<PCクエストノベル(1人)>


初めまして、幻想の国〜アクアーネ村〜

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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】

【2593 / ミルフィーユ・キャンディ / ジュエルマジシャン】

【助力探求者】
なし

【その他登場人物】
街の住人

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☆序章

 聖獣界ソーン。36の聖獣の加護を受け、色々な世界の者たちが夢と現(うつつ)の狭間に見、そして訪れることのできる国。
 守護聖獣が一、パピヨンに誘われ、今日もまた一人の訪問者がこの国への門を開く。


☆本章
 〜目を覚ませば、そこは夢の国だった〜

 穏やかな陽の光が降り注ぐ昼下がり。ソーンの中心都市・王都エルザードの南西にある街、アクアーネ。
水の都と称されるこの街を見渡せる小高い丘で物語は始まる。

ミルフィーユ:「……う〜ん、よく寝たでち♪」

 華やかな装飾を施された絨毯を思わせる花畑の一画がかさかさと揺れる。
大きな伸びをし、ひょこりと花の中から顔を覗かせたのは1人のシフールだった。
 名前はミルフィーユ・キャンディ。

ミルフィーユ:「あれ? ここはどこでちか?」

 きょろきょろと辺りを見回す。確か、彼女が昼寝をしようともぐりこんだ花畑の周りは確か、石畳とレンガばかりだったはず。
 しかし、いま彼女の眼前に広がっていたのは見慣れたランの国の風景とはうって変わった、豊かな自然とそよそよと風に揺られる一面の草花だった。
 そして……

ミルフィーユ:「あ! 街でち」

 眼下に広がる小さな村。美しいレンガの町並みを縫うように張り巡らされた水路、
 その水路を滑るように行き来する小さな何か。
 小さくとも、活気にあふれた街だということが遠くからでも分かる、そんな街だった。
 その風景は見慣れぬ世界への畏怖以上に彼女の好奇心を掻きたてた。

ミルフィーユ:「行ってみるでち」

 エメラルドグリーンの蝶のような羽根を広げる。花畑を撫でる風を受け、ふわりと中に舞い上がり、彼女は街のほうへと飛んで行った。


 〜初めまして、ソーン〜
 
 訪れたその街は主要な道の全てが運河で構成された街だった。
人々は交通手段として、中には船に商品を積み込み、窓越しに売る船もある。
水と共に生きる人々の生活の風景がそこにあった。
 少し、羽を休めようとミルフィーユは水路を行くゴンドラの一つの舳先に降り立つ。

ミルフィーユ:「こんにちはでち。ちょっと休ませてくださいでち」
船頭:「ああ、構わないよ。冒険者かい?」
ミルフィーユ:「ジュエルマジシャンでち。おじさん、この街はなんていう街でちか?」
船頭:「ここはアクアーネ村。ソーンの王都、エルザードへの中継地点さ。ま、そのほかにも『水の都』って言われて観光地としても有名だけどな」
ミルフィーユ:「アクアーネでちか。河とおうちが一緒にあって、きれいな街でちね」
船頭:「ああ、皆そう言ってくれるよ。そして、そう言ってくれると街の住人としちゃ嬉しい限りだねぇ。街にいる間、たっぷり楽しんでいってくれ。ほら、あそこを見てごらん」

 船頭の指す先を見ると、町並みの合間に小さな広場が見える。
 そこから聞こえてくるにぎやかな声。

ミルフィーユ:「大道芸でちね。おもしろそうでち♪ ありがとう、おじさん」
船頭:「ああ、いい旅を。お嬢ちゃん」

 そこは小さな噴水が中心に配置された小さな広場だった。
 噴水の周りで、何人かが立ち、各々道具を手にして、道行く人々に自らの芸を披露している。

ミルフィーユ:「面白そうでち、ミルもあそこに参加するでち」

 楽しいことだと思えばすぐに行動に移すのが彼女ら、シフールの特性らしい。
 大道芸人たちの間に置かれた、小さな花売りのワゴンを見つけ、飛んでいく。

ミルフィーユ:「さぁさ、見てください、寄ってくださいでち!」

 小さな身体一杯で声を張り上げ、観客の注意を引く。
 そして、ミルフィーユは胸に下げた大きなエメラルドを手にする。

ミルフィーユ:「お花さんたちが踊りますでち」

 エメラルドを握り締め、心の中で宝石へ、そしてそれを介して彼女の声に耳を傾けた花の精霊達に願う。
 花の精霊達は彼女の願いを聞き、はじめはそよそよと風に揺られるように、そして次第にリズムを取って動き出す。
 小さな歓声、そして踊り始めた花にあわせ、居合わせた吟遊詩人が手にしていた竪琴で音楽を奏ではじめる。
 楽しいメロディが次第にその場にいた者達の心を絡めとり、音楽の輪が広がっていく。
 ミルフィーユはしばし、時が経つのも忘れ小さなカーニバルを満喫したのだった。


 〜遥か西方に陽は沈み〜

ミルフィーユ:「はぁ〜、疲れたけど、楽しかったでち♪」

 ひとしきり歌って、踊って楽しんだミルフィーユは、河畔に軒を出していたカフェへ足を運んだ。
 シフールにとって人間サイズの椅子は到底大きすぎるので、テーブルの上に座らせてもらうことにした。
 川面を眺めながら、シフール用の小さなティーカップを手に取る。ほのかに花の香りの漂うジャムを入れたロシアンティーと、ロシアンティーに入れられた物と同じ香りのする、淡い赤色をしたジャム、それにクロテッドクリームが添えられたスコーン。先程までのにぎやかさとうって変わった静かな時間が流れていく。
 スコーンにジャムを塗り、クローテッドクリームをのせて、パクリ、と口へ。

ミルフィーユ:「花の蜜の味がするでち〜」

 甘すぎないジャムが紅茶の味を引き立てる。ほんわかとした花の香りに包まれ、幸せを胸いっぱいに感じていたミルフィーユは、ふと目の前を横切った一団に目を留めた。
 
 ウサギをかたどった衣装や、カラフルな布で飾られた衣装にを包み、各々カラフルなバスケットをもっていたり……小さなパレードのようだった。
 その一画、たくさんのカサブランカを籠に入れたものを積み込んだ荷馬車をじっと彼女は見つめる。

ミルフィーユ:「大きなお花でち。あれなら寝心地が良さそうでちね」

 「今日のベッドはあそこでち」そう言って彼女は懐から数枚銀貨を出してテーブルに置く。先ほどの大道芸で手に入ったおひねりの一部だ。
 羽を羽ばたかせ、花かごにたどり着いた彼女は一番大きなカサブランカに潜り込む。

ミルフィーユ:「ふかふかしていい気持ちでち。……おやすみなさいでち」

 静かに目を閉じる。
 程なく、すやすやという彼女の寝息をたてはじめる。
 彼女のソーン訪問の1日目はこうして幕を閉じたのである。

To Be Continued