<PCクエストノベル(1人)>
堕ちた天空・前
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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】
【2155 / ルーン・ルン / ピルグリム・スティグマータ】
【助力探求者】
なし
【その他登場人物】
なし
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■ 都市の残骸 ■■
ルーン:「変わらないネぇ、人の性は」
夕陽が湖の湖面に映る頃合──其の湖の真ん中、落ちた空中都市と一般に呼ばれる遺跡の中を、一人の男が歩いていた。水の所為かしっとりと濡れた壁に手を付きながら、ゆっくりと、其れでも歩みを止める事は無く。男の名前は──ルーン・ルン。
落ちた遺跡の中は、尋常では無いほどの妖気が漂っていた。だがルーンは一向に気にしない。する筈が無かった。そう、彼には妖気すらも関係が無いのだから。望んでそうなった訳では無い、けれど。
ルーンの目的は、「何か」を手に入れる事だった。其れが何であるのかは、誰も知ろう筈が無い。だけどルーンは其れを欲していた。或いは「見たい」、「欲しい」という好奇心? ──否。其れは純粋な物欲だ。性では無い、無いが。
ルーン:「……不穏だねぇ……」
不意に足を止め、くつ、と喉奥でルーンは笑う。
自分を中心に、自分を目当てに集まってくる無数の妖気。其れを肌で感じ取りながらも、ルーンは怯えるどころか笑ってそう言った。何故ならば──妖気達は、或る一定の距離から近付こうとはしなかったからだ。其れはルーンが人とは相容れぬ存在であるからか。其れとも、彼の中に満ちる「何か」がそうさせているのか。望まぬとも、彼はそうであった。
言うなれば──高い知能で言語を解する妖。
ルーン:「だが──人とは性がチガウ」
癖の在る喋り方。其れは妖気に呼び掛けているのか、其れとも自分自身に言い聞かせているのか。空気は相変わらず冷たく重く、水気を含んで身体に絡まり付いて来る。酷く息苦しい。重たげに視線を滑らせながら、ふとルーンは気付く。無数の妖気の中、より一層巨大な妖気を隠さず近付いてくる「何か」に。
待ち望んだ相手。口端がにやりと吊り上がる。態々湖の真ん中まで出向いた甲斐が在ると言うもの──そんな事を思いながら、ルーンはゆっくりと髪をかきあげる。湿気を含んで艶めいた髪は、指には少しだけ重い。
巨大な妖気は、迷う事無く自分を目指して進んで来ていた。自分は招かれざる客なのか、其れとも。
自分の目の前に滑り出た妖気を見上げ──ルーンは少しだけ、微笑んだ。
■ 再会 ■■
妖気:「──何を、しに?」
現れた妖気の主は、低く聞き取り難い声で呟いた。
解っているくせに──くつくつと相変わらず喉奥で笑いを噛み殺しながら、ルーンは改めて妖気を見上げた。見ようと思えば、朱色の斑の水虎にも見える、其れ。
ルーン:「何をしに──とは、御挨拶な」
道化のような口振りで、ルーンは言った。ひらりと手を翳し、其れをすいと下ろして優雅に礼を取る。其れは丸で貴婦人のような──礼を尽くした其の姿。
落ちかかる髪をばさりと払い除けながら、ルーンは口端に笑みを刻んだ。にや、と、まるで何かを見定めるような、面白がるような。
ルーン:「久しいネ……ガルゥ」
Galuh(ガルゥ)。愛しさと親しみを丁寧に込めて、酷くゆっくりと発音した。舌に乗せられた言葉は、絡み付くように妖気に突き刺さる。ゆらゆらと定まらない形で水虎の態を取っていた妖気は、其の言葉を聞いて又ゆらり、と姿を変えた。暈かされた人の形──其れは、ルーンが名を呼んだ姿なのか。
ガルゥ:「…………も、御久しい」
妖気──ガルゥはルーンの異名を口にした。が、其れは風に攫われ届かなかった。名が呼ばれるのを拒否したのか、其れとも風が悪戯に攫ったのか。遠く古い昔に捨てて来た名前。聞こえたのか聞こえていなかったのか、其れでもルーンは其の笑みを崩す事は無く。
慣れ合いの無い、古き友との再会。
脈々と続いて来た時の中の果てで──其れは、成立した。
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■ ライターより ■■
今日和、硝子屋歪で御座います。(礼
今回は御発注有難う御座いました!何時も有難う御座いますっ。
前編・後編に別れていると言う事で、後編に続けられるよう少し考え乍ら書き上げました。
後編ではもう少しガルゥさんとの絡みも強くなれば良いな…とか…(希望
楽しみにして頂ければ幸いです。
其れでは。
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