<聖獣界ソーン・白山羊亭冒険記>


『杯にひとひらの薄紅』


<オープニング>
 桜の蕾も硬い殻を脱ぎ捨て、淡い薄絹をさらす季節になってきた。
 ここ、白山羊亭に集う常連達も、花見宴会の企画に余念が無い。ある一派はバーベキューを準備し、あるグループは桜舞う下での演奏会を企画していた。
 店の前に、黒塗りの馬車が停まり、客達は何事かと談笑を止めた。
 降りて来たのは、蒲(がま)公爵令嬢の英(はなぶさ)と、その護衛達だった。白山羊亭の扉を押した美女はスリットも妖艶なチャイナドレスに身を包み、歩く度に太股の白さで客達の目を釘付けにした。
「夜桜見物の護衛をしてくださる方、いないかしら?お父様から、初めてお花見の許可が出たのだけれど、うちの奴らはこの季節には役に立たなくて」
 役立たずと言われた黒服達は、サングラスに似合わぬ白いマスク(それも鼻の部分が高くなった立体裁断)を身につけていた。一人がクシュクシュ!と続けてくしゃみで顔を歪めた。
 蒲公の英といえば、酒乱で有名なお嬢様ではないか。

< 1 >
「花見だ、花見!酒だ肴だ喧嘩だ!おう、俺の花鳥風月な筋肉が騒ぐぜぃ」
 腹黒同盟総帥のオーマ・シュヴァルツが、大ジョッキを飲み干して立ち上がった。身長は2メートルを越えるマッスルな親父である。
「オーマさん。お花見のお誘いでなく、護衛の依頼ですよ」
 隣でメニューを開いていたアイラス・サーリアスが、冷静な口調でオーマの錦の着流しを引っ張った。
「だいたい、酒と肴と喧嘩の、どこが花鳥風月だと言うんですか」
 アイラスは優秀な武闘家だ。だが、本を愛するもの静かな文学青年でもある。長いブルーの髪を後ろで知的に結び、大きな眼鏡から少し女性的で優しげな瞳をのぞかせる。
 オーマはアイラスの両肩に手を置き、
「酒と肴と喧嘩に風流を感じられないなんざ、まだまだ青いな」と、ため息をついてみせた。
「私も行くわ。夜に見る桜があんなに美しいのは何故かしらね」
 ユンナも名乗りをあげた。彼女はヴァンサーソサエティのマスターであった。美しい髪は薄紅の桜色。ソーンの歌姫でもある美女だ。まだ20歳にも満たない若い娘の外見だが、実際は・・・という、謎の多い女性である。
「恋すりゃ鬼も詩人ってか?だがホントは酒が飲みたいだけじゃないか?」
 オーマは軽口を叩いて、ユンナに肘鉄を食らう。
「だからオーマさん、護衛なので、宴会はしないです!」
 アイラスはまだ言っているが、オーマもユンナも聞いちゃいない。

「お三人とも、ありがとうございます」
 英は、丁寧にお辞儀をした。
「護衛と言っても、お父様の手前、必要なだけですわ。少しなら飲んでくださっても構わないと思います。
 お礼は・・・そうですわね、オーマさんはお酒とお料理がお好きなのですか?でしたら、レストランを一軒差し上げるのでよろしいかしら?
 アイラスさんは、読書がお好きだそうね。ガルガンドの館を買い取って贈りますわ。
 ユンナさんは、何か欲しいものがありますか?宝石がお好きなら、ダイアモンドの鉱脈?」
 和やかに微笑んでいた三人は、「え?」と凍りついた。彼女の家は、突拍子も無い金持ちらしい。
「・・・ガルガンドの館は、お金では買い取れないと思います」
 アイラスは脱力して答える。
「報酬は、金貨一枚くらいが妥当だと思いますよ?」と、ウェイトレスのルディアが口を挟んだ。
「それから・・・オーマさんに贈るレストランって。うちを買い取るつもりじゃなかったでしょうね?」
 目が少し怒っていた。

「あのう・・・。
 私、力は強く無いので、護衛には向かないかもしれませんが・・・。夜桜見物、ご一緒させていただいていいでしょうか?」
 おずおずと切り出す愛らしい少女は、白山羊亭を初めて訪れたようだった。白い翼のような形の耳が、ラベンダー色の髪の中で揺れている。背にはカゲロウのような薄羽が透けていた。
「私、スアン・プリマヴェーラと言います。このコはキルシェ。よろしくお願いします」
 見ると、肩に淡い紅色の小鳥が行儀よく乗っていた。
 アイラスが、彼女の足元に置かれた手風琴を見つけた。
「演奏をなさるのですか?」
 スアンはコクリと控え目に頷いた。
 英はぽんと手を叩き、「まあ、すてき」とうっとりした声を出す。
「スアンさんとユンナさんはか弱い女性ですもの、護衛のことはお考えにならず、花見の席で演奏と歌を披露していただけますか?」

 場所は、エルザードの郊外、アクアーネ村への川沿いの桜並木が程々の混み具合という噂で、そこに決まった。あまり閑散としていても寂しいものだからだ。
 英は花見に用意するものも何も知らなかった。それらは四人で調達することになり、明日の夕方再度ここに集合ということになった。

< 2 >
 ユンナから預かった数本の酒瓶。これらがぶつかり合っても割れないように一本ずつ布に巻き、袋に入れて手に下げた。アイラスのやることは丁寧で、しかも堅実である。
 
 向こう岸の桜の枝が手を伸ばし、川面に指を触れているようにも見えた。ナルシスは水仙になったが。桜の精もきっとナルシストだ。
 亡霊のように霞む桜たちは、こちらを歩くアイラスに手招きしている。ざわざわ、ざわざわ、風が吹く。
『こっちへおいで』と。

 大股のオーマと距離を離されそうになって、慌ててアイラスは早足になった。
 川沿いの桜並木、枝にはランタンが引っかけられて、転ばない程度には明るく照らされていた。道には時々屋台の食べ物屋もいる。どの満開の木の下にも敷物が敷かれ、酒と料理を楽しむ者たちが笑いさざめいていた。
「おー。人面桜か。ラブリー度マックス、胸きゅんじゃねえか」
 オーマが、人面桜の木を見つけ、その下に宴を張ろうと言った。
「いやよ、人面桜の下なんて!これだけ花があれば、オーマ好みのイロモノ顔だって居るに違いないわ。絶対嫌と言ったら嫌ですからっ!」
 ユンナの激しい却下により、人面桜の下からまたぞろぞろと歩き出す。実は、ユンナの抵抗はアイラスにもありがたかった。一人二人のマッチョ桜なら許せるが、たわわにマッチョは避けたかった。
「お、あそこがいいか」
 真上の桜は七分咲きだが、川を隔てた向こう岸には満開の桜が見える、絶景の地点だ。
「か、川の側に座るの?!」
 またもユンナが眉間に皺を寄せてオーマを睨んでいる。
「も、もし、土手を滑り落ちたら、川に落ちてしまうのじゃないこと?」
 だが、よい場所はもう殆ど誰かが座っているのだ。あまり理想を高くすると夜明けまで座れないだろう。
「柵もあるし、落ちないでしょう?・・・うん、柵も丈夫ですよ」
 アイラスは、丸太で組まれた柵を押して強度を確認した。落ちる時は隙間からでも落ちるものだが、余計なことは言わない。
「・・・。」
 ユンナはまだ不服そうだ。なぜそんなにこだわるのだろう?とにかく場所はここに決まった。オーマが登山用リュックに丸めて積んであったゴザを引っ張り出して敷いた。
「ソーンには無い『ビニールシート』ってシロモノも具現できるんだが、花見はこの方が風情があるだろう」
 また、『風情』の意味を自分だけで解釈しているようだ。そのゴザには、精密な眼球のイラストが水玉模様のようにプリントされていた。睫毛の一本一本まで細かく描かれている。
「これに座れっていうの?ドレスの中を覗き見されてるみたいだわ」
「きゃっ。なんだか、目が動いたような気がします」
 ユンナとスアンは、恐る恐るゴザに座った。
 更にオーマは、鼻提燈型ランプやら、投げ捨て口が口紅を塗った人の口を模してあるゴミ箱やらを、次々とリュックから出した。いったいどこで入手して来るのやら。
「これがお花見用グッズというやつですか」(違います)
 英は目を見開いて、鼻の造形にぶら下がる提燈をつついている。
「花見は冷えるからな。これも人数分あるぜ」
 オーマは、腹巻を差し出した。なぜ、らくだ色の腹巻にわざわざレースが付いているのだ。らくだ色だけか、レースだけか、どちらかならまだ需要がありそうだが。
「僕はいいです。アンダーシャツも二枚、靴下も二枚履いて、防寒対策は完璧ですから」
 あんなものを身につけるのはたまらない。アイラスは咄嗟に嘘をついた。
「私もいいわ。具現で遠赤外線のドレスを出して、着て来たの」
 たぶんユンナのも嘘だろう。
「まあ〜、お借りしていいのですか?私、体が弱いものですから。ありがとうございます」
 スアンは素直に受け取った。
「いいか、腹巻は服の上からしないと効果が少ない」
「はい」
 彼女は、柔らかで薄いドレスの上にらくだの腹巻を巻いた。
「い、いいんですか、それで?」とアイラスが思わず唾を飲み込む。
「はい〜。暖かいです」
 スアンはにっこりと微笑みを返した。
 英も、真っ赤なチャイナドレスの上に腹巻を装着し、「本当ですわ、暖かいです」と喜んでいる。
「お二人がそれでいいなら、いいのですけど・・・」
 愛らしい少女とご令嬢の腹巻姿。ある意味、露出度の高いドレス姿よりも見てはいけないもののような気がして、アイラスは脇目も振らずオーマが持参した料理をゴザの上に並べた。

 オーマは料理は得意で、三段重ねの重箱には煮染めや玉子焼きがぎっしりと詰まっていた。そしてデザートの雅な和菓子はスアンが持って来てくれたものだ。アイラスも何か持参しようかと提案したら、ユンナに「それなら酒瓶を運んで」と頼まれたのだ。英、アイラス、スアンは酒を飲まないつもりなので、オレンジ・ジュースも用意してもらった。英は、黒服に「あまり飲まないように」と釘を刺されたらしい。
「さあ、準備はできた。乾杯だ〜!花見の基本は『紙コップ』での乾杯だぜ。
 英さんよ、せっかくの花見だ、一杯だけ、乾杯の時は酒といこうや?」
 英は頷き、「はい」と微笑む。
『えーっ。せっかく、トラブル無く済みそうだったのに!』
 アイラスは、その不満を苦笑に変えた。彼女は花見を楽しみたくて護衛まで頼んだ。全然飲まないのでは、かわいそうだ。
 トラブルを未然に防ぐ、または最小限にする為に雇われたのだ。何か起こったら、僕らで何とかしよう。

 まずは白ワインのコルクが抜かれた。酌をし合い、さあ乾杯と紙コップを握ると、「あ」と英が小さい叫びを上げた。
「見てください」
 童女のように無邪気に令嬢が笑った。紙コップの中に、ひとひら、桜の花びらが浮いていた。
 
< 3 >
 宴も進み、頬もいい薔薇色に染まったユンナが一番に「歌うわ」と立ち上がった。
 ユンナが歌ったのは黒人霊歌だった。アイラスが以前いた世界でも人気のあった音楽だ。楽器を合わせてもいいが、荘厳さがある曲なので、歌姫がアカペラで歌うにはぴったりだった。ユンナの強い声が、細い枝を揺らした。
 気づくと、近くにシートを敷いた人々も歌に聞き入り、拍手していた。
 次にはスアンが手風琴を抱えて立ち上がった。
「僕も横笛で参加していいですか?」
「もちろんです!」
 スアンは、手風琴の弾き語りで、春の歌を歌った。初めて聞いた曲だが、コードや展開は予測できたので、アイラスも付いて行った。スアンの主旋律を邪魔しない程度に音を飾る。
 清々しい二人のデュオは、川べりを通る人々の笑みを引出し、優しい気持ちにさせた。道を行く恋人達はうっとり聞きほれ、手をつなぎ合い、肩を寄せた。
 英も手が赤くなるほど拍手をくれた。

「英さん、本当に酒乱なのですか?」
 スアンは小首を傾げてアイラスに囁いた。
「さあ。僕も噂で聞いただけなので。間違った噂だといいですね」
 蒲家のマスクの黒服達はよほど心配なのか、アイラス達を尾行し、物陰から様子を伺っている。

「じゃあ、今度は、みんなで歌いましょうか?」
 再びユンナが立ち上がった。酔いが回って来たのか、陽気になっている。
「歌いやすくて、簡単な・・・オーマのダミ声でも合わせられる歌がいいわね」
「ユンナさん、私、歌は苦手・・・」
「英、緊張しなくていいのよ、楽しく一緒に歌いましょ?
 Ah―!・・・ほら、声を出してみて?」
「グケッ」
 英の紅を引いた口許から、カエルのような声が洩れた。
「・・・?」
「ゲコッ」
 英は慌てて口を抑える。その手の甲は、鉄の錆にも似たざらざらとした質感に変わって行く。
「・・・。」
「ああ、ダメですわ。私、酔って来ました。もう自分の姿をキープできませぇぇぇぇん!」
 英の体は赤茶色に変色し、バルーンのように膨れて行く。四肢は折れて平たい巨体を支え、脚の尖った爪は地面をかぎ裂く。突出した目は金色に輝き、きょろきょろと辺りを見回す。空に向かって一瞬鞭のように伸びた舌は、また一瞬で裂けた口に収まった。
「が・・・ガマガエル?」
 英は、桜の樹と争うほどの大きさのガマガエルに姿を変えていた。

『うわぁ。アズマヒキガエルじゃないですか』
 アイラスは立ち尽くす。彼は爬虫類も好きだが、両生類も好きだ。時に、ガマガエルと呼ばれる種の、でこぼこの背や、斑模様の腹、朱色の瞼はたまらなく好きだった。あの半開きの目。三白眼が可愛いのだ。アイラスはうっとりして、巨大化した英を眺めた。
 黒服達が慌てて駆けつけた。
「お、おじょうさまー!」
『ごめんなさーい。飲みすぎましたー』
 さっきまでの女性の声から、野太い掠れた声に変わっている。
 他の花見客は、悲鳴を上げて逃げ出した。慌てて裸足で逃げる者、グラスは離さず走る者、腰が抜けたのか尻で土の上を後ずさりしながら遠ざかる者。英はその場から動くことは無く、誰も踏み潰されることは無かったが、巨大化した時に後ろ足を引っ掛けて、桜の枝の一本がメリメリと音をたてて折れた。
「酒乱って、このことでしたか」
 酔っ払うとカエル本来の姿に戻ってしまうらしい。桜が折れてしまったのは故意では無いし、彼女は悪いことはしていないように思う。だが、花見客が大勢いる場所にこんな大きな姿でいるのは、やはり迷惑だろう。大抵の蛙には毒があり、アズマヒキガエルも例外では無い。目の後ろ・・・耳腺からブフォトキシンという毒素を出す。神経系統を侵す毒だ。

「酔いが醒めると・・・クシュン!元に戻ります。かえって、眠ってしまった方が、クシュン!醒めてくれやすいですが」
 黒服がくしゃみしながら言う。
「私、歌を聞いた人を眠らせることができます。お役に立てますか?」
 スアンは巨大な蛙が怖いらしく、アイラスの上着をぎゅっと掴んだ。だが、自分が役立てるならと、勇気を奮ったのだろう。
「うーん。英さんだけでなく、僕らも眠ってしまうのですよね?」
 それは実用的でない気がする。アイラス達だけでなく、近くにいる他の花見客も眠ってしまうのだろうし。別の混乱が起きそうだ。
「それに、歌うと息を大きく吸い込みますよね。ヒキガエルの毒素を吸うとよくないですよ」

 オーマが、そろりと輪から抜けるのが見えた。
「スアンさん。僕らは少し待ちましょう。もうすぐ・・・」
「もうすぐ?」

< 4 > 
 星の一点かに見えた煌きが次第に大きくなり、夜空に銀の獅子が現れた。巨大な獅子は長い毛足をなびかせ流星のようによぎったかと思うと、背の翼を羽ばたかせて桜並木を旋回し、アイラス達の近くに降り立った。幸い、花見客がその場から逃げ去り、獅子が着地するには十分な余裕がある。
 翼が作るゆるく大きな風で花びらが吹雪のように舞い、夜空を一瞬薄紅が覆い尽くした。それは視界を遮るほどだった。獅子の大きさは12階建ての建物相当。並ぶと巨大ガマが子蛙に見えた。
「英さん、この獅子の背に乗れってことのようですよ」
 獅子の正体がオーマだと知るアイラスが、気を利かせて英を先導した。
『他のみんなも乗ってくれ。空から桜見物と洒落こもう』
 精神感応で獅子が全員に話しかける。
「え?私達もいいのですか?」
 黒服二人も乗せ、獅子は夜空へ飛び立った。

 闇の中に、点々とランタンが灯り、桜が幻のようにほんわりと霞んでいる。夜空から眺める桜並木も一興だった。
『助けをありがとう、獅子さん。
 私がこんな醜い姿なばかりに、皆さんに嫌な思いをさせてしまい、すみません』
 泣き上戸なのか、巨大ガマは赤い瞼をしばたかせ、金の瞳からぼとぼとと涙をこぼした。
「何をお言いかしら。英のおかげで、空から桜を眺められたのに」
 ユンナは髪をなびかせ、風を感じて楽しそうだった。
 スアンは、華奢な手でぎゅっと獅子の立髪を掴んでいた。高いところが怖いのか、それとも蛙が怖いのかもしれない。
「英さんのお花見、とても楽しかったです」
 それでも、風に煽られながら、愛らしい声で答えた。
「英さんは醜くなんか無いですよ。すごく可愛いじゃないですか」
 アイラスは声に力をこめた。人間の時の英より今の蛙姿の方が可愛いとさえ思っている。
『あの、イボイボの背中、撫でたいです・・・』
 
 川沿いにゆるりと旋回した後、獅子はエルザードへと戻り、蒲家の庭園に降り立った。そして全員を降ろすとまた飛び去って行った。
 銀の体には何カ所か花びらが付着して、立髪を薄紅に染めていた。闇に消える獅子の姿もまた優雅で、一夜の春の夢にふさわしかった。
 オーマの荷物を抱えていたアイラスが、頼まれた薬草をごそごそと探し当てる間に、スアンが黒服に「これ、よろしかったら。花粉症のお薬です」と持参した薬を手渡していた。
『オーマさんもせっかく用意したのでしょうけど、いいですよね?』
 アイラスは、そのまま薬草を奥にしまいこんだ。

* * * * *
 後日、英は白山羊亭に礼に来たそうで、ルディアが報酬と礼状を預かっていた。彼女はあの日のガマへの変身を覚えていなかったが、空から桜を眺める夢を見て、とても楽しかったと語っていたそうだ。
「ふうん。夏に、蒲家プライベート・ビーチへご招待ですか。ビアパーティーねえ」
 カードには『今度は浜辺で飲みましょう』と書き添えてあった。蒲家のビーチなら、酔って変身しても海水浴客を踏み潰す心配は無いが・・・。
「毒素の溶けた水辺は危険な気がしますねえ」
 でも、巨大なアズマヒキガエルの姿には、ちょっとそそられるアイラスではあった。

< END >

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

1649/アイラス・サーリアス/男性/19/フィズィクル・アディプト&腹黒同盟の2番
1953/オーマ・シュヴァルツ/男性/39/医者兼ヴァンサー(ガンナー)腹黒副業有り
2083/ユンナ/女性/18/ヴァンサーソサエティマスター兼歌姫
2547/スアン・プリマヴェーラ/女性/16/常世の歌い手

NPC 
ルディア
蒲公爵令嬢・英
蒲家の黒服たち

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■         ライター通信          ■
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発注ありがとうございました。
毒がなければ、きっと、アイラスさんはガマガエルの背中を撫でていたでしょうね。
普通の大きさのガマなら、撫でた後で手を洗えば問題ないですが、大きいですから、毒の量も多くて危険そうです。