<聖獣界ソーン・白山羊亭冒険記>


頑張れ新米冒険者!
●オープニング【0】
 いつもの白山羊亭。とはいっても、近頃ここ聖都エルザードを訪れる旅人が増えているらしく、それに比例するかのごとく白山羊亭はいつも以上の賑わいを見せていた。
 夜だけの話ではない。昼間だって、客足が増えている。
「こんにちはですにゃー」
 ほら、この通り……って、入ってきたのはもはやお馴染みの顔と言ってもいい、街外れに住む元騎士ガーナルの屋敷で働く猫耳メイドさんのマオじゃないか。
「また新しいお客さんかと思ったんですけどねえ」
 マオの姿を見て、白山羊亭の看板娘であるルディアがつい苦笑した。まああれだ、予想が外れたという奴である。
「新しいお客さんも居るですにゃー。ほらほら、入ってくるですにゃー」
 ちょいちょいと外に向かって手招きするマオ。すると、15歳くらいだろうか、剣を腰に携えレザーアーマーに身を包んだ可愛らしい少年と、ローブに身を包んだ可愛らしい少女がおずおずと白山羊亭に入ってきた。
「ええと……?」
 少年少女の顔を見てから、ルディアがマオに視線を戻した。客と一口に言ってしまっていいものか、悩んだのだ。
「こっちがファイターを目指すシルトくんで、そっちがウィザードを目指すミークちゃんですにゃー。お店の前でうろうろしてたから、あたしが声をかけたのですにゃー」
 なるほど、一緒に居る事情は分かった。だが、シルトとミークは何か言いたげにしていた。
「どうしたの、2人とも?」
 ルディアが優しく2人に声をかける。と、シルトが先に口を開いた。
「あの……僕たちに、冒険者としての心構えを教えてください!」
「え?」
 一瞬きょとんとなるルディア。すかさずミークも口を開く。
「私たち、近くの村から来たばかりで、冒険者として何をしていいのかよく分からないんです……」
 ここまで聞いて、ルディアもピンときた。2人が何故、ここに来たのかということに。
「ははーん、そういうことね。ここだったら、教えてくれる人が居るんじゃないかって思ったのね?」
 ルディアが聞き返すと、2人はこくこくと頷いた。
「そうね……居るわよ、色々な冒険者さんがね」
 店内を見回して、くすっとルディアが笑った。
 さあ、新米冒険者に先輩冒険者から贈る言葉はないですか?

●はいはい、冒険者ですよ?【1】
「すみませーん。お客さんの中で、この子たちに冒険者としての心構え教えてあげられるっていう人、居ますかー?」
 店内の皆によーく聞こえるように、ルディアが言った。すると、店の奥に陣取っていた4本腕の多腕族の戦士風の男がそれに反応した。
「は? 心構えを教えろ?」
 今まさに何杯目かのジョッキを口元に運ぼうとしていた多腕族の男・シグルマは、その手を止めてルディアたちの方へ目を向けた。奥に居たシグルマが聞こえているのだから、まず間違いなく店内に居る客には聞こえていることだろう。
「は〜い、冒険者だよ〜☆」
 その証拠に、直後パタパタと半透明なアゲハ蝶のような羽根を羽ばたかせ、ポニーテールのシフール少女がルディアの所まで飛んできたではないか。
「こんにちは〜、ディアだよ〜。よろしくね〜」
 シフール少女のルディアは、シルトとミークの頭上をくるくると旋回しながら挨拶をした。
「あ……よろしく」
「シフールさん? 私、シフールさんにちゃんと会うの初めてかも……」
 おずおずと挨拶するシルトに対し、ミークはディアナを見て目を輝かせた。このミークの反応は、さすがウィザードを目指しているだけのことはあるか。知らないことを知るというのは、ウィザードにとって基本中の基本である訳だから。
「むふふん、初々しい反応だな」
 と、いつの間にやら背丈2メートル以上はあるがっしりとした大男が、ニヤリと笑みを浮かべてやってきていた。
「ひっ!?」
 大男を見て、びくっとなるミーク。するとシルトがすかさずミークの盾となるかのように動いた。それを見た大男は豪快に笑った。
「素質は十分、よしよし」
 大男、オーマ・シュヴァルツは楽しそうにつぶやいた。シルトがミークを守るべく動いたこと、それを評価したのだった。
「おやおや、いじめちゃいけませんよ?」
 ひょっこりと、大き目の眼鏡をかけた青年がオーマの後ろから顔を出した。
「あぁん? 誰がいじめてるって?」
 オーマが笑いながら後ろの青年、アイラス・サーリアスに言う。お互いよく知ってるゆえ、アイラスが冗談で言ったのだと分かっていた。
「傍から見ると、そう見えたってだけですよ。ほら、ちょっと怯えてるじゃないですか」
 ミークを指し示すアイラス。ミークはシルトの後ろに隠れ、ちらちらとオーマのことを見ていた。……やっぱ怯えてますね。
「大丈夫ですにゃー、恐くないですにゃー」
 マオがそんなミークをなだめようとした。
「ちょっとマッチョで親父な人ってだけですのにゃー」
 どーゆー言い方だ、マオよ。
「おう、その通り!」
 だがマオの説明に怒る訳でもなく、オーマはポージングをとった。立派な筋肉を見せつけるかのごとく。
「明日の聖【筋】界アニキメシアカリスマスター☆目指してナニしようってんなら、セクシーメラマッチョ大胸筋貸してやるぜ。どーだ?」
 胸を張り、そこへドンッと拳を叩き付けるオーマ。所々聞こえた謎の単語はさておいて、意味と行動を見ると何とも頼もしいことである。
「……立派な冒険者になると、僕もあの人みたくなるんですか?」
「あの人はねー、また特別なのよー。でも悪い人じゃないから安心してねー」
 小声で不思議そうに尋ねたシルトに、ルディアがさらりと答えた。何気にちと失礼ぽく聞こえたように思えるのは、もちろん気のせいだ。
「あの〜……」
 その時、ルディアの肩をとんとんと叩いた者が居た。ルディアが振り向くと、そこには猫の少女が立っていた。
 といっても、マオのことではない。マオは猫耳があるだけだが、こちらの少女は全身が茶系統の毛に覆われ、腰から長い尻尾を生やしている。何より、頭部が猫である。リンクスという種族の少女だった。
「あ、猫な種族さんが居たですにゃー。珍しいですのにゃー。でも、綺麗な毛並みですのにゃー」
 ……マオよ、君も猫な種族だ、一応。とはいえ、聖都エルザードにおいてリンクスという種族を見かけるのはやはり少なめかもしれない。『珍しい』という言葉は、あながち間違いでもないだろう。
「あ、ごめんなさい! お話の途中!」
 はっとしたルディアが慌ててリンクスの少女、カーディナル・スプランディドに謝った。実はカーディナル、ここを訪れていたのは自らの職業の関係でだった。
 カーディナルの職業は魔石錬師。自身の魔力を凝縮させて様々な効果を持つ結晶――魔石と呼ばれる――を作り出すことが出来る魔術師だ。その魔石が、この白山羊亭で必要とされていないかを聞きにやってきていたのである。
 例えば冷気を発する魔石であれば、生鮮食品などと一緒に箱に入れておけば冷たく冷やして長持ちさせることが可能となる。食事などを扱う店としては、需要はなくはないだろう。
 その話をルディアとしていた最中に、マオがシルトとミークを連れてきたのである。話は中断されたままになり、カーディナルが痺れを切らせたのかと思われた。
「えっと、それは後でもよくって」
「え?」
 が、カーディナルからの意外な言葉に、ルディアが一瞬きょとんとなった。けれども、続くカーディナルの言葉を聞いて納得した。
「あたしも便乗していいですか? まだ聖都に着たばかりで、よく事情やら地理やら分かんないから」
 てへっと笑うカーディナル。もちろん異論などあるはずもない。
「何だか面白くなってきたみたいだな……っと、お代わり!」
 一連のやり取りをつまみ代わりにしていたシグルマは、空になったジョッキを高らかと掲げた。どうやら今の間に、1杯飲み干してしまったようだ。恐るべし。

●まずは概論から【2】
「えっと〜、冒険者になって一番何がしたいの?」
 テーブルにつき、飲み物で喉を潤したシルトとミークに、ディアナが率直に尋ねた。
「困っている人をお手伝いしたいの? 宝物を探したいの? お金儲けがしたいの?」
 2人の顔を交互に見ながら、ディアナは具体的なことを尋ねようとした。確かに、何がしたいかによって必要な心構えも若干変わってくるかもしれない訳で。
「……僕は宝物、かな? 魔法の剣とか探し出してみたい。それでミークを襲おうとする怪物をやっつけるんだ!」
「私は困ってる人のお手伝いがしたいです。それに、シルト1人だと心配だし……」
 少し思案してから、2人が相次いで重なるように答えた。
「2人とも仲がいいんだね〜♪」
 にこにことディアナが言うと、2人は頬を赤らめた。
「ちなみにディアはね〜。ジュエルマジシャンだけど、綺麗なもの珍しいものをい〜っぱい見たいよ〜。困っている人をお手伝いして喜んでもらえるとディアも嬉しいな〜」
 シフールといえば好奇心の代名詞といってもいい。やはり、らしい目的であった。
「お金は?」
 ルディアがディアナに尋ねた。
「ディアはお金には興味ないの〜。重いしね」
「じゃ、今日の分はツケ……と」
 何やらメモするルディア。
「あ〜っ、ディアちゃんと払うよ〜」
 ディアナが慌ててルディアに言った。まあこんなのは白山羊亭ではよくある日常風景だ。
「……冒険者のお店はツケがきく、と」
 いやそこ、何をメモしてるですか、カーディナルさん。
「やっぱりお金必要だね、シルト……」
 ディアナとルディアのやり取りを見ていたミークが、シルトの方を向いてぽつりつぶやいた。そう、最低限生活してゆくだけの金銭は必要なのが現実だ。
「それはそうですよ。宝探しだけで食べていけるほど世の中甘くはないですしね」
 アイラスがさらりと言った。シルトを少し諌めるような発言になったのは、決して気のせいではないだろう。
「冒険者としてお金を稼ぐなら、一般的には何かしら依頼を引き受けることでしょうね。例えば荷物の運搬、例えば護衛、例えば人探し……自分に合う合わないはともかく、探せば何かしら依頼はあるでしょう。ですが」
 アイラスは一旦言葉を区切ると、シルトとミークの顔をしばしじーっと見た。
「……依頼を引き受けたなら、とりあえず大切なことが2つ。『秘密厳守』と『依頼遂行』です。誰からどんな依頼を受けたのかを漏らさない、そして一度受けた依頼は何があろうとも解決する。ああ、どのような形であれ依頼人が納得出来るような形でですよ、もちろん。2つとも当たり前のことです」
 そして、2人を見つめたまま大切なことを教えるアイラス。2人は食い入るようにアイラスの言葉を聞いていた。
「いいですか、冒険者というのは『信用商売』です。ちょっと考えてみれば分かりますよね。信頼の置けない人には大切なことなんて頼めないでしょう?」
「うん……」
 シルトがこくっと頷いた。信用があるから依頼者は重要な仕事を任せてくれる。だが、信用を失うような振る舞いをすれば、たちまちに重要な仕事を任せることはなくなるだろう。アイラスが言った先の2つの事柄も、結局はこの『信用商売』という所に結び付いてくる訳だ。
「信頼を得るのは時間がかかりますが、信頼を失うのは一瞬ですよ」
 アイラスのとどめの一言。まさにその通りである。冬の朝、水たまりに張った氷を割るがごとく、信頼を失うのはたやすいこと。そして、一度失った信頼はまず元には戻らない――。
「『信用商売』かあ……」
 感心した様子で聞いているカーディナル。彼女の職業も『信用商売』とは決して無縁ではない。いや、どんな職業・立場であっても『信用商売』であろう。信用なき者は、相手すらされないのだから。
「あー、習うより馴れろってとこもあるんじゃないか?」
 奥で酒を飲み続けていたシグルマが、大きな声で話に割り込んできた。さっきお代わりしたジョッキも、もう残り1/5ほどだ。
「頭であれこれ思ってても、実際その場で動けないとしょうがないからな。経験して身になるものもあるってことだ――んぐ……ん……ぷはぁっ! もう1杯!!」
 そう言ってからジョッキの残りを一息に飲み干し、またお代わりするシグルマ。そろそろ今日の杯数も2桁に乗る頃か。
「聞いた通りだ。経験して身につくことも色々ある。例えばだ……」
 オーマが真面目な表情でシルトとミークに話し始める。2人は真剣に耳を傾けた、が。
「秘技や超必殺技とかだ」
「「え?」」
 オーマの言葉に、2人が唖然となった。
「いいかよく聞け。この聖獣界にはびこりしワル筋に遭遇してピンチとなりし時……」
「オーマさーん。たぶんそれ、上級者向けのお話だと思いますよー」
 話が妙な方向へ流れると察知したルディアが慌てて口を挟んだ。
「ほら、2人ともぽかんとしてますし」
「むぅ……ある心構えを伝授してやろうと思ったんだが、この2人にはまだ難しいか」
 口惜しい様子のオーマ。ちなみに、『ワル筋』とは悪い筋肉輩の総称らしい。
「仕方ない、この話はいずれ冒険者として成長した時にでも改めてしてやろう……」
 さてはて、非常に残念そうなオーマであった。
「いい話は後に取っておくのも1つの方法だしな」
 ……いや、案外残念がってないのかも。後の楽しみが出来たとかどうとか思って。

●ちょっと具体的に【3】
「後はそうだな、皆と仲良くやって知り合いを作ることも大事だな。その方が情報も入りやすいし、パーティを組むのも楽だからな」
 お代わりのジョッキを受け取りながら、シグルマはシルトとミークに向かって言った。知り合いを作ることは、シグルマが言ったように情報を得やすくなることもあるし、相手が自分を見知っていれば何か面白い依頼に声をかけてくれるかもしれない。何かとプラスに働くことが多いだろう。
「知り合いを作る……ふむふむ、なるほどー」
 せっせとメモするカーディナル。冒険者向けの話ではあるけれど、カーディナルにも参考になる所は大きかった。
(知り合いが増えると、その中から常連さんになってくれる人も居るかもしれないかな?)
 そんなことを思うカーディナル。それはあるだろう。向こうの求める物とこちらの用意出来る物が上手く合えば、当然のごとく。
「あ、そうだ。冒険者の人って、野外で活動することが結構多いんですよね? 絶対に必要な物って、どういう物ですか?」
 ここまで他人の言ったことをメモしていたカーディナルだったが、今度は自分から質問をしてみることにした。それはどんな魔石に需要があるのかを知りたいという理由からだったが、見方を変えれば新米冒険者にとっても役立つ話である。必要な物を持たずに出かけ、依頼に支障をきたす……なんてこともあるのだから。
「そうだね〜……お水と食べ物は必要かな〜」
 ディアナが真っ先に言った。基本中の基本である。行く先が、水場もなく狩りも出来ない場所だってことも珍しくはない。いつでもどこでも現地調達で賄おうと考えているのなら、その考えは早々に改めた方がよいだろう。
「明かりも便利だろ? 迷宮や洞窟に入るならないと間違いなく困るしな。迷宮に洞窟、それに塔だとか、その辺にごろごろしてるぞ」
 オーマが自分の経験を踏まえて言ったからか、その言葉には重みがあるように感じられた。
「明かりとくれば、火も必要ですにゃー。火がなかったら、明かりをつけられませんにゃー」
 マオが口を挟んだ。はい、ごもっとも。たいまつやランタンの油がいくらあろうとも、火種を作ることが出来なければ役立たず。魔法で火を作り出せない者ならば、火打石を忘れずに。
「水に……光……それから火……と」
 カーディナルは熱心にメモを取る。このメモをいずれどのような形で活かすのか、非常に楽しみである。
「先程パーティと出ましたが」
 アイラスが話を少し戻した。
「先輩冒険者についてきていただき、教えを請うのもよいですね。冒険者が実際にどのようなことをしているのか、これを知るのは大きいです」
「習うより馴れろにも繋がりますね」
 アイラスが続けた言葉に、ルディアが反応した。先輩冒険者がやったことを見る、そして後で自分でも同じことをやってみる……いい流れである。
「でも、まずは自分に何が出来るのかを知ることですね。パーティを組む時にも役立ちます。それに自分の能力をしっかりと把握しておかなければ、命がいくつあっても足りませんから」
 最後の方、アイラスはさらりと言ったが、実は非常に重要なことである。何でも出来る者などまず居ない、得手不得手があるのが当たり前だ。けれども――自らの能力を過信したがゆえに依頼を失敗に導く、あるいは自らを滅ぼす結果を弾き出す者も決して少なくはない。
 多くの依頼において『何がしたい』が先ではない、『何が出来るか』が先なのだ。その上で、『何がしたい』が重要となってくる訳だ。とはいえ――それが逆になっている依頼がそれなりにあるのも事実。
「え〜と、冒険者以外の人もだと思うけど〜、何を一番したいのかをはっきりさせると頑張れると思うよ〜」
 後でディアナがそう言った。この場合は『何がしたい』が先になり、そのために『何が出来るか』が重要となってくる。
 依頼がどっちのケースに相当するのか、上手く見極められるようになるにはやはりそれなりの経験を積む必要があるだろう。

●難しいお話はこの辺にして【4】
「他に、何かありますか?」
 神妙に話を聞いていたシルトとミークを横目に、ルディアが皆に尋ねた。と、オーマが口を開いた。
「……己自身を在りし者をそして互いを想うこと、だな」
 オーマのつぶやきに、シルトとミークが顔を向けた。それはオーマが2人にもっとも伝えておきたかったこと。
「想い続ければいつかはそれは何処かで1つとなり繋ぎ行く。何も難しいことは言ってないぞ? いついかなる時でも生命と想いを大切にしろってこった。……出来るよな?」
 ニィッと2人に笑みを向けるオーマ。すると2人は大きな声で揃って答えた。
「「はいっ!」」
「おう、いい返事だ。忘れるなよ」
 オーマは嬉しそうに、2人の頭をがしがしと撫でた。2人の身体が前後左右に揺れたのはご愛嬌。
「よし、一段落ついたようだな」
 一区切りついたと判断したシグルマが、ジョッキの中身を飲み干してから口を開いた。
「つーことで野郎ども、今日は新米冒険者の歓迎会だ。俺の奢りだから1滴も残さずに飲みやがれ!」
「「「「「うおぉーっ!!」」」」」
 シグルマの大盤振る舞いな言葉に、他の客たちが一斉に盛り上がった。
「あらあら、忙しくなりそう」
 ルディアがくすくすと笑う。何にせよ、忙しくなるのは店にとってもいいことだ。
「わ〜い、パーティだパーティだ〜☆ 一緒に楽しもうね〜☆」
 パタパタと飛び回り、ディアナはシルトとミークに話しかけた。
「そうだ、ディアの体験した冒険のお話してあげるね〜。悪い商人さんが荷物を摺り替えてディアたちに運ばせたお話と〜、今はもうなくなっちゃった村の悲しいお話と〜、街外れのお屋敷を綺麗にしてあげたお話〜。他にもまだまだあるよ〜♪ でもとりあえず、順番にお話しするね〜」
 そう言うが早いか、さっそく自らの冒険譚を歌うように語り出すディアナ。2人はそれに耳を傾けた。
「ああ……今日は来てよかったです」
 ルディアからジョッキを受け取りながら、カーディナルがぼそっと言った。色々と参考になることが多かったからである。今後の魔石作りにも、きっと役立つことだろう。
「……まあ、少しきつく感じたこともあったでしょうけど、それだけいい冒険者になってほしいと思っているということですよ、皆。これも1つも『信用』です、頑張ってください」
 いつの間にかシルトとミークの背後に回っていたアイラスが、軽くぽむと2人の背中を叩いて言った。大きくこくんと頷く2人。
 そして新米冒険者の未来を祈るべく、歓迎会が始まった――頑張れ新米冒険者!

【頑張れ新米冒険者! おしまい】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 整理番号 / PC名 / 性別 
             / 種族 / 年齢 / クラス 】
【 0812 / シグルマ / 男
             / 多腕族 / 29 / 戦士 】◇
【 1131 / ディアナ / 女
     / シフール / 16 / ジュエルマジシャン 】◇
【 1649 / アイラス・サーリアス / 男
 / 人 / 19 / フィズィクル・アディプト&腹黒同盟の2番 】◇
【 1953 / オーマ・シュヴァルツ / 男
 / 詳細不明(腹黒イロモノ内蔵中) / 39 / 医者兼ヴァンサー(ガンナー)腹黒副業有り 】◇
【 2728 / カーディナル・スプランディド / 女
          / リンクス / 15 / 魔石錬師 】◇


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■         ライター通信          ■
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・『白山羊亭冒険記』へのご参加ありがとうございます。担当ライターの高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・参加者一覧についているマークは、○がMT13、◇がソーンの各PCであることを意味します。
・なお、この冒険の文章は(オープニングを除き)全5場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通されると、全体像がより見えてくるかもしれませんよ。
・大変お待たせいたしました、新米冒険者たちへのアドバイスの模様をここにお届けいたします。聖獣界ソーンのリニューアル記念ということで、こんなお話を出してみました。これから冒険に出る方々にとっても参考になるよう努めてみましたが、いかがだったでしょうか?
・今回出てきたシルトとミークの2人ですけど、リニューアルの進行具合に合わせて何かと登場させてゆければ……などと考えたりしています。例えば、一緒に冒険に出るとかですね。さて、どうなりますことか。
・そうそう、年齢ですけれどリニューアルに合わせて高原は外見年齢を一覧で使用することにしました。どうぞご了承ください。
・ディアナさん、16度目のご参加ありがとうございます。冒険の動機って大切ですよね。ただ漠然と冒険者になったとしても、いずれは目標なりを見付けてゆく訳ですしね。……そういえばシフールの皆さんって、お金は普段どうやってるんでしょうね?
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。きちんと目を通させていただき、今後の参考といたしますので。
・それでは、また別の冒険でお会いできることを願って。