<PCクエストノベル(1人)>
〜海底の新たな戦友〜 機獣遺跡
--------------------------------------------------------------
【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】
【1953/ オーマ・シュヴァルツ / 医者兼ガンナー(ヴァンサー)副業有り】
【その他登場人物】
【遺跡内機獣】
------------------------------------------------------------
聖獣界ソーンで発見されたばかりの、千年もの昔に失われたとされる機械文明のものと思われる海底遺跡。
ソーン世界の建築とは遠くかけ離れた、平面的・金属的な外装をしており、入り口である中央部から、放射状に通路と小部屋と様々なトラップが広がっている構成となっている。
内部にはゴーレムとは全く違う、我々の世界で言うところの近未来的な自律戦闘機械が無数に徘徊しており、その戦闘力と動きは強力且つ冷酷である。
エルザードの学者たちはこの戦闘機械を「機獣」と名づけ、その特異性と危険性から情報の隠匿に勤めつつも、歴戦の冒険者達に対して内密に働きかけては、超危険的存在である遺跡と機獣の小規模調査を依頼している。
そして、そこへまた1人足を踏み入れた――
◇遺跡へ
色々な意味でその腕を見込まれオーマへ遺跡調査の依頼が来たのは数日前。にやりと不敵で腹黒同盟総帥のイロモノ親父な笑みを浮かべ承諾し、今、機獣遺跡を小船の上から見下ろしていた。
オーマ:「またお目にかかる事になるたぁな……これも縁ってやつか?」
一人呟くオーマだったが、小船から一つ錨を下ろしとりあえず船が流れないようにした後、軽く首を回し腕を回した。
オーマ:「さって、いっちょ行くか」
大きく息を吸い込み、トンという軽い音を立てオーマは海へと飛び込んだ。細かい気泡の線を引きながら、海の底へ海底遺跡目指して泳ぐオーマ。その長身から伸びる長い足でまるでスクリューのようにどんどん進むが、感じ取った異変に進みを止める。
海の中に浮きながら辺りを見渡す。だが、見えるのは淡い青の水の中、空から差し込む光が不安定に揺れ魚の群れが泳いでいるだけ。
大きな黒い塊として泳いでいる小さな小魚たちは天敵から逃げる為か、右に進んでいたかと思えばいきなり左へ方向を変えながら進み、次第にオーマに近づいてくる。何てことは無い、自然の海の中では当たり前な光景。だが、違った。
オーマ:「……!」
小魚たちに目が無かった。いや、目だけではない。鱗もエラも口もその外見をかたどるものは何も無く、黒いつるりとした小魚の形をしたものが群れをなして真っ直ぐオーマに襲い掛かって来たのだ。
群れは一体化し大きな暗闇の口を開ける。
遺跡へ逃げるオーマだが、速さに差がありすぎた。食われる寸前、体を捻りなんとか口から逃げたオーマだがその大きな体に押され、激しい水流とスピードに耐えながらどんどん沈んで行く。急激な水圧の変化に、オーマの意識が途切れた。
オーマが目を開くと、冷たい金属的な天井が見えた。なだらかに伸びる天井と背中に感じるひやりとした感触。
オーマ:「なんだぁ?いつの間にやら機獣遺跡についてるじゃねーか。さっきのあれはお客様をご丁寧に御もてなし送迎するお魚軍団ってとこか?」
くつくつと一人笑いながら言うオーマ。だが、そんなものでは無いと分かっていた。
ウォズ――異形なる異界の存在であり、オーマたちが封印すべき存在。偶然、遺跡調査のオーマを食おうと攻撃してきたウォズはどうやらオーマごと、この機獣遺跡までも飲み込んでしまったようだ。
オーマ:「さて、どうしたもんかね……ま、とりあえず頼まれた遺跡調査を終わらせちまうか」
濡れている服の裾を絞り、髪も軽く手で掻き揚げるようにして水を切るとオーマは周囲を見渡した。
閉鎖的な壁に囲まれた無機質にまっすぐ伸びる廊下は広いサークル状の中央部から放射線状にいくつも伸び、ところどころに部屋に通じているらしい扉が見えた。
とりあえず、適当にひとつの廊下へ歩き出したオーマは鼻歌でも歌いだしそうな雰囲気で、突然天井から突出してきた金属の槍をヒョイとかわし、適当に扉の一つを開けた。
開けた瞬間真っ赤な灼熱の炎が噴出す。噴出す炎はオーマの体に触れる事無くそれ、オーマは無造作に扉を閉めた。
オーマ:「これまたヘビーだな。丸焼き作るには便利だけどよ、オイ」
誰に言うでもなくぼやくと更に先に進む。途中様々なトラップや侵入者排除の為に徘徊している自立戦闘機械があったが、何の障害にもならずオーマは別の部屋への扉を開いた。
そこには仕掛けはなく、天井の高い半円形状の広い部屋がありその中央には金属でできた置物があった。今までの自立戦闘機械とは違う雰囲気の機獣で、獅子をモチーフにしたものであろうか、その機械獅子は侵入者の存在を感じ取りその眼が開いた。
機獣:『侵入者ヨ。コノ遺跡ニ立チ入ッタ事、死ヲモッテ償エ』
オーマ:「おー怖いねぇ。確かに勝手に立ち入った形になってるが、これはアレだぜビックリドキドキお魚軍団の丁寧熱烈歓迎のせいだぜ。それに、俺様のような善良イロモノ親父を排除するより外でべったり張り付いてるものをどうにかした方がいいんじゃねーのか?」
オーマの滑らかで止まる事無く口から飛び出す言葉に機獣はしばし動きが止まる。内容の把握に手間取っているらしい。
機獣:『…………排除スル。外ノモノモ、中ノオ前モ』
オーマ:「まぁ、お前さんがそう言うんなら仕方がねぇさ。人にはそれぞれ理由だとか使命だとかドッキリムンムンな恋だとかあるしな。ただよ、俺を排除する前に俺と一緒に仲良くラブラブ協力し合ってよ、華麗に怪しくサックリ外の敵を倒した方が効率いいと思わねーか?」
機獣:『…………排除、スル。オ前ノ言葉ハ理解不能ダ』
オーマ:「そりゃ仕方がねぇぜ。長い間こんなところに閉じこもって体中カチコチになっちまったんじゃ頭の中までカチコチだろう。何、心配すんな。このタップリ溢れる偉大なゴッド親父愛でリハビリ手伝ってやるからよ」
明らかに戸惑っている機獣にニヤリと笑ったオーマは豪快に言った。
機獣も半分程しかオーマの言っている事を理解出来ていないようだが、ウォズの共同排除がまずは先決だと理解できたらしい。四肢を立てた。
機獣:『……協力、スル。理解不能ナ生き物ダ……』
オーマ:「オーケーオーケー。今は理解不能かもしれねーけどよ、なぁに大丈夫さ。それよりよ、ここで一番広い場所はあるか?そこに奴を誘い込んでよ、俺とお前達機獣の群れでガッツリ退治と行こうぜ」
機獣:『一番広い場所……付イテ来イ』
歩き出した機獣の後に付きオーマが外に出ると、他の機獣たちが待っていた。それらに手を振り不敵に笑うオーマ。案内されている途中、機獣にウォズの存在やイロモノ、腹黒、親父愛など実に偏った知識をオーマは教えた。
理解力は早いし、疑うという機能がない為獅子機獣はどんどん吸収していった。
機獣:『ここだ。ここなら戦闘にも支障はない』
機獣に連れて来られた場所は先ほどの獅子機獣のいた部屋と似たようなつくりだが、広さはかなり広く成る程ここなら戦闘に支障はないだろう。
オーマ:「いいんじゃねーの。で、どこから奴を入れる?」
機獣:『任せろ』
一言短くそう答えた機獣は一声、吼えた。
吼え声が反響しそれが消えると、今度は遺跡自体が振動し始めた。低い地響きを立てながら、ゆっくり水の流れる音も聞こえる。
機獣:『来るぞ』
オーマ:「おう!任せろ」
オーマが振った右腕の周囲の空間が怪しく歪み、2mの長身の身の丈をも越す巨大な銃器を取り出しグッと構えた。
境目の無かったホールの天井中央がゆっくりと開き始める。穴が大きくなり始め、黒い闇が見えた。闇が膨らみ、細い槍のようにオーマめがけ打ち出された。
オーマ:「はっ!甘いんだよ」
―ドウゥン―
砲身を瞬時に闇の先端にあわせ撃ち出された弾は狙い違わず闇に命中し爆発を起こした。弾け飛び暗い小魚になったウォズの欠片は、他の機獣たちによって灰に変わった。
だが、ウォズはまだまだ振り降りてくる。
黒い塊がぼとりと落ち、機獣の何体かを押し潰した。
オーマ:「もう一丁!」
低く響く砲撃にウォズの一部が弾け飛ぶ。獅子機獣が口を開け、淡い光が口の奥に集まり一条の光となり吐き出された。真っ直ぐ進みウォズを貫いた。
体の一部を鞭のようにしならせ、幾つもの触手がオーマに機獣に襲い掛かる。
頭上に集中するように振り下ろされる触手を見上げ、銃砲を振り上げたオーマはその砲撃を撃ち出すより先にウォズの一部に飲まれた。
機獣:『オーマ!』
わだかまりとなり不気味に蠢くウォズ。それが次第に膨らみ、そして光と共に爆音が部屋全体を包み込んだ。
轟々と広がる煙にパラパラと天井の一部が崩れ落ちる。
オーマがウォズに飲まれていたところには、翼を持つ巨大な銀色の獅子がいた。
銀獅子:『オウ、もう少し待ってろ。今片付けちまうからよ』
機獣:『……オーマか』
オーマ:『さぁ、そろそろオイタはお仕舞いだぜ。オマエも海の底で一人寂しくってのは辛いだろう。俺に任せてしばらくはゆっくり寝てろや』
そう呟いたオーマは銀獅子となったその大きな口を開いた――
オーマ:「いやーわりぃな。壊しちまってよ」
ウォズを封印したオーマは人間の姿に再び戻り苦笑し天井を見上げて言った。
機獣:『問題ない。補修はすぐにすむ』
その言葉通り、天井の穴の開いた部分に小さな蜘蛛を模したような機獣たちが集まり何やら作業を始めていた。
それを見てオーマは口笛を鳴らした。
オーマ:「成る程な。自分たちで補修できねーとこんな海の底じゃすぐに御釈迦になっちまうもんな。おもしれぇ。他にもおもしれぇ事があるんだろうな、ここは」
意味を含ませて言った言葉だが、機獣には裏の意味を汲み取るまでの知能はない。純粋にオーマの強さを認め、仲間としての信頼を感じ取っており、機獣は首を縦に振った。
機獣:『面白いかどうかは判らないが、お前達人間がまだ入った事のない部屋なら無数にある。オーマなら案内してやってもいい』
オーマ:「そりゃ有難い。ま、でも今日のところは引き上げる事にするぜ。ここの掃除もしなきゃならねーだろ?ウォズも封印できたし、こうしてガッツリ仲良く心を通わせ合えただけでも大収穫ってもんよ。あーそうだ。俺様のイロモノ腹黒同盟に入らねーか?」
オーマが取り出したのは腹黒同盟のパンフレット。それを機獣たちに配り、勧誘活動開始。その後、勧誘の目的も含めて機獣たちにこれまた偏った知識の教授を始めたオーマが地上の仲間の元に戻ったのは3日後の事だった。
|
|