けたよ、琉雨。ちっちゃいからこのまんまガブッといっちゃいなよ」
琉雨:「…え、このまま……ですか?」
魚を差し出されるがままに受け取った琉雨だが、さすがにそれにかぶり付くのは憚れたのか、琉雨は戸惑ってただ手にした串の魚を見詰めている。魚を食べる事自体は勿論初めてではないが、こうやって丸ごと、しかもナイフもフォークも使わずに食べる事など、今までの琉雨の生活の中ではあり得ないことだったのだから。躊躇う琉雨の様子を見て、ティアリスが笑い、もうひとつ程良く焼けた魚の串を手に取り、見本を見せるように威勢よくかぶり付いた。
ティアリス:「ほら、こうして食べるのよ、琉雨!お行儀はちょっと悪いけど、室内で食べるのとは全然違った美味しさがあるんだから」
ティアリスは、口端に付いた魚の皮の欠け片を指先で取りながら笑ってみせる。やれやれ、と言うようにヴェルダが肩を竦めて笑う。
ヴェルダ:「折角の器量好しが台無しだな。だが、言っている事は尤もだ。こう言う所では、多少大雑把で行儀が悪い方があっている」
カルン:「そうよー、魚だって、こうして食べられた方がきっと幸せだよ?だって、この方がずっとオイシイんだもん」
ね?とカルンが小首を傾げて琉雨に笑い掛ける。それらに釣られて思わず表情の綻んだ琉雨が、意を決したように魚の背側にかぶり付き、咀嚼した。
琉雨:「……美味しい、…です」
ぽつりと、しみじみと呟く琉雨の表情が更に解ける。今度はそれに釣られて他の四人も目を細めて笑う。すっかり食べ頃になったさまざまなシーフードの串を次々にその手に取り、五人は普段以上に沢山食べ、そして飲み、喋っては笑い合う。夜空の星が空高く瞬く様子は、まるで彼女達の笑い声に響いて震えているようにも見えた。
☆終章
ティアリス:「………食べ過ぎたわ」
シノン:「……同感。駄目だわ、ダイエットしないと…」
しみじみと呟き、テーブルに突っ伏す二人を横目で見ながら、ヴェルダが首を緩く左右に振る。
ヴェルダ:「情けない事を言うな、二人とも。だったら一緒に身体を動かすか?」
ティアリス:「そうね、それしかないわね。ちょっと剣でも一振りしてこようかしら」
問題は、ティアリスの相手が勤まる程度の腕を持った相手が都合よく居るかどうかだ。そこへ、カルンと琉雨が連れ立って登場し、三人の方へと近付いてくる。
カルン:「ティア姉さま、どうかしたの?」
ティアリス:「この間のバーベキュー…つい美味しかったもんだから食べ過ぎちゃって…」
カルンは?と言うようにティアリスがカルンの方を見ると、平気!とでも言うようににこにこと笑い掛ける。
カルン:「美味しいものだからいっぱい食べちゃうのは当たり前じゃないの?」
シノン:「当たり前だけど、いろいろとそれで悩む事だってあるのよ、オトメなんだから」
シノンはねぇ?とティアリスに同意を求め、それにティアリスも頷いて答える。それを見ながら琉雨が、またしみじみと呟いた。
琉雨:「……海って、五感だけじゃなくて、いろいろな感情にまで影響を及ぼすものなんですね…」
またひとつ、勉強になった琉雨なのであった。
おわり。
☆ライターより
この度はクエストノベルのご依頼、誠にありがとうございました!ライターの碧川桜です。
久し振りのクエストノベルだったので…と言う言い訳は恰好悪いですが(笑)、ともかくもギリギリになってしまい、申し訳ありませんでした。何を書こうかといろいろと迷っているうちに、日数だけが刻々と過ぎてしまって(遠い)
女の子ばかりの複数のクエストノベルは初めてでしたが、書いているこちらとしては楽しく書かさせて頂きました。皆さんも、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
ではでは、今回はこの辺で。またどこかで皆様とお会い出来る事をお祈りしつつ……。
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