<PCシチュエーションノベル(グループ3)>


ソーン全国サイコロの旅・副音声 その2
●あらかじめおことわり(お約束の言葉)
 さて、これより記されるのは、とあるテレビ局のディレクター陣2人による、『ソーン全国サイコロの旅』企画のDVD化にともなう副音声解説収録時の模様である。
 その模様をファンの皆様によりリアルに感じていただくため、ディレクター陣の会話の様子は全て対話形式として記させていただいた。くれぐれもご了承願いたい。
 副音声収録のための部屋には、すでにヒゲで眼鏡で小太りなフェアリーテイルの逢魔・不死叢と、黒い翼を持つナイトノワールの逢魔・熟死乃という2人が並んで座っていた。
 ここまでは前回と一緒だが、今回はちと違う。テーブルを挟んだ向いに、もう1人男性が座っているのだ。魔皇のバンジョー玉三郎である。
 今回の第6夜までの副音声解説は、ゲストを交えて行われるのであった。さあさあ、嫌っていうほど解説を味わってもらおうじゃないですか――。

●副音声収録風景・第3夜
不死叢:「はい、どうもぉ。不死叢ですよぉ!」
熟死乃:「はいどうも、熟死乃です」
不死叢:「さて、ここからいよいよ第3夜。中盤戦の副音声を余すことなく、びしっと行いたいと思いますけども」
熟死乃:「行いたいけれども、その前にだね」
不死叢:「ここで、初めてゲストをお呼びしたいと!」
熟死乃:「呼んじゃうかい、不死叢くん?」
不死叢:「そりゃ呼びますよぉ。だってもう居るんだもん、ここに。ま、あえて呼ばないというのも面白いかもしれませんがなぁ」
熟死乃:「不死叢くん。君がそんなこと言うから、慌ててるよ。視聴者の皆さんには見えないけど」
不死叢:「ではその模様は、特典映像の方でたっぷりと!」
熟死乃:「入れるかい?」
不死叢:「入れていいんじゃないかな? という訳で、ゲストをお呼びしましょう。皆様お馴染みのこの人ですよぉ!」
玉三郎:「どうも、バンジョー玉三郎です」
不死叢:「バンジョー兄弟の兄、バンジョー玉三郎さんをお呼びしました!」
玉三郎:「やー、このまま呼ばれないんじゃないかとどきどきしてました」
不死叢:「おやおや、そんな訳あるはずないじゃないですかぁ。出演陣あってのこの番組ですよぉ」
玉三郎:「いや、だって君ほんとにやりそうなんだもん。自分がその立場になってごらん、驚くよ?」
熟死乃:「驚いてたもんねえ」
不死叢:「ほう。何なら今からやりましょうか? はい、ゲストのバンジョー玉三郎さんでしたぁ」
玉三郎:「えっ、もう終わりなんですかっ?」
不死叢:「冗談ですよぉ。やるはずないじゃないですかぁ。それよりも、副音声解説ですよぉ。もうこの時点で、結構VTR進んでますからねぇ」
熟死乃:「確かに。もうこれ、行き先決まった後だね」
玉三郎:「え。不死叢さん、これはチルカカですか?」
不死叢:「ですよぉ。チルカカを出て、ハルフ村に行く所ですなぁ。覚えてますか、この後の出来事?」
玉三郎:「弟が痔だって告白したことかな?」
不死叢:「ぶわははははっ! そうでした! その衝撃発言もありましたなぁっ! 痔主さんとはびっくりしましたよぉ!」
玉三郎:「お、ちょうどそのシーンですよ。アップで映ってますね」
熟死乃:「彼、必死に馬車乗ろうって哀願するんだけど、結局ウォーホースを召還してハルフ村へ行くんだよね」
不死叢:「こうして見てますとね、自分で言いながらも『あ、こりゃダメだな』って次第に分かってるんですよ。でも口に出した以上、押し続けないといけない。だから彼の頭ん中、ぐるぐるとフル回転してるはずですよ、これ」
玉三郎:「で、ウォーホースに落ち着くと」
熟死乃:「それがあの事件に繋がるとは、この時は誰も予想してなかったね」
玉三郎:「軍馬だけに……」
不死叢:「おっさん、それはもういいんだって! 副音声は編集出来ないんだよっ!」
玉三郎:「軍馬だけにね、本場は群馬県なんだよぉ」
不死叢:「だから言うなって!」
熟死乃:「お、ちょうどその場面が出たよ」
不死叢:「……出ちゃいましたなぁ。だいたいあんた、ダジャレ言いっぱなしでどんどん1人で先に行っちゃうでしょ。あれ、どうしてなんですか?」
玉三郎:「え、あれですか? 簡単ですよ、僕は何をするにもいつだって先頭を走っていたいんです。つまり、俺より前は走らせないぞ、と」
不死叢:「そうなんですか?」
玉三郎:「ええ。僕はいつだって戦っているんです」
不死叢:「はあはあ。けど、玉三郎さん。1つ言っていいですかな?」
玉三郎:「何でしょう」
不死叢:「僕ら、追えない。何分カメラは、熟死乃くんの1台きりですから」
熟死乃:「追えないねえ」
不死叢:「……そんなこと言ってる間に、ウィリー事件になりましたなぁ。あんた全然知らなかったでしょ、あの時?」
玉三郎:「そうですねえ、全く。あれ、来ないなあとは思ってたけど、まさかそんなことになってるなんて思ってませんでした」
熟死乃:「でも、1人事情をまるで知らない人が居るから、この後のシーンに妙なおかしさが出てるんだよね」
不死叢:「それは言えますなぁ。一種の緊張と緩和ですかな?」
玉三郎:「かもしれませんねえ」
不死叢:「で、ようやくハルフ村に到着。名物は温泉饅頭でしたなぁ」
玉三郎:「しかし、あるとは思わなかったなあ……」
不死叢:「これが予想外の方向へ繋がってゆく訳ですが……それは第4夜の副音声で」

●副音声収録風景・第4夜
 第3夜の映像が終わり、続いて第4夜へ。
不死叢:「はい、不死叢ですよぉ」
熟死乃:「熟死乃です」
不死叢:「さて! 第4夜に入りましたが、引き続きゲストはこのお方!」
玉三郎:「どうも、バンジョー玉三郎です」
不死叢:「この3人で、副音声の方続けてゆきますよぉ」
玉三郎:「前枠は青空リュックサックさんの漫才ですか。いやあ、微妙ですねえ」
不死叢:「そうですかなぁ。僕なんか好きですけど」
熟死乃:「分っかんねーなー……」
玉三郎:「ほら、熟死乃さん首傾げてますよ」
不死叢:「分かんないかい? まあ、前枠のことばかり語ってるとあっという間に終わっちゃいますから、本編について語りましょうか」
玉三郎:「本編ですか?」
不死叢:「おやおや、玉三郎さん。急に嫌そうな顔をして、どうしましたかなぁ?」
玉三郎:「これ……無理矢理、温泉饅頭早食い大会に出さされたんじゃないですか」
不死叢:「でしたなぁ。これ副音声だからもう言っちゃいますけど、番組の盛り上がりを考えると、せっかく大会があるというのに、参加しないというのはもったいないと思ったんです、僕は。何しろ玉三郎さんは、無類の甘いもの好きという設定ですから」
玉三郎:「いや、出るまではいいとしましょう。けど、罰ゲームは全く聞いてなかったですよ?」
不死叢:「言うと、あんた出ないでしょ」
玉三郎:「……出てませんねえ」
熟死乃:「でもこれ、不死やん出たら優勝してただろうね。応援しながら、温泉饅頭平らげてるんだもの」
不死叢:「しかしねぇ、熟死ー。僕は出れませんから。僕はこう、喋ってるけどあくまでディレクター。その辺は気を付けてるんですよぉ」
熟死乃:「分かってるって」
玉三郎:「画面見たくないなあ……」
不死叢:「ちょうど生き地獄が始まった所でしたか。6個で音をあげるとは、まだまだですなぁ」
玉三郎:「12個全部食える方がおかしいって!」
不死叢:「ま、何にしてもこれで川下りが決定した訳ですけど。……彼はそれ聞いて怒ったねぇ」
熟死乃:「自分の預かり知らぬ所で、勝手に決まったんだもん。そりゃ怒るよ」
不死叢:「温泉入ってるシーンも、ほんの少しでしたからなぁ」
玉三郎:「怒らない方がどうかしてますって」
不死叢:「でも、あんたが頑張ってたら川下りは回避出来てたんですよぉ? 最下位にさえならなきゃ、罰ゲームはなかったんですから」
玉三郎:「……すいません……」
不死叢:「と、そんな所で第4夜も終了ですな」
熟死乃:「次はいよいよ川下りだねえ」

●副音声収録風景・第5夜
 第4夜も終わり、続いて第5夜が始まった。
熟死乃:「はい、熟死乃です」
不死叢:「不死叢ですよぉ。引き続きゲストはこのお方!」
玉三郎:「どうも、バンジョー玉三郎です」
不死叢:「まだまだこの3人で副音声お届けしますよぉ。さて、ついに川下りですけど」
玉三郎:「えー、不死叢くんの夢だった川下りですね」
不死叢:「そう。僕ね、雄大な自然の中でカヌーに乗ってね、ゆっくりと川下りをするのが夢だったんです。本編でも言ってますけどもぉ」
玉三郎:「おかしくないですか? ディレクターの夢に、出演者が付き合わされるんですよ? おまけに、カヌーの乗り方を知らないんです、僕ら兄弟」
不死叢:「熟死乃くんも、上下ともにオレンジのジャージという格好でしたからなぁ」
熟死乃:「俺のことはいいだろぉ」
不死叢:「でもね、僕も勉強させられましたよ。この川下りで。ああ、夢と現実は違う物なんだって」
玉三郎:「言ってましたもんね、『思ってたより速ぇなぁ』って。……いい加減、学習しましょうよ」
不死叢:「分かってるんですけど、ついつい忘れるんですなぁ」
玉三郎:「はっきり言って、この日の僕は憂鬱でした。だって天然の障害物だらけなんですよ? 流木はあるし、虫はまとわりついてくるし、流れは見てたよりもさらに速いし……。よく転覆しなかったもんですよ」
不死叢:「転覆だけは僕らも心配してました。まあ、魔皇様たちですから万一そうなったとしても、何とかしてくれるだろうと思っていたんですけどもぉ」
玉三郎:「それ買い被り過ぎ。僕なんか、転覆したらパニックですよ」
不死叢:「ともあれ、そういう事態は起こることもなく。予想外に、淡々とした映像となりましたなぁ」
玉三郎:「あのね、見ている方はそう感じたかもしれませんけど。やってる方は辛いんだよ? もう苦行、延々と漕がなきゃいけないんだから」
不死叢:「あ、それ分かります。僕も後になって少し漕がせてもらいましたけど、思ったより動かないもんですなぁ」
玉三郎:「そのせいで、僕恐怖を味わいましたよ。方向変えるために木の枝つかんでも、すぐ折れちゃいましたし……」
不死叢:「いやいや、あの枝は脆かったですねぇ」
玉三郎:「無事に目的地まで着いたのが不思議なくらいですよ」
不死叢:「まあまあ、無事だったんですからよしとしましょう!」
熟死乃:「到着後、すぐ第4の選択だね、これ?」
不死叢:「ですよぉ。ここで、あんたがやらかしてくれたんです」
玉三郎:「僕にサイコロ振らせるからいけないんですよ。僕を甘く見ちゃダメ。出すんだから」
不死叢:「でも、ここで『強王の迷宮』なんか出すかい? ともあれ、その模様はこの後の第6夜でたっぷりと」

●副音声収録風景・第6夜
 ついに第6夜。シリーズ全体でも後半に入ってきた。玉三郎を交えたディレクター陣による副音声解説はまだ続く。
不死叢:「さて! いよいよ第6夜ですよぉ。あ、不死叢です」
熟死乃:「どうも、熟死乃です。ゲストは引き続き」
玉三郎:「こんにちは、バンジョー玉三郎です」
不死叢:「さっそくですが、第5夜の最後でも言った通り、我々は『強王の迷宮』に向かいました。……1人だだをこねてましたけどね」
玉三郎:「いや、ほんと行きたくなかったんですって、あれ」
不死叢:「でも、出したのあんただろ。分かってますか? だだこねても、最終的には行かなきゃいけないんですから」
玉三郎:「最終的にはね。だから僕も、最後は覚悟決めてるんです。夜に着いたのは予想外でしたけど」
熟死乃:「あれは僕らも予想外。翌朝になるかななんて不死叢くんとは話してたんだけど」
不死叢:「思ったより早めに着きましたからなぁ。だから第5の選択は、チャンスタイムにしたんですよぉ。5/6を聖都エルザード行きにして。……誰かさんが無駄にしましたけども」
玉三郎:「だから僕にサイコロ振らせるのがいけないんだよ」
不死叢:「は? うひゃひゃ……あんた自分から振ろうとしてたでしょ!! 熟死乃くんのカメラが、ちゃんと撮ってますよぉ」
玉三郎:「……出せると思ったんだって、あの時は」
不死叢:「何にしても、これで迷宮の入口前でテント張ることになりましたな」
玉三郎:「絶対さ、おかしな奴らって思われてますよ。近くの詰め所の人たちには。だったら泊めろよ!」
不死叢:「ことごとく断られましたからなぁ」
玉三郎:「それでいて毛布は貸してくれるんだから、不思議ですよ」
熟死乃:「さすがに、人道的にどうかと思ったんだろうね。怪しくて泊めることは出来ないけど」
不死叢:「ですかなぁ」
玉三郎:「でも、テントって背中が痛いんですよね。狭いし」
不死叢:「本編でもぼやいてましたなぁ。下が固く冷たい岩でしたから、あそこ」
玉三郎:「もうね、寝れない寝れない。テントの回りには妙な気配もあったし……。そんな中、君は寝てたよね」
不死叢:「はい。撮ってませんけどね」
玉三郎:「よくあれで寝れたよねえ……」
不死叢:「それでも、ほんの少しですよ?」
玉三郎:「いや、それでも凄いよ。僕らダメだったもん。こうして見てるだけで、思い出しちゃいますよ……」
不死叢:「うひゃひゃひゃ……玉三郎さん、げんなりしないでください! 視聴者の皆さんには分かりませんからっ!!」
熟死乃:「で、そうこうしてるうちに、朝を迎えると」
不死叢:「お二方ともやつれてますなぁ……」
玉三郎:「ええ、そりゃ寝てませんから」
熟死乃:「ここでようやく、『黄金の楽器』に繋がるヒントが出てきたんだね。クレモナーラ村が楽器の名産地だって分かって」
不死叢:「熟死乃くんの言った通り。この日になって、ようやく僕気付いたんです。だから第6の選択も、チャンスタイムにしてクレモナーラ村に向かいやすくしたんですよぉ」
玉三郎:「でも、出たのはフェデラでしたね」
不死叢:「あんたの弟が出したんだもの」
熟死乃:「上手くゆかないもんだねえ」
不死叢:「そのフェデラでの模様は、第7夜で語るとしまして……そろそろゲストの方とはお別れの時間に」
玉三郎:「あ、もう終わりですか?」
不死叢:「終わりですかって、ずいぶん居ましたよぉ?」
玉三郎:「いやー、あっという間でしたね」
不死叢:「そうなんです、あっという間に時間が過ぎるんですよぉ、副音声の収録は」
玉三郎:「じゃ、また何かあったらゲストに呼んでください」
不死叢:「それはもう! それではここまでのゲストは、バンジョー玉三郎さんでした!」
玉三郎:「どうもありがとうございました」
不死叢:「ではでは、また第7夜の副音声でお会いしましょう!」

【おしまい】