<PCクエストノベル(3人)>
『焦がれる闇』
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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】
【1953 / オーマ・シュヴァルツ / 医者兼ヴァンサー(ガンナー)腹黒副業有り 】
【 2085 / ルイ / ソイルマスター&腹黒同盟ナンバー3】
【 2524 / アルミア・エルミナ―ル / ゴーストナイト 】
【その他登場人物】
【NPC / 不死の王レイド】
【NPC / グエンダル】
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『焦がれる闇』
それはとある世界の遠い昔の話。
その世界に最初にあったのは闇でした。
闇は、闇。
真っ暗。
形も無く、
また温度も無く、
そして名前も無く。
しかしある時、神、と人が呼ぶ者が言いました。光よ、あれ、と。
闇だけの世界に初めて光が生まれました。神に呼ばれて。
それから神はたくさんのモノの名前を呼びました。
そうすればたくさんのモノが生まれました。
しかし闇だけは名前を呼んでもらえませんでした。
だから闇は名前も無く、そして形も無いのです。
――――――――――――――――――
【預言者の宣託】
これは地球、という世界で言われていたことだ。
そこにはキリンという首の長い生物が居て、人間という種族はその首が徐々に伸びていって、キリンが環境に合わせて進化していったと思っていた。
しかしそれは違う。
首の短いキリンたちの中にある日突然、首の長いキリンが突然変種として生まれ、それがあっという間に首の短いキリンたちと入れ替わったのだ。
自然淘汰。
弱肉強食。
強ければ生き、弱ければ死ぬ。
それは闇の者にとってはなお更絶対の掟。
ならばこれもまたそれが起こっており、その掟に従うべきなのであろうか?
ウォズと不死の者との具現融合した新たな闇。
その新たな闇がこのソーンを呑み込まんとしている。
闇も、聖獣も、人も、そこに生きるモノたちをも。
そこに何の意味があるというのか?
預言者:「いえ、闇は元に戻ろうとしているのでしょうか? かつてあった古の闇に。そしてソーンはその闇に呑みこまれ、何もかも無かった事に……。それも運命、か。すべては闇から生まれた。それが還るだけの事。しかし、闇よ、忘れるな。決して強いから生きられるのではない。生きる意志が強いから生きられるのだという事を」
テラスに立つ預言者は背後の部屋を振り返った。そこには三枚のカードが並べられたテーブルがあった。
風が吹き込み、そのカードが闇に舞う。
カードの絵柄はキング、ナイト、ウィザード。
預言者の言葉に不吉なモノを感じたと言うのか、闇は風を使役し、夜空を分厚い雲で覆い隠した。
闇は濃度を増し、野鳥たちは奇怪な鳴き声をあげて飛び立っていく。
しかし一体どこへ飛び立とうと言うのか? このソーンを覆い尽くしているのは闇だ。その闇の目の届かぬ場所などは無い。
それあたかも表現するかのように次に上がったのはその野鳥の断末魔の悲鳴であった。
予言者:「古の闇が私を殺しにきたか? おまえに不吉な宣託を告げた私を。よいでしょう。私には見えている。私の役目が。ならばおまえに喰われてやるのも私の運命なのでありましょう」
それは闇。どろりとした粘性を感じさせる闇の中から現れたのは何とも表現し難い外観をした闇。ウォズと不死とが組み合わさった闇。ひとつの古の闇の姿。
かつてすべてのモノは古の闇から生まれた。故にそれは闇へと還り、その姿を保つ。
そして今またひとつのモノが闇へと還った。
――――――――――――――――――
【新たなる闇】
その夜は草原に直に横になって夜空を見上げていた。
とても星が美しい夜だった。耳を澄ませば虫の鳴き声も静かに響き渡っている。
それでも夜の闇がどこかそわそわと落ち着きが無いのはどうしてだろうか?
草原に横になっていた彼女は上半身だけを起こした。
夜風は虚空に舞わせる。彼女の美しい黒髪を。
季節は夏の終わりかけ。秋の始まり。
木々の葉はかすかに色づき、もう直に緑の衣から黄金の衣をその身に纏うのだろう。
夜の空気にもその来たり来る秋の気配がひっそりと漂い始めている。
しかしそれでもまだ夏の終わりかけ。そういう頃の空気はたとえ夜であっても何となく心浮きだつような気配に満ちているのではなかろうか? だが先ほども言ったようにそこにある気配は余所余所しい。まるで不純物でも混じっているかのような。
アルミア:「何をそんなに怯えている、卿は? そんなにも私が怖いか」
まるで子どもを諭すように彼女は呟いた。
彼女の白磁の美貌を縁取るのは周りの闇よりも濃密な闇色の髪。その艶やかな黒髪と白磁の美貌がともすれば彼女自身をとても冷たい人間に見せぬことも無いが、しかし額の上で踊る前髪の下にある黒曜石かのような瞳は優しかった。
かすかに色づいていた葉は風に揺れて、舞い落ちて、彼女の視線の先で流れ飛ぶ。
とくん、と闇が脈打った。
???:「世界が夜に息を潜めるかのように静まり返るのは何も別に闇を嫌うからではありません。遥か昔、この世のモノはすべて闇から生まれた。言ってみれば闇は母親のようなモノ。あなたもまた闇から生まれ、そして闇へと還る命。寧ろあなたは闇の母と言っても良いような存在ですしね。闇は怖れるのではなく、憂い、不安がっているのでしょう」
アルミア:「卿は?」
???:「我はグエンダル。アルミア・エルミナ―ル。あなたを迎えに来ました」
アルミア:「私を迎えに来た? ふん、そう言われて私がのこのこと卿についていくとでも?」
グエンダル:「はい。なぜならあなたは【不死を統べる騎士】であられるのであるから」
アルミアは立ち上がり、風に髪を好きなように遊ばせながら魔斧ゴーストアックスを構えた。
グエンダルは青色の双眸を不敵に細めて笑う。
それに舌打ちするアルミア。
大気が、悲鳴をあげるように揺れた。
大地を蹴って肉薄するアルミア。
突然白昼夢かのように掻き消えて、そして今また突然目の前に現れたアルミアに、しかしグエンダルは驚かない。
その失われぬ余裕にアルミアは戦慄を覚えながらもゴーストアックスを横薙ぎに繰り出す。手加減無しの一撃だ。
グエンダル:「【茨の盾】」
グエンダルは後ろに飛ぶと同時に魔力を開放し、【茨の盾】を召還した。
だがそんな物などはアルミアの魔斧ゴーストアックスの前では紙くずも一緒だ。
呆気なく引き裂かれた【茨の盾】の陰でしかしグエンダルは笑みを消さなかった。
それを見たアルミアの瞳が一瞬大きく見開かれ、その後に口の片端が吊りあがる。
そしてこれまで以上の気がアルミアの華奢な体から放たれた。
アルミア:「命までは取らない。でもその動き、封じさせてもらう」
ゴーストアックスでアルミアは空を薙いだ。転瞬、ゴーストアックスが脈打つ。巻き起こったのは風だ。
とても冷たく死の気配と香りがする風。しかしその風こそが【死の息吹】。ゴーストアックスとアルミアがその身に纏う死霊の怨念を凝縮させて放つ技。その効果は相手の自由を奪い取る。
巻き起こった風の先に居るグエンダル。
【死の息吹】はグエンダルを直撃した。
グエンダル:「なるほど、これがあなたの持つゴーストアックスと死霊の怨念とを凝縮させて生み出す力ですか。さすがにこれは脅威だ。しかし我もまたいささかその技との相性の良さは自負させていただきます」
そう言ったが早いかグエンダルの手に水晶球が現れ、その水晶球にいくつもの異形な影が映りこむ。果たしてその水晶球から抜け出たのは命無き様々な魂であった。
アルミア:「これは、ルイと同じ?」
だがアルミアもその白磁の美貌から余裕は消さなかった。
ゴーストアックスを両手で持って、体の前で構える。
アルミア:「卿が私と同じような能力を持っているのは十二分に理解させてもらった。そして私も卿に言わせてもらおうか。私もまたその系統の技の相性の良さには自信があると」
グエンダルが放った魂たちはしかしアルミアの前に沈黙した。放たれたそれをしかし逆に自分のモノとしたのだ。それが不死の騎士の力だ。
そして彼女は風に額の上でそよぐ前髪を掻きあげながらグエンダルを見据える。
グエンダル:「さすがはゴーストナイト。全ての不死を統べるあなたに今の技はいささか失礼でしたでしょうか?」
アルミア:「失礼と言うのなら、実力の半分も出さずに私に向ってきているこの事が失礼なのでは、グエンダルとやら」
グエンダル:「おや、バレてましたか。これは失礼。ですが我はどうも戦いと言うモノが嫌いでして。平和が好きなのですよ」
アルミア:「その卿がどうして、私に用がある」
グエンダル:「そう。平和に暮したいのはやまやまなのですが、しかしそうも言っていられなくって。あなたの不死を統べるその力がどうしても必要なのですよ。新たなる闇の脅威と戦うためにも。彼女の仇を取るためにも」
アルミア:「新たなる闇の脅威? 彼女の仇?」
グエンダル:「実際に見てもらえれば話は早いですが、どうしますか?」
アルミア:「いいだろう。行こう。卿と共に」
そう言ったアルミアにグエンダルは頷いた。
+++
闇がまだ興奮していた。そこで起こった事に。
その落ち着き無くざわつく闇の中を二人は歩いていた。
アルミア:「血の臭いが闇に充満している」
グエンダル:「ええ。事は終わった後でした。彼がここに辿り着いた時には」
アルミア:「彼?」
グエンダル:「そう。オーマ・シュヴァルツ。今回の戦いであなたと共闘してもらうべき人です」
そしてアルミアは誰かが寝ているベッドの前に案内された。
+++
今から数時間前の事だった、それは。
銀色の獅子が分厚い雲を突き破って天空から舞い降りた。
その光景はあたかも神の降臨する光景かのように見えた。
分厚い雲から大地へと零れ落ちた月明かり、その月の明かりの筋の中を走る銀色の獅子は何よりも神々しく、厳かに見えたのだ。
まるで息を潜めるかのようにしていた闇の感情が爆発した。その銀色の獅子に助けを求めるように。
―――上がった咆哮は何を憐れむか銀色の獅子よ。
月の明かりの筋が細くなっていく。
そして月明かりに斬られた闇が閉じられて、世界は再び闇に覆われた。
世界にある一条の光も無い夜よりも濃密な漆黒の闇の帳から浮き現れ出たのは果たして何なのか?
それは巨大なコウモリの翼を持つ忌まわしきアンデット。澄んだ夜気はあっという間に鼻の曲がるような腐敗臭に汚れた。
森の木々はその腐敗臭にあっという間に腐り果てた。
銀色の獅子が両目を細めたのは果たしてそれに気付いたからだろうか?
その巨大なアンデットが身に纏う気がウォズである事を。いや、待て。気、だけではない。アンデットが纏う鎧自体がウォズ。
腐り果てたアンデットの顔半分を覆う仮面…ウォズもまた銀色の獅子に対して咆哮をあげて、そして腰に下げた鞘から剣を抜いた。両刃の巨大なその剣はおそらくは山さえも斬り裂く。
では、その銀色の獅子は?
アンデットは剣を振り上げて、羽根を羽ばたかせた。
肉薄してくるアンデットを迎え討たんと銀色の獅子も大地を強靭な四肢で蹴って肉薄する。
交差。
奏でられた音色は獅子の爪と剣とがぶつかり合った音。
その余韻が消え去らぬうちに獅子もアンデットも身を翻し、そして再び前に飛ぶ。
突き出された刃の切っ先は紙一重で避けた。
そのまま獅子は翼を羽ばたかせ、空中でバレルロールしながらアンデットへと体当たり、前足の鋭い爪をアンデットの体を覆う鎧に食い込ませた。仮面が…ウォズが悲鳴をあげる。
獅子は咆哮をあげて、鋭い牙でアンデットを穿たんと牙を剥き出しにして顔を近づけるが、だがアンデットの体から伸びた触手が銀色の獅子の体を捕らえた。
異様な臭いは吐瀉物の臭いに似ていた。
銀色の獅子の体からあがる煙。
そしてあっという間に獅子は炎に包まれた。
もがき苦しむ獅子を救ったのはいずこからやってきた命無き様々な魂。
それが獅子を捕らえる触手を滅ぼし、獅子を解き放ったのだ。
炎に包まれながらも銀色の獅子は翼を羽ばたかせて空に舞い上がった。
そして咆哮。
銀色の獅子:「―――――――――――ァァガァッ」
それは空を覆い尽くして雲すべてを吹き飛ばした。
大気をも振動させて、その結果、降るような星々が輝く夜空が現れる。
その夜空を背負い、銀色の獅子はアンデットに向けてソニックウェーブを放った。
グエンダル:「オーマ・シュヴァルツのソニックウェーブにたまらずに退散しましたか。しかしそれで脅威が去った訳では無い。それにウォズと不死の者、その両方が融合した新たな闇相手ではいかにオーマと言えども、てこずるようですね。だがキングと共にナイト、ウィザードが立てば状況は変わる」
グエンダルの視線の先で銀色の獅子は炎に包まれながら大地に堕ちた。
+++
アルミアが案内された部屋にはひとりの大男がベットで横になっていた。
どうやら大怪我をしているようで体に包帯が巻かれているその姿は痛々しかった。
ランプの灯りは男の顔色をいっそう悪く見せたが、しかし目を覚ました彼はそれをアルミアに感じさせぬほどに陽気に微笑んだ。
オーマ:「はん、まさかおまえさん、本当に連れてきちまうとはな。久しぶりだな、アルミア。ちょい驚きだぜ。おまえさんがそいつに連れられてきた事がよ」
アルミア:「オーマ。卿にしては珍しく深手を負わされたようだな」
苦笑混じりに言ったアルミアにベッドの上で身を起こしたオーマも肩を竦めた。
オーマ:「油断したよ。いや、思考が正常に判断していなかったんだ」
自嘲するように言ったオーマにアルミアは眉根を寄せた。
そしてオーマの視線の先にアルミアも視線を向ける。
二人の視線の先でグエンダルはこくりと頷いた。
グエンダル:「アルミアさんに来ていただいたのはこの敵はあなたの力も無ければ倒せないからです」
アルミア:「卿は新たなる闇とかと言っていたな。その敵の事を」
グエンダル:「ええ。敵です。新たな。ウォズと不死の者、それらが具現融合したんですからね。聞いた事はありません、そんなモノは」
アルミア:「ウォズである卿でもか?」
射抜くように鋭い目で見据えるアルミアにグエンダルはわずかに両目を見開き、その後に苦笑した。なるほど、オーマが言っていた事はそういう事か。彼女もまたウォズという存在を知っているのだ。
オーマ:「俺様はここにウォズの気配を感じてやって来た。しかし実際にいたのはウォズとアンデットの融合体だった」
神妙な顔をしてそう言ったオーマはへっと笑った。そして喜劇俳優のように大きく両手を開いて大仰に肩を竦める。
オーマ:「で、この様よ」
アルミア:「禁を破れば良かったのではないのか? そうすれば卿ならば倒せた、違うか? 不殺主義も結構だが、それで自分が死んでしまったら何もならない」
オーマ:「だが逆にそうしていたら魂が傷ついた。それはこの体の傷よりも重症だよ、アルミア」
アルミア:「卿はそれを己の命よりも優先させると? 死んでしまえば、想いは叶わない。想いだけでは何も出来ない。ならば生き抜く事を第一に考えるべきだ」
オーマ:「それで想いをないがしろにするのなら、死んでいるのと同じだ」
擦れ違う想いは視線に反映された。
そしてアルミアはグエンダルに視線を向ける。
アルミア:「しかし有り得ないな。どうしてウォズと不死の魂とが具現融合するのだ。私とてそんなモノは聞いたことも無いよ」
アルミアはウォズであるグエンダルに肩を竦めて見せた。
そして両目を細めてオーマとグエンダルとを見比べる。
アルミア:「だがこの図もまた有り得ない、という事でも無いが不思議な光景ではあるね。ヴァンサーであるオーマとウォズであるグエンダルが一緒に居るなど」
オーマ:「愛があればオールOKさ」
オーマは肩を竦める。
グエンダル:「我はウォズ。しかしウォズはこのソーンにおいてそれぞれの進化を始めた。それは本当に多種様々な進化。そして我はその多様な進化の中からひとつ、人と共に生きるという進化を選んだのです。我は愛していた彼女を」
そう言うグエンダルが見たのは部屋の隅にある描きかけの絵が描かれたキャンパスだった。
オーマ:「おまえさんが好きだったっていう予言者さんかい?」
グエンダルは頷き、そしてぎゅっと拳を握り締めた。
グエンダル:「彼女のためならば同胞殺しも厭わなかった。だけど彼女はそれを我にさせぬために我を封印した。その封印は彼女の死と共に消えて、我はこのように彼女の仇をとるために動いている」
そしてグエンダルはオーマを見る。
オーマはその視線に応えるように肩を竦める。
オーマ:「共闘はできなさそうだな」
アルミア:「卿は私にオーマと共に戦えと言ったな。ならば卿はひとりで戦うつもりか?」
グエンダル:「彼女は予言した。キング、ナイト、ウィザードの三人がこの世界を救うと。だから我はあなた方を引き合わせた。我が人の側にいるのはここまで。後はもう我は今再びウォズに戻る。深い闇の中に。さあ、行きなさい。オーマさん、アルミアさん。敵は預言者の次に天敵であるウィザードを狙うはずです。彼さえ殺れば、もはや彼らを滅ぼせるモノは何もいなくなるのですから」
まるでグエンダルが立つ闇が底無しの沼になったかのように彼の体は闇の中に沈みこみ始めた。
もう肩まで闇に沈んでいるグエンダルにオーマは言う。
オーマ:「待ちな。俺様はどうにも借りってのがたまらなく嫌でね。だから無理やりにでも返させてもらうぜ、おまえさんに」
それに何を想うのか、グエンダルは両目を静かに閉じて、消えた。
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【ウィザード】
ソイルマスター。
それはおそらくはオーマ・シュヴァルツさえも退けた新たな闇にとって天敵となりうる存在。
ルイ:「やれやれ。上手く身を隠していたつもりだったのですが、どうやら見つかってしまったようですね。久方ぶりの隠れん坊はわたくしの負けですか」
慇懃無礼に笑うルイ。
その彼の視線の先にひとりのウォズが居る。
ウォズ。高位なのであろうそれは人型をしていた。美しき女のウォズだ。
ルイ:「ここ最近、このソーンにおいて異様な気配が漂い始めました。それはウォズでありながらウォズではなく、そして不死の魂でありながら不死の魂ではなかった。では、それは何か?」
一定のトーンの透き通った声でそう囁きながらルイは二本の杖を構えた。ソイル、そういう名の魔方陣が描かれる。
その魔方陣から放たれるのは召還された不死の魂。
しかしそれにその女ウォズは動じなかった。
それどころかそれは笑ってさえいる。とても冷たい冷笑を浮かべながら呼吸でもするかのような感覚で彼女は背筋が寒くなるような啜り泣きをしながら向ってくる不死の魂を何と体から出現した闇が具現化した手によって捕らえて、己が体に押し込めるのだ。
最後の不死の魂一体がルイに助けを求めるように手を伸ばしながらしかし闇の手に押さえつけられて取り込まれた。
女ウォズがぺろりと唇を艶かしく淫らに舌で舐めた。
ルイ:「そういう事です。具現融合。本来ならば考えられぬ事ですが、しかしこうして目の前で見せられては信じない訳にもいかない。さて、それでは始めましょうか? あなたが一体何で、何を望み、そしてわたくしをどうして殺そうというのか、それからウォズと不死の魂とが具現融合したあなたをどうしたら倒せるのかの話し合いをね」
涼やかにルイはにこりと微笑み、そしてソイルより聖獣を召還して、それにウォズを襲わせる。
召還した聖獣はフェニックスだ。炎に包まれたそれは甲高い鳴き声を上げながら女ウォズに襲い掛かった。
上空から翼を羽ばたかせて急降下してくるフェニックスは鋭い爪で女ウォズの顔を引き裂かんとする。
しかし女ウォズは無造作に手刀を突き出した。その手刀が貫く、フェニックスを。
ルイ:「なるほど。なかなかの戦闘力です。ですがね、それは聖獣なのですよ。ならばそれで終わろうはずが無い」
肩を竦めるルイ。その言葉を証明するように女ウォズの手刀によって貫かれていたフェニックスを包む炎が今まで以上に燃え盛って、そして転瞬、フェニックスの体が霧散した。火の粉のようなそれがフェニックスとなる。
無数の小さなフェニックスが女ウォズを襲う。
だが女ウォズはそれでも怯まなかった。紫のルージュが塗られた唇が何かを囁く。転瞬、女ウォズの体から放出されたのは膨大なる死の気配…不死の魂であった。
それがフェニックスを捕らえ、フェニックスは不死の魂が囁く呪詛に犯されて、どろりと溶けて崩れ去る。
大地は堕ちてきたフェニックスの残骸に汚染されて、腐り果てた。
ルイ:「厄介な人ですね」
人をくったような笑みを浮かべるが、しかしそのルイの青の瞳には真剣な光が浮かんでいた。
ルイ:「しかしどうしてあなたはわたくしを狙うのですか? 今はまだあなたたちは表立った行動はしていない。わたくし自身もあなた方の事はかすかに感じている程度だった。不思議ですね。ならばぎりぎりまで息を潜めて水面下で行動し、もう事がどうしようもなく手遅れになったところでわたくしを襲うなり、このソーンをどうにかすればよかった。だからほら、この場はわたくしの勝ちだ」
にやりと笑うルイ。
そしてそこに風が巻き起こり、
ルイの目の前にひとりの女が舞い降りてくる。
彼女は女ウォズにゴーストアックスを向ける。
ルイ:「アルミアさんが来てくれるとは思いませんでした」
アルミア:「オーマが感じた、このウォズの気配を。そこに卿が居た、それだけだ」
クールにそう返すアルミアにルイは苦笑しながら肩を竦めた。
そして頭上を振り仰いでそこで羽ばたく銀の獅子を見つめる。
ルイ:「オーマさん、待ってましたよ。あなたが来てくれれば、もはや事はこちらに有利です」
背後でそう言ったルイにアルミアは鼻を鳴らした。
アルミア:「卿は何を言っている。私はこの敵を殲滅する。だがオーマはこの敵をそれでも生かそうとする。主観の相違がある以上、共闘は出来ない。私は私でやらせてもらう」
そう言いきった後、アルミアは前に飛び、ゴーストアックスを一閃させた。
女ウォズはそれを紙一重で避けて、避け様に鞘走らせた剣を横薙ぎに繰り出す。居合だ。
その一撃をアルミアはゴーストアックスで打ち落とした。
だがその瞬間に女ウォズは取り込んだ不死の魂を放出するのだ。
そしてアルミアの瞳が鋭く細められる。
アルミア:「私が今、自由にしてあげるよ」
ゴーストナイト。それはゴーストアックスを手にした者につけられる呼称だ。
不死と扱われるもの全てを使役する伝説の騎士。魔斧ゴーストアックスを手にした者にその資格は与えられ、生者であるにもかかわらずその肉体は朽ちる事はないという。
女ウォズによる不死の魂の攻撃を、アルミアは使役する不死の魂で迎撃する。
ルイ:「流水の如き怒りですね。不死の魂を弄ぶウォズに彼女は怒っている。ですが、相手がウォズである以上……」
放った不死の魂による攻撃が同じく放たれた不死の魂による攻撃で無効化されたと同時に自ら跳躍する女ウォズ。その彼女の両手が硬化し、剣の様になると共にアルミア目指して伸びてくる。
それをゴーストアックスでさばかんとするアルミアであるが、敵の攻撃は素早かった。まるで消耗が無い。変わらぬスピードでの攻撃にさしもののアルミアも疲れが見え始めた。
そして敵はそこを見逃さなかった。
今までは長剣だったそれらが鋼の鞭となる。突然目の前で波打って、鋭角に死角から迫ってくるその二つの鋼の鞭にアルミアは目を見開いた。
アルミア:「ちぃ」
オーマ:「やらせるかよ」
今まさに二つの鋼の鞭の切っ先がアルミアを穿たんとした瞬間、しかしアルミアの後方から飛来した砲弾が女ウォズを直撃して、彼女は遥か後方に吹っ飛ばされた。
振り返るアルミア。その彼女の視線の先に居たのは銀髪赤目の青年の姿をしたオーマであった。
アルミア:「卿はどうして私を助けた?」
オーマ:「俺様が守りたいのは命だ。なあ、アルミア。命ってのはどんな命も平等なんだぜ」
アルミア:「………」
ルイ:「お二人ともまだです。どうやらここからが本番のようですよ」
三人の視線の先で女ウォズが背中の翼で舞い上がる。
そしてその下から現れたのは巨大なアンデットだ。そのアンデットと女ウォズがまた具現融合する。
アンデットの額に女ウォズの下半身が沈み込み、そしてそれが奇声をあげると共にアンデットがこちらに向ってくる。
オーマ:「やれやれ。冗談がキツイ」
アルミア:「やるだけだ。私はアンデットを攻撃する。卿はウォズを攻撃しろ」
ルイ:「ええ。その分担でお願いします。わたくしは試したい事があります。ですからしばしお時間を稼いでください」
オーマとアルミアは頷き、共に敵に向っていった。
そして後方でルイは二本の杖を構えて、儀式に精神を集中する。
彼の異世界では魂想いが密接にウォズと関係している。故にひょっとしたら………
―――しかしルイは儀式に集中させていた精神をといた。
ルイ:「オーマさん、アルミアさん。ここは一端、逃げます」
その言葉に敵と交戦していたオーマとアルミアは視線を交わしあい、そして頷くと、アルミアはゴーストアックスの強力な一撃を放ち、
オーマは銀色の獅子となって、アルミア、ルイを乗せて、その場を去るのだった。
その逃げ足は実に見事であったが、まるで引かれあうかのようにそれでも新たな闇は三人を追うのだった。
――――――――――――――――――
【不死の王レイド】
そこは迷宮の果ての城。
その城の玉座に彼は座っていた。
不死の王レイド。
その彼は招かざる客たちに鼻を鳴らした。
オーマ:「そう邪険に扱うなよ。俺たちはここには今回のこの騒動の答えを求めてやってきたんだからよ。あんたなら知ってるんだろう、この事件の真相をよ?」
ルイ:「わたくしはウォズと不死の魂との具現融合を解かんと浄化儀式をやらんとしましたが、しかしそれは失敗に終わりました。それは未だわたくしが理解していない力がその具現融合の媒介をしているからです。それを理解できない事にはわたくしは浄化儀式をやれない。そう、方程式の意味を知らない者がその式の答えを出す事ができないように」
アルミア:「私にはわからない。卿はこの世界の不死の者を統べる王であろう。その卿が何故今回のこの事件に動かない。王たる者の責務という物があるはずだ。ならば不死の者を守るために戦うべきであろう」
一歩前に出てアルミアは言った。きつく細めた眼でレイドを見据えながら冷たく澄んだ声で。
だがそれに対するレイドの声は子どもを諭すような響きがあった。
レイド:「ただウォズの新種が不死の者を手当たり次第吸収していたり、また不死の魂がウォズを吸収しているのなら俺も動こう。だがこれはあるいは世界が真の世界に戻ろうとしているのだ。だから俺はただ静観している。それが運命であるのであれば俺はそれを受け入れるであろう。なぜならば俺たちは闇が無ければ生きられない存在なのであるから」
アルミア:「王が運命を受け入れて、戦わないというのか? それが王の取るべき道であろうか? 王とは配下の者を導くべき存在。理念を持って。卿にはその理念が無いのか?」
アルミアは叫んだ。
しかしレイドはただそれを見据えている。
レイド:「理念? そんな物は事の真理の前ではあって無き物だ、アルミア。ルイよ」
レイドはルイを見た。
レイド:「貴様が感じたモノ、それは古の闇だ。世界に一番最初にあった闇。すべての者はその闇の中から生まれた。古の闇はずっと求めていた。形を、名前を。だから闇はウォズの性を利用して、名前や形がある物を吸収してまわっているのだ。それによって一番最初の形に戻り、何もかも無かった事にして今度こそ自分が名前や形を得られるように。それがあれの願い。そして我らが闇の側の者は、闇の庇護の下に生きている以上、その願いを叶える責務もまた背負っているのだ」
オーマ:「なるほど、闇ねー。しかしそいつはまたどうにも欲しがりな奴なんだな。で、レイド、俺様からも問うんだがよ、おまえさん、本気でただその闇とやらに吸収されるつもりなのかい? それを運命と割り切って。しかしよ、俺様たちがここに現れたのもまた運命かもしれねーぜ」
ルイ:「ならばその運命にかけてみる気はありませんか? もしもわたくしがその闇の事を理解できれば浄化の儀式で具現融合を解けるはずです」
前に出てそう言う男二人をレイドは細めた目で見比べる。
レイド:「それで具現融合を解いたとしても、闇はいずれまた動くぞ?」
アルミア:「たとえそうだとしてもならばその時はまた私たちが止める。卿は不死の者の王としてそれが運命と割り切って、それを受け入れるのだろうが、しかし私はその運命に抗う道を選ぶ。不死の騎士として、不死の者たちを率いて、必死に抵抗させてもらう。そう、闇に吸収される事が真理とは想わない。道は自らが切り開く。上に立つ者は身を呈してでも下の者を守るべきだ。例えそれで自分を庇護してくれる存在に背いてでも。なぜなら王とはそれ自身が配下を庇護するものなのだから。卿は間違っている。王は上を見るべきではない。下を見るべきだ」
レイド:「ふん。聞き分けの無い。ならば見せてみろ。貴様らの想いを。あるいはそれが本当に運命を動かすのかもしれん」
そしてレイドはルイを呼び寄せて、ルイの頭に右手の掌をかざした。
知識の共有。レイドの中にある闇の理がルイの中に流れ込んでいく。
閉じていた瞼を開き、ルイはアルミア、オーマを振り返った。
ルイ:「では、わたくしの儀式のサポートをお願いします」
オーマ、ルイが先に玉座の間を出て行く。
そしてアルミアはレイドを振り返る。
アルミア:「闇は確かに闇の種族にとっては大切なモノ。まず先にウォズや不死の魂がその軍門にくだるかのように闇に吸収されたのも頷ける。だがそれでも闇は自ら輝く事もできるのだ。闇は忌むべきモノではないと私は信じている。すべてが共存できる世界はあるはずだ。私はその世界のために不死の騎士として不死を率いて戦おう」
レイド:「そのためであるならば、闇の者の母たる闇にも剣を向けるか。それは背信行為だな、闇の者にとって。だから俺には出来ないのだよ。俺は闇の王なのだから」
アルミア:「選んだ道だ、後悔はない」
そしてアルミアもオーマとルイを追った。後ろは振り返らずに。
組んでいた足を組み直してレイドは鼻を鳴らした。
――――――――――――――――――
【光創生】
オーマたちが外に出ると、そこにはさらに強大になったあのウォズとアンデットの具現融合体が居た。
ルイ:「それではわたくしは儀式に入ります。オーマさんとアルミアさんはウォズとアンデットを」
オーマ:「おうよ、任せておきな」
アルミア:「問題無い」
そしてルイは二本の杖を構えて、浄化儀式を開始する。
敵に向って駆けるオーマ。その姿は何時しか銀色の巨大な獅子となっている。翼を羽ばたかせて空に舞い、鋭い爪はアンデットの額にいる女ウォズを狙っていた。
女ウォズが奇声をあげて、それに呼応するようにアンデットも翼を羽ばたかせて浮かび上がり、そして闇の触手をまたオーマへと伸ばすが、
アルミア:「させはしない」
バトルアックスを一閃させて、アルミアが不死の魂を放つ。
放たれた不死の魂に触手はその進む先を変える。
だがアルミアより放たれた不死の魂はむざむざ触手に捕まる事無くアンデットを攻撃した。
アンデットはたまらなく悲鳴を上げた。
そして女ウォズに襲い掛かるオーマ。
その姿はいつしか青年バージョンと変わっており、苦しむアンデットの額に降りた彼は具現化したバス―カーの銃口を向けて、そしてトリガーを引いた。
女ウォズは両手を体の前でクロスさせて、ガードの体勢を取るがしかしそれに意味は無かった。
オーマが放った砲弾が直撃すると同時に女ウォズの体が凍りついたのだ。
ならば次は仮面のウォズが動いた。
仮面の上半分がどろりと溶けたかと想うと、オーマに迫るのだ。
しかしアルミアの放つ一撃がアンデットくずおれさせるので、その動きが止まる。
そしてそれをルイは見逃さなかった。
ウォズ、不死の者、そのすべての新たな闇を形成する気配が止まった。
ルイ:「今ならば」
浄化儀式の発動。
先ほどはルイは闇の理を理解できていなかった。しかしレイドによってそれを理解した今の彼になら、その具現融合を解く事が出来る。
果たして闇が媒介となって具現融合していたウォズと不死の魂はその具現融合を解かれた。
オーマ:「てめえらはこのまま封印させてもらうぜ」
ウォズたちはオーマによって具現化された封印機によって封印された。
そして解き放たれた不死の魂たちはその場から消え去っていく。
残されたのは古の闇であった。
グエンダル:「この時を待っていた」
その場に現れるグエンダル。
アルミア:「グエンダル。卿は何をするつもりだ?」
グエンダル:「決まっている。彼女の仇を取らせてもらう」
具現融合。なんとグエンダルは自らその闇を己が身に具現融合させた。
それを見たオーマが舌打ちする。
オーマ:「馬鹿野朗が。てめえはそれで自分の身をどうするつもりだ?」
グエンダル:「こうするのだよ、オーマ・シュヴァルツ」
グエンダルは腰の剣を抜き払って、それを素早く逆手に持ち直すと、それで己が腹を突き刺そうとした。
しかしそうはせない。オーマは銃を具現化すると、それの銃口をグエンダルが持つ剣に向けて、銃弾を発射させた。
銃弾はグエンダルの剣を叩き折る。
そしてルイもまた浄化儀式によってグエンダルから闇を解いた。
グエンダル:「馬鹿な。闇を倒すにはこうするしかないのだぞ」
ヒステリックに叫ぶグエンダル。
オーマ:「言ったはずだぜ、俺様はおまえさんに借りを返すと。だからおまえを死なせねーのさ、グエンダル」
グエンダル:「うぉー」
グエンダルはその場に跪いて、悲鳴のような泣き声をあげた。
そして闇はその場から逃げ去らんとする。
―――いや、待て。
ルイ:「アルミアさん。闇はあなたを狙っている」
アルミアはゴーストアックスを自分に迫ってくる闇に向ける。
闇は闇の騎士たるアルミアを次は狙おうというのか。まだ諦めない。それほどまでに焦がれるか、求めるモノに。
しかしその時ゴーストアックスが脈打った。ゴーストアックス。それは神話の時代に冥府の神が鋳造した、切り殺した者の魂を喰らう巨斧。神をも打ち滅ぼし、その魂を取り組む事ができる武器なのだ。ならば闇とて……
アルミア:「裂けるはずだ」
ゴーストアックス一閃。
その一撃は確かに闇に大ダメージを与えた。
そしてその闇はまるで虫の息かのように哀れに霧散していく。
アルミアはその闇を喰わせんとゴーストアックスを向けて……
だがその闇に哀れみをかける者がいた。
オーマ:「古の闇よ。そんなにも形が欲しかったか。名前が欲しかったか。ならば俺様がおまえに形をやろう」
己の精神力を具現化させる能力を持つオーマ。その力はどこまでも強大だというのか。
―――強大なのはその精神力か、それとも情の深さか。
霧散していっていた闇が一定の形を保ち、そしてそれは人間の赤子となった。
ルイは肩を竦め、宙からゆっくりと降りてきていたその赤子を受け止めた。
ルイ:「見事ですね、オーマさん」
アルミアはグエンダルを見た。
アルミア:「グエンダル、見ての通りだ。これはもはや古の闇ではない。新たな命。だから私はゴーストアックスを下ろす。命とはみなすべて尊い物なのだから。それで卿はどうする?」
目を細めるアルミアの視線の先で、グエンダルは剣を落とした。
グエンダル:「………」
アルミアを見、そしてグエンダルはルイが抱く赤子を見る。
オーマ:「どうだ、おまえさんが育てないか? それが一番いい。おまえさんにとっても、そしてこの子にとってもな。そうする事でおまえさんもこの子も変われるはずだ。より良い方向に。復讐からは何も生まれない。生きる事でしか変われねーはずだからな」
温かで深い父性を感じさせる雄大な声でオーマはそう言った。
そしてグエンダルはルイから赤子を受け取る。
そのグエンダルを照らすのは明るい朝の光だった。
グエンダル:「何が変わるのかわからない。しかし我はこの子、ミーアと共に生きてみようと想う」
ミーア、それはあの預言者の名前。
思えばミーアもまたあの闇に吸収されたのだ。ならばこの子は確かに彼女の生まれ変わりでもあるのかもしれない。
グエンダルはミーアを抱き、その場から立ち去った。
――――――――――――――――――
【ラスト】
オーマ:「ふん、挨拶もなしにレイドの野朗はまたどこかに消え去ったようだな」
オーマは誰も居ない玉座の間を見回して肩を竦めた。
ルイ:「それでもまたすぐに彼の名前は耳にするでしょう。おそらくは次は敵として」
ルイは軽く溜息を吐いた。
アルミア:「そうだな。さてと、では私は行くとする。次なる場所へ」
アルミアはそう言い、立ち去ろうとするが、その彼女に実にお気楽な声がかけられる。
オーマ:「おっと。おまえさんまでもそんな素っ気無い事を言うのかい? ようやっと大きな事件も片付いたんだ。だから一緒にゆっくりと朝飯にでも食おうや」
そのオーマの言葉にアルミアはわずかに両目を見開き、しかし次には肩を竦めながら楽しげな声を出した。
アルミア:「もちろん、それは卿のおごりだろうな?」
オーマ:「おうよ。ルイがおごってくれるとさ」
ルイ:「オーマさん。まったく、本当に調子のいい」
三人の楽しげで爽やかな声が心地良さげに朝の世界に響き渡るのだった。
― fin ―
++ライターより++
こんにちは、オーマ・シュヴァルツさま。
こんにちは、ルイさま。
こんにちは、アルミア・エルミナ―ルさま。
このたび担当させていただいたライターの草摩一護です。
今回はご依頼ありがとうございました。
ウォズと不死の魂との具現融合の理由はこのようにさせていただきました。
お気に召していただけると幸いです。^^
オーマさま。
いつもありがとうございます。
具現化、赤ん坊を闇から創造したのですが、大丈夫でしたでしょうか?^^;
でも古の闇に情けをかけて、赤ん坊にしてあげられた事、その赤ん坊をグエンダルに渡した事、そういう事を書く事でオーマさんの優しさを描写できた事を嬉しく想います。^^
オーマさんを書かせていただく時は本当に彼の父性とか大きさを書くのが好きなのです。もちろん、青年バージョンや獅子などの力もですが。
ルイさま。
初めまして。
ソイルマスター。
万能な能力だとしてもそれを理解できなければ扱う事が出来ない。
レイドから闇の理を与えられる事で闇を媒介としたウォズと不死の者の具現融合の浄化儀式が可能となる、という設定で書かせていただきました。^^
オーマさん、アルミアさんのサポートをするシーン、ラストの描写など楽しかったです。^^
アルミアさま。
初めまして。
不死の王レイドとのご希望なされていた描写はあのようでよろしかったでしょうか?
レイドは王として、上に立つ者として今回の事をあのように受け入れ、そしてアルミアさんは不死の騎士として、または闇の母という深い女性の感性から今回の事件をあのように捉え、それに対する想いをあのように書かせていただきました。その描写が本当に楽しかったし、やり甲斐がありました。^^
それでは今回はこの辺で失礼させていただきますね。
ご依頼、本当にありがとうございました。
失礼します。
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