<PCクエストノベル(1人)>


あの人を探して〜戦乙女の旅団〜

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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】
【2517 / ソル・K・レオンハート(そる・こう・れおんはーと) / 元殺し屋】
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●序章
 聖獣界ソーン。
 数多の世界から様々な人達が集う世界。それぞれの世界からもたらされた多種多様な文化技術が幾つも入り混じり、ある種独特な世界観を形成している。
 そして、この世界を特徴として上げられるのが、36の聖獣によって守護された世界であるという事。
 幾つもの世界を放浪し、この世界へと辿り着いた少年は、今度こそはとの決意を胸に世界を旅していく。
 とある事件で失ってしまった大切は人を探し出すために――――。

ソル:「‥‥行くか」

 肩に乗る鷹に似た火の精霊獣――『朱雀』に小さく語りかける。軽く鳴き声が返るのを、少年は微かに笑む事で応えた。
 人にしては整いすぎるその容姿。左右に違う色を持つオッドアイは、少年にとって大切な存在の証だ。
 その情報を求めて色々とこの世界を彷徨っているうちに、とある噂を聞くことが出来た。
 それが『戦乙女の旅団』。困った事情が出来た時、この旅団に会えばなんとかなるという評判だ。
 このまま当てもなく探すよりは、なんとかなるかもしれない。

ソル:「今度こそ‥‥」

 大切な人を今度こそ。
 そう固く胸に誓い、少年はキャラバンへと向かうのだった。


●第一章〜旅団〜
 その場所は、かなりの人で賑わっていた。
 おそらく噂を聞きつけた人々なのだろう。どこか切羽詰まった表情の者から、悩みが取れたすっきりした顔で笑っている者まで、様々にいる。
 少年もまた、近くにいるキャラバンの者達に話を聞いてみた。

ソル:「‥‥すまないが‥‥こういう人を知らないか?」

 そう言って、彼の探す者の特徴を説明する。
 黒髪に小麦色の肌。右目が金で左目が銀というオッドアイ。
 そして、その左目は殆ど視力がないこと。
 が。

女性A:「あら、可愛い坊やね。ふふ、人捜し?」
女性B:「ねえねえ、その人って貴方の大切な人? ちょっとお姉さん達と遊ばない?」
女性A:「こーら、そんなにからかわないの」
ソル:「‥‥あ、あの‥‥」

 見た目の美しさに、キャラバンの女性達はみな、どこか浮き足だっていた。中には明らかな誘惑をしかける者もいて、さすがのソルも顔を赤らめてしまうようだ。
 きゃあきゃあとかしましい喧噪を抜け、ふうと一息つく。
 あまり感情を表に出すのが苦手な上、口下手なことからああいうふうに騒がれるのが苦手だった。
 好意を持たれる事は素直に嬉しい。が、そこはまだ一四歳の少年、照れも含めてどう対処していいか解らなかった。

ソル:「ん?」

 心配そうに覗き込んでくる『朱雀』。
 そんな自分の相棒相手にソルは、心配するなとでも言うように頭を柔らかく撫でてやる。すると、応えるかのように頬へ擦り寄ってきた。
 そして、もう一度一息をついてから、再び聞き込みへと戻った。

ソル:「あの‥‥半月になると、獣耳と尻尾が出る人なんだが‥‥」
女性C:「うーん、ゴメンね〜そういう人は見掛けなかったな」

 困った表情を浮かべて断る女性。

ソル:「新月の夜は、人の姿をしてないんだが」
男性A:「ボウズ、悪ぃな。生憎、そんなヤツの情報はなかったぜ」
ソル:「そうか‥‥」
男性A:「ま、そうくよくよすんな!」

 落ち込む彼を慰めようとバンバンと力強く背中を叩く男性。

ソル:「すまない、ちょっと聞きたい事が‥‥」
女性D:「あ、ゴメン。今忙しいんだ。後でまた来てくれる?」

 雑用をこなす女性からは、即行で断られ。

ソル:「‥‥はあ、やっぱり無理だったのか、な‥‥」

 大きな溜息。
 それを慰めるように頭を擦り寄せる『朱雀』。
 元気を出せ、そう言っているのだろうが、やはり多少は期待していただけあって、その落胆は大きい。
 確かに藁をも掴む気持ちだったとはいえ、ここまで情報がないとは。

ソル:「やはり、この世界にはいないのかも」


 そうして。
 諦めかけた、その時。

??:「キャ――――ッッ!」

 突如、キャラバンの中から悲鳴が上がった。

●第二章〜戦闘〜
 騒然とするキャラバン内。

ソル:「な、なんだっ?!」

 逃げ惑う者達を掻き分け、突き進むソル。
 その途中、それらの人々の顔を見てふと思った。逃げているのは、どれもお客ばかり。
 肝心のキャラバンの連中の姿はない。
 いったいどこへ‥‥そう考えた矢先、彼の目に飛び込んできたのは、数体のモンスター!

ソル:「なっ!」

 敵意剥き出しの気配。
 思わず立ち止まり、慌てて身構えるソル。
 が、それよりも早くモンスターの動きが早い。凶暴な爪が、勢いよく振り下ろされる。
 駄目か、そう思った次の瞬間。

??:「危ない!」

 突如、目の前に飛び出して来た影。
 それは、先程までキャラバンで商品を売っていた女性。手にしている細身の剣を素早く上げて、爪の勢いを食い止める。

女性:「早く、逃げなさい!」

 どうやらソルのことを一般人だと思っているらしい。
 一瞬、間が遅れたものの、彼自身この程度の相手に遅れをとる実力じゃない。視線を『朱雀』へ向けると、それを理解したように精霊獣が素早く飛び立った。
 驚くモンスターの前に、その視界を隠すかの如く翼を広げる『朱雀』。
 瞬間。
 身をかがめたソルが手にしたのは、腰にぶら下げた二刀のうちの一つ――乱れ刃の陽炎だった。すらりと引き抜いた刃は、光を受けて淡く煌めく。
 そして――一刀の下、モンスターは音もなく薙ぎ払われた。

女性:「‥‥君は」
ソル:「連中はまだいるのか?」

 すっかり戦闘モードへと切り替わった思考のためか、どこか冷めた言葉を返すソル。
 どうやら、女性の方も少年のレベルを見極めるくらいには実力があるらしい。おそらく浮かんだであろう疑問を飲み込んで、すぐに戦闘へと意識を戻す。

女性:「ええ。ここ最近、こういったモンスターが多くてね。多分、キャラバンの中心の方だわ」
ソル:「‥‥了解した。俺も一緒に戦おう」
女性:「助かる!」

 ――ガキンッ!
 刃が交わる音。
 二人の会話中にも襲ってきたモンスターの攻撃を、互いの背後を守るような形で剣で受け止める二人。そのまま視線を交わしただけで、それぞれに剣を振るった。
 ドサリと地面に倒れるモンスター。
 そのまま確認するまでもなく、ソルは素早く駆け出した。その後を女性が追う。

ソル:「いったいこいつらは‥‥」
女性:「さあね。最近、なんだか多いのよ。このキャラバンを狙ったモンスターが」

 二人、走りながら会話を交わす。
 どこか陰謀めいた匂いを感じつつも、今はただモンスターの退治を急ぐだけだ。
 走るソルの肩に『朱雀』が舞い戻る。あたかも、少年の事を心配しているかのようだ。

ソル:「‥‥心配するな」
女性:「どうした?」
ソル:「あ、いや‥‥なんでもない。急ぐぞ」
女性:「ああ」

 思わず言葉を濁したソルだったが、女性はそれ以上気にしなかった。
 そのうちに二人が辿り着いた場所は、キャラバンの中心部。そこでは、何体もの獣型モンスターが所狭しと暴れまくっていた。
 応戦するのは、キャラバンのメンバー。腕に覚えのある者達ばかりからか、お客の方に怪我人は出ていない。
 だが、さすがに相手が多すぎるのか、何人かは傷を負っている姿が見えた。

ソル:「‥‥いくか」

 躊躇することなく戦場へ躍り出た少年。
 それを追う形で女性もまた、戦いの場に赴く。

ソル:「――これ以上、好きにはさせん!」

 一刀両断する勢いのまま、彼は流れるように剣を振るう。時にはかわしきれずに傷を負うものの、怯むことなくモンスターの急所を的確に突いていく。
 やがて。
 最後の一体が倒れるのを、ソルは血に濡れた剣を払いながら見送った。


●第三章〜情報〜
 戦闘が終了し、キャラバンのメンバーによる宴が始まった。
 何故か、その中に引き込まれるようにしてソルの姿もある。自分達を手伝ってくれた少年を、ささやかに歓迎するつもりのようだ。
 妙齢の女性の多いこのキャラバンで、巷でいう美少年の類に入るソルは、彼女達の格好の餌食だ。
 やれ、コレを食えだの、どこから来たのだの、これからどうするとか、このまま一緒にといった勧誘も含めて、すっかり玩具状態だった。
 振る舞われた料理は美味しかったが、揉みくちゃにされた状態はさすがに辟易した。
 頃合いを見計らい、なんとか抜け出したソル。

ソル:「‥‥ふう。さすがに、キツかったな‥‥」

 モンスターと戦うより、よっぽど疲労する。
 ふと見上げると、すっかり日は落ちて綺麗な星空が広がっていた。その荘厳さにしばし見とれるソル。
 不意に感じた気配。
 振り向くと先程一緒に戦った女性がそこにいた。

女性:「今日は助かったわ。ありがとう」
ソル:「いや‥‥」
女性:「そういえば他の人に聞いたけど、人を探してるんだって?」
ソル:「ああ。俺の‥‥大切な人だ」

 告げた顔があまりにも真剣で、女性は茶化すのも忘れて見入ってしまう。
 しばらくその横顔を見つめていたが、すぐに気を取り直して彼女はとある書類を差し出す。
 それを見て、ふと首を傾げるソル。
 対して、彼女はにっこりと笑みを浮かべる。

女性:「貴方が探してる人じゃないかもしれないけど、貴方が言ってた特徴の種族なら解るわ。私達は森の守護者って呼んでるけどね」
ソル:「‥‥守護者?」
女性:「ええ。獣に変わる人々の総称ね」

 そこまで聞いた時、ソルの目の色が変わる。

ソル:「そ、その人達はどこに!?」
女性:「ここに詳しく載ってるわ。後は‥‥貴方が調べてみなさい」

 殆ど奪うようにその書類を握りしめる。
 そこに書かれていたのは、森の守護者と呼ばれる種族が住むとされる場所までの明記。そして、最近彼らを指導する立場の者が現れ始めたという事。
 その者は――黒豹の姿で駆け巡った姿を目撃されている。

ソル:「‥‥まさか」

 思わず呟いた声。
 脳裏に浮かぶのは、かつて自分を助けてくれた人の姿。
 もし彼がそうならば――。

女性:「どうしたの?」
ソル:「あ、あの‥‥ありがとう、ございます」

 丁寧にお礼を言い、少年はすぐにその場を後にする。女性が呼び止めるのも構わず、その頭の中にはすでに大切な人の事でいっぱいだった。
 今度こそ。
 それだけを心に、彼は走り出す。
 そこに先程までの戦闘での冷静さはなく――子供の懸命さだけで。

 ソルは、ただ、駆けていく――――。


【END】


●ライター通信
 初めまして、葉月十一です。
 この度は、発注していただきありがとうございました。
 そして、遅れてしまい申し訳ありません。
 今回、朱雀とのやりとりをどういう風にすればいいのかという点で悩みましたので、ああいった形に仕上げてみましたが、如何だったでしょうか? コウさんの性格を掴むのに少々時間がかかってしまいました。
 ご意見、ご感想等ありましたら、テラコンの方よりお願いいたします。
 それではまた、ご縁がありましたらよろしくお願いします。