<あけましておめでとうパーティノベル・2005>
踊り子と人生ゲーム
初日の出と共に眠りについたレピアだったが、その夜はエルファリアの年始行事に付き合い皆の前で踊りを披露したりと大忙しだった。
「レピア、ごめんなさいね。付き合わせてしまって」
エルファリアがレピアに申し訳なさそうに告げる。
「いいのよ。ここに置いて貰って、大切にして貰って‥‥このくらい訳ないわ」
「ありがとう」
にっこりと優しい笑みを浮かべたエルファリアは夜空を見上げながらレピアに言う。
「レピア、今年もよろしくね」
「えぇ、こちらこそ」
互いに微笑みあい、エルファリアは名残惜しそうに自分の部屋へと帰っていく。
明日も朝から祝い事がある為、エルファリアはまだレピアとたくさん語らいたい事はあったのにも関わらず去っていったのだった。
「さてと‥‥」
これから黒山羊亭に行くのも躊躇われてレピアは溜息を吐く。
あちらにも顔を出しておきたかったのだが、今から行くと確実に朝になってしまうだろう。
明日の夜もエルファリアとの約束が入っていた為、黒山羊亭に行く事は出来ない。
「冥夜達‥‥来てたかしら‥‥」
残念ね、と呟いた時、窓からヒラヒラと手が見えた。
レピアが居たのは3階である。外から入り込めるような場所などあったか‥‥。
「‥‥?」
レピアが不思議に思って覗きに行くと、ぶんぶんと振っていた手は褐色の肌に黒い髪をツインテールにした少女とメイド服を着た少女だった。いつの間に生やしたのか、窓の外には一本の大きな木が立っている。
「冥夜にチェリー?」
驚いて声を上げたレピアに可愛らしく二人は笑ってみせる。
「ヤッホー。あのね、レピア黒山羊亭に来れないのは忙しいんだと思ったんだけど、少しなら遊べるかなって思って来ちゃった♪」
「コンバンハですー」
よっこいせ、と窓から無事に侵入した冥夜は、窓枠からくるりと一回転をすると上手い具合に着地する。
しかしチェリーはバランスを崩してそのまま前のめりに落ちそうになった所を、レピアに抱きかかえられて事なきを得た。
「というわけで、冥夜とチェリーの出張サービス。レピアと一緒にやりたいゲームがあって持ってきたんだー」
えへっ、と冥夜はいつものバックからずるずると大きな箱を取り出す。
「なぁに?」
「これはね、冥夜ちゃん特製『冒険者人生ゲーム』。ほら、前に話をしたらレピアやってみたいって言ってたでしょ?」
「えぇ、言ったけど‥‥」
「じゃ、やろう!」
「はいです!」
冥夜とチェリーはいそいそと準備を始める。
「本当に二人には驚かされるわ」
くすり、と笑ってレピアもそれを手伝い始めた。
この『冒険者人生ゲーム』とは、駆け出しの冒険者から始まり、依頼をこなして名声を高め、騎士や王女、メイドや踊り子などになりながらゴールを目指すものだった。
しかし冥夜特製というだけあって、一筋縄ではいかない。
クラスや装備が替わるとプレイヤーの服装も替わり、メデューサに石化されたり、呪いで凍り付けにされて一回休みになると、プレイヤーも次の番まで石化したり氷付けになったりするものだった。
もちろん、利点もあって性別に関係なくプレイヤー同士が結婚出来たり、子供が生まれたりと死なない程度に冒険者の人生が体験出来るゲームなのだ。
準備が出来て冥夜の元気な声でスタートを告げる。
「それじゃ、じゃんけんで順番決めよう」
順番はレピア、冥夜、チェリーの順番になった。
レピアから順番にルーレットを回し、コマを進める。
「メイドに抜擢された‥‥大きなお屋敷のお抱えメイドになる」
そのコマまでレピアが進めると、ぱっ、とレピアの服が替わる。
「凄いわね、これ」
「でしょー! ばっちり衣装まで楽しめちゃう作りだから」
鼻歌交じりに冥夜はルーレットを回す。
すると冥夜は今までの鼻歌交じりの気分は何処へ行ったのか、その数とコマを見比べてがっくりと項垂れた。
「‥‥あー‥‥なんでも屋家業を開始。大繁盛で大儲け」
「一気に大金持ちですぅー」
ぱちぱちと手を叩くチェリー。
しかし本人は浮かない顔をしている。
「だって、現実でも何でも屋なのにー」
「これからどうなるかは分からないわよ? さ、チェリー」
「はぁーい」
チェリーが軽くルーレットを回すと、冥夜が笑い出した。
「チェリー‥‥アンタらしい‥‥」
ほえぇ?、とチェリーが小首を傾げながら進める。
「えーと、地底人とトモダチになる。姫だ、と祭り上げられ地底国へ連れ去られそうになったところを助けられて一件落着」
言った途端、チェリーの服がドレスに替わる。
「わっ。ドレスです、ドレスです」
しかしすぐにそれは元の服装に替わる。
その変身の早さに、ドレスを着れて一瞬はしゃいだチェリーは項垂れる。
「はぅ、もっとお姫様のままが良かったです‥‥」
「冥夜でしょう、このコマ考えたの」
レピアに言われ冥夜は、あはははー、と笑った。
「冥夜ちゃん版人生ゲームだもん」
えへっ、と舌を出して冥夜は笑いレピアに先に進めるように告げる。
レピアは様々な衣装に身を包み、メイドから踊り子、一国の女王、騎士へと変わっていく。
冥夜も何でも屋から始まり、バーテン、騎士、氷付けで休んでみたりと忙しい。
チェリーが一番少なく、姫、メイドと無難な人生を歩んでいた。
「さぁ、終わりまでもう少しね。良い数が出るかしら」
レピアが狙うは今居るコマから3マスめ。
好きな人と結婚出来て子供が生まれるというコマだ。
誰としようかしら、と思いながらレピアはルーレットを回す。
すると狙っていた数が出た。
「‥‥あ」
そう声を上げたのはレピアだけではなく、冥夜とチェリーもだった。
少しの沈黙が降りる。
「どちらも同じ位好きなんだけれど‥‥」
レピアは冥夜とチェリーを見る。
二人とも、ドッチを選ぶの?、という表情でレピアを見つめていた。
その表情を見ていたら、たかがゲーム如きでこんな表情をさせてしまっているのが可哀想になってくる。
しかしゲームはゲームだ。
そうは思っても二人の表情が浮かんできて選ぶ事は出来ない。
途中でやめてしまっても二人は怒らないだろうか。
そんな考えが浮かぶ。
ゲームをしていて哀しくなる位だったら、そのゲームはやめてしまえばいい。
「ねぇ、二人とも。色々と服が替わってとっても楽しかったわ。でも‥‥哀しくなる位ならやめてしまいましょう。もっと楽しい事が私達にはあるでしょう?」
「レピア‥‥楽しかった?」
おずおずと冥夜が尋ねる。
「えぇ、もちろん。でもね、二人が私を訪ねて遊びに来てくれた事の方がもっと嬉しかったけれど」
ね、とレピアは二人に微笑む。
まだ夜明けまでには時間があった。
二人と楽しい時間を過ごすのには十分な時間だ。
「今年も一緒に色々な冒険に出かけましょうね。そしてたくさん一緒に踊りを踊るの」
「うん」
「はいですぅ」
二人の顔に笑顔が戻る。
レピアはそれを嬉しそうに眺め、月の見守る中二人に柔らかなキスを贈った。
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┏┫■■■■■■■■■登場人物表■■■■■■■■■┣┓
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┗━┛★あけましておめでとうPCパーティノベル★┗━┛
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢】
●1926/レピア・浮桜/女/23歳
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■ ライター通信 ■
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コンニチハ、夕凪沙久夜です。
遅くなってしまいましたが、お正月のノベルをお届け致します。
当方のNPCである冥夜とチェリーの召還ありがとうございました。
楽しんで頂けましたでしょうか?
また機会がありましたらよろしくお願いいたします。
アリガトウございました!
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