<PCクエストノベル(3人)>


 夏の終わりに…


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 今回の冒険者
【整理番号 / 名前 / クラス】
【1997/ファサード/男/17才/人形師(細工師)】
【1602/ゴンザレス/男/27才/旅人兼バーテンダー】
【0649/カーディナル/男/19才/トレジャーハンター兼地図屋の店長代理】
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 1.どこへ行く?

 エルザードの某地図屋兼バーの片隅である。
 地図屋の店長代理を含め、何人かの者達が何やら話し合っていた。

 カーディナル:「で、どこへ行く?」
 
 地図屋の店長代理が言った。
 話の内容は、夏の思い出作りの旅に関してだった。
 ここは地図屋だけに、当然、各地の地図が並んでいる。
 どこかへ出かけるに出る時、行く先を考える場所としては良い場所だった。

 ゴンザレス:「夏〜
        無限の太陽〜
        風〜
        そして、空〜
        Hey!
        全国のサボテンの仲間達に会いに行こうゼ!」

 サボテンのバーテンダーが言った。
 彼の仲間のサボテン達は、世界中に散らばってるらしい。

 ファサード:「人形を…声を持った者達を探しに行こうよぉ」

 人骸の人形師が言った。
 彼の仲間の人形達は色々な所に居るらしい。
 …さてさて、どこへ行こう?
 
 カーディナル:「じゃあ、間をとって海にでも行くか!」

 地図を見ながら言ったのは、カーディナルだった。。

 ゴンザレス:「Yaah!
        夏だぜ海だぜ、泳ぐぜ!」
 ファサード:「塩水の溜まった所は…金属の人形には良くないねぇ…僕は平気…だけど」

 そうして、話はまとまった。
 具体的にどこへ行くか、三人はさらに話を続ける。

 ファサード:「海…今年はハリケーンが多かったねぇ。
        ほら…豪商の船も沈んでるよ」

 ファサードがエルザード新聞の朝刊を示して言った。
 なるほど、豪商の船が嵐で沈没した記事が載っている。沈没船は未だに行方不明だそうだ。

 カーディナル:「水の中か、涼しそうだな」
 ゴンザレス:「OK!
        沈没船で浜辺でシーフードバーベキュー!」

 カーディナルとゴンザレスも乗り気のようだ。
 数日後、準備を整えた三人は海へと向かった…

 2.嵐を越えて?

 エルザードを出た三人は、小船を借りて海へと繰り出した。
 2日程航海して沈没船の近くまで行き、そこから薬を使って海を探索する予定だった。
 出発した日の午前中は、何事も無く、3人は小船に帆を張ってのんびりと船に揺られていたのだが…

 ゴンザレス:「hoo…
        これが夏の海か。
        トゲに染みるぜ…」
 
 ゴンザレスが何となくトゲを撫でている。

 ファザード:「僕達も…沈没船の仲間になれるかもねぇ…」

 ファザードは、ふふっと笑った。

 カーディナル:「お、お前ら!
         そんな事言ってる場合じゃないだろう」

 出発した日の午後、あいにくのハリケーンに小船は襲われていた。
 天気予報では、そんな事言ってなかったのにと愚痴を言っても、来てしまったものは仕方無かった。
 カーディナルは雨水をすくって、船の外へと捨てている。
 
 ファサード:「波…大きいですねぇ」

 一際大きい波が、やってきた。ファザードは茨の盾を波の方に展開した。
 小さな茨の盾に当たり、それでも多少は波が弱まったようである。

 カーディナル:「何にもしないよりはマシか…」

 うむー。とカーディナルは頷いた。
 

 ゴンザレス:「yeah!
        頼むぜ、海草のみんな!」

 ゴンザレスは、通りすがりの海草に船を支えるように頼んでいる。
 心なしか、船を支えるように海草がまとわりついてきた。

 カーディナル:「あんまり海草がまとわりつくと、危ないと思うんだが…」

 逆に船が転覆しないかどうか、カーディナルはちょっと心配だった。
 ともかく、そうして色々とやるうちに、ハリケーンは通り過ぎていった。
 空は、再び青く晴れた。

 ファサード:「やっぱり…晴れた空が一番ですねぇ」

 ファサードが青い空を眺めている。
 ハリケーンの雨で濡れた体や船も、すでに乾き始めた。

 カーディナル:「そうだな」
 
 カーディナルも頷いた。
  
 ゴンザレス:「OK!
        海草のみんなが離れたら、先を急ごうぜ!」

 船を支えるようにまとわりついていた海草達は、いつの間にか絡まって凄い事になっていたので、海草達が船を離れるまで、さらに小一時間程かかってしまった…

 3.海の住人?

 小船は、沈没船の近所を目指してさらに進んだ。
 3人は雑談しながら、それぞれの時間を過ごしている。
 カーディナルは沈没船の探索に使いそうな道具の点検をしている。ファサードは海を眺めながら、何やら頷いている。ゴンザレスはモリを持って、魚が取れないかと海を見つめている。
 
 カーディナル:「ゴンザレス、何か獲れたか?」
 ゴンザレス:「Hey!
ゴンザレスは海のカウボーイ!
        期待して待ちな!」

 どうやら、まだ何も獲れてないらしい。何も獲れないと夕飯も無くなってしまう危険がある。
 ゴンザレスの帽子が、相変わらず通訳代わりにしゃべっていた。
 
 ファサード:「ねぇ、大きな影…人間の大人と同じ位の大きさじゃないかな?」

 と、海を眺めていたファサードが、何かの影を見つけた。見れば、船の側を等身大位の魚の影が泳いでいるようだ。

 ゴンザレス:「Hey!
        大猟だぜ!」

 早速ゴンザレスがモリで突いたが、魚影は素早く身をかわした。
 
 カーディナル:「おお、やるな」
 
 カーディナルが言った。魚影はとても素早かった。
 ゴンザレスは海の男風な様子で再びモリを構えるが、魚影が水飛沫と共に水面に姿を現した。

 人魚A:「ちょっと、何するんですか、危ないじゃないですか!」

 魚の上半身は人間の女性のような姿をしていた。右手にゴンザレス同様にモリを持っている。世間一般で言う、人魚のようだ。
 人魚は怒っているようで、何やら抗議している。

 ゴンザレス:「yeah!
        人魚姫とは知らなかったぜ!
        お詫びに一曲奏でるぜ!」

 ゴンザレスはモリをバンジョーに持ち替え、演奏を始めた。

 人魚A:「いえいえ、姫だなんて、そんな」

 人魚は照れている。機嫌が良くなったようだ。
 話を聞いてみると、人魚は近所の海に住む人魚だそうで、ゴンザレス同様、夕飯に魚でも採ろうとフラフラしていて、小船を見かけたので近くに来たそうである。
  
 カーディナル:「ちょうどいいや、人魚さん。
         この辺の海に、人間の船は沈んでなかったかい?」
 
 人魚A:「あー、この前の嵐の時に、上から落ちてきましたよ。
      丁度うちの村の近くに落ちてきたんでびっくりしましたー」

 ファサード:「落ちてきた…そうかぁ、あなた達から見れば、そうだよねー」

 ファサードが頷いている。

 人魚A:「なるほどー、沈没船の探索ですかー。
      私達が結構探索しましたし、お亡くなりなった方の埋葬とかもしちゃいましたよ?
      それでも良ければ、案内しますけど…」
 
 カーディナル:「案内してくれると、嬉しいな」

 人魚が見つけられなかった沈没船の秘密の部屋も、俺なら見つけられるかも知れないし。とカーディナルは心の中で思った。
 翌日の朝、3人は人魚Aの案内で沈没船を見に行く事にした。
 その後、ゴンザレスが小魚を数匹捕まえたのと、人魚が貝を差し入れしてくれたので、3人は夕飯抜きにならずに済んだ…

 4.沈没船の宝?

 翌朝、3人は薬を使って水に潜り、人魚Aの案内で沈没船に向かった。
 なるほど、『村の近くに落ちてきた』と人魚が言うだけの事はあり、沈没船の周囲には人魚の姿が目に付いた。適当にあいさつしながら、一行は沈没船に着いた。
 
 カーディナル:「なるほど…沈没船に割りにはキレイだな」
 人魚A:「はいー、お掃除とかしましたんで」
 
 一見した所、沈没船は、片付けられていて、もう探索する場所も無いようにも見える。
 一行は、甲板から船内へと入っていった。
 
 ゴンザレス:「hoo、船の中まで水浸しだゼ!」
 カーディナル:「まあ、そうでなきゃ沈まないしな」
 ファサード:「水の中の船も…面白いねぇ」

 当然といえば当然、船内も水浸しである。
 一行は、ゆらゆらと泳ぎながら、船内を調べた。
 
 カーディナル:「この壁の裏、何かあるかもな」

 やがて、カーディナルが言った。船の広さを測りながら調べてみた所、丁度この壁の裏辺りに、不自然な空間がある事にカーディナルは気づいた。

 ゴンザレス:「yeah!
        それなら調べてみようぜ!」

 と、一行が壁を調べてみると、すぐに隠し扉のようなものが見つかった。
 
 人魚:「へー、こんな所があったんですね」
 ファサード:「宝物…あるかな?」

 少し期待しながら、一行は隠し扉を開けてみる。
 すると、扉の中は空洞になっていたようで、一気に水が流れ込んだ。一行は水に乗って室内に入る。
 
 ファサード:「紙の束?」

 部屋の様子を見たファザードが、呟いた。
 室内は紙の束が積まれていて、書庫のような場所だった。室内の紙片は水に流されてバラバラになる。
 水の中を舞う紙片の一枚を、カーディナルは手に取った。

 カーディナル:「なんだ、ただの帳簿みたいだな」

 カーディナルがつまらなそうに言った。
 わざわざ船の隠し部屋に閉まってある帳簿というのは怪しかったが、自分達にとって価値がある物とは思えなかった。

 ファサード:「きっと…船の持ち主にとっては、宝物なんだねぇ」

 裏帳簿の隠し場所を変更しようとして、船にでも載せたのだろうか?
 真相については、知る由も無かったが…
 その後は、特に発見も無く、一行は沈没船を後にした。

 人魚A:「それじゃあ、さようならー。面白かったですよー」

 と、人魚も去っていった。
 一行は小船に戻る。
 海の中に居るとわからなかったが、外はもう夜だった。
 
 ファサード:「宝物、ありませんでしたねぇ」
 カーディナル:「まあ、いいさ」

 沈没船の宝物なんて、基本的には夢物語だから。とカーディナルは思った。

 ゴンザレス:「Hey!
        気にせず陸に帰ろうぜ!
        シーフードバーベキューが待ってるゼ!」

 ゴンザレスは再びモリを持って、魚採りに挑戦していた。
 それからエルザードに帰った一行は、ゴンザレスが採った魚をバーベキューにして、今回の旅を締めくくったようだ…
  
 (完)