＜聖獣界ソーン・白山羊亭冒険記＞
『ピンクの騎士奮闘記』
＜オープニング＞
「あなたってさあ、いつもうちの店でウダウダしてるけど、他にやること無いわけ？」
ルディアは、腰に手を当ててその客に意見する。そりゃあそうだ、オレンジ・ジュース一杯で、こうも粘られては堪らない。だいたい白山羊亭は食堂であって、喫茶店では無いのだ。
「やることって？」
修行中の騎士・アイリスは、ストローを唇にくわえたまま、ズズズッとジュースを飲む振りをした。だが、中身を既に飲み干したグラスからは、溶けた氷の、味の無い水が上がって来るだけだ。
「ええと。剣の練習したり、名騎士の伝記を読んだり？」
「お目付役のじじいみたいなこと言うなよ」
彼は通称ピンクの騎士。父は『赤の騎士』と呼ばれた英雄で、母は『白の天使』と崇められたプリーストだ。本人は、チャーム効果の高い剣を揮うのが嫌だからと言い訳しているが、修行も練習も訓練も大嫌いのようだ。親に似ないダメ男振りもここまで来るとあっぱれだと、ルディアはいつも呆れる。
そこへ、思わぬ事件が飛び込んで来た。
店の扉を開けて助けを求めに来たのは、アイリスが世話になっている宿の女将だった。
「アイリスさん、ここにいたのかい！受付のレジを狙う強盗達が、うちの手伝いのカメリヤを人質に取って・・・」
「え・・・」
アイリスの唇から、ストローがこぼれた。
「あんた、騎士さんだろ、助けてやってくれ！」
「ちょっと待って、アイリス。あなたが一人だけで向かうのは無謀よ！」
ルディアは、立ち上がった青年の腕を取って止めた。
「この店には、腕の立つ人も多い。助っ人を頼んだ方がいいわよ？」
＜ １ ＞
「よかったら、あたしにお手伝いをさせてください」
近くのテーブルにいた戦天使見習い・メイが、ロイヤルミルクティの花柄カップから唇を離した。白山羊亭の椅子の背もたれに、白い羽を窮屈そうに押しつけている。
「あれこれ言い訳をしてお逃げになると思っていました。少しは成長なさっているのですね」
「・・・。」
まだあどけなさの残る少女にそう言われ、ピンクの騎士はむっとして唇を噛んだ。母のように正しいことしか言わないメイが、アイリスは苦手だった。しかも、厄介なことに、アイリスは母をきちんと愛しているのだ。
「似た名前のよしみで、僕もお手伝いしますよ」
アイラス・サーリアスも席を立った。長い髪を後ろで一つに縛り、いつも穏やかな微笑みを浮かべている青年だ。容姿は女性的だが、武闘家としては相当の男だった。
「よく言うよ。てめーは、俺の名前がランスロットでもトリスタンでも、トーマス・エドワード・ローレンスでも、名乗りを上げただろ」
ピンクの騎士に指摘され、アイラスは苦笑した。困っている人がいると聞くと、たいていの冒険依頼を受けてしまう青年。危険な依頼も煩雑な依頼もお構いなしで。まるで、何かを探し求めているかのように。
「おにいちゃん、こまってるの〜〜？シキョウもたすけてアゲルよ〜〜」
14歳の少女、しかも精神年齢３歳程度のシキョウにまで気遣ってもらい、今度はアイリスがにが笑いした。
「気持ちは嬉しいけどよ、危ないから・・・」
「ピンクちゃんは、たたかうのキラいなのでしょ〜？でも、カメリヤおねえちゃんをたすけたいんだよね？シキョウもおんなじ。ピンクちゃんをたすけたいよ」
「わかった。わかったから、その『ピンクちゃん』はよせ」
「え〜、なんで〜。カワイイのに〜〜〜」
「わはははは！・・・『ピンクちゃん』、おまえさんに似合った呼び名じゃねえか」
シキョウと一緒に食事に来ていたオーマ・シュヴァルツは、巨大な体をのけぞらせて大笑いした。
「今回は修行じゃねえし、騎士の名や親の名も関係無い。そのねーちゃんを助けたいんだろ、あーん？
まあ、怪我したら、俺が診てやるぜ。存分に闘って来いや」
髪を立て派手な服装をしているが、オーマはエルザードに診療所を構える歴とした医師である。面倒見のいいオーマが、傍観者でいるのは珍しいことだった。
アイリスの保護者である僧侶は、現在は用事で故国に戻っている。今回は、アイリスら４人で事件解決に臨む。
騎士見習い達は、宿屋の女将から強盗の詳細を聞き出した。まだ若い３人の男だそうだ。２人は剣を握っていたが、１人は魔法使い風のローブを纏っていたという。
「よし、いざ！」
「待ちなさい！」
店を出ようとするアイリスの、襟首をルディアが掴んだ。
「オレンジ・ジュース代は？『ピンクちゃん』？」
＜ ２ ＞
宿へ急ぎながら、メイとアイラスが作戦を話し合っていた。
「・・・二階があればそちらからの方が・・・」
「２カイ〜？シキョウがのぼってあげるよ〜。シキョウは、どこでものぼれるよ〜〜？」
シキョウは木登り、棒登りなど、何でも登るのは得意だ。ただし降りる時は棒を一気に滑り降りて、掌を火傷したりするのだが。
アイラスは「いえ、僕が行きます」と笑顔でシキョウの申し出を断った。シキョウには、なぜアイラスが笑ったかわからない。ただ、その二階の仕事の方がキケンで、キケンな方を自分で買って出たらしいというのはわかった。
アイリスの方は、シキョウ達の先を早足で歩いていた。怒ったような思い詰めた足取りだ。騎士に女将が声をかける。
「アイリスさん、気持ちはわかるが・・・」
肩を軽く叩かれ、微かに振り向いた横顔は、殺気立って蒼白だった。剣を握った腕は震えて、強く噛んだ唇からは血がにじんでいる。
『カメリヤおねえちゃんのことが、タイセツなんだなあ〜〜』
ピンクの騎士の噂は、シキョウも聞いたことがあった。バリバリに人助けってタイプの人じゃ無いはず。すごく強いってわけでも無いし、闘いも苦手なはず。それでも、助けようと立ち上がったのだから。
『きっと、ピンクちゃんは、やさしいひとなんだよね〜〜？』
宿は、いつもは扉は開け放されていたが、今は、取り囲む野次馬達の危機感のまなざしが、その木製の閉じた扉に強く注がれていた。窓のシェイドも深く降ろされ、震えもしない。
野次馬の一人から、アイラスが情報を仕入れて来た。強盗達は、王へ『一袋の金貨と馬車と、聖都を出る迄のエルザード兵の護衛』を要求して籠城している。人質は街の門を出たら解放するそうだ。
「僕が裏の２階ベランダから侵入します。メイさん達は、入口で、彼らの意識を引きつけておいてください。もし、伝令兵が王からの断りのメッセージを持って来たら、入口で止めて、強盗達には渡さないように」
アイラスが、メイに細かい指示を出した。王や警備兵士に頼らず、みんなは初めから自分で救い出すつもりだ。大切なことは、人任せにしてはいけないのだ。たとえ自分達が危険に飛び込むとしても。みんなのやり方は好きだとシキョウは思った。
「敵の様子を窺って、突入のタイミングで、笛を吹きます」
アイラスの言葉に、メイはコクリと頷いた。
「引きつけるって、演説じみた説得でもしていればいいでしょうか？」
「エンゼツ〜？エンゼルににてるから、メイがやるのかな〜〜？でもシキョウもやりたい〜〜！」
「おまかせします」とアイラスがにが笑いした。またアイラスに笑われてしまった。でもエンゼツって何だろう。わからないのに『やる』って言っちゃったから、笑われたかな？
アイラスが裏へ回ってからは、メイは今度はアイリスと難しい話を始めた。
「フォーメーションを打合せしておきましょう・・・」
だが、アイリスはメイの話を無視して、閉じた扉に向かって叫んだ。
「やい、強盗ども〜、人質は無事なんだろうなーっ！カメリヤの声を一言聞かせろーっ！」
これがエンゼツってやつだろうか？
「声を聞かせないと、王からの伝言も教えてやらねえぞーーーっ！」
「うるさい人ですねえ」と、シェイドが揺れて窓が少し開いた。銀髪の青年が顔を覗かせた。
「少し静かになさい」
青年は、顔の前で、両手の指であやとりのような動きをした。窓の外へ何かが飛び出して来た。
「きゃあ！」「うわっ」
それは鼠だった。十匹以上いるだろうか。メイとアイリスが続けて悲鳴を挙げた。
『わあ、ネズミさんだ〜。おいで〜！』
シキョウは掌にチーズを具現化させた。まだ候補生ではあるが、シキョウには具現能力があり、オーマと同じヴァンサーへの未来が開かれていた。
「カワイイね、見て〜」
手や肩に鼠を乗せて愛でているシキョウから、メイは後ずさりして離れて行った。メイの方は、まっすぐ走るだけのそれらは、飛びのいてよけたらしい。
「うおお、どうにかしてくれ！」
アイリスの方は、苦戦していた。一匹が体に登ったようで、細い爪で服の背に引っかかって、いくら体を振っても離れてくれない。メイが手で叩き落とすと、敵はキュウと鳴いて落ち、逃げて行った。
「くそう、あいつは召喚士なのか」
アイリスが吐き捨てるように言った視線の先の窓は、もう閉じられていた。
「カメリヤを離してやっておくれー！あたしが代わるよー！あたしのような年寄りに、人質の価値が無いとでもお思いかいー！」
今度は女将がエンゼツを始めた。メイに言われ、シキョウは短剣を具現化させて右手に握った。笛の音がしたら、すぐにメイに続こうと準備していた。
「あたしはー、かつては大富豪の寵愛を受けた娼婦でー、そいつに言えば今だってポンと身代金をー」
「チョウアイってなにかなあ〜？ねえ、メイ、ショウフってなあに？」
シキョウが尋ねると、メイは赤くなって「存じません」と顔をそむけた。いけない事を聞いてしまったのだろうか？
その時、物が割れる音と同時に、「嫌ぁぁぁぁぁーっ！！！！」という悲鳴が聞こえた。
「ピンクさん、シキョウさん、行きますよ！」
メイは窓ガラスを大鎌で叩き割り、シェイドを斬り裂くと中へ飛び込んだ。騎士とシキョウもすぐ後に続く。
食堂には、男が１人。メイは、筋肉隆々の大柄な男を、大鎌の一払いで転ばせた。
「おい、トーマス・エドワード・ローレンス！こいつらを何とかしろ！」
男は意味不明の言葉を吐き、誰もいない場所を振り返った。そこにもう一人居たらしいが、とっとと逃げたようだ。
シキョウがその隙にテーブルに置いてあった剣を奪う。そして奪い返されないように、素早く階段を昇り逃げた。
「カメリヤ、大丈夫か？」
アイリスが、人質の手足のロープを剣で切った。
「アイリス！」
カメリヤが抱きついた。がしりと騎士の胸にすがり付く。感動が腕にこもりすぎた、わけでは無い。カメリヤの瞳は、熱に浮かされたようにうるんでいる。チャームの呪いにやられたようだ。
「うわぁぁぁ、ロープを切る時、腕を掠っちまったか？」
その後のアイリスの苦労を考えると、決してワザと掠ったわけでは無いだろう。
「カメリヤ、頼む、離れてくれ。これじゃ闘えない」
カメリヤにはまわりの声も聞こえていないようで、アイラスの背中に頬ずりしてしがみついた。騎士は、男のこちらへの反撃を警戒して剣を構えるのだが、後ろからはがい締めにされているのと同じで、動きが取れない。だいたい、背中に『うっふーん』と色っぽい声を発する娘を張り付かせていては、集中力も途切れそうになる。
「その受け口の唇、ほんとにセクシーだわ。腫れぼったい瞼も可愛いわあ」
「・・・褒めてないってば」
メイの大鎌が男を壁際に追い詰める。階段の手すりに登ったシキョウは、咄嗟に頭上に花瓶を落とした。
「やりやがったな！」
男は威勢のいい言葉を発したものの、反撃する様子は見せず、厨房へ何度も視線を泳がせた。２人の仲間の応援を祈っていたのだろう。
だが、厨房から登場したのはアイラスだった。
「おや、正面も終わったのですね」
その言葉で、男は敗北を悟った。
強盗達は、３人とも縛られて食堂の床に転ばされた。リーダーらしい筋肉男は、「おまえと同郷の、長ったらしい名前のアイツはどうしたんだっ！危なくなって逃げるとは卑怯だ！」と、小柄な男を怒鳴った。
「女性の人質を取った強盗が、何が『卑怯だ』ですか」
「まったくだ！」
メイと騎士見習いが続けて非難した。事件も解決し、４人はのんびりとテーブルに座り、女将が警備兵を連れて来るのを待っていた。
なんだか、足首がチクチクするような気がして、シキョウは何度か靴をこすりあわせた。
「きゃーーーーっ！」
メイが悲鳴を上げ、いきなり『椅子の上』に立ち上がった。椅子の上には立ってはいけないものだ。だが、シキョウにも、異常事態なのだとわかった。メイの白い服やリボン、長いキラキラした髪に、黒い小さな蜘蛛がいっぱい集（たか）っていた。
シキョウも足元を見る。床は真っ黒に蜘蛛で埋めつくされている。さっきのチクチクは、これに咬まれたのだ。今も、靴や椅子の足から、蜘蛛が這い上がって来ていた。
シキョウは、急いで天井の照明器具にぶら下がった。メイを案じて見下ろすと、彼女は翼で少し宙に浮き、蜘蛛から逃れていた。
「召喚ですか」と、アイラスも肩に登って来る蜘蛛を手で払いながら、銀髪の青年を振り返った。さっき、窓から鼠をたくさん出した人だ。後ろ手に縛られても、指が組めれば動物を出せるらしい。
「ばかやろう、俺たちも咬まれるじゃないか！」
「痛いですよぅ」
仲間の２人は悲鳴を挙げている。
「いいんです、単なる嫌がらせです」
どうせ掴まるなら、相手も痛い目に遭わせてやろうということだ。しかも、自分も自分の仲間も痛むというのに。それは、シキョウには理解不能の不気味な考えだった。
鼠も蜘蛛も怖くは無い。だが・・・。
青年の体を、黒い蜘蛛達が包んでいく。
シキョウには、彼が、人間でなく違う生き物に見えた。
召喚を阻止しないと、まだ蜘蛛は現れる。アイラスが釵で男の頬を殴った。召喚士は気を失い、指は動きを止めて力なく床へ落ちた。
「次はトカゲか蛇ってお願いしたのに・・・」
アイラスは、頭を振った。髪からぽたぽたと蜘蛛が落ちた。
カメリヤにかかった呪いはもう溶けていたが、彼女は今度は蜘蛛を怖がって、騎士の背中から降りて来なかった。
カメリヤをおぶったアイリスは、上まで登って来ないように蜘蛛を剣で追い散らかすのだが、半端に翅が切れたような蜘蛛は、呪いがかかって、却ってアイリスに絡み付く。黒い蜘蛛達にびっしり包まれ、彼のズボンが黒に染まって見えた。
カメリヤを降ろせば、もっと楽に動ける。いや、カメリヤが背にいなければ剣で払う必要は無いし、これほど奴らに群がられることは無い。カメリヤの居る背中へ蜘蛛が行かないように、自分を咬ませているのだろう。
シキョウにもわかった。それは、さっきの召喚士とは反対の想いだ。騎士見習いは剣の重さに振り回されていて、シキョウが見てもあんまり強そうではないけれど、強いことよりもっと大事なことがある。
「シキョウ、蜘蛛の天敵を具現化してくれ〜っ！」
アイリスが叫んだ。
「テンテキ〜？クモさんがニガテなモノのことだよね〜？うーん、なんだろう〜？」
虫のテンテキが蜘蛛なのは知っていたが、蜘蛛のテンテキ。もっと大きい蜘蛛。違うだろうなあ。
「ええい、早く散ってーっ！」
メイは、『蠍』を出されたくない一心で、テーブルにあったランチ用のトレイを床に叩きつけた。それは意外に効果的で、一度にたくさんの蜘蛛を壊滅させることができた。
「メイさん、いい案があります。テーブルの反対側、持ち上げてください。・・・せーのっ！」
４人掛けのテーブルを、アイラスとメイがひっくり返した。わらわらと重なり合っていた大量の蜘蛛が、テーブルの下敷きになった。
「今度はこっちのテーブル！」
二つ目をひっくり返すと、半分以上の蜘蛛が昇天した。
「オーマさんがここにいたら怒っただろうなあ」
アイラスも、罪の無い蜘蛛を殺すのは気が進まないようだ。シキョウも、アイラスの気持ちはよくわかる。でも、シキョウは天井にいられるから平気だけれど、みんなは咬まれて痛い思いをしてしまうのだ。
騎士の方は、テーブルクロスを床に敷き、その上から靴で蜘蛛を踏み潰していた。これなら足から登って来られることはない。カメリヤも背中から降りて、アイリスを手伝っていた。
シキョウは、シャンデリアから飛び下りると、メイを真似てトレイでの粉砕を始めた。
『クモさん、ごめんね〜〜！』
テーブル横転の衝撃のせいか、皆の画期的な反撃のせいか、やがて残りの蜘蛛達は、窓や玄関や裏口へと、水が引くように消えて行った。
＜ ３ ＞
オーマは、診療所に４人とそしてカメリヤまでが訪れたので、あんぐりと口を開けた。みんな、無数の小さな咬み傷を作っていた。傷はそれぞれ血が滲む程度だが、消毒は必要だ。
「注意が足りませんでした」
アイラスが自分でコットンを千切り、悔しそうに呟いた。指先からにじんだ血が薄くコットンに染みる。
「あのひとたち〜、じぶんたちもクモにかまれてたよ〜〜」
「床に転がされていましたもの。あたし達よりたくさん咬まれたと思いますわ」
強盗達は今頃、牢の医局で治療を受けているはずだ。
大量の蜘蛛とラブラブになったアイリスは、みんなの何倍も咬まれ、別室で治療中だ。彼がかばったおかげで一箇所も傷の無いカメリヤが、専属で、赤く血の滲んだ足や二の腕に薬を擦り込んであげていることだろう。
「あのピンク野郎、二人きりにしてやったんだ、デートぐらい誘えよ〜」
怪我人が自分達で治療しているので、オーマは暇だった。隣の部屋のドアに、耳を貼り付ける。
「恋の始まりの瞬間、あたしもぜひ拝見したいです！」
恋に恋する乙女も、白い翼を震わせながら扉に張り付いた。
「なになに〜？おもしろそう〜〜。シキョウもやる〜！」
「皆さん、はしたないですよ！」
アイラスが青筋立てて注意すると、オーマは肩をすくめ、人差し指を振ってみせた。
「アイラス。協調性ってものも大事だぜ？」
「覗きで協調したくありませんよ！」
「まあ。アイラスさんは、恋愛に興味が無いのですか？それは寂しい人生ですわよ？」
「アイラス〜、さみしいの〜〜？かわいそう〜〜」
「・・・。」アイラスは、むっとして唇を結ぶ。
「まあ、四の五の言わず、二人の成り行きを見守ってやろうぜ。アイラスには、ラブラブしてる若者の背中を押してやろうとする、俺のマグマでマッスルなハートが理解できねえかな。
あー、情けねぇ。おまえさんは、頭でっかちで、恋の機微がわかんねぇんだ」
「頭でっ・・・」
アイラスが怒りで頬を紅潮させたその時、バタン！と乱暴にドアが放たれ、もっと顔を赤く染めたピンクの騎士が飛び出して来た。
「何が『ラブラブしてる若者』だ、黙って聞いてりゃーーーっ！」
アイリスは、例のピンクの剣を天井に振りかざした。
「いい加減にしねえと、この剣でオレにラブラブにさせてやるぞーーーっ！」
皆は、蜘蛛の子を散らすように、逃げ去った。
開いたドアの背後では、カメリヤがくすぐったそうな笑顔で、そんな騒ぎを見守っていた。
＜ ＥＮＤ ＞
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■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
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【整理番号 ／ ＰＣ名 ／ 性別 ／ 年齢 ／ 職業】
１６４９／アイラス・サーリアス／男性／１９／フィズィクル・アディプト
１９５３／オーマ・シュヴァルツ／男性／３９／医者兼ガンナー(ヴァンサー)副業有り
１０６３／メイ／女性／１３／戦天使見習い
２０８２／シキョウ／女性／１４／ヴァンサー候補生
ＮＰＣ
アイリス(ピンクの騎士)
カメリヤ
宿屋の女将
強盗の皆様
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■ ライター通信 ■
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発注ありがとうございました。ライターの福娘紅子です。
＜２＞から皆さんの行動や視点が分岐しています。＜３＞は、少しだけ変えてある人も。
ピンクの騎士はダメ男ですが、シキョウさんが暖かい目で見てくれて、長所も見つかったようです。
シキョウさんの精神年齢だと、世の中の常識や決まりにとらわれず、純粋に『想い』だけを見つめるので、シキョウさんだけが感じることもあるかと思いました。
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