<PCクエストノベル(2人)>
アクアーネ村〜遺跡調査と観光と
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【冒険者一覧】 整理番号 / 名前 / クラス
2241 / ウィング=バードヒル / 空の人
2576 / 水無月 まりん / 水中仕事人
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アクアーネ村は、エルザードと他地域との小さな中継地点でもあり、又同時に、有名な観光地でもあった。
水によって生かされる『水の都』――村中に張り巡らされた運河にゴンドラの揺れる光景は、この村特有のものでもある。
その、アクアーネ村にはここ数日、いつも以上に冒険者たちが集っていた。
原因は、つい最近見つかった遺跡である。もともとこの村の歴史は古く、時折こういった遺跡が見つかるのだ。
ウィング「どんな遺跡なんだろうね〜」
まりん「ちょっと楽しみだよね!」
にこにことお互い明るい笑顔で笑い合うのはウィング=バードヒルと水無月まりん。
かたや空に生きる者であり、かたや海に生きる者。
生きる場所が違っていても――いや、違うからこそかもしれない――二人は昔から不思議と気が合い、ずっと親友という関係を続けていた。
今回の遺跡調査と探索も、ちょっとしたおしゃべりの中から発展した話題だ。
まりん「水の匂いが気持ち良い村だなあ。ねえ、ねえ。せっかくだし、帰りはちょっと観光して行こうよ」
ウィング「うん、観光も楽しそう! じゃあ、調査が終わったらちょっとここで遊んで行こうね」
これから洞窟に入るなんて雰囲気は微塵もなく、まるで年頃の女の子同士がきゃいきゃいとはしゃいでいるような賑やかさで、二人は洞窟の入口へと向かう。
当然ながら、洞窟の内部は暗い。覗きこんでみても、数メートルも先はもう暗闇で様子がわからなくなっていた。
しかし、好奇心旺盛な二人には、暗闇など障害にもならない。
ウィングはこれから始まる遺跡探検にうきうきと。そしてまりんは、遺跡もだが、この村特有の美しい水にも心を躍らせながら。
二人は、洞窟の中へと一歩を踏み出した。
■ □ ■
灯かりといえるのは、持ちこんできたランプの淡い光だけだった。
最初こそ目が慣れずに苦労もしたが、数分も歩けば目が慣れはじめ、暗い光源でもある程度まわりを見渡せるようになる。
遺跡――と言っても、入口付近は自然の洞窟そのものである。長い年月をかけてできあがったのだろう鍾乳石の下を先へ先へと進んで行く。
ウィング「聞いた話だと、もうそろそろのはずなんだけど……」
自然洞窟の奥に、遺跡の入口が隠れている――長い年月の間に埋もれてしまったのだろう――という話なのだ、ここの洞窟は。
まりん「あっ、あれじゃない!?」
まりんが指差した先には、白い石造りの扉らしき物がある。
しかしその周囲には、泳ぐには少々広すぎるだろう湖があった。この自然窟の広さは、頑張ってギリギリ三人が通れるところと言うところだろか。
おかげで小船を入れるにも一苦労。それゆえ、まだ奥の方はほとんど調査されていないのだ。
だが、まりんとウィングにはそれはなんの障害にもならなかった。幸いにも湖がある空間の天井はそれなりに高い。
バサリ、と。
ウィングが腕の翼を羽ばたかせ、湖面の上をすべるようにして飛んで行く。
一方、まりん。
まりんの普段の外見は人間とまったく変わらないが、実は彼女は人間ではなく海人と呼ばれる種族である。
それゆえ水中でも呼吸ができるし、魚や海豚、鮫などの水中の生き物とも喋れるのだ。
バシャン、と水音を立て、まりんは水の中へと身を踊らせた。
人間と変わらぬものであった姿が――その耳が、人のものから魚に近いものへと変化する。
そうして数分後には、二人は難なく扉のところへと辿り着いていた。
まりん「さー、ここからが本番だよ」
ウィング「楽しみだねー」
遺跡を前にしてこのお呑気さ。
マイペースに笑みを浮かべた二人は、そのまま、扉へと手をかける。
細身なウィングと小柄なまりん、二人の腕力では少々辛く見えた大きな扉は、予想に反してあっさりと開いてしまった。
そこには、美しい白い石でできた、明らかに人工物である通路が伸びていた。
二人は頷き合って、トン、と一歩足を踏み出した。
が。
歩きはじめてから数歩もいかぬうちに、飛び出してきた槍に、二人は足を止められた。
咄嗟のこととはいえ、さすがにモロに直撃を受けるほど鈍くはない。
まりん「侵入者撃退用ってヤツ?」
ウィング「罠があるんだから、たぶんそうだよね」
襲い来る罠の数々を時に反射神経で、時に魔法で。避わし続けて先に進んだ二人は、少々広めの小部屋に辿り着いたところでふうと小さく息を吐いた。
ここから先は、一本道ではないらしい。
ウィング「……ここから、どうしようか?」
もとより目的は調査であるし、無理に先に進む必要はない。
だがある程度の準備はしてあったから、先に進めないこともない。
ただ、予想以上に罠が多くて、少々疲労してしまったというだけで……。
まりん「無理して怪我しちゃったら元も子もないし、今日は帰ろっか」
言いつつ、実はまりん、すでに一回怪我をしてたりもする。まあ、怪我自体はすでに魔法で治したが。
決して腕が悪いというわけではないのだが、何故だか高確率で怪我をしてしまうのだ、まりんは。
ウィング「ちょっと残念だけど、しかたがないよね」
まりん「また来る機会はあるだろーし、ちょっとずつ先に進めばいいよ」
二人は息もピッタリににこりとほとんど同じタイミングで口を開いて、そのあまりのタイミングの良さに笑い声を零した。
そうして二人は、少々後ろ髪を引かれつつも、遺跡をあとにしたのであった。
と。
ここで終わらないのがこの少女たちの元気なところである。
他に人がいたら「キミたち、疲れてたんじゃなかったのかい?」とつっこみたくなることは間違いないだろう。
二人は、洞窟を出てきたその足で、そのまま村の観光へと向かったのだ。
来る時は通りすぎるだけだった村の観光名所のあちこちを、少女らしいはしゃぎっぷりで歩きまわる。
まりん「水の香りがすごく気持ち良い〜」
ウィング「あ、観光ゴンドラだって。乗ってみようよ!」
お互いマイペースなせいか、ハタで聞いていると微妙に噛み合っていないようにも聞こえるのだが、当人たちはまったく気にしていなかった。
というより、二人にとってはこれで噛み合っている状態なのだ。
運河を辿って村の名所を案内してくれるらしいそのゴンドラに、二人は意気揚々と乗りこんで。
キレイな噴水を見物し、お土産品もきっちり買って。
二人がようやく一息ついたのは、陽がとっぷりと暮れてからのことだった。
まりん「なんか、いっぱい買っちゃったね」
ウィング「うん。すごく楽しかったね」
洞窟に入る前に確保しておいた宿の一室で、二人は今日一日のことを楽しく話し、笑いあう。
ウィング「遺跡の奥まで行けなかったのは残念だったけど」
最初っから奥の奥まで行けるとは思っていなかったけれど、頭でわかっていても、やっぱりちょっと残念に思ってしまうのだ。
言うほど残念そうではないウィングの言葉に、だがまりんは至極当然のことのように笑顔で告げた。
まりん「また今度、一緒にこよっか?」
告げられた言葉を聞いてウィングは、とびっきりの笑顔で頷いて答えたのだった。
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