<PCクエストノベル(1人)>


堕ちた天空・後

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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】

【2155 / ルーン・ルン / ピルグリム・スティグマータ】

【助力探求者】
なし

【その他登場人物】
なし
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■ 夢 ■■

ガルゥが身を震わせると、水面の様子は一変した。此処ではない場所・アセシナートから、落日の堕天都市へと揺らぐ水面が其の姿を変える。
其の様を見ながら、ふとルーン・ルンは目を細めた。

「私」のよう────……。

一瞬だけ、微かに過ぎった其の想い。其れを緩やかに風に乗せて散らしながら、否定的に首を振った。此れは在りし日の堕天都市。「私」では──無い。

ルーン:「確かにノスタルジックかもネェ」

笑みを其の頬にのぼらせ、ルーンは悪戯混じりにそう呟いた。大仰な道化のような身振りで、ルーンはすらすらと言葉を続ける。まるで何かの口上のように。エンターテイナー? 否。此れは唯の道化の気の迷い。そう概念を定義付けることで、ルーンは道化で居られるのだ。

ルーン:「血は命なれば……かイ?ならばオレは……その血ヲ流し続けてモ夢を観よウ」

皮肉が見え隠れする言葉に、ガルゥは僅かに其の首を伸ばした。声ともつかない声の侭、ゆらゆらと揺らめく妖気の侭──ガルゥはルーンに問い掛ける。

ガルゥ:「……未だ夢を見る、と?」

其の問いには、にやりと口端を吊り上げただけで。答える素振りも見せず、ルーンは唯ひらりひらりと両腕を舞わせるだけだ。其れは在りし日、聖人であった事を僅かに主張しているようにも思えて。だけれど──其処まで考えかけて、ガルゥは思考を止めた。構わぬ。過去が如何在れ、今が変わる事は無いのだから。

ルーン:「全ての者に魅せてあゲルヨ……」

何を? 夢を。そう考えるのは至極当然。
微笑み続ける聖人に、ガルゥは何も言えなかった。唯、黙って彼を見詰めることのみだった。



■ 眠る都市の結晶 ■■

ルーン:「ソウダ?此処に眠るモノ……」

ふと、ルーンは思い出したように呟く。空に在って栄華と威を誇った都市、其処に眠るもの。其の言葉を口に出した途端、消えていた殺気が場に満ちてくる。大人しく二人を取り囲むだけだった妖気達が、個々に殺気を漲(みなぎ)らせて来る。其れは最早、宝を護るものの使命ですら無く、醜いまでの執念。

ルーン:「おやおや、物騒だネェ」

くつくつと喉奥で笑う其の様は、まるで何処吹く風と言っているような。ルーンは其の場から動かぬガルゥの傍をするりとすり抜け、部屋の奥の其の又小部屋へと向かって歩き出した。自らの力を過信し、其れ故天空から堕ちた都市の遺したもの。興味が湧かないわけ、無いだロウ?

ルーン:「──……貰ってくヨ」

ばん、と扉を開け放つ。扉を開けた途端に轟と吼え出した妖気達の存在は、気にすら留めない。其れよりもルーンの興味を掻き立てるのは、目の前に広がる光景だ。其の様子を眺め、ルーンはぺろ、と乾いた唇を舐めた。書物に在った通り──そう思い、一歩、又一歩と小部屋の中心に向かって歩を進める。

ガルゥ:「……其れに、興味が御在りか」
ルーン:「ウン。だってほら、綺麗だロ?」

背後から掛けられた声に、瞳を細めてルーンは言った。

部屋の中心に据えられていたのは、エメラルドグリーンに光り輝く一粒の宝石だった。
カボション・カットのつるりとした其れは、部屋の中央の台座の上、自ら光を発しながらふわふわと中空に漂っていた。
書物に載っていたもの。其れは、堕天都市を空に留まらせていた宝石。古代人は此れに魔力を集め、核(コア)にして天空の都市の動力源にしていたのだと言う。此れが暴走した結果が──今の堕天都市だ。

ルーン:「悲劇の宝石……美しいネ」

部屋の中央、宝石の傍へと歩み寄って、ルーンは其れに手を伸ばした。今はもう光り輝く力を残すのみで、都市の堕天と共に其の魔力を放出してしまった宝石。学者達は此れを悲劇の宝石と呼んだ。美しい呼称を付けるものだと、ルーンはくつ、と笑う。
掌で包み込めば、僅かに暖かい其れはルーンの手にすっぽりと収まった。

途端、妖気達がざわめき始める。宝を持ち出そうとする盗人を、宝の防人が見逃す筈は無かった。啼きながらルーンへと飛び掛かろうとする妖気達を諫めたのは、他でもないガルゥだった。
ガルゥは妖気達を制しながら、静かに変わらぬ口調で口を開く。

ガルゥ:「其れは我儘の証。ルーンと私の邂逅の証。……持って行け」

其の言葉に少しだけ笑って、ルーンはぎゅう、と宝石を握り締めた。
そうして嘗ての友に向かって──心から、呟いた。

ルーン:「────有難ウ、ガルゥ」



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■ ライターより ■■

今日和、硝子屋歪で御座います。(礼
御発注有難う御座いますっ。

前編・幕間・後編と御付き合い頂きまして、有難う御座いました!
三本通しての出来具合は如何でしたでしょうか?
少しでも御満足頂ければ、そして少しでも御楽しみ頂ければ、幸いに御座います。

其れでは。