<PCクエストノベル(1人)>
忘却の場所
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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】
【2155 / ルーン・ルン / ピルグリム・スティグマータ】
【助力探求者】
なし
【その他登場人物】
なし
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■ 余韻 ■■
酷く草臥れた街が在る。否、在ったというべきか。
嘗て惨酷なまでの仕打ちを受けた、この街。闇に融けて消えそうな。
一人の男が、石碑のような物の上に腰掛けていた。瓦礫と化した街の中に佇む石碑、其の上の影。
影は口笛を刻みながら、ぶうらりぶうらりと酷くゆっくりと足を揺らす。聞こえる旋律は悲しくも無く、また悲嘆でも無い。街とは正反対の口笛を吹く影──其の男の名を、ルーン・ルンと言った。
ルーン:「……麗笑の聖者訪れたり。狂いし聖者、奇跡の力、御業を持ち一夜にて街を滅ぼさん。歪曲の聖者、そは魔か闇の僕か」
口笛は止み、ルーンはそう言って動きをぴたりと止める。腰掛けている石碑──其れに刻まれる言葉を読み上げるかのように呟いて、ルーンはけらけらと陽気に笑った。
惨酷な街に、其れは酷く不似合いだ。だけどもルーンは気にしない。全く可笑しいとでも言うかのように、ルーンはけらけらと又笑う。
ルーン:「麗笑ネ……悪くナイ」
口角は持ち上がり、其の表情はまるで道化だ。
彼はするりと石碑から飛び降り、くるりと踵を返して石碑と対峙する。其の石に刻まれた文字を指でつ、となぞり、ぺろりと口端を舐め上げた。
ルーン:「この世は螺旋。絡み、もつれ合うもの。キミらの行い、悪意が鏡のごとく返ったまで」
チルカカ遺跡と呼ばれるようになったのは、何時のことだったか。
そうしてルーンは──狂気に満ち満ちた道化師は思い返す。もう忘れ去られた、遠い昔、この地で在った出来事を。
■ 記憶の旋律 ■■
硝煙と、其れから血肉が焼ける匂い。胸焼けがするような光景の中を、一人の男が歩いていた。
男は身体中から血を垂れ流しにしていた。其れは自分が怪我を負っている訳ではない──奇跡、スティグマ。
子供:「おかぁさん……おかぁさん……」
一人の子供が、べそをかきながら母親らしき倒れている女性を揺り動かしていた。だが女性は起きる気配すら、無い。腹部から大量に出血しているのを見る限り、もう息断えてしまったのであろう。
其れを見て、男──ルーンは、自分の腕に紋様を描く。否、紋様ではなく聖痕と称するべきか。兎も角ルーンは其れを描き、「奇跡」を発動させた。七色に光り輝く聖痕は、刃となって子供に遅い掛かる。
子供はぴたりと泣き止み、次の瞬間、ずるりと真っ二つになって崩れ落ちた。吹き上がる大量の血と、ルーンの「奇跡」を発動させた聖痕からも血が流れ出す。其れは痛いけれど、でも。
ルーン:「……この街が、汚すぎるのがイケナイんだヨ?」
冷たく甘い、死へと誘う言葉。道化にも見える其の表情。
ルーンはそう呟き、血と脂で塗れた道を、口笛を吹きながら歩く。汚いならば浄化せねば。善悪など関係あるか、聖魔なぞ如何でも良い。唯、汚いものは消して仕舞わなければ。
ルーン:「最高の眠りを約束してアゲルから……」
囁きは、闇に融けて消える。
一夜にして来えた街──其れが、チルカカ遺跡。
■ 旋律の終わり ■■
石碑をなぞる指先は冷たい。だけどもルーンは、其の手を石碑から離そうとはしなかった。
遠い昔、自分が行った残虐な遊び、無垢な浄化。其れは善でもなく悪でもなく、聖もなければ魔でもない。何にも属さない、自分だけのテリトリー。
ルーンはゆっくりと石碑から手を離し、すい、と視線を夜空に向けた。
星は綺麗に瞬いて、眠ってしまうのが惜しいくらいの見事な夜空だ。綺麗過ぎて怖いネェ──ルーンはそんなことを思い、面白そうに唇を歪める。
ルーン:「善も悪も神も魔も無いサ──……だから、モウ……」
つと、視線を石碑に戻す。
微かに過ぎるのは、あの日の血と脂の匂い。
ルーン:「──眠りなヨ」
そう言って、ルーンはゆっくりと瞼を閉じた。
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■ ライターより ■■
ルーン・ルンさん、初めまして!今回は発注有難う御座いました。
プレイングから中部部分を起こすのに少し手間取ってしまいましたが、楽しく書(か)かせて頂きました。
御楽しみ頂けましたなら、幸いに御座いますっ。
個人的にルーンさんのようなキャラ設定は大好物です(笑
其れでは。
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