<PCシチュエーションノベル(グループ3)>


親父たちの狂宴
 ――その患者が運び込まれて来たのは、薄闇が忍び寄る夕刻の事だった。
「王立学院七不思議ぃ?」
「はい」
 階段から転げ落ちたと言う王立学院の学生が、足を痛めて病院へ運び込まれた先での事。「おーこりゃ脱臼してるな。ちぃと痛むぞ」と言いながら無遠慮にがきごき悲鳴を上げるにも構わず治療を施した後、ぐったりしている学生をここまで連れて来た教授と名乗った人物が、真っ直ぐに医者――オーマ・シュヴァルツを見てこくりと頷いた。
「最近良く起こるのですよ。実際には七つもあるわけではないのですが、自然とこういう言い方になりましてね」
「ほぉう。…まあ、良くある怪談話なんだろうが。それでどうして俺様にそんな事を言うんだ?」
「腹黒同盟の話は良く伺っています」
「む」
 教授の言葉で、オーマの表情がぴくんと動いた。
「それなりの実績を上げていると言う事も、王城で働いている方から」
 そう前置きをした後で、
「不思議な事象に困っているので、それだけの実績を持っている方なら何とかしてくださるだろうと言う事になりまして。丁度その事象のひとつにこの生徒がかかってしまったので、ついでと連れて来たのです」
 …学園が困るような事象?
 オーマは首を傾げた。オーマの知る『学園七不思議』と言うモノは、噂にこそあれ、そのほとんどが噂の域を出る事が無く、こう言った外部の人間を担ぎ出すような事は無かったと思ったのだが…。
「あー、ちょっと待ってくれ。一体どういう事が起こってるんだ?」
「あ、それはですね」
 教授の顔が、ちょっと考え込むように上を向く。それからややあって話し出したのは、学校にまつわる噂と言うには少々場違いにも思える、いくつかの出来事だった。
 曰く。
 ある1人の学生が丑の刻にふと外を見ると、そこにはレインボーラブラブフラッシュ付きでマッスルポーズを怪しく悩ましく決めた筋肉親父…それも、その背に黒翼、額には獣を思わせるくねくねと歪んだ角を付けている悪魔のような者を見たと言い。
 またある者は、ヴィジョンを召喚した際に、桃色吐息に包まれた、どう見ても胡散臭さイロモノレベル爆裂な聖獣…モドキに抱擁を迫られたと言う。
 ――ちなみにその者は未だに実家で寝込んでしまっているらしい。
「そこの学生は、3つめの噂、怪談の踊り場に現れると言う鏡の中ですすり泣く非常に体格の良い男を見てしまい、それが振り向く前に逃げようとして、足を踏み外したと言う事らしい」
 何だか非常に見たくないモノが鏡に映っていたようだが。
「振り…」
「ふりむくとなにがおこるの〜〜?」
 オーマの声に重なるようにして、いや、オーマの声を打ち砕き自分の声でかき消して、異様に元気の良い声が響き渡った。お?と驚いた顔をする教授に、「気にしないでくれ」とオーマが笑いかけ、
「どうした?今仕事中だぞ?」
 オーマの背後で興味津々に目をまん丸にしている少女、シキョウに声をかける。
「うんうん!おしごとはいいことだよね〜〜〜。だからてつだってこいっていわれたの〜〜〜!」
「ほう」
 ぼそりと、少女の相手をするよう言いつけておいた少年の事を思い浮かべつつにこりと笑うと、
「――そうだな…シキョウ、ちょっとそこに椅子があるだろ?そこでおとなしーく、座っててくれな?話の続きがあるんだ」
「はあああ〜〜〜〜〜〜〜〜いっ!」
 大きく腕を振り上げたシキョウに「うむ、いい返事だ」と言いつつくるりと向き直り、
「で、振り向くと何が起こるんだ?」
 後ろで椅子に座り、足をぶらつかせている少女の事に有無を言わせない眼差しで、先を促した。
「あ、ああ、ええとですね。その男性と目が合うと、失った恋人の代わりに鏡の中に引きずり込まれるんだそうです」
 …その話が、3つ目の怪談となるようだった。
「それで全部か?」
「私の知っているのは。でもあと2つか3つは存在するようですよ。それで、学生たちも怖がってしまって授業にならず…何とかしていただけないかと」
「噂に名高い腹黒同盟の本拠地を訪ねたっつうことだな。うむうむ」
 悪魔払いの儀式や、浄化魔法は試したらしいが、それらの効果はほとんど無かったらしく、正攻法では駄目と言う結論に達したのは、つい先程の事だった。直後に生徒の1人が階段から落ち、オーマの元を訊ねる良いきっかけになったのだが。
「よし、じゃあこの俺様が何とかしようじゃねえか」
「本当ですか?」
 嬉しそうに、でもあっさりと受けたオーマに僅かに当惑しつつ、教授が立ち上がる。
「おうとも。人に頼られてごねるような真似はしたくねえしな。つーわけで…もう夕方か。それなら、今晩だな。ちぃっと学院を見たいんだが、鍵開けといてくれるか?」
「ええ、当直の者に話を通しておきますから。それではよろしくお願いします」
 診療台にぐったりしていた学生を促し、病院から去って行く2人を眺めつつ、聞いた話を頭の中で反芻していると、背後に人の気配がした。
「オーマ、シキョウねそれみたいなー」
「それ?」
「かがみからばーーーってでてきてひとをつかまえちゃうひと〜〜」
「…ああ。そう言うことか…って、行きたいのか?」
「うんうんッッッ」
 こくこくこくこく。
 両手を力いっぱい握り締めて、シキョウが目を輝かせる。一体何を想像しているのか、オーマにもよく分からないが、シキョウにはとてつもなく楽しそうな出来事に思えたらしい。
「そうだなあ」
 期待を込めてきらきらとオーマを見上げる少女。
「俺の言う事、ちゃんと聞けるか?勝手にあちこち出入りしたり、知らないものを持ったり口に入れたりしないな?」
「うんッッッ、シキョウよいこだからそういうことしないよーーーー!!」
「ううし、たまには良いか。じゃあ、夜になったら起こすから、少し寝て来い。夜食を作っておいてやろう」
「わーい、やしょくやしょく〜〜〜〜!!」
 意味が分かっているのか、それとも何かを用意する、と言われた事が嬉しいのか。
 シキョウはぴょんぴょんと跳ね上がって、にっこりと笑ったのだった。

     ☆    ☆    ☆    ☆    ☆

「――で…」
 深夜。話に聞く丑三つ時には至らないが、それでも普通の人間ならとうに布団に入っている時間帯に、表情をほとんど伴う事の無い声が響く。
「……どうしてそれで、おまえたちが…ここにいる?」
「いやあ、偶然さ偶然。学院に行こうとしてたまたま通りがかったらおまえがいたんだ」
 片手に大きな荷を持ちつつ、むんと胸を逸らして偉ぶるオーマと、わくわくと自分の足元で期待感に胸を膨らませている少女に交互に視線を走らせながら、孤児院のすぐ近くで打ち捨てられていた石に腰を降ろして夜を過ごしていた男、ジュダがかすかな息を付く。
 …それが諦めの印だと、誰が気付いただろうか。
「…病院から学院までは……反対方向なのだが」
「そうか?俺様の足じゃ、こっちに来る方がルート的に正しいんだ」
「(じ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜)」
 屁理屈を並べ立てる大男と、興奮で声も出ないらしい少女。
 この場合、どちらかと言うと無言で見られる方に強いプレッシャーを感じる。
「…まあ…それは、いい。だが、…だからと言って、俺に事細かに事の次第を説明する事もないだろう……?
 何となく、と言うか完全に意図は掴めた。――何があっても自分を巻き込むつもりだと。この男は。
 それでもつい言葉が口を付いて出てしまうあたり、何か抵抗したい気分だったのかもしれない。――が。
「ジュダもいっしょにいこうよ〜〜〜〜〜、たのしそうだよ〜〜。ねーねーッッ」
 ぐいぐい。
 …ちょっぴりでもジュダが行きたくないと言う仕草をした事に気付いたのか、どことなく不安げな表情を浮かべながら、実力行使に出て来たこの小柄な少女に困惑し…そして、何を言ってもオーマは自分を連れて行くつもりなのだと分かってか、もう一度息を吐くと僅かに頷いた。直後、シキョウの顔がぱああああっ、と明るく輝き。
「やったあああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っむぐ」
「「静かに」」
 口を押さえるのは、ジュダの方が一瞬早かった。

     ☆    ☆    ☆    ☆    ☆

「…鏡、か」
「階段の踊り場っつってもなぁ、いくつもあるよなそういえば」
 ほとんど闇の学院内。踊り場にある、大きな鏡の中には話に聞いた人影は入っていない。
「だーれもいないよ〜?」
「他かもしれない。まあ、ゆっくり行こうじゃねえの」
 取りあえずはその悪魔とやらが見えた教室だな、とオーマが実に楽しそうに笑いながら、聞いていた場所へ向かう。
「ふふ〜〜ん、ふん、ふふふ〜〜〜〜ん♪」
 暗闇でも怖さはないらしいシキョウが、たたたっと走ってはまた戻り、オーマとジュダの2人の腕に交互に抱きついてはまた走って行く。
「…暗闇では…走ると転ぶぞ」
 ぽう、と手の中に小さな、指の長さ程しかない淡く光る鳥を作り出したジュダが、シキョウの肩に止まらせる。
「わーーーー。かわいい〜〜〜〜♪」
 ぱたた、と時折羽ばたくその鳥をシキョウがにこにこ笑いながら嬉しそうに2人を振り返るのを、父親のような眼差しでオーマが見やる。
「いいねえ、女の子っつうのは華やかで」
「……」
 同意なのかどうかは分からない。が、否定しなかった事も事実だった。
 間もなく付いた教室で、外に誰も居ない事を確認しながら、生徒の机にどん、と大きな包みを置く。
「さあて、まだ少し時間もあることだし、夜食タイムと行きますか」
 緑と白のコントラストも鮮やかな、唐草模様の風呂敷に包まれていたのは、5段重ねの重箱。ぱかぱかと開けると中には色とりどりのおかずがぎっしりと詰め込まれている。
「…重そうだと思ったが…中身は、それか」
「おう。俺様入魂の作だぜ」
「すごーーーーーい。おーま、しゅふのおにだね〜〜〜〜〜〜〜」
 きらきらきらきら、と、肩に乗った小鳥の光も関係しているのだろうが、大いに目を輝かせている少女がすとんと椅子に座り、遠慮無しにぱくぱくと食べ始めた。
「鑑っつうのは聞いた事があるが、鬼と言われたのは初めてだな。…おう、ジュダも食え食え」
 呆れ顔のジュダだが、それでも遠慮するような人間ではなく、ごく静かに、ささやかな動きで何種類かの食べ物を摘んで行く。
 そうして、突然始まったささやかな夜食会は、突如窓の外に張り付くように現れたモノによって中断を余儀なくされた。
 ――というか。
「食いたいなら中入れ、そんな物欲しげな目で見られても困る」
 がらがらと窓を開けたオーマの導きによって、それ…話に聞いた通りの、悪魔とも見紛う扮装を凝らしていた筋肉親父――のウォズが、いそいそと中に入って来たのだった。
 数分後。
「ぐ…グレイトッッッッ!!!なんと言うこのまったりした食感!決してくどくなく、それでいてアクセントの効いた味!その上ほんのちょっぴり混じっているこの主夫の苦悩エキスがまた何とも言えずッッ!」
「……おまえ体液でも入れたのか」
「んなモン、おまえだけが食うわけじゃねえ料理に入れるか。シキョウだって食べるんだぞ?」
「おいしーおいしー」
「………」
 何故かひたすら感動している筋肉親父と、和気あいあい?と食事を楽しんでいる一行。
「でだ。おまえさんがどうして最近になって現れたのが聞きたいんだが?」
 フォークを振りつつ相手に話を向けると、
「それはまあ色々とあって、私の進むべき道はこれだ、と確信したのだが」
 その色々の部分は聞きたいような聞きたくないような。
 …ウォズが言うには、最近自分たちの間でちょっとした信仰が流行り始めている、らしい。
「そして親父至高主義の神により生まれ変わったような気分になり、今は仲間たちにこの昂揚感を伝えるために、即興劇を行う予定なのだ」
「ちょっとまてなんだそれは」
「何だも何も、そのままだが。あの神に一歩でも近づくために、我々は生の感想を聞かせてもらおうとこの建物の中に沢山居ると言う人間にその姿を見せ付けているのだよ」
 ぱくぱくと、シキョウと同じくらいの食欲を見せ付けるウォズがうむうむとオーマ手製の料理を味わいながら何度も頷いている。
「あー…鏡の中にいるっつうあれもか」
「それだけではない。トイレに潜んで脅かす役も、天井に張り付いて上から学生たちを追いかける役も、代々の学院長そっくりの顔を作って夜中に徘徊するのもそうだ」
「それのどこが劇の練習だ!?」
「ねーねー、これおいしいねー。どうやってつくるのかなー」
「…ああ、それはな…、材料の野菜を…」
「おまえらも離れて会話しねえで仲間に入れ!!」
 僅かずつ距離を置いて会話していた2人へも、オーマが突っ込みを入れる。
「……では、ヴィジョンの中に現れたと言う色物聖獣は…違うんだな」
 そして離れていながらも要点は掴んでいるジュダが、しぶしぶとオーマにだけは分かる表情で戻って来ながら、ウォズに話し掛けた。
「いいや、それは違う。夢見の能力を持つウォズは数少ないし、ましてや起きている人間の脳裏にヴィジョンを見せるなど聞いた事も無い。出来るとしたら、そう――まさに至高の神くらいのものだろう」
「しこーのかみ?」
 空っぽの重箱を名残惜しそうに眺めながら、シキョウまでが会話に参加して来て、
「おう、親父至高主義の神様か――俺様にとっちゃまんざらでもねえ…けど…………つーか、まさか…アレか?」

 HAHAHAHAHAHAHA!!!!ヘェイメェン?
 むきむきっ。

 一瞬、何かとても嫌ぁな映像がオーマの頭の中を駆け抜け、思わず襲ってきた痛みにこめかみを押える。
「わかった。よーーーーーーーっくわかった。わかったから、これ以上この学院の連中にその姿を見せて脅かすのは止めろ。じゃねえと、俺様喜んでここに乗り込んでおまえらを残らず封印してしまい兼ねねえ」
「なに!?それはヴァンサーとして横暴ではないのか?」
「やあかましい!元はと言えばおまえらがここの学生を寝込ませたり脅かして怪我させたりするのが悪ぃんだろうが!」
 ――怒鳴りつける気力がまだ残っていたのが、幸いと言えば幸いか。
「……待て、オーマ」
 ふと。そこに、静かな声が掛かり、
「…ヴィジョンを見せたのが、ウォズで無いのならば…責任の一端は彼らには無いぞ」
 きっちりと重箱を整え、風呂敷で器用に元の形に直し終えたジュダが冷静に告げ、
「ぐ。ぐぐぐ」
 全くもってその通りなので、何も言い返す事が出来ないオーマが、じろりと…ウォズが竦み上がる程の視線を向け、
「そう言う訳だ――さっさと仲間を連れて撤退しやがれ」
「わ、分かった」
 八つ当たりよろしくぷんすかと頬を膨らませつつ、その場を後にした。
「ねーねーオーマー、あれは〜〜〜〜?かがみのなかのまっちょは〜〜〜〜〜?シキョウ、かがみのなかってはいったことないよ〜〜〜〜〜〜〜〜」
 思ったよりもあっさりと事が終わりそうなのにほっとしつつ、それ以上にぐったりと疲れたオーマの背に、シキョウの声が掛かる。
「ああ、ありゃあなあ」
『…呼んだ?』
 野太い声が、後ろからかかり。
『あらァん、かわいいコ。アタシと一緒に鏡の中に閉じ込められちゃいたいの?』
 廊下にも置いてある姿見――その中から、何だか妙にくねりを見せる体格の良い男が、照れたような満面の笑みを浮かべつつ、鏡からにゅうとシキョウに向けて太い腕を差し出して来て――

 ――すぱんッッッ!

 絶対零度も超すかと思われる程凍りつきそうな殺気が学園を支配し、それと同時に差し出された手だけが切り取られ一気に細分化し、同時に男を映し出していた鏡はめきょめきょと無慈悲な音を立てて砕け散った。
「あーあ〜〜〜〜〜」
 嬉しそうに手を伸ばしていたシキョウが、届かなかった手に残念そうに視線を注ぎ、
『ひどいわ、ひどいわぁ、せっかく遊んでもらおうと思ったのにィ』
 別の鏡に移動した、ひと回り小さくなった男が鏡の中でさめざめと泣いた。

     ☆    ☆    ☆    ☆    ☆

 帰り、別れるまでは無言だったジュダが、最後にだっと駆け寄ってぎゅぅと腰に抱きついたシキョウの頭を一度だけ撫でて、闇の中に消えていく。
「ねーオーマー」
「うん?」
「ジュダ、おこってたのおこってなかったの〜〜〜〜〜〜〜〜?」
 ぶんぶんと前後に腕を振りながら、不思議そうに顔を上げて訊ねて来るシキョウに、
「さあなあ…本気で怒ってたようにも見えたが、にしちゃあ今回威嚇だけで封印も何も使わなかったしな」
 それはオーマにも意外な事だった。ジュダが、あれだけの殺気を飛ばした相手の皮を一枚削いだきりでそれ以上何もしなかった事…いや、それ以前に感情を露にすること自体非常に珍しいのだが。
「かがみのなかってどんなだろうね〜〜〜〜〜〜」
 そしてまた、シキョウはもうその事には拘っていなかった。

     ☆    ☆    ☆    ☆    ☆

 ――後日。
「ね〜〜〜〜ってば〜〜〜〜〜〜〜ッッ、いこうよ〜〜〜〜〜〜〜みたいよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「駄目だ駄目だ、俺様最近夜はいい子で寝ているんだから駄目だっっ!!!!」
 寝込んでいた学生が枕を上げた頃、急激に広まっていたらしい七不思議もすっかりなりを潜めていた。
 その代わり、時折夜中の街中を徘徊しつつ神を讃える歌声を歌っていたと言う筋肉親父の集団を見かけた、という噂がじわりと広がり、その話を聞いたなり見に行きたがるシキョウを、頭痛を堪えながら必死に止めるオーマが居た。
 シキョウの肩の上には、昼間は光らずに首を小さく動かしている小鳥の姿があり、それは時折真っ黒い瞳をオーマに向け…気のせいだろうがじろりと睨み付ける。
 それは、その作り主の事をありありと思い出させた。
 その度に、シキョウを決して連れて行くまいと決心を固めずにはいられない。
 何故なら、連れて行ったが最後。
 きっとオーマ自身が封印…どころか、存在そのものの抹消さえされてしまい兼ねない事態になるだろうと言う事が良く分かっていたからだった。


-END-